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不安障害

全般性不安障害とは?症状やほかの不安障害との違い、診断基準を解説

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当



普段の生活で漠然とした不安や心配が長期間続いている方は、もしかしたら「全般性不安障害」の可能性があります。全般性不安障害とは、さまざまな物事に対して不安や心配をしてしまい、日常生活に支障が出ている状態のことです。

この記事では、全般性不安障害で引き起こされる症状や診断基準、治療方法などについて解説します。自分が全般性不安障害かどうかを把握することで、スムーズな対処ができるようになるでしょう。全般性不安障害含む不安障害について詳しく知りたい方は、「あなたの症状は不安障害?具体的な原因や治療法、うつ病との違いを紹介」もあわせて参考にしてみてください。

全般性不安障害とはさまざまな不安を抱えている状態

全般性不安障害は「不安障害」の1つで、漠然とした不安や心配が長期間続き、身体的・精神的な症状が表れている状態のことです。不安や心配の対象は特定の物事ではなく、仕事や生活、人間関係などのさまざまなものに及ぶのが特徴です。このような漠然とした全体的な不安を「浮動不安」と呼ぶ場合もあります。

不安や心配が慢性化すると、さらに全般性不安障害による症状が定着してしまう恐れもあります。その場合、治療にかかる期間が長引く可能性もあるでしょう。

全般性不安障害の症状

全般性不安障害を発症すると、身体的・精神的な症状が表れます。それぞれの症状は以下の通りです。

【身体症状】

  • 筋肉の緊張
  • 発汗
  • 手指の震え
  • 心拍数の増加
  • 頭痛
  • めまい
  • 身体の寒気や火照り
  • 便秘・頻尿

【精神症状】

  • 漠然とした不安感
  • 集中力の低下
  • 不眠
  • 倦怠感
  • 気分の落ち込み
  • イライラ

このように、全般性不安障害になるとさまざまな症状を引き起こす可能性があります。これらの症状が悪化すると、普段の生活や仕事場面で支障をきたすこともあり、最悪の場合自殺の危険性もあります。

全般性不安障害を引き起こす原因

全般性不安障害の原因はさまざまですが、ストレスを引き起こすような出来事がきっかけで発症することが多いとされています。ストレスがかかる状況下で過剰な不安や心配が長期間続くことにより、全般性不安障害を発症してさまざまな症状が表れます。

また、子どもの頃に何度も不安になるような出来事が原因で、全般性不安障害を引き起こすケースもあるでしょう。このような背景があると、誰かと一緒にいても「1人にされるのでは」という恐れが強くなるため、発症につながりやすくなります。

全般性不安障害とほかの不安障害との違い

全般性不安障害は不安障害の1つで、そのほかにもさまざまな種類があります。それぞれの不安障害の特徴について、以下の表にまとめました。

パニック障害前触れもなく、急にめまいや激しい不安感などの症状が表れること。

パニック障害によって急に表れる反応を「パニック発作」ともいう。

パニック発作の恐怖から、特定の状況や場所を避けて生活範囲を制限してしまうこともある。

社会不安障害人前で誰かと話すことや、人混みのある場所に強い恐怖・苦痛を感じること。

これは人前で注目されたり、恥ずかしい思いをしたりすることに対して怖くなることがきっかけで発症するとされている。

そのほかにも人前で強い緊張感を覚える、顔が赤くなるなどの症状が表れる。

特定の恐怖症特定の状況や対象に対して強い不安や恐怖を感じること。

特定の恐怖症は動物型や環境型、外傷型などのさまざまなタイプに分けられる。

代表的な例としては「高所恐怖症」や「先端恐怖症」などが挙げられる。

強迫性障害特定の出来事に対して過剰に不安となり、必要のない行為をやめられない状態のこと。

「鍵の閉め忘れがないか気になって仕方がない」「手を何度も洗ってしまう」などがおもな例。

これらの行動は本人もおかしいと自覚しているが、それでもやめられないのが大きな特徴。

全般性不安障害はうつ病を併発することもある

全般性不安障害をはじめとした不安障害は、うつ病を併発することもあります。うつ病とは、さまざまなストレスの積み重ねによって、脳のエネルギーが不足した状態のことです。うつ病になると、気分の落ち込みや意欲の低下などの症状が表れます。

