仕事やプライベートでストレスを感じることは多く、それが引き金となって適応障害やうつ病を発症してしまうことも少なくありません。
適応障害やうつ病を発症した場合には、十分な休養をとることが大切です。そのためには、休職したほうがよいケースもあるでしょう。
しかし「休職までの流れが分からない」「どうやって職場に伝えたらよいのか分からない」という人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、適応障害やうつ病と診断された場合の、休職までの流れや手続きの方法を解説します。さらに、休職中の過ごし方や仕事復帰しても再発しないためのポイントもまとめましたので、参考にしてみてください。
適応障害やうつ病と診断されたら休職するべき?
仕事が原因であっても、仕事以外のストレスが要因であっても適応障害と診断された場合は、休職して休養したり、治療に専念したりするほうがよいと考えられます。近年の日本では、うつ病、適用障害、ストレスとうで自殺する人に割合も多くなってきています。下記のような人とは適応障害の可能性があります。
- 仕事のストレスが原因で適応障害になった
- 適応障害の症状がなかなか改善されない
- 原因が特定できないうつ病
- 仕事が辛く休みたい
「休職して心身を回復させたい」との希望がある場合は、休職が有効なこともあります。症状が悪化する前に休職して、ゆっくりと心身を休めましょう。もし休職すべきかの判断に迷う場合は、医療機関を受診して医師や臨床心理士、カウンセラーなどに相談して決めることをおすすめします。
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適応障害やうつ病で休職するまでの流れ
この章では、適応障害やうつ病と診断された人が、どのように休職すればよいのかをまとめました。
具体的には、以下の流れで進めましょう。
- 医療機関を受診する
- 会社に伝える
- 休職するための手続きをおこなう
ひとつずつ流れを解説します。
1.医療機関を受診する
まずは精神科や心療内科などの医療機関を受診して、診察してもらいましょう。現在悩んでいる症状の原因を突き止める必要があります。適応障害やうつ病と診断された場合には、自分の現状や病状を把握し今後の生活や治療法に関して、医師と話し合います。
その際、休職の必要性や、休職期間の目安について確認しておくと安心です。
休職の手続きには診断書が必要になることが多いため、医師へ伝えて書いてもらいましょう。
2.職場に伝える
仕事の継続が難しいと医師に判断されたら、その旨を職場へ伝えます。その際、診断書を一緒に提出しましょう。
職場によっては、産業医の診察を受けるよう勧められるケースもあります。
休職制度は、職場によって休職期間や給与などに関する決まりが異なり、採用していないこともあるのが現状です。万が一制度が使えない場合、今後どのように対応してもらえるのかを職場の関係者と話し合う必要があります。
3.休職するための手続きをおこなう
職場に休職することを伝え、使用できる制度を確認できたら、手続きを進めます。休職手続きのほかにも、傷病手当金など利用したい制度があれば、その準備も同時に進めましょう。
必要書類のなかには、職場が準備するものもありますので、一度にすべて依頼できるよう、利用したい制度の手続き方法を事前に確認しておくと安心です。
休職する場合は、以下の内容についても会社と確認しておく必要があります。
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双方に、認識のずれがないようしっかりと話し合うことが大切です。
また、正しく休職の手続きがおこなわれないと、欠勤扱いとなり、解雇や懲戒処分の対象となってしまうことも。会社の指示に従いながら、間違いがないよう手続きしましょう。
適応障害やうつ病で休職するときの職場への伝え方
「しばらく仕事を休みたい」と職場に伝えたいけれど、どうやって話したらよいのか分からない人もいるかもしれません。
休職する際には、医師の診断書をもらい、上司に直接話して手渡しするのが一番よい方法でしょう。直接話すことで、今後の流れや手続きの方法を確認できるメリットがあります。
しかしなかには、職場に行ったり上司と直接話したりするのすらも辛い、という状況もあるでしょう。その場合には、電話やメールで病状や休職したい意思を伝えて、後日診断書を郵送する方法もあります。
また、職場によっては、産業医や心理カウンセラーが在籍している場合もあります。直接上司へ話すことに抵抗があれば、まずは心理カウンセラーに相談してみるとよいでしょう。
適応障害やうつ病での休職期間の目安
休職期間の目安は、病状によって異なりますが、大体1~3カ月が多いとされています。ただし、その人の症状によっても変わるため、医師の診察時に、休職期間の目安を教えてもらうとよいでしょう。
