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- 急に涙が出る
- なかなか眠れない
- 体がだるくて何も手をつけられない
最近こういった症状に悩んでいるといった方は、もしかしたら適応障害の可能性があるかもしれません。
適応障害とは、なんらかのストレスによって心身のバランスが崩れ、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態のこと。もし現在、心身の不調によって日常生活や社会生活に支障が生じているといった方は、適応障害を発症している可能性があります。
この記事では、適応障害について診断から経過まで詳しく紹介します。「もしかしたら、適応障害かも」とお悩みの方に向けて、セルフチェック表も用意していますので、参考にしてみてください。
適応障害とは
適応障害とは、何らかのストレスが原因で心身のバランスが崩れ、日常生活や社会生活に支障が生じた状態のことを指します。原因がはっきりしているのが特徴で、ストレス因の始まりから3カ月以内に発症し、ストレス因が取り除かれてから6カ月以上続くことはありません(ただし、ストレス因が続く場合には、適応障害が持続することもある)。
同じようなストレスの状況下にあっても、適応障害を発症する人とそうでない人がおり、個人のストレスへの耐性や感じ方が大きく影響していると考えられます。
近年、日本では適応障害の患者が増加傾向にあり、自殺企図や自殺既遂のリスクと関連しているともいわれています。
適応障害のセルフチェック
ここでは、適応障害の可能性はないかどうかセルフチェックをおこなってみましょう。
当てはまる数が多いほど、適応障害の可能性が高くなります。心身の不調を感じている場合には、早めにメンタルクリニックを受診するようにしましょう。
適応障害の原因
適応障害の原因ははっきりと確認できるストレスによるものです。ストレスとなりうるものは、具体的に以下の通りです。
- 転職
- 仕事のミス
- 退職
- 失恋
- 結婚
- 健康上の問題
- 金銭面のトラブル
- 家族間のトラブル
- 受験勉強
- 定期試験
上記以外にも本人がストレスと感じるできごとが原因となりえます。原因は一つのできごとでも、複数のできごとが重なっても生じるのが特徴です。また、ストレス因が繰り返すものでも、持続するものでも起こりうることがあります。
適応障害の症状の種類は3つ
適応障害の症状には、大きく分けて以下の3つの種類があります。
- 情緒面の症状
- 身体面の症状
- 行動面の症状
それぞれ具体的に見ていきましょう。
症状1.情緒面の症状
情緒面では、以下の症状が出現することがあります。
- 不安
- 焦燥感
- 抑うつ状態
不安や気分の落ち込みは誰にでも起こりうることですが、症状が強い場合や持続する場合には適応障害を含めた精神疾患を発症している可能性などが考えられます。
症状2.身体面の症状
身体面では、以下の症状が出現することがあります。
- 倦怠感
- 不眠
- 食欲不振
- 疲れやすい
- 頭痛
- 肩こり
- めまい など
適応障害では、情緒面以外にも眠れない、体がだるいといったような身体面での症状が出現することもあります。
症状3.行動面の症状
行動面で見られることのある症状は以下の通りです。
- 無断欠席
- 遅刻
- 行きすぎた飲酒
- 無謀な運転
- 言動が攻撃的になる
- ギャンブル中毒 など
普段と異なる行動が見られたり、無断欠勤や遅刻などが増えたりした場合には、適応障害を発症している可能性があるため注意が必要です。
適応障害の検査と診断
DSMー5における適応障害の診断基準は以下の通りです。A〜Eを満たしている場合には適応障害と診断されます。
A.はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因のはじまりから3カ月以内に情緒面あるいは行動面の症状が出現。 B.これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある ア)症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度を持つ著しい苦痛。 イ)社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害 C.そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化ではない。 D.その症状は正常の死別反応を示すものではない。 E.そのストレス因、またはその結果がひとたび集結すると、その症状がその後さらに6カ月以上持続することはない。 |
※出典:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
加えて、適応障害の診断は、ほかの疾患と鑑別しながらおこなっていく必要があります。抑うつ症状がある場合、うつ病や躁うつ病(双極性障害)、統合失調症などそのほかの精神疾患などの可能性も考えられます。
適応障害の3つの治療法
適応障害の治療には大きく分けて3つの方法があります。
- 休養
- 環境調整
- 薬物療法
適応障害の治療の土台となるのが、休養と環境調整です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
治療法1.休養
適応障害の治療の基本は、ストレスから離れることです。仕事がストレスになっていたり、適応障害の症状によって仕事が手に付かなかったりする場合には休職がすすめられます。休養中は、生活のリズムを整えつつ、適度に体を動かして生活しましょう。
