「下痢や便秘がつらい、これって過敏性腸症候群なの?」「過敏性腸症候群にはどんな治療があるの?」などと、悩みや疑問のある方は多いかもしれません。
過敏性腸症候群は、ストレスなどが影響して便通異常を起こす疾患です。下痢や便秘などの症状が表れ、長期間続くこともあります。
この記事では、過敏性腸症候群の定義や診断、治療について解説します。また、セルフチェックも掲載しています。
下痢や便秘に悩んでいる方や「もしかして過敏性腸症候群かも?」と不安に感じている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
過敏性腸症候群(IBS)とは?|ストレスなどが原因で便通異常を起こす病気

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndromeの略称)は、ストレスなどが影響して便通異常を起こすといわれている疾患です。
検査では特に異常が認められないにもかかわらず、慢性的にお腹の調子が悪くなります。症状は、数カ月以上続く場合もあります。
原因は明らかになっていないものの、ストレスや自律神経失調症が影響しているのではないかと考えられています。感染性腸炎になり回復した後に、過敏性腸症候群の症状が表れる例もあります。
日本人の10〜20%が、過敏性腸症候群の症状に悩んでいるといわれています。男性よりも女性に多く、20~40代で発症しやすい傾向があります。
過敏性腸症候群のセルフチェックリスト
ここでは、国際基準であるROME基準(ROMEⅢ)を参考に作成したチェックリストを紹介します。
※腹部不快感とは、腹痛ではない不快な感覚。 |
上記に該当する方はもちろん、少しでも気になる症状がある場合には、医療機関で受診しましょう。過敏性腸症候群なのか分からないといった場合には、まずは内科や消化器内科の受診をおすすめします。
過敏性腸症候群の診断

次に、過敏性腸症候群の具体的な診断方法について紹介します。
過敏性腸症候群の診断には、国際基準である「ローマ基準」が使用されます。
ローマ基準による診断
現在使用されているローマⅣ基準では、まず以下の3つが前提となります。
- 器質性疾患ではない
- 6カ月以上前に症状が出ている
- 過去3カ月間に少なくとも週1回の頻度で腹痛がある
加えて、次の2つ以上に該当する場合に過敏性腸症候群と診断されます。
- 排便に関連した痛みがある
- 痛みが排便回数の変化に連動している
- 痛みが便の形状の変化に連動している
出典:機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)|日本消化器病学会|p.17
過敏性腸症候群の検査
「過敏性腸症候群の検査」というものはありません。原因が明らかにされておらず、数値などで判断することができないからです。
したがってここで紹介するのは、あくまで大腸がんや潰瘍性大腸炎などほかの疾患の可能性を除外するための検査です。具体的には、以下のような検査を実施する場合があります。
- 血液検査
- 便検査
- 腹部超音波検査
- 腹部のレントゲン検査
- 大腸内視鏡検査
どのような検査をおこなうかは、症状や年齢、既往歴などによっても異なってくるでしょう。
過敏性腸症候群の4つの分類|ブリストル便形状尺度

過敏性腸症候群はブリストル便形尺度により、以下4つに分類されます。
- 便秘型
- 下痢型
- 混合型
- 分類不能型
ブリストル便形尺度とは、便の状態を判別するスケールです。世界共通の尺度であり、7段階で評価されます。
1便秘型
便秘型の方は、ブリストル便形状尺度1〜2の便が多くなります。
ストレスを感じると便秘が悪化します。女性に多くみられるタイプです。
3日以上便が出なかったり、出てもコロコロとした木の実のような、もしくは小さなかたまりが集合したソーセージ状の硬い便ばかりです。
腹痛を伴う場合もありますが、便が出れば症状は治まります。
2.下痢型
下痢型の方は、ブリストル便形状尺度6〜7の便が多くなります。男性に多くみられるタイプです。
強い腹痛を感じて便意をもよおし、泥や水のような水分量の多い便が出ます。ときには、動悸がしたり、冷や汗を流したりする場合もあります。
3.混合型
混合型では、便秘型と下痢型、両方のタイプの便がみられます。
便秘になったり、下痢をしたりと便通が変化します。
4.分類不能型
便秘型、下痢型、混合型のいずれにも該当しないのが、分類不能型です。ブリストル便形尺度は3〜5の便が主体です。
過敏性腸症候群は、4つの型により症状が異なります。悩むポイントも変わってくるでしょう。
過敏性腸症候群の「ガス型」とは

