WEB予約(24時間受付)
Line予約(24時間受付)
コラム全般

不眠症には女性ならではの原因がある!眠れないときの対処法も解説

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当



「悩みやストレスを感じていないのに眠れない」
「更年期のせいか眠りが浅い」

睡眠について上記のような悩みを感じている女性の方もいるのではないでしょうか?

睡眠の悩みを抱えるのは男性より女性が多いと言われています。あなたの不眠には女性ならではの原因が関係しているかもしれません。

この記事では女性が不眠になる原因や、不眠で悩んだときの対処法を分かりやすく解説します。不眠で悩んでいる女性の方はぜひ参考になさってください。

女性の不眠の3つの原因

原因がはっきりしないのに眠れない場合、女性ならではのホルモンバランスが関係しているかもしれません。ここでは女性の不眠とホルモンバランスの関係にフォーカスし、不眠になりやすい時期を具体的に解説します。

1.生理前のホルモンバランス変化

生理が近づくと眠れなくなる場合、生理前のホルモンバランスの変化が原因かもしれません。生理前はホルモンの作用により一日の体温変化が少なくなり、睡眠に影響を与えると考えられるためです。

人間の体温は、活動が多い日中は高く、眠りにつく夜は低くなることが分かっています。体から熱が放出され脳の温度も下がり、眠りやすくなると言われています。

生理前は体温が高く、女性ホルモンの働きで日中と夜の体温変化もなだらかです。良い睡眠につながる体温低下が起こりにくいため、生理前は不眠につながりやすいと言われています。

2.出産後のホルモンバランス変化

出産によるホルモンバランスの変化も不眠の原因になる可能性があります。出産を境にホルモンバランスが急激に変化するため、睡眠にも影響が出ると考えられているためです。

出産後の不眠は産後うつとの関連があると言われています。産後うつになると、不眠のほか涙が勝手に出るなどの症状が表れます。

産後のホルモンバランスと、赤ちゃんのお世話による不規則な生活が重なり、不眠を引き起こす可能性もあるでしょう。

3.更年期のホルモンバランス変化

40代以降の不眠には、更年期のホルモンバランス変化が関係しているかもしれません。更年期に生じるさまざまな症状が不眠を引き起こすと考えられています。

更年期では人によって症状がさまざまです。急にのぼせる・汗をかくなどの症状が気になったり、心臓がドキドキして眠れなくなったりする可能性があります。これらの症状のため、更年期の女性の半数が不眠になるとも言われています。

不眠を引き起こすほかの原因

女性の不眠を引き起こすのは、ホルモンバランスのほかにもさまざまな原因があります。ここでは、不眠を引き起こすほかの原因について具体的に解説します。

ストレス

ストレスは不眠の大きな原因と言われています。厚生労働省の調査から、ストレスを感じている女性は78%と多いことが分かります。ストレスを感じる主な原因は以下の通りです。

  • 自分や家族の健康状態、病気や介護
  • 収入・家計・借金など
  • 自分の仕事
  • 家族との人間関係
  • 家族以外との人間関係

女性が感じる悩みは、自分や家族のこと、仕事の悩みなど多岐にわたっていることが分かります。家庭と仕事のどちらも大切だからこそ、ストレスを感じやすいと言えるでしょう。

こころや体の病気

こころや体の病気が原因で不眠になるケースも見られます。うつ病などの精神疾患は不眠を伴うことが多いため要注意です。

体の病気にも不眠を引き起こすものがあります。病気による痛みやかゆみなどで、睡眠が妨げられるためです。不眠との関連が考えられる病気は以下の通りです。

不眠につながる症状主な病気
胸の苦しさ高血圧・心臓病
咳や発作呼吸器疾患
頻尿腎臓病・前立腺肥大
痛み糖尿病・関節リウマチ
かゆみアレルギー疾患

上記のような症状が気になって眠れない場合は、病気が隠れている可能性があります。不眠を解消するため、根本にある病気の治療が必要になるでしょう。

睡眠リズムの乱れ

不眠のきっかけに睡眠リズムの乱れが考えられます。生活の変化により睡眠リズムが乱れることで不眠になる可能性があります。

たとえば夜間勤務をきっかけに不眠になるケースが考えられます。人間の体は体内時計により規則正しいリズムで睡眠がとれるようコントロールされています。しかし、夜間勤務のある仕事では夜起きていなければなりません。睡眠リズムがずれてしまうため、不眠の引き金になってしまうのです。

