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パニック障害

パニック障害の症状は3つに分類される|発作が起きた際の対処法も紹介

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当



「なんの前触れもなく強い不安に襲われる」「急に胸がドキドキする」といった症状があり、パニック障害ではないかとお悩みの方もいるのではないでしょうか。

急に表れる強い不安や動悸、息苦しさなどは、パニック障害による症状の可能性があります。

本記事では、パニック障害の症状を3つに分けて解説します。さらに、パニック発作出現時の対処法についてもまとめました。

「この症状はパニック障害なの?」「パニック発作が起きたときの対処法は?」とお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

なお、パニック障害の原因や治療法については、「パニック障害とはどんな病気?回復のためには早期治療が大切」でも詳しく解説しています。

パニック障害は「不安障害」のひとつ

パニック障害は不安障害のひとつであり、何の前触れもなく強い不安に襲われ、動悸や息切れなどの症状がみられる状態のことを指し、「パニック発作」ともいわれます。パニック発作が長く続いたり、頻回に表れたりすることで、日常生活や社会活動に支障が生じてしまうことも少なくありません。

不安障害は思春期や青年期に起こりやすく、男性に比べて女性の生涯有病率は2倍ほど高いといわれています。

パニック障害は不安障害の1つとして分類されます。ほかにも不安障害には以下の種類があります。

  • パニック障害
  • 社会不安障害(社会恐怖)
  • 強迫性障害
  • 全般性不安障害
  • 恐怖症

本記事では、上記4つのなかの「パニック障害」について詳しく解説します。

パニック障害の症状は3つに分けられる|チェックしてみよう

パニック障害とは、強い不安や恐怖などが突然表れて、同時に動悸や息切れなどの身体症状や精神症状を伴います。

突然起こる発作により「また発作が起きたらどうしよう」「同じ場所に行ったら発作が起きてしまうのでは」と、強い恐怖心を抱くことがあります。その後、再び発作が起きる状況や場所を避けようとする行動がみられ、生活範囲を制限し日常生活へ影響をきたす方も少なくありません。

パニック障害の症状は、以下の3つに分類されます。

  • パニック発作
  • 予期不安
  • 広場恐怖

それぞれの症状について、詳しく解説します。

1.パニック発作

パニック発作は何の前触れもなく、突然動悸や息苦しさ、めまいなどの症状が表れる状態のことを指します。発作は10分以内にピークに達し、数分ほどで落ち着くことが多いとされています。しかし、ピークの頃には「このまま自分は死んでしまうのでは?」などの非常に強い不安や恐怖に襲われ、病院へ駆け込む方も少なくありません。

パニック発作の症状は以下の通りです。

  • 動悸
  • 心悸亢進、または心拍数の増加
  • 発汗
  • 身震い、または震え
  • 息切れ感、または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛、または胸部の不快感
  • 嘔気または腹部の不快感
  • めまい感やふらつき
  • 頭が軽くなる感覚、または気が遠くなる感覚
  • 寒気、または熱感
  • 異常感覚(感覚麻痺、またはうずき感)
  • 現実感消失(現実ではない感覚)
  • 離人感(自分自身から離脱している感覚)
  • 抑制力を失う、または“どうにかなってしまう”ことに対する恐怖
  • 死ぬことに対する恐怖

パニック発作では、上記の身体症状及び精神症状が4つ以上表れるといわれています。

発作の頻度には個人差があり、数カ月にわたり連日発作を起こす人もいれば、1回の発作が数日続いた後、発作のない期間が数週間から数カ月続く人もいます。

パニック発作については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでご参照ください。

2.予期不安

予期不安は、パニック発作が繰り返し起こることで、また発作が起こるのではないかという不安や恐怖心を抱くことです。この予期不安は、パニック発作を起こす人のほとんどが経験しているといわれています。

予期不安の症状は、発作を起こすこと自体への不安と、発作によって起こる別のことへの恐怖の2パターンがあります。発作によって生じる別のこととは、以下のような恐怖です。