過敏性腸症候群は、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4つにわけられますが、ほかに「ガス型」と呼ばれる症状を訴える方もいます。
ガス型では腸内でガスが発生するため、きつい臭いのガスが出たり、腹痛やお腹の張りを感じたりします。
ローマ基準にはガス型という区分はないため、厳密には過敏性腸症候群であるとはいいがたい部分もあります。しかし、器質性疾患のない慢性的な腸の不調ということからか、過敏性腸症候群として扱われることが多いようです。
当院が過敏性腸症候群の診察で確認するポイント

過敏性腸症候群の診察では、便の状態だけでなく、腹部症状が現れる時間帯や生活環境との関係も重要です。
消化器内科で受けた検査の内容や、ストレス、不安、睡眠の状態を確認し、症状の全体像を整理します。
- 腹痛と排便による症状の変化
- 下痢・便秘・腹部膨満感の現れ方
- 仕事や学校など緊張する場面との関係
- 消化器内科で受けた検査と治療歴
- 不安や睡眠不足などの心理的な負担
- 身体疾患の確認を優先する症状
腹部症状と心身の変化を一つずつ確認し、心療内科で対応できる範囲や必要な連携先を判断します。
腹痛と排便による症状の変化
診察では、腹痛が起きる時間帯や、排便後に痛みが軽くなるかどうかを確認します。
食事の後や外出前など、決まった状況で症状が出る場合は、発症の傾向を把握する手がかりとなります。
痛みが続く時間や一週間の発症回数も、現在の状態を整理するための重要な情報です。
正確な回数が分からない場合は、最近特につらかった日の様子からお伝えください。
下痢・便秘・腹部膨満感の現れ方
過敏性腸症候群では、下痢が続く方もいれば、便秘と下痢を繰り返す方もいます。
便意があるのに排便できない、お腹が張る、ガスが気になるといった訴えも少なくありません。
便の回数や形状に加え、症状によって食事や外出を控えていないかも確認項目の一つです。
排便状況を簡単に記録しておくと、診察時に経過を共有しやすくなるでしょう。
仕事や学校など緊張する場面との関係
通勤前や会議、試験など、緊張が高まる場面で腹痛や便意が強くなることがあります。
休日は落ち着いている一方、仕事や学校のある日だけ症状が現れるケースもみられます。
症状が悪化する状況を整理することで、ストレスとの関係や生活上の負担が見えやすくなります。
職場や学校で困っている場面についても、話せる範囲で医師へお伝えください。
消化器内科で受けた検査と治療歴
腹痛や便通異常は、過敏性腸症候群以外の身体疾患によって起こる場合もあります。
これまでに内科や消化器内科を受診した方は、検査内容や医師から受けた説明を確認します。
血液検査や便検査、内視鏡検査などの結果をお持ちの場合は、診察時にご提示ください。
身体的な検査が十分に行われていないときは、先に消化器内科の受診をご案内することがあります。
不安や睡眠不足などの心理的な負担
腹部症状が続くと、外出先でトイレに行けないことへの不安が強まる場合があります。
翌日の症状を心配して眠れない、食事を取ることが怖いと感じる方も少なくありません。
診察では、睡眠や食欲、気分の落ち込み、緊張の強さについても確認します。
腸の症状だけでなく、日常的に感じている心理的な負担も治療方針を考える材料となります。
身体疾患の確認を優先する症状
血便や発熱、急激な体重減少などがみられる場合は、身体疾患の確認を優先する必要があります。
夜中に目が覚めるほどの腹痛や、これまでにない強い症状が現れた場合も注意が必要です。
このような症状がある方には、内科や消化器内科での検査をご案内することがあります。
受診先を迷っている場合は、現在の症状を予約時または診察時にお伝えください。
お腹の不調を事前に伝えられる当院の初診対応