うつ病の原因や症状は、不安障害に類似しているといえるでしょう。そのため、うつ病と不安障害はまったく別の病気というわけではなく、密接な関係があるのがわかります。

また、不安障害の70%はうつ病を併発しているとされています。不安障害とうつ病の併発を予防するためにも、「おかしいな」と感じたら早期に対処し、適切な治療をすることが大切です。

全般性不安障害の診断基準をチェックしてみよう

ここでは全般性不安障害を診断するための基準について見ていきましょう。国際的に用いられている「DSM-5」と呼ばれる、全般性不安障害の診断基準についてご紹介します。

【DSM-5の診断基準】

  1. 家族や健康、経済的状況など、2つ以上の活動や出来事について過剰な不安と心配を感じる
  2. 少なくとも直近の3カ月間、過剰な不安と心配が起こる日のほうが起こらない日よりも多い
  3. 不安と心配だけでなく、以下の症状のうち1つ以上がともなっている
    1.不穏状態、緊張感または過敏
    2.筋肉の緊張
  4. 不安と心配だけでなく、以下の行動のうち1つ以上がともなっている
    1.否定的な結果が起こるような活動や出来事を避けようとする
    2.否定的な結果が起こるような活動や出来事に対して、長い時間をかけて準備している
    3.心配のあまり、行動や物事の決定を長期間延期する
    4.心配のあまり、繰り返し安心や安全を求める
  5. 普段の生活や仕事、ほかの重要な領域で、強い苦痛と障害を引き起こしている

これらの項目に当てはまっている場合、全般性不安障害の可能性があります。ただし、症状は人によって異なるので、診断基準だけで明確な判断ができるとは限りません。はっきりとした診断を受けるためには、医療機関の受診が必要です。

全般性不安障害の治療方法

全般性不安障害と診断された場合、「薬物療法」や「精神療法」などによって治療を進めていきます。ここではそれぞれの治療方法について解説します。

薬物療法

薬の服用によって症状を和らげ、セルフコントロールをおこないやすくする方法が薬物療法です。薬物療法では、おもに「抗不安薬」と「抗うつ薬」と呼ばれる薬を使用して、症状の軽減を図ります。それぞれの薬にも複数の種類に分かれており、副作用が少ないものや即効性のあるものなどさまざまです。

また、症状によっては睡眠薬や漢方薬など、ほかの薬も併用することもあります。薬物療法の継続で異常が見られたら、すぐに医師に相談することが大切です。

精神療法(心理療法)

対話やワークなどを通して、心理面に働きかける方法が精神療法です。全般性不安障害をはじめとした不安障害では、精神療法の1つである「認知行動療法」が多く用いられています。認知行動療法とは、ある出来事や物事に対するとらえ方(認知)を見直して、症状の改善を目指す方法です。

不安や恐怖などの感情が強くなっていると、物事をネガティブにとらえやすくなり、その考え方が定着してしまうでしょう。認知行動療法では、そのような極端なとらえ方を一緒に見直していきます。そして、幅広いとらえ方を定着させることで、物事をポジティブに変換させて不安の感情の軽減を図ります。

全般性不安障害の予防・改善のために心がけたい5つのポイント

全般性不安障害を予防・改善するためには、日常生活で以下の5つのポイントを心がけることが大切です。

  1. 生活習慣を整える
  2. 気晴らしやリラックスできる方法を身につける
  3. カフェインやアルコールを摂取し過ぎない
  4. 勤務時間や勤務形態を調整する
  5. 無理をせずに休む

ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

1.生活習慣を整える

1つ目は、生活習慣を整えることです。心身を健康に保つためには、規則正しい生活習慣を送ることが重要です。生活習慣の乱れは体調の悪化やメンタルの低下につながるため、全般性不安障害だけでなくさまざまな病気の発症リスクとなります。

生活習慣を整えるには、以下のようなポイントが大切です。

  • 起床・就寝時間を一定にする
  • 十分な睡眠時間を確保する
  • 適度な運動をする
  • 規則正しい時間に食事をする

このような規則正しい生活習慣を送り、不安やストレスに強い心身を作りましょう。

2.気晴らしやリラックスできる方法を身につける

2つ目は、気晴らしやリラックスできる方法を身につけることです。気晴らしやリラックスができないと、不安やストレスが少しずつ溜まり、全般性不安障害を発症・悪化させてしまいます。

