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突然襲ってくる動悸や発汗、強い不安や恐怖感によって、自分は「不安障害」なのではないかと心配になる方もいるのではないでしょうか。不安障害は複数の種類に分かれており、それぞれの症状にあわせたアプローチが大切です。
この記事では不安障害の種類や原因、治療方法などについてご紹介します。不安障害の知識を深められれば、自分がどの症状に当てはまっているのか、どの治療法をすべきなのかが明確となるでしょう。
不安障害とは?
不安障害とはどのような状態を指すのでしょうか。ここでは不安障害についてと、通常の不安やうつ病とはどのような違いがあるのかについて説明します。
過剰な不安によって生活に支障が出てしまう障害のこと
不安障害とは、精神的な不安の気持ちが過剰となり、心身や行動にさまざまな影響をおよぼす精神疾患のことです。動悸や呼吸困難などの症状が現れ、場合によっては日常生活にも支障をきたす恐れもあります。症状の程度は人によって大きく異なり、ほかの精神疾患と区別もしにくいため、明確に判断するには医師による診断が必要です。
また、不安障害の有病率の比率は女性と男性で2:1といわれており、とくに思春期や青年期に発症しやすい傾向にあります。
不安障害と不安の違い
不安とは、漠然とした恐怖や危機感を覚えたときに生じる感情です。不安の気持ちを持つと、緊張したり心臓がドキドキしたりなどの症状が現れます。これらの症状は人が生きるために働く防衛反応のようなものなので、わたしたちにとっても正常な感情といえるでしょう。
一方で、不安障害とは不安の感情が本来の限度を超えている状態を指します。どちらも同じ感情から生まれるものですが、不安障害は不安の延長線上にあることをおさえておきましょう。
不安障害とうつ病の違い
うつ病とは、過度なストレスや脳内物質である「セロトニン」が減少することで起こるといわれています。セロトニンとは精神を安定させる働きを持っており、「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。このセロトニンの分泌量が低下すると精神が不安定となり、うつ病をはじめとした精神疾患につながるのです。
うつ病になると1日中憂うつな気分になる、イライラしやすくなる、集中力が散漫になるなどの症状が現れます。不安障害の症状と異なる面もありますが、まったく別の病気というわけではありません。不安障害もセロトニンの減少が原因で発症することもあるため、どちらの病気も密接な関係にあるといえるでしょう。実際に、うつ病と不安障害の両方をともなう場合もあります。
あなたは不安障害?チェックシートで確認してみよう
自分が不安障害なのかわからない方のために、チェックシートで当てはまる症状があるか確認してみましょう。
上記に当てはまる項目が多いほど、不安障害の可能性が高まります。ただし、チェックシートで不安障害の有無を明確に判断できるわけではないので、正確な診断を受けるためには医師に診てもらう必要があります。
不安障害の種類と症状
不安障害には複数の種類に分かれています。ここでは以下の不安障害について紹介します。
ここではそれぞれの種類の特徴や症状について詳しくみていきましょう。
パニック障害
パニック障害とは、前触れもなく急に強い不安を感じるようになる状態です。パニック障害でみられる症状は以下の通りです。
- 「死んでしまう」と思うほどの恐怖感、不安感
- めまい
- 吐き気
- 息切れ(過呼吸)
- 手足の震え
- 胸の圧迫感、不安感
これらの症状は「パニック発作」という形で、頻繁かつ短時間の間に起こる傾向にあります。何度もパニック発作を起こしていると、普段の状態でも「また発作が起こったらどうしよう」という不安感が強くなります。その結果1人になったり、人が多い場所にいたりすることに恐怖を感じる「広場恐怖」をともなうケースも珍しくありません。
特定の恐怖症
恐怖症とはその方の体質、環境から受けたストレスなどがきっかけで起こる症状です。恐怖症のある方は、特定の状況に対して強い不安感や恐怖を感じるようになります。「先端恐怖症」や「高所恐怖症」などがわかりやすい例で、聞いたことがあるといった方もいるでしょう。恐怖症のきっかけとなる対象は、以下のようなタイプに分かれます。
- 動物型:犬や猫、虫など
- 自然環境型:高所、雷など
- 血液血液・注射・外傷型:針や手術など
- 状況型:飛行機、エレベーター内など
1から3のタイプは小児期で引き起こされることが多く、4の状況型は成人期に発症しやすいといわれています。
