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認知症とは
認知症とは、脳の神経細胞が徐々に失われることで、記憶・判断・言語などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態をいいます。認知症は特定の病名ではなく、さまざまな原因によって引き起こされる症状の総称です。
日本では高齢化の進展にともない、認知症の方の数は年々増加しており、現在は高齢者の約6人に1人が認知症といわれています。しかし、認知症は決して「年のせいで仕方のないもの」ではありません。早期に発見し、適切なサポートを受けることで、症状の進行を緩やかにし、その方らしい生活を長く続けることが可能です。「もしかしたら…」と感じたら、できるだけ早めにご相談ください。
認知症の主な種類
認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状の現れ方が異なります。代表的なものをご紹介します。
アルツハイマー型認知症
認知症のなかで最も多く、全体の約60〜70%を占めます。脳にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々に障害されることで発症します。初期には最近の出来事を忘れる「近時記憶障害」が目立ち、ゆっくりと進行していくことが特徴です。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって引き起こされる認知症です。発症が比較的突然で、障害を受けた脳の部位によって症状が異なるため、できることとできないことの差が大きい「まだら認知症」が見られることがあります。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病との関連が深く、予防が特に重要です。
レビー小体型認知症
脳内にレビー小体という異常なたんぱく質が蓄積することで起こります。「リアルな幻視(実際にはいない人や虫が見える)」「手足の震えや歩行障害などパーキンソン症状」「睡眠中に大声を出したり体を動かしたりするレム睡眠行動障害」などが特徴的な症状として現れます。
前頭側頭型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こる認知症で、比較的若い年齢(65歳未満)で発症することもあります。記憶障害よりも、人格・行動の変化(礼儀を失う、同じ行動を繰り返すなど)や言語障害が先に現れることが多いです。
認知症の早期サイン・症状
もの忘れと認知症の違い
加齢にともなう「普通のもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」は異なります。たとえば、昨日の夕食のメニューを思い出せない程度は加齢によるものが多いですが、夕食を食べたこと自体を忘れてしまう場合は認知症のサインである可能性があります。また、もの忘れを自覚できているうちは比較的軽度であることが多く、本人が「最近おかしい」と感じている段階での受診が大切です。
中核症状
認知症の根本にある症状で、脳の機能低下によって直接引き起こされます。
- 記憶障害:最近のことを忘れる、同じことを何度も聞く・話す
- 見当識障害:今日の日付、季節、自分がいる場所がわからなくなる
- 理解・判断力の低下:物事の段取りができなくなる、複雑な話が理解できなくなる
- 実行機能障害:料理・家事・仕事などの手順が踏めなくなる
- 失語・失行・失認:言葉が出にくくなる、道具の使い方がわからなくなる
周辺症状(BPSD)
中核症状に加え、心理的・環境的な要因が重なることで現れる症状を「周辺症状(BPSD:認知症の行動・心理症状)」といいます。ご家族が特につらく感じやすい症状でもあります。
- 徘徊・迷子
- 興奮・暴言・暴力
- 幻覚・妄想(「財布を盗まれた」など)
- 抑うつ・不安・無気力
- 睡眠障害・昼夜逆転
- 食行動の異常
BPSDは適切なケアや環境の調整によって改善できる場合がありますので、ひとりで抱え込まずにご相談ください。
認知症のリスク要因
認知症の発症には、複数の要因が関係しています。
- 加齢:年齢とともに発症リスクは高まりますが、若年性認知症(65歳未満)も存在します。
- 生活習慣病:高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満・喫煙・過度の飲酒は認知症リスクを高めます。
- 運動不足・社会的孤立:身体活動の低下や人との交流が少ない環境もリスク要因です。
- 睡眠障害:慢性的な睡眠不足は脳内の老廃物が蓄積しやすくなるといわれています。
- 遺伝:家族に認知症の方がいる場合、リスクがやや高まることがありますが、遺伝のみで決まるわけではありません。
- うつ病・難聴:うつ病の既往や聴力の低下も認知症のリスク要因とされています。
診断の流れ
認知症の診断は、問診・認知機能検査・画像検査などを組み合わせて行います。
問診・診察