一般的に、適応障害であれば6カ月以内、うつ病であれば未治療で6~12カ月、薬物療法などの治療がおこなわれれば3カ月ほどで改善するといわれています。また、メンタルヘルス不調による一回目の病休日数の平均値は、107 日(約 3.5カ月)とのデータもあります。
回復過程や期間には個人差があるため一概にはいえませんが、3~6カ月ほど休むことも珍しくはありません。
万が一、会社で決められた休職期間満了日までに回復せず、復職が難しいと医師に判断された場合は、無理して復帰せず、延長する必要があるでしょう。
仕事復帰の期間は自分で決めるのではなく、医師と相談して決定することが再発しないために大切となります。
適応障害やうつ病で休職するときに使える3つの制度
「休職中は収入が途絶えてしまうので不安」という人もいるでしょう。
しかし、休職中に利用できる制度を活用することで、手当金がもらえたり、通院にかかる費用負担を軽減したりすることができます。
この章では、休職中に利用できる以下の3つの制度を紹介します。
- 休職制度
- 傷病手当金
- 自立支援医療
制度の特徴や申請方法などを、ひとつずつ解説します。
1.休職制度
適応障害やうつ病と診断されて仕事を休職したい場合は、休職制度を利用できます。
ただし休職制度は、会社によって期間や給与支払いに関しての決まり、手続き方法が異なります。休職を希望する際は、会社に制度があるか上司に相談したり、就業規則を確認したりしてみましょう。
しかし、元々休職に関しては、労働基準法には定められていません。そのため、休職制度がない会社、もしくは制度はあるが受けられる条件を満たしていない場合は、どんなに不調を訴えても休職が認められないこともあります。
その場合は今後について会社と話し合い、双方が納得する方法をとることが大切です。
2.傷病手当金
病気やケガで会社を休むと、傷病手当金制度を利用できます。傷病手当金は、仕事に就くことができないことを証明できる場合、支給対象となります。
対象なる条件は、連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかった場合です。さらに、休業した期間内に給与の支払いがないことも条件となります。
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から通算1年6カ月です。支給額については、今までの給与によって異なります。
また申請書の提出は、健康保険被保険者証(健康保険証)に記載されている管轄の協会けんぽ支部になります。
3.自立支援医療
通院にて精神医療を継続する患者の、自己負担額を軽減してくれる公費負担医療制度です。うつ病をはじめとする精神障害(てんかんを含む)により、通院での治療を継続する必要がある人が対象です。
一般的には、公的医療保険での負担を3割から1割に軽減できます。さらに、世帯の所得に応じて負担額の上限が設けられます。
自立支援医療を受けるには、その都度、交付された「受給者証(自立支援医療受給者証)」と、自己負担上限額管理票を医療機関に提示しなければなりません。受給者証の有効期限は1年ですので、治療期間に応じて更新してください。
手続きは、お住まいの市区町村の担当窓口で行えます。
適応障害やうつ病による休職中の3つの段階
休職中は、主に以下の3段階に分けられ、それぞれ心身の不調の度合いや適切な過ごし方が変わります。
- 休養期(治療期)
- 活動期(リハビリ期)
- 準備期
一般的には、前半は休養して治療に専念する時期、後半は仕事復帰に向けた取り組みとして考えるとよいでしょう。
ではひとつずつ、心身の状態の特徴や適した過ごし方について解説します。
段階1.休養期(治療期)
休職し始めの段階は「休養期(治療期)」にあたります。適応障害やうつ病の症状が強く、心身ともに苦痛や負担が大きい時期です。この時期に、医師やカウンセラーとのカウンセリングがおこなわれ、具体的な治療が開始されます。
まずは、ストレス要因から離れてゆっくりと休養をとることが大切です。仕事のことは考えずに、休養と治療に専念しましょう。
この時期に「自分が休んでしまったことで会社に迷惑をかけていないか」を心配する人もいますが、あなたが抜けた部分は、会社が調整して対応するので心配する必要はありません。
ゆっくりと過ごしていても症状が軽減しない場合や、心身の苦痛が続く場合は、早めに医師へ相談しましょう。
段階2.活動期(リハビリ期)
有効な治療がおこなわれ、次第に症状が軽減してくると「活動期(リハビリ期)」に移行します。
この時期は治療と並行して、自分の好きなことをしたり、気分転換をしたりして活動量を増やしていきましょう。休養期で身体を休めていたため、最初から激しい運動は避け、まずは散歩や軽い運動から体を動かし、活動することに慣らしていくことが大切です。
無理をし過ぎたり、仕事復帰のことばかり考えたりすることは、過度な疲労や焦りにつながるので注意しましょう。症状をみながら徐々に活動することがポイントです。
段階3.準備期