  • 死んでしまうかもしれない
  • 病気なのかもしれない
  • 気を失ってしまうかもしれない
  • 事故につながるかもしれない
  • 誰も助けてくれないかもしれない
  • 発作が起きても逃げられないかもしれない
  • 人前で恥をかいてしまうかもしれない
  • 他人に迷惑をかけてしまうかもしれない

パニック発作を繰り返すごとに予期不安が強くなり、症状が悪化してしまう恐れがあります。

3.広場恐怖

広場恐怖とは、予期不安を強く感じることで、その場所や状況を避けようとする行動のことを指します。以前発作を起こしたことのある場所だけではなく、すぐに助けを求められそうにない場所や状況などにも恐怖心を抱くことがあります。

広場恐怖に陥りやすい場所や状況は、以下の通りです。

  • 交通機関(電車・飛行機・高速道路など)
  • 閉鎖空間(エレベーター・トンネル・映画館など)
  • 開放空間(市場・橋など)
  • 行列に並ぶ行為
  • 人混み
  • 一人での外出や留守番
  • 過去にパニック発作を起こした場所

多くの場所を避けるようになるため、外出が困難となり、社会生活に支障をきたすことも少なくありません。

パニック障害になりやすい人の特徴

パニック障害の原因は明らかになっておらず、さまざまな要因が考えられています。そのなかでも、遺伝性やストレスなどの外的要因が引き金となることもあります

パニック障害になりやすいとされる人の特徴は、以下の通りです。

  • ストレスや不安を感じやすい
  • 神経質
  • 内向的(内気な性格)
  • 他人の目を気にしやすい
  • 依存的
  • 幼少期の分離不安(虐待や両親の離婚など)
  • そのほかの精神疾患にかかった経験がある

上記は、パニック障害の原因となる要素と考えられていますが、何をきっかけに発症するのかには個人差があり、明確にはなっていません。

パニック障害の診断基準と受診の目安

「パニック障害はどのように診断されるの?」「どの症状がみられたら受診すべき?」と迷う方もいるかもしれません。

理由なく不意に起こるパニック発作に加えて、以下のいずれかが1カ月以上にわたり繰り返し起こっている場合は、早めに医療機関を受診しましょう

  • パニック発作がまた起こるのではないかという持続的な心配
  • 発作の結果(自制心や正気を失うなど)についての持続的な心配
  • パニック発作による行動の変化(発作の原因になりうる状況や場所を回避するなど)

また、パニック障害の診断基準としては、以下の「DSMー5」が用いられることが多いとされています。

A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。

注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる。

(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加

(2)発汗

(3)身震いまたは震え

(4)息切れ感または息苦しさ

(5)窒息感

(6)胸痛または胸部の不快感

(7)嘔気または腹部の不快感

(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ

(9)寒気または熱感

(10)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)

(11)現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)

(12)抑制力を失うまたは”どうかなってしまう”ことに対する恐怖

(13)死ぬことに対する恐怖

注:文化特有の症状(例:耳鳴り、首の痛み、頭痛、抑制を失っての叫びまたは号泣)がみられることもある。この症状は、必要な4つの症状の1つと数えるべきではない。

B.発作のうち少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1カ月(またはそれ以上)続いている。

(1)さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、”どうかなってしまう”)

(2)発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)

C.その障害は、物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)、または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心配疾患)によるものでない。

D.その障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖に対する社交的状況に反応して生じたものではない;限局性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない;心的外傷ストレス障害のように、外傷的出来事を想起させるものに反応して生じたものではない;または、分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない)。

※出典:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

なお、パニック発作が頻回に起きてつらい、日常生活や社会活動に支障を生じているなどの場合は、1カ月以内であっても早めに医療機関を受診するようにしてください

受診すべきか迷う場合は、厚生労働省の「こころの相談窓口」に相談してみるとよいでしょう。

パニック障害の治療法は主に2つ

パニック障害の治療は、主に以下の2つが選択されます。

  • 精神療法(心理療法)
  • 薬物療法

症状や状態に合わせて適切な治療法が選択されますが、精神療法と薬物療法の両方を併用することで、治療効果が高まることもあります。

パニック障害の治療の目的は、パニック発作の頻度と程度を減少させ症状を緩和し、行動の制限などを改善することです。予期不安や広場恐怖のある方には、薬物療法のみならず、発作が起きたときの心の準備や、苦手な場所を克服する練習としての精神療法が有効とされています。