強迫性障害
強迫性障害とは、自分でも意味がないとわかっていても、特定の行為や思考をやめられずに繰り返してしまう状態のことです。強迫性障害には、以下の3種類の症状があります。
- 強迫思考
- 強迫行為
- 強迫性恐怖
強迫思考とは、必要がないことでも特定の考えが繰り返し浮かんでくる症状です。たとえば、外出の際にガス栓の閉め忘れや、鍵のかけ忘れなどを過剰に心配してしまう状態が当てはまります。
強迫行為とは、特定の行動をしないと気が済まない状態のことです。「決まった順序で外へ出なければいけない」「何度も鍵を閉めたか確認しないと気が済まない」などがあげられます。3つ目の、ある特定の人やものに対して過剰な恐怖を感じる状態が強迫性恐怖です。
全般不安障害
全般不安障害とは、日常生活のさまざまな場面で不安を感じてしまう状態のことです。特別な状況に限られたものではなく、どの場所でも関係なく漠然とした不安が生じるのが全般不安障害の特徴です。不安は長期間続くことが多く、場合によっては半年以上継続するケースもあります。全般不安障害が起きたときの症状は以下の通りです。
- 手の震え
- 集中力の散漫
- イライラ
- 疲れやすい
- 発汗
- 不眠
- 注意障害
このような症状が慢性化すると、その方の個性として定着してしまう恐れもあります。
社会不安障害
社会不安障害(社会恐怖)とは、人前で緊張した姿を他人に非難されないか不安になる状態です。人と話したり、集団のなかにいたりするときに発症し、強い恐怖感や苦痛を感じてしまいます。症状が強いとパニック発作を起こすことがあり、その後「自分は人としての価値がない」と自己嫌悪におちいる場合もあるでしょう。
社会不安障害を抱えている方は他人の視線を強く気にする傾向にあるため、会話や大人数いる場所を避けようとします。10代の半ばでの発症が多く、その後も慢性的に症状が続きますが、成人になった段階で軽快することもあります。
不安障害を引き起こす原因
不安障害を引き起こす原因には以下があげられます。
- 身体的な原因
- 精神的な原因
- その他の原因
ここではそれぞれの不安障害の原因について詳しく説明します。
身体的な原因
病気をはじめとした身体的な変化が原因で、不安障害を引き起こす場合があります。とくに心不全や喘息など、身体的な不快感が現れる病気は不安感が強くなる原因となるでしょう。
病気だけでなく、治療のために服用する薬が原因で不安障害となるケースもあります。これは服薬後の副作用、または中止した際の離脱症状によって引き起こされるものです。その他にも、アルコールやカフェインの摂取によっても不安を誘発する可能性もあります。病気や薬によって不安を感じるのは自然な反応ですが、その気持ちが過剰となっている場合は医師へ相談することをおすすめします。
精神的な原因
不安障害は、ストレスをきっかけとした精神的な異常によっても引き起こされます。以下の場面ではストレスを感じやすい方が多いといえるでしょう。
- 人前で話すとき
- 大勢の前で注目を浴びるとき
- 災害の被害にあったとき
ストレスの感じ方は人それぞれなので、不安が強くなる状況については明確な基準はありません。自分がどの場面で不安感が強くなるのかを把握したうえで、どのような対処法をとればいいかを考えることが大切です。
その他の原因
その他の不安障害の原因は以下の通りです。
- 環境的な問題
- 遺伝的な問題
これまで育ってきた環境が原因で身体的・精神的な問題につながり、やがて不安障害となるケースもあります。人間関係が大きく変化したり、命に関わるような出来事があったりした場合、それがきっかけで生じることもあるでしょう。
また、不安障害は遺伝的な問題も関係しているとされています。研究によると、不安障害の既往歴を持った家族がいる場合、その子どもの遺伝する確率は30〜50%という報告があります。
このように、不安障害の原因は1つだけではありません。さまざまな要素が絡み合いながらはじめて発症するものだと考えられています。
不安障害の治療法
不安障害の治療法として代表的なものが、「薬物療法」と「精神療法」の2種類です。ここではそれぞれの治療法について詳しく説明します。
1.薬物療法
薬物療法とは、その方の症状にあわせた治療薬を使用して、不安障害の改善を目指す方法です。治療薬として一般的に使用されているのが、不安や緊張などを軽減する効果が期待できる「抗不安薬」です。症状が強い場合は、統合失調症やうつ病などの病気で処方される「抗精神病薬」を使用するケースもあります。
不安障害の種類によって特徴が異なるので、症状にあわせた治療薬の服用が重要です。また、治療薬は乱用すると依存症を引き起こす恐れがあるので、1日の適量は必ず守りましょう。