いつごろからどのような症状があるか、日常生活への影響、これまでの病歴・服薬状況などを丁寧にお聞きします。ご本人だけでなく、日頃の様子をよくご存知のご家族と一緒にいらっしゃることで、より正確な情報が得られます。
認知機能検査
短時間で行える認知機能のスクリーニング検査として、以下のものが広く使用されています。
- MMSE(ミニメンタルステート検査):記憶・見当識・計算・言語などを30点満点で評価します。
- HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール):日本で広く用いられる認知機能のスクリーニング検査で、30点満点中20点以下が認知症の疑いとされます。
画像検査
MRIやCTによる脳の画像検査では、脳の萎縮・脳梗塞・腫瘍など、認知症の原因となる変化を確認します。専門医療機関への紹介が必要な場合は、当クリニックから適切な連携機関をご案内します。
治療とケアの方法
薬物療法
現在、認知症を根本的に治す薬はまだありませんが、症状の進行を遅らせたり、BPSDを和らげたりするための薬が使用されています。
- コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン):アルツハイマー型・レビー小体型認知症に用いられ、認知機能の低下を緩やかにします。
- メマンチン:中等度〜高度のアルツハイマー型認知症に使用され、興奮や攻撃性の改善にも効果が期待されます。
- その他:抑うつ・不眠・不安などのBPSDに対して、抗うつ薬や睡眠薬などが使用されることがあります。
非薬物療法
薬に頼るだけでなく、日常生活のなかでの活動や関わりも認知症のケアにおいて重要です。
- 回想法(昔の写真や音楽を使って記憶を引き出す)
- 音楽療法・アート療法
- 運動療法(ウォーキング・体操など)
- 認知リハビリテーション
生活環境の調整
住み慣れた環境を整えることも大切なケアです。転倒を防ぐ安全な住環境の整備、規則正しい生活リズムの維持、適切な声かけや接し方の工夫が、本人の安心感とQOLの向上につながります。
ご家族・介護される方へ
認知症のケアは、ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても大きな負担となることがあります。「同じことを何度も聞かれる」「目が離せない」「どう接したらよいかわからない」と悩まれているご家族は少なくありません。そのような気持ちは当然のことであり、決して恥ずかしいことではありません。
ケアに疲れを感じたときは、ひとりで抱え込まずに専門家へご相談ください。また、介護保険サービス(デイサービス・訪問介護・ショートステイなど)や地域包括支援センターなどの社会資源を積極的に活用することで、介護の負担を分かち合いながら、より長く在宅での生活を続けることができます。当クリニックでも、介護サービスや支援機関への橋渡しについてご相談をお受けしています。
認知症の予防と生活習慣
認知症を完全に防ぐことは難しいですが、発症リスクを下げたり、発症を遅らせたりするために有効とされる生活習慣があります。
- 適度な有酸素運動:ウォーキングや水泳など、週3回以上の軽〜中程度の運動が脳の健康に効果的です。
- バランスの良い食事:野菜・魚・豆類・オリーブオイルを中心とした地中海式食事や、日本食が認知症予防に有効とされています。塩分・糖分・脂肪分の摂りすぎに注意しましょう。
- 社会的なつながりを保つ:趣味・ボランティア・地域活動など、人と交流する機会をつくることが脳の活性化につながります。
- 十分な睡眠:睡眠中に脳内の老廃物が排出されるため、質のよい睡眠は認知症予防に重要です。
- 生活習慣病の管理:血圧・血糖・コレステロールを適切にコントロールすることが、血管性認知症の予防につながります。
- 禁煙・節酒:喫煙と過度の飲酒は認知症リスクを高めます。
- 知的活動:読書・パズル・楽器演奏・語学学習など、脳を使う活動を続けましょう。
こんな症状があったら、早めにご相談ください
- 最近のことをよく忘れ、同じことを何度も聞いたり話したりする
- 財布や鍵などをどこに置いたか頻繁にわからなくなる
- 日付や曜日、今いる場所がわからなくなることがある
- 料理・家事・仕事などで段取りが踏めなくなった
- 以前できていたことができなくなった
- 性格や行動に変化があり、家族が心配している
- 実際にはいないものが見えると言う
新宿よりそいメンタルクリニックへのご相談
「親の様子がおかしい気がする」「自分の記憶力が心配」「認知症なのかどうか知りたい」――そのような思いをお持ちの方は、ぜひ一度、新宿よりそいメンタルクリニックへご相談ください。
当クリニックでは、認知機能のスクリーニング検査(HDS-RやMMSEなど)を含む初期評価を行い、認知症の早期発見・早期対応をサポートしています。精密検査や専門的な治療が必要な場合は、専門医療機関へ適切にご紹介しますので、「どこに相談すればよいかわからない」という方も安心してお越しください。
ご本人だけでなく、介護に不安を感じているご家族の方のご相談も歓迎しています。おひとりで悩まず、まず一歩、当クリニックのドアを叩いてみてください。皆さまに寄り添いながら、一緒に考えていきます。