過敏性腸症候群では、移動中の腹痛や急な便意を心配し、医療機関への受診自体が負担になることがあります。
体調に合った時間帯を選び、来院前に症状を入力できるよう、オンラインの予約と問診を用意しています。
- 体調に合わせて選べるWEB・LINE予約
- 空き枠を利用した受診当日の初診
- 排便状況を整理できる事前問診
- 症状を順番に確認する30~45分程度の初診
- 身体的な検査が必要な場合のご案内
- 診察結果に応じたお薬と診断書の相談
診察室で腹部症状を詳しく説明できるか不安な方も、事前問診を参考にしながら受診できます。
体調に合わせて選べるWEB・LINE予約
診察の予約は、WEBまたはLINEから24時間受け付けています。
電話で症状を説明せずに手続きを完了できるため、落ち着いた環境で予約を進められます。
診察は完全予約制となるため、予約の確定を確認してからご来院ください。
空き枠を利用した受診当日の初診
初診枠に空きがある日は、予約手続きを行った当日に診察を受けられる場合があります。
当日分が埋まっている場合は、翌日以降に予約できる日時を選択する流れです。
予約から受診までの日数は、曜日や希望時間、予約状況によって変わります。
早めの受診を希望する方は、WEB・LINEに表示される最新の空き枠をご確認ください。
排便状況を整理できる事前問診
予約後は、来院前にWEB問診へ回答していただきます。
腹痛が起きる場面や便通の変化、内科での検査歴、服用中のお薬などを入力する問診です。
対面では伝えにくい排便の悩みも、事前であれば落ち着いて整理できる場合があります。
すべての項目を詳しく書けなくても、分かる範囲で入力していただければ問題ありません。
症状を順番に確認する30~45分程度の初診
初診にかかる時間は、30~45分程度が一つの目安です。
便通異常の経過や悪化しやすい場面、日常生活への影響、これまでの治療歴を確認します。
腹部症状に加え、不安や睡眠、気分の変化なども診察内容に含まれます。
症状や確認事項によって所要時間が前後するため、時間に余裕を持った来院が安心でしょう。
身体的な検査が必要な場合のご案内
心療内科では、大腸内視鏡や腹部超音波などの消化器検査を行うことはできません。
身体疾患が除外されていない場合や、腹部症状に変化がみられる場合は、内科受診をご案内します。
すでに消化器内科へ通院している方は、治療を継続しながら心療内科を併診することも選択肢です。
どちらの診療科を優先するかは、症状や検査歴を確認したうえで判断します。
診察結果に応じたお薬と診断書の相談
ストレスや不安が腹部症状に影響している場合は、診察結果に応じてお薬を検討します。
処方の必要性や種類については、身体の状態やほかの医療機関での服薬内容を踏まえた医師の判断です。
症状によって勤務や通学が難しい方は、休職・休学に必要な診断書についても相談できます。
診断書は医師が必要と判断した場合、初診当日に発行できることがあります。
腸の症状と心理的負担を切り離さない当院の継続診療

過敏性腸症候群の症状は、食事や体調だけでなく、仕事の負担や人間関係などによって変化する場合があります。
腹部症状とストレスの両面を確認し、消化器内科との役割分担も考えながら診療を続けます。
- 腹部症状とストレスを並べた経過確認
- 不安や睡眠状態を含めた治療内容の調整
- 治療を始めた時期の通院間隔
- 症状が安定した後の定期診察
- 消化器内科との併診を含む治療方針
- 仕事や学校への影響に応じた書類の相談
治療内容や通院頻度は一律ではなく、腹部症状と心理状態の変化を確認しながら個別に決定します。
腹部症状とストレスを並べた経過確認
再診では、下痢や便秘、腹痛が現れた日と、その前後にあった出来事を確認します。
仕事が忙しい時期や緊張する予定の前に症状が強まる場合は、ストレスとの関係を整理しやすくなります。
毎日の詳しい記録が負担になる方は、症状が特に強かった日だけメモする方法でも構いません。
腹部症状と生活上の変化を並べて振り返り、治療内容を調整する材料とします。
不安や睡眠状態を含めた治療内容の調整
腹部症状への不安が強いと、身体のわずかな変化にも敏感になることがあります。
外出前に眠れない、食事を避ける、気分が落ち込むといった変化がないかも確認します。
処方中のお薬がある場合は、効果や眠気、吐き気などの体調変化も大切な情報です。
現在の困りごとや副作用を踏まえ、医師が治療の継続や調整を判断します。
治療を始めた時期の通院間隔
治療開始後は、2週間に1回程度の通院を目安とする場合があります。
腹部症状や不安の変化、お薬を処方した場合の効果と副作用を早めに確認するためです。
状態によっては、1週間後または3~4週間後の再診をご案内することもあります。
次回の受診時期は、初診や再診時の状態に合わせて医師と相談しながら決めます。
症状が安定した後の定期診察
腹部症状や心理状態が安定した後は、月1回程度の通院へ移行する場合があります。
定期診察では、便通の状態だけでなく、仕事や睡眠、外出範囲の変化も確認します。
症状が落ち着いていても、環境の変化をきっかけに再び腹痛や便通異常が強まることがあります。
自己判断で通院や服薬を中断せず、受診間隔について医師へご相談ください。
消化器内科との併診を含む治療方針
腸の症状に対する検査や身体的な治療は、消化器内科での対応が必要になる場合があります。
心療内科では、ストレスや不安、睡眠など、腹部症状に影響する心理面を中心に診察します。
どちらか一方に絞るのではなく、症状に応じて両方の診療科へ通院することも可能です。
他院から処方されている薬がある場合は、重複を避けるため診察時にお伝えください。
仕事や学校への影響に応じた書類の相談
腹痛や急な便意によって通勤・通学が難しくなり、遅刻や欠勤が増えることがあります。
無理に生活を続けることで、不安や睡眠不足が重なり、症状が悪化する場合もあります。
休職や休学が必要な状態では、診断書の発行について医師へ相談可能です。
発行時期や休養期間、記載内容は、診察で確認した心身の状態を踏まえて判断します。
当院に寄せられる過敏性腸症候群のご相談例