仕事以外では、育児や介護が不眠のきっかけになる可能性があります。家族の世話で夜起こされると、熟睡できなくなってしまうでしょう。

睡眠環境が悪い

睡眠環境の悪さも不眠の原因になります。眠りに適さない環境では、寝つきが悪くなったり途中で目が覚めたりする可能性があるためです。

睡眠に影響を与える原因のひとつが温度や湿度です。室温や布団の中の温度が高くても低くてもいけません。眠る前の体温調節がうまくいかず、寝つきの悪さにつながります。

そのほか、音や照明、枕の高さやマットレスの硬さも睡眠に影響すると言われています。より良い睡眠のため、寝室の環境を見直してみましょう。

不眠で悩む女性は多い

成人の3人に1人が一時的な不眠の悩みを抱え、眠りの悩みは女性に多いと言われています。その中の1割程度が慢性的な不眠に移行する恐れがあり、注意が必要です。

不眠で悩む女性は男性より多い傾向です。厚生労働省の調査では、女性の睡眠時間は5時間未満が11.1%でした。男性の7.3%と比べ、睡眠時間の短い女性が多いことが分かります。

短い睡眠時間でも日中の活動に影響しなければ問題ありません。満足に眠れず、日中も眠気を感じるようなら睡眠リズムを整えるための対策が必要でしょう。

不眠症の診断基準

眠れない状態が長く続き、日常生活に影響が出るようなら不眠症になっているかもしれません。診断基準に照らし合わせて、自分の状態をチェックしてみましょう。不眠症の診断基準は以下の通りです。

  • 夜間の不眠が続く
  • 日中に精神や体の不調を感じ生活の質が低下する

不眠症の特徴は、夜の不眠と日中の体調不良です。この2つが週に3日以上あり、3カ月以上続く場合は慢性不眠症と診断されます。慢性不眠症になると治療が必要になる可能性もあるでしょう。

不眠症の4つの分類

不眠症は眠りの傾向により4つのタイプに分類されます。自分の眠りの悩みがどのタイプに当てはまるのか確かめてみましょう。ここでは、不眠症の分類ごとに分かりやすく解説します。

入眠障害

寝つきが悪い状態は入眠障害と呼ばれます。眠るため布団に入ってもすぐ眠れず、逆に目が覚めてしまうのが特徴です。「眠らなければ」という気持ちと葛藤する方もいるでしょう。

中途覚醒

寝ている途中で目が覚めてしまう状態が中途覚醒です。入眠障害とは違い寝つけるのですが、数時間後に目が覚めてしまいます。夜中に何度も目が覚めるので、熟睡した感じが得られにくいでしょう。

早朝覚醒

朝早く目が覚めてしまう症状を早朝覚醒と言います。自分が起きたい時間よりも早く目が覚めるのが特徴です。再び寝ようと思っても眠れず、睡眠不足になってしまう場合もあるでしょう。

熟眠障害

眠っている時間は長いのに熟睡感がないのが熟眠障害です。眠りが浅いためぐっすり眠った感じが得られにくいのが特徴です。睡眠時間は足りているはずなのに、日中の眠気が強いなど支障が出るなら熟眠障害かもしれません。

不眠で悩んだときの対処法

眠れなくて悩んだとき、自分でできる対処法を試してみましょう。睡眠の質が良くなり、不眠が解消されるかもしれません。ここでは、不眠で悩んだときの対処法について具体的に解説します。

睡眠日誌をつける

不眠で悩んだら、睡眠日記をつけてみましょう。睡眠パターンが分かると、不眠対策が立てやすくなります。

睡眠日誌は、時刻などを忘れないよう朝起きたときに記録するのがおすすめです。記録する主な内容は以下の通りです。

  • 布団に入った時刻
  • 入眠時刻
  • 起床時刻
  • 眠りの状態
  • 日中の仮眠や横になった時刻
  • 日中の眠気・体調

女性の場合ホルモンバランスも不眠の原因になるため、生理周期も記録しておくと良いでしょう。

睡眠日誌を続けて2週間程度記録すると、自分の睡眠パターンが見えてきます。睡眠の悩みに応じた対策を考えてみましょう。たとえば、布団に入ってから眠るまで時間がかかるなら、布団に入る時間を遅くするのもひとつの手です。

メリハリのある生活を送る

不眠解消にはメリハリのある生活が効果的です。日中は活発に動く、夜はリラックスして過ごすなど、生活リズムを作ると眠りにつきやすくなるでしょう。

質の良い眠りには、規則正しい生活リズムが大切です。一日中だらだら過ごしていては、体が疲れず夜も眠れなくなってしまいます。自然に眠れるよう、日中はアクティブに過ごしましょう。