気晴らしの方法は趣味や友人との会話など、その人が楽しいと感じるものであればなんでもかまいません。リラックス方法は入浴や深呼吸など、不安を感じたときにすぐに実践できるものがおすすめです。ぜひ自分にあった不安やストレスの解消法を見つけてみましょう。

3.カフェインやアルコールを摂取し過ぎない

3つ目は、カフェインやアルコールを摂取し過ぎないことです。カフェインやアルコールの摂取は、「交感神経」を必要以上に優位にしてしまう恐れがあります。

交感神経とは身体の状態をコントロールする「自律神経」の1つで、身体を活動させるときに優位に働きます。この交感神経が過剰に優位になると、自律神経のバランスが乱れて精神的にも不安定となるのです。

自律神経のリズムを整えるためにも、カフェインやアルコールの摂り過ぎには十分に注意しましょう。特に寝る前のカフェインやアルコールは寝つきが悪くなる原因となるので、夜の摂取は控えることが大切です。

4.勤務時間や勤務形態を調整する

4つ目は、勤務時間や勤務形態を調整することです。なかには仕事が原因で、不安やストレスが強くなっている方もいるのではないでしょうか。そのような方は、働き方を変えることで不安やストレスを軽減できる可能性があります。

働き方を変える方法としては、以下の通りです。

  • 在宅勤務に切り替える
  • 時差出勤をする
  • フレックスタイム制度を活用する
  • 時短勤務に切り替える

このような方法で、勤務時間や勤務形態の調整を検討してみましょう。

また全般性不安障害と診断されている、あるいはその恐れがある場合は、そのことを上司に伝えるのも大切です。職場に相談して協力体制を得られれば、働きやすい環境作りをサポートしてくれる可能性があります。なるべく心身に負担をかけないようなワークスタイルを心がけてみましょう。

5.無理をせずに休む

5つ目は、無理をせずに休むことです。仕事の勤務時間や勤務形態を調整しても症状がよくならない場合は、休養に専念することも大切です。不安やストレスを引きずりながら仕事を続けるよりも、一度療養をした方が効果的な場合もあります。

有給休暇の日数が残っていれば、それを活用して長期的な休みをとるのがおすすめです。また、それ以上に休養が必要な場合は、休職するのも1つの手段です。休職の条件や期間は職場によって異なるので、あらかじめ就業規則を確認する、上司に相談するなどしてみましょう。

全般性不安障害と思ったら医療機関に相談を

全般性不安障害は不安障害の1種であり、さまざまな物事に対して漠然とした不安や心配が続くとされています。全般性不安障害が続くとうつ病を併発する可能性もあるので、早期に治療することが大切です。

今回の全般性不安障害に関する症状や診断基準を参考にして、自分に当てはまっているか確認してみましょう。「もしかしたら全般性不安障害かも……」と感じたら、医療機関に相談してみてください。

参考サイト・文献
標準精神医学 第5版 野村 総一郎、 樋口 輝彦、尾崎 紀夫、朝田 隆 編集 医学書院、2012
「わが国の全般不安症の現状と課題」大坪 天平 不安症研究,14(1), 2–11, 2022
「全般性不安障害と診断された患者への認知行動的介入」金 外淑 村上 正人 松野 俊夫 行動療法研究 第32巻 第2号
厚生労働省|パニック障害 – e-ヘルスネット
厚生労働省|不安障害 – こころの病気について知る
NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター|社交不安障害
厚生労働省|強迫症 / 強迫性障害 – e-ヘルスネット
日本医事新報社|不安障害に伴う「うつ状態」
こころの耳|厚生労働省 – 1 うつ病とは
「不安障害」金 吉晴 日内会誌 102:183~189 2013
慶應義塾大学病院|不安障害(不安症)
厚生労働省|認知行動療法 – e-ヘルスネット
厚生労働省|休養・こころの健康
厚生労働省|快眠と生活習慣 -eヘルスネット
厚生労働省|自律神経失調症 -eヘルスネット



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藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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