それぞれの治療法を解説します。

治療法1.精神療法(心理療法)

パニック障害には、カウンセラーなどの医療者によるカウンセリング(精神療法)が効果的とされています。パニック障害には、「認知行動療法」や「暴露療法」が多く用いられます。

認知行動療法とは、考え方を見直し、苦手なものや場所に少しずつ慣れさせる治療法です。不安や恐怖に対処する方法を身につけることで、ストレスを軽減し、自信を取り戻す効果が期待できます。

一方で暴露療法とは、不安を感じる場所や状況を回避してしまう人に対して取り入れられる治療法です。回避せず不安に触れることで、「触れても大丈夫」との認識を持たせることを目的としています。不安な場面に慣れる練習をすることもあります。

治療法2.薬物療法

パニック障害では、精神療法に加えて薬物療法を併用することもあります。症状に合わせて、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが選択され、最近では「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」の抗うつ薬が使われることが多いといわれています。

しかし、薬には少なからず副作用が出る可能性があり、なかには依存性が高いものも。勝手に中断したり多用したりせず、医師の指示のもと正しく内服することが大切です。

不安障害の薬物療法に関しては、こちらの記事もご参照ください。

パニック障害の症状が出たときの対処法

パニック障害が出たら、まずは慌てず落ち着いて対応しましょう。発作はおおよそ10分以内には落ち着き、不安は軽減し自然に消えていきます。「死んでしまうのではないか」「どうにかなってしまいそう」という不安に駆られるかと思いますが、発作自体で死ぬことはありません。

この章では、パニック障害の症状が表れた際の対処法をご紹介します。

深呼吸を意識する

パニック発作が出現したときは、どこかに座り、深呼吸を意識しましょう。発作の際、動悸や息苦しさを感じると、呼吸が速くなり過呼吸に陥りやすくなります。ゆっくりと深呼吸することで呼吸が落ち着くと、自律神経が安定し、症状や気持ちが和らいできます。

なるべく焦らず、深呼吸することに意識を集中させるようにしましょう。

違うことを考える

発作の前触れとして動悸や不安が表れてきたら、まず気分転換するよう意識することが大切です。発作が起こりそうだなと感じたらまず違うことを考え、意識を別のところに向けましょう。

  • 好きな曲を聴く
  • アロマオイルを嗅ぐ
  • 冷たい水を飲む

上記のような方法で気分転換するのも有効です。効果的に気分転換するには、自分に合った方法を取り入れるのがポイントです。日頃から、自分が落ち着けるものを探しておくとよいでしょう。

親しい人の声を聞く

家族や友人・恋人など、親しい人の声を聞くと不安が和らぐことがあります。1人でいるときに不安を感じたら、親しい人に電話をして「大丈夫」と声をかけてもらいましょう。

そのためには、あらかじめ家族や友人などにパニック障害について話をして、理解してもらうことが大切です。

パニック発作が繰り返し起こる場合は医療機関を受診しよう

パニック障害とは不安障害のひとつで、急に表れる強い不安や動悸、息苦しさといったパニック発作を引き起こします。症状は大きく分けて3つあり、それぞれの状況にあった治療を受けることが大切です。

パニック発作が繰り返し起こる場合や、日常生活や社会活動に支障が生じている場合には、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。パニック障害について正しい知識を持ち、向き合いながら治療を受けることが克服への第一歩です。

参考サイト・文献
塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く|日本精神神経学会
不安障害|厚生労働省
パニック障害の症状|一般社団法人 うつ病センター
不安障害(不安症)|慶応義塾大学病院



藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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