過敏性腸症候群の悩みは、便通異常だけにとどまらず、通勤や仕事、人との外出にも影響することがあります。
消化器内科の検査で異常がないものの、緊張やストレスに伴って症状が続く方からのご相談もみられます。
- 出勤前になると腹痛と下痢が起こるケース
- 電車内での便意が怖く移動できないケース
- 会議中の腹鳴やガスが気になるケース
- 検査で異常がないものの腹部症状が続くケース
同じような症状であっても、悪化する場面や生活への影響は患者様によって異なります。
出勤前になると腹痛と下痢が起こるケース
休日は比較的落ち着いているものの、出勤前になると腹痛や下痢が起きることがあります。
トイレから離れられず、遅刻や欠勤を繰り返してしまう方も少なくありません。
翌朝の症状を心配することで眠れなくなり、さらに体調が悪化する場合もあります。
仕事のストレスや睡眠状況も含めて確認し、治療や休養の必要性を検討します。
※症状の経過には個人差があり、回復までの期間や治療内容は患者様によって異なります。
電車内での便意が怖く移動できないケース
電車に乗ると急な便意が起こるのではないかと不安になり、移動を避けることがあります。
各駅停車しか利用できない、途中下車を繰り返すなど、通勤時間が長くなるケースもみられます。
実際に腹痛が起きていないときも、トイレの場所を確認し続けてしまう場合があります。
移動への不安と腹部症状の両方を整理し、生活上の負担を減らす方法を考えます。
※症状の経過には個人差があり、回復までの期間や治療内容は患者様によって異なります。
会議中の腹鳴やガスが気になるケース
静かな会議室や教室で、お腹が鳴ることやガスが出ることを強く心配する場合があります。
周囲に気づかれる不安から身体へ意識が集中し、腹部の張りがさらに強く感じられることもあります。
会議への参加や人との食事を避けるようになると、仕事や人間関係への影響も大きくなります。
どの場面で不安が強まるかを確認し、心理的な負担を含めた対応を検討します。
※症状の経過には個人差があり、回復までの期間や治療内容は患者様によって異なります。
検査で異常がないものの腹部症状が続くケース
消化器内科で検査を受けても異常が見つからず、腹痛や便通異常だけが続く場合があります。
原因が分からないことへの不安から、複数の医療機関を受診する方も少なくありません。
ストレスや緊張との関係が考えられるときは、心療内科で心理面を確認することも選択肢です。
消化器内科の治療歴や検査結果を踏まえ、心身の両面から治療方針を検討します。
※症状の経過には個人差があり、回復までの期間や治療内容は患者様によって異なります。
過敏性腸症候群を理解し、適切な治療を受けよう

過敏性腸症候群は、腸やほかの臓器自体には問題がみられないのに、便通異常を起こす疾患です。
便秘や下痢は日常的にあらわれる症状なので、病院には行かずに我慢してしまうことも多いでしょう。しかし過敏性腸症候群である場合には、ストレスが影響していることも大いに考えられます。
検査をしても異常はないのに症状が続くようなら、精神科や心療内科での受診を検討してみましょう。適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。

精神科医・産業医
三重大学医学部卒業後、桑名市総合医療センターで初期研修を修了。
その後、南勢病院精神科での勤務、かわいクリニック/新宿よりそいメンタルクリニックでの診療を経て独立。
日本精神神経学会に所属し、日本医師会認定産業医としても活動。
https://tomo-mental.com
参考サイト・文献
・e-ヘルスネット 過敏性腸症候群|厚生労働省
・過敏性腸症候群(IBS)|日本消化器病学会ガイドライン
・心身の反応(機能性身体症状)について|厚生労働省
・便の状態をチェックしましょう|吉田製薬
・過敏性腸症候群について|日本大腸肛門病学会
・機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)|日本消化器病学会