仕事を休職するためには、多くの場合、医師の診断書が必要です。また、経済面での心配が生じることもあるでしょう。休職中の収入については、傷病手当金を利用するといった方法があります。傷病手当金とは、病気やけがによって会社を休んだ際に、加入している健康保険から支給されるお金のことです。
傷病手当金を受け取るためには、申請書の提出が必要になります。事業主に確認しながら手続きを進めていきましょう。
治療法2.環境調整
適応障害の治療では、ストレスの原因をなくすもしくは、減らすための環境調整も大切です。たとえば、上司からパワハラを受けていたり、仕事内容に負担を感じていたりするようであれば、異動などで環境を整えていく必要があります。
また、自分自身のストレスを減らしたり、適応できるようにしたりするために、認知行動療法や問題解決療法などの心理療法が有効的なこともあります。
認知行動療法 | 問題解決療法 |
ストレスが原因で狭くなってしまった考えや行動を、自分の力でときほぐし、自由に考えたり行動したりする力をサポートする心理療法 | 現在抱えている問題と症状にフォーカスし、一緒に解決方法を見出していく心理療法 |
治療法3.薬物療法
薬物療法は、不安・イラつき・不眠などの症状への対症療法として用いられます。不安が強ければ抗不安薬、イラつきが強ければ気分安定薬、寝つきが悪ければ睡眠薬や漢方などの選択肢があります。以下はよく用いられる薬の一例です。
不安に対して | デパスやリーゼ、ワイパックスなど |
イラつきに対して | レクサプロやパキシルなど |
不眠に対して | マイスリー、ルネスタ、サイレースなど |
不安や不眠に対してはベンゾジアゼピン系、イラつきに対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われるケースが多いです。
適応障害の経過
適応障害は、ストレス因がなくなるか軽減することで症状が軽快していきます。休養や環境調整などで効果的に働きかけることができれば、一般的に予後は良好です。
ただし、ストレス因が長引き、効果的な解決策がないといった場合は、うつ病に移行することもあるため注意が必要です。
適応障害に関するよくある質問
ここでは、適応障害に関するよくある質問を紹介します。
- 適応障害になりやすい人の特徴は?
- 適応障害とうつ病の違いは?
それぞれ詳しく回答していきます。
質問1.適応障害になりやすい人の特徴は?
適応障害は、以下のような人がなりやすいと言われています。
- 真面目で几帳面な人
- 責任感が強い人
- 他人からの頼み事を断れない人
- 変化に敏感で繊細な人
- 心配性で何度も確認してしまう人
- ミスをすると長く引きずってしまう人
- ストレスへの耐性が弱い人
- ストレスに対する対処能力がない人
上記に当てはまるからといって適応障害になるわけではありません。同じようなストレスの状況下であっても、適応障害を発症する人とそうでない人がいます。もともとメンタルの強い人であっても、ストレスの程度によっては容易に適応障害を発症する可能性はあります。
適応障害を予防するためには、ストレスをため込み過ぎないことが大切です。ストレスをうまく対処する工夫を身につけておくとよいでしょう。適応障害になりやすい人について詳しく知りたいかたは、「適応障害になりやすい人とは?特徴や症状をチェックしてみよう」の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
質問2.適応障害とうつ病の違いは?
適応障害とうつ病は似た症状が出現することがありますが、症状が出現する期間が異なります。適応障害は、ストレス因となっている原因を取り除くことで改善することが多いですが、うつ病の場合は常に症状があり、消えることがありません。
また、適応障害はうつ病の一歩手前の状態です。適応障害が改善せず長引く場合は、うつ病へ移行することもあるため、心身の不調を感じた際にはメンタルクリニックを受診するなど早めの対応が必要です。
適応障害とうつ病の違いについて詳しく知りたい方は、「適応障害とうつ病の違いとは?診断基準や治療方法を紹介」の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
適応障害かも?と感じたら早めにメンタルクリニックを受診しよう
この記事では、適応障害のセルフチェックの方法や診断、経過などを紹介しました。「急に不安が強くなった」「何もやる気が起きない」「夜眠れない」などといった症状に悩まされている場合、そこには適応障害をはじめとした精神疾患が潜んでいる可能性があります。
適応障害の症状を放っておくと、症状が長引たりうつ病へ移行したりすることもあるため、早めの受診、対応が必要です。心身の不調は、放置したり一人で抱え込んだりせずに、早めにメンタルクリニックを受診しましょう。
参考サイト・文献
・e-ヘルスネット 厚生労働省
・日本精神神経学会|第113回日本精神神経学会学術総会
・こころとくらし|国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部
・日本における「適応障害」患者数の増加|社会政策学会誌『社会政策』第12巻第2号
・日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
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