朝は決まった時間に起床し、しっかり朝食を食べると心身の目覚めに効果的です。適度な運動を心がけ、夜更かしをせず眠りましょう。

好きなことで気分転換する

趣味など自分の好きなことで気分転換するのも不眠対策におすすめです。不眠の原因となるストレスを解消する効果が期待できます。

不眠の原因の多くはストレスと言われています。仕事や家庭のストレスなど、すぐに解決できない問題もあるでしょう。根本的な解決にこだわると、悩みが深くなり余計にストレスを感じるかもしれません。

視点を変えて、ストレス解消をしながら乗り切るのもひとつの方法です。自分の好きなことに没頭し、嫌なことを考えなくてもよい時間を増やしましょう。うまくストレス解消できれば、睡眠の悩みが良い方向に向かうかもしれません。

つらいときは人に頼る

自分の置かれている状態がつらくて不眠になってしまったら、人に頼るのもよい方法です。悩みに応じて頼れる人を探してみましょう。

たとえば、自分や家族の健康が気になるなら医師に相談してみましょう。介護問題を抱えているなら、地域包括支援センターに相談すると利用できる福祉サービスが見つかるかもしれません。

手を借りることで負担やストレスが減り、眠れるようになる可能性があります。眠れないほど頑張りすぎないようにしましょう。眠れない日もあると割り切る

慢性的な不眠にならないよう、眠れない日もあると割り切ることも大切です。不眠を気にしすぎると、慢性的な不眠症を引き起こす可能性があるためです。

強いストレスで起こる一時的な不眠は、多くの方が経験すると言われています。自然に落ち着くはずの不眠でも、睡眠状態を気にするあまり眠れないことが不安になってしまう方もいます。この状態を不眠恐怖と言い、不眠が長引く原因になることもあるのです。

眠れないときは一旦ベッドから離れてみましょう。読書などをしているうちに、自然に眠くなるかもしれません。夜の睡眠にこだわらず、短時間でも昼寝すると脳の疲れがとれ効果的です。

病気の可能性がないか病院を受診する

「心当たりがないのに眠れない」「セルフケアで不眠が解消されない」と悩む方は医師に相談してみましょう。不眠の背景になんらかの病気が隠れている場合も考えられるためです。

たとえばアレルギー疾患では、夜間の息苦しさやかゆみで眠れていない可能性が考えられます。治療で症状を抑えれば、ぐっすり眠れるようになるでしょう。更年期障害かどうか気になる場合は、婦人科で相談し検査や治療を受けることをおすすめします。

不眠につながる体の病気が見つからなければ、精神科や心療内科に相談しましょう。症状に合わせて、睡眠リズムを取り戻すための薬物治療がおこなわれます。

不眠症を疑うときは精神科や心療内科に相談しよう

不眠で悩む成人は3人に1人と多く、女性のほうが多いと言われています。一時的な不眠を放置すると慢性不眠症になる可能性があるため気をつけなければなりません。

不眠の主な原因はストレスで、一時的な不眠を経験する方も多いと考えられています。そのほか、病気や生活リズムの乱れ、睡眠環境の悪さも不眠の原因です。女性の不眠は生理周期や更年期など、ホルモンバランスが原因で起こる可能性も考えられます。

不眠対策しても眠れない場合は、精神科や心療内科に相談してみましょう。不眠には睡眠薬での投薬治療がおこなわれます。医師が不眠の状態に合わせて、適切な薬を選択するので安心です。

眠りの質が良くなれば、日中の不調も感じなくなり気持ちも楽になります。不眠に対する適切な治療を受け、睡眠の悩みを解消しましょう。

参考サイト・文献
こころの情報サイト|不眠症(睡眠障害)
・​​NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター|2021年度市民公開講座~女性特有の睡眠の悩み~①
NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター|睡眠日誌について
e-ヘルスネット(厚生労働省)|女性の睡眠障害
e-ヘルスネット(厚生労働省)|不眠症
e-ヘルスネット(厚生労働省)|眠りのメカニズム
e-ヘルスネット(厚生労働省)|睡眠・覚醒リズム障害
e-ヘルスネット(厚生労働省)|快眠のためのテクニック
厚生労働省|令和4年度 健康実態調査結果の報告
厚生労働省|健康づくりのための睡眠指針2014

 



藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

関連記事