症状が落ち着き、ある程度活動できるほど心身ともに回復したら「準備期」に移行します。この時期は、仕事復帰のための準備を進めます。
通勤練習や、仕事を想定した生活スケジュールをこなすなどが有効です。仕事をしていたときの生活リズムに整えていきましょう。仕事復帰に向けてのリハビリを経て、再び症状があらわれないかをチェックする大切な時期です。
そして問題なく過ごせたら、会社と面談して、仕事復帰に向けて具体的な予定を立てます。
仕事復帰のタイミングは、医師と相談して決めます。
しかし、仕事のことを考えるとストレスを感じやすくなるので、気分転換を上手く交えながら自分に合うストレス対処法を見つけることが大切です。この際、仕事復帰へ焦ったり、自己判断で復帰時期を決めたりすることのないよう、定期的にカウンセリングを受けながら進めましょう。
適応障害とうつ病の違い
「適応障害」と「うつ病」は似ている症状もあり、どうやって見分けるのか分からないといった方もいるかもしれません。
2つの疾患の違いは、原因因子と回復過程にあります。適応障害は、はっきりと確認できるストレスが原因です。そのため、ストレス因から離れると症状が改善に向かいます。対して、うつ病もストレスによって発症することがありますが、原因不明、ストレス因から離れても四六時中症状が消えず、回復までに時間がかかるのが特徴です。
なかには、適応障害のストレス要因に上手く対処できず、有効な解決策がない場合、症状が悪化してうつ病に移行する場合もあります。
「適応障害」と「うつ病」の症状や特徴をまとめました。
適応障害とは
適応障害は、特定のストレスが原因となり心身の健康のバランスが崩れ、社会生活に支障が出ている状態です。不安や抑うつ、不眠や食欲不振などの精神的、身体的苦痛が生じます。
適応障害の特徴は、比較的原因がはっきりとしていることで、症状出現までの期間は、約1~2カ月とされています。ただし、ストレスによる負担を大きく感じるほど、症状があらわれるまでの時間が早くなり、人によっては数日で出現することも。
一般的には、ストレス要因から離れると症状が軽快して回復に向かいます。
具体的には以下の症状が出現します。
- 心理的(情緒的)症状:不安、無気力、集中力の低下など
- 身体的症状:不眠、全身のだるさ、食欲不振など
- いつもと違う行動:無断欠勤、過剰飲酒、ひきこもりなど
早い段階で適切な治療が開始され、有効な働きかけがあれば、経過は良好です。
うつ病とは
うつ病とは、常に気分が落ち込んでいたり何に対しても喜びを感じたりできないといった精神症状と、不眠や食欲低下、易疲労感といった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じる精神疾患のことです。
うつ病の原因ははっきりと解明されていませんが、ストレスが引き金になって発症すると言われています。原因は1つに限らず、複数の要因が加わることで発症のリスクが高まります。
人によって症状はさまざまで、考えられる原因によっていくつかの病型に分類されるのが特徴です。
主な症状は以下の通りです。
- 抑うつ気分
- 興味や喜びの喪失
- 食欲不振や不眠
- 思考力や集中力の低下
- 無価値観や罪責感
- 希死念慮や自殺企図
正しい治療がおこなわれれば、3カ月ほどで改善することが多いとされていますが、初発のうつ病患者の5~6割ほどが再発する可能性があります。なかには、なかなか改善されず慢性化してしまうケースも少なくありません。
適応障害やうつ病の回復に効果的な4つの過ごし方
適応障害やうつ病が原因で休職した場合、過ごし方によって回復スピードや過程が変わります。
ここでは、回復に効果的な休職中の過ごし方を紹介します。
具体的には、以下の点を意識して過ごしましょう。
- 心身を休める
- 規則正しい生活を送る
- 気分転換をする
- 定期的にカウンセリングを受ける
1.心身を休める
適応障害やうつ病の症状が強く、辛い時期は、なにより十分な休息をとり心身を休めましょう。
疲れていると感じるときは、無理をしないことが大切です。
可能であれば周囲の方の協力を得ながら、ゆっくりと過ごせる環境を整えていくとよいでしょう。
2.規則正しい生活を送る
症状が落ち着いて、心身ともに回復してきたら、生活リズムを整えましょう。早寝早起きなど、規則正しい生活を心がけることで、体内時計が整い、睡眠の質も向上します。朝起きたら、日を浴びるのも有効です。
良質な睡眠をとることで、不安などの精神的負担の軽減だけでなく、生活習慣病などの予防にも効果が期待できます。
3.気分転換をする
ストレスの緩和には、気分転換がおすすめです。休職してからも仕事のことばかり考えていては、なかなか改善しません。一度考え込むのをやめて、趣味や好きなことをして気分転換する時間を作ると、自然とストレスから離れて症状が落ち着くでしょう。
なかでも運動は、ストレス発散や気分転換などに効果があるとされています。運動によって期待できる効果は以下の通りです。