2.精神療法(心理療法)
精神療法とは、交流によってその方の心理面に働きかける治療法です。カウンセラーとのやり取りを通して精神的な問題の解決をサポートし、抱えている悩みを軽減させるのがおもな目的です。不安障害の方に対しては、「認知行動療法」や「暴露療法(エクスポージャー)」などを行います。ここでは、それぞれの精神療法の内容について説明します。
2-1.認知行動療法
認知行動療法とは、その方の考えや行動を見直して、物事に対する偏りのあるとらえ方を変えていく治療法です。たとえば、「挨拶をしたのに、そっけなく返された」という出来事があったとしましょう。このときに「対応が冷たくて悲しかった」と考えると、強いストレスとなって気分が落ち込んでしまいます。
ここでとらえ方を変えて「忙しそうだったから余裕がないのだろう」と考えれば、必要以上に落ち込むことがなくなるでしょう。このように、認知行動療法によって物事に対する視野を広げることで、不安な感情の軽減が期待できます。
2-2.暴露療法(エクスポージャー)
暴露療法(エクスポージャー)とは、不安を引き起こす刺激に対して徐々に触れる(暴露)ことで、ストレスの軽減を図る治療法です。不安の原因を意図的に避けていると、かえって不安障害が悪化したり、慢性化したりする恐れがあります。暴露療法によってあえて原因に触れることで、「実際は不安になる必要がない」という学びと安心感を得られるでしょう。
この治療の繰り返しによって、刺激に対して過剰なストレスを感じることなく日常生活を送れるようにしていきます。暴露療法は、特定の恐怖症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)、強迫性障害を抱えている方に対して有効とされています。
自分でできる不安障害の対策
不安障害に対して、自分でできる対策はあるのでしょうか。ここでは不安障害を軽減するためのセルフケア方法についてご紹介します。
生活習慣を整える
心身を健やかな状態にするには、生活習慣を整えることが大切です。以下のようなポイントを心がけて、生活習慣を整えてみましょう。
- 起床時間・就寝時間のリズムを一定にする
- 十分な睡眠をとる
- バランス良い食事をする
- 適度な運動をする
寝不足や生活リズムの乱れは体調を悪化させるだけでなく、メンタルを不安定にさせて不安障害を助長させる恐れがあります。なるべく十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。また、栄養バランスの確保と適度な運動は心身を整えることにつながります。
仕事の勤務形態を変更して心身を休める
仕事の影響によって精神的に不安定となっている場合は、勤務形態を変更して心身を休める時間を作ることが大切です。とくに在宅勤務や時差出勤、フレックスタイム制度などの活用がおすすめです。現在の職場でどのような勤務形態を採用しているかを就業規則で調べてみたり、上司に確認してみたりしましょう。
また、不安障害の程度が強い場合は有給休暇を消化したり、思い切って休職したりするのも1つの方法です。ムリに仕事を続けると余計にメンタルに悪影響が出るので、心身を休める時間を確保することを最優先に考えましょう。
ストレスを発散できる趣味を見つける
溜まっているストレスを発散できる趣味を見つけておくのもおすすめです。映画鑑賞や温泉、ドライブなど、何でもよいので自分が好きなことをできる時間を作ってみましょう。趣味以外にも、友人や家族などに自分の悩みを相談するのも不安を解消できるきっかけになります。
不安障害だと思ったら迷わず医療機関に相談しよう
不安障害にはさまざまな種類があり、症状によって分類されます。不安障害の原因は1つだけではなく、複数の要因が積み重なって発症するケースもあります。症状や原因は人それぞれ異なるので、明確な診断をするには医療機関での受診が必要です。自分が不安障害ではないかと心配になっている方は、1人で無理をせずにクリニックを受診して、適切な治療を受けましょう。
参考サイト・文献
・e-ヘルスネット|厚生労働省
・こころもメンテしよう〜若者を支えるメンタルヘルスサイト〜|厚生労働省
・ストレスがどうしてうつ病を起こすのか―うつ病の発症脆弱性の病態生理―
・「うつ状態」を知る・診る|日本医事新報社
・標準精神医学 第5版
・不安障害の遺伝研究|J-STAGE
・休養・こころの健康|厚生労働省
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