- 気分の落ち込みやストレスの発散
- 心身のリラックス効果
- 睡眠リズムの改善
- 健康維持
散歩をはじめ、ウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動が有効です。ほかにもヨガやストレッチなども、身体の緊張をほぐしてくれるためおすすめです。
4.定期的にカウンセリングを受ける
休職中は、定期的に医師の診察やカウンセリングを受けましょう。
適応障害やうつ病の治療では、薬物療法のほかにも精神療法が有効とされています。話を聞いてもらうカウンセリングだけでなく、認知行動療法や問題解決療法が効果的です。
認知行動療法とは、原因となるストレスへの考え方を修正したり、関わり方を変えたりして、認知の歪みを正す方法です。対して問題解決療法は、現在抱えている悩みや問題と症状にフォーカスして、本人と医療者と協同的に具体的な解決方法を見つける治療法になります。
本人が、前向きに治療に取り組む姿勢が大事ですので、休職中であっても、定期的な診察やカウンセリングを通して適切な治療を受けましょう。
適応障害やうつ病で休職したあとに仕事復帰する際の3つの注意点
メンタルヘルス不調の人が、仕事復職後に再発する可能性は高いとされています。主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究によると、復職後1年に57.4%、2年に 76.5%の再病休が集中していたとのデータがあります。そのため、仕事復帰後2年間は注意が必要です。
仕事復帰する際は、再発しない環境作りや働き方が大切です。そこで最後に、休職から仕事復帰する際の注意点をご紹介します。
1.仕事復帰のタイミングは医師と相談して決める
仕事復帰のタイミングは自己判断ではなく、医師と相談したうえで決めましょう。
休職制度を活用する場合は、会社に相談する必要があります。治療の経過や症状によっては、当初予定していた休職期間よりも延長が必要なケースも珍しくありません。
不調や強い不安が残るまま仕事復帰しても、再発のリスクが高くなるため心と体をしっかりと休めましょう。
2.休職前と職場や環境を変える
適応障害やうつ病になった原因が仕事であれば、元の環境に戻ることで、同じストレスや負担を感じ再発するリスクが高まります。そのため、復帰後の部署の異動や、業務内容の変更を事前に依頼しておくことも必要でしょう。
仕事復帰に向けての準備段階で、元の職場に戻ることについて、自分のなかでの不安や葛藤が大きいようであれば、転職も視野にいれるとよいかもしれません。
転職時に利用できる就労サービスを知りたい人は「仕事に行けないのは適応障害やうつ病が原因?対処法なども紹介」の記事も参考にしてください。
3.ストレスへの対処法を身につける
休職中に、自分なりのストレス対処法を身につけておくことも重要です。復帰後の再発を予防するには、自分のストレスに対する考え方や受け止め方を理解して、苦手をカバーする働きかけを心がけましょう。
ストレスへの対処法を身につけるには、「認知行動療法」や「問題解決療法」などの精神療法が有効です。
また、復職後に「体調がおかしいな」と思ったら、早めに医師へ相談しましょう。早期に対応することで、再発のリスクを減らせます。
適応障害やうつ病では休職するのも治療のひとつ
適応障害やうつ病と診断されたら、まずは十分な休養をとることが大切です。そのため、仕事を休職するのも選択のひとつとなります。休職して治療に専念することで、症状を悪化させず早期回復が望めるでしょう。
休職を希望する場合は、会社に休職制度があるかを確認し、使えるようなら手続きを進めます。ほかにも、休職中に使える公的制度もありますので、活用してみましょう。
休職することは、決して逃げではありません。自身の健康を第一優先に考えましょう。今現在心身の不調を感じている場合には、早めに精神科や心療内科などの医療機関を受診してください。
参考サイト・文献
・厚生労働省 e-ヘルスネット/適応障害
・厚生労働省/うつ病を知っていますか?
・厚生労働省 こころの耳/1 うつ病とは
・厚生労働省/適応障害 統合失調症
・全国健康保険協会/病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
・厚生労働省/自立支援医療(精神通院医療)について
・厚生労働省 e-ヘルスネット/快眠と生活習慣
・厚生労働省/主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究
・メンタルヘルス 不調をかかえた労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル|独立行政法人 労働者健康安全機構
・こころもメンテしよう〜若者を支えるメンタルヘルスサイト〜|厚生労働省
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