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双極性障害

ADHDと双極性障害のちがいとは?仕事や障害年金についても解説!

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当



  • ADHDと双極性障害のちがいを知りたい
  • ADHDと双極性障害は併発するのだろうか
  • ADHDと双極性障害の治療方法を知りたい

このような疑問はありませんか?

ADHDと双極性障害は、症状が部分的に似ているものの、まったく異なる疾患です。また、ADHDと双極性障害は併発する可能性があり、それぞれ治療方法や疾患への対処方法が異なります。

今回は、ADHDと双極性障害のちがいについて、症状や原因、診断基準、治療方法の面から解説します。また、ADHDと双極性障害をもつ人が仕事を続けるための方法や障害年金についても解説します。

ADHDと双極性障害のちがいとは?

ADHDは日本語で注意欠如・多動症と呼ばれる発達障害の1つです。一方、双極性障害は躁状態とうつ状態を繰り返す症状が特徴的な精神疾患です。

ADHDと双極性障害は症状が似ているため、鑑別が難しいケースもあります。しかし原因や治療方法、仕事への対応方法が異なるため、正確な診断が必要です。

ADHDと双極性障害は併発する可能性がある

ADHDと双極性障害は異なる疾患ですが、併発する可能性があります。

ある海外の調査報告によると、成人期のADHDでは21.2%の確率で双極性障害を併発することが分かっており、児童期においても2〜35%の割合で併発します。

また、ADHDと併発する疾患は双極性障害だけではなく、以下のような疾患も併発する可能性があるため注意が必要です。

  • うつ病
  • 不安症群(強迫症など)
  • 発達症群(自閉症、限局性学習症など)
  • 睡眠-覚醒障害群(睡眠時無呼吸症候群など)
  • アルコール依存症

ADHDと双極性障害のそれぞれの症状

ADHDと双極性障害の症状について、それぞれ詳しく解説します。

ADHDの症状

ADHDの症状は、以下の3つのタイプに分けられます。

  • 不注意型:注意が散漫で、集中が困難なタイプ
  • 多動、衝動型:落ち着きがなく、衝動的動作が多いタイプ
  • 混合型:不注意型と多動、衝動型が混合しているタイプ

さらに、具体的な症状は以下の通りです。

ADHDの症状の具体例
  • 1つのことに集中できない
  • 気が散りやすく、ものを失くしやすい
  • 順序立てて行動するのが苦手
  • じっとすることができず、静かに遊べない
  • 待つのが苦痛で、ほかの人をじゃましてしまう
  • 気分が変動しやすい
  • 人との関係を維持するのが苦手

双極性障害の症状

双極性障害はうつ状態と躁状態を繰り返す慢性の疾患です。

双極性障害は「躁」のパターンによって双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害に分類されます。

双極Ⅰ型障害では、「うつ状態」と「躁状態」が表れます。「躁状態」は、家庭や日常生活に影響が生じ、入院が検討されるレベルの強い症状が特徴的です。

対する双極Ⅱ型障害は、「うつ状態」と「軽躁状態」が表れます。「軽躁状態」は、軽い躁状態のことで、いつもより元気で積極的になり、眠らなくても大丈夫といったこともありますが、本人も周囲もそれほど困らないレベルです。

双極Ⅱ型障害はⅠ型の軽症版と思われがちですが、Ⅱ型の方がコントロールが難しく再発や急性交代型に移行する可能性が高いと言われています。

双極性障害|躁のときの症状

双極性障害の「躁」のときの症状は以下の通りです。

  • 理由もなく元気があり、気分が高揚している
  • 怒りやすくなる
  • 自信過剰になる
  • 浪費や派手な衣服が目立つ
  • 眠らなくなる
  • 普段より口数が多くなる
  • 気が散りやすくなる
  • さまざまなことに関心が向く

双極性障害|うつのときの症状

双極性障害の「うつ」のときの症状は以下の通りです。

  • 気分の落ち込みがある
  • 強い悲しみを感じる
  • さまざまな活動に対して興味がなくなる
  • 考えや行動が鈍くなる
  • 睡眠時間が長くなる
  • 食欲が増したり減ったりする
  • 体重が増加したり減ったりする
  • 集中力が低くなる
  • ものごとを決断する力が弱くなる

ADHDと双極性障害のそれぞれの原因

ADHDと双極性障害の原因をそれぞれ詳しく解説します。

ADHDの原因

ADHDの原因は、遺伝的要因があると考えられているほかに、脳と深い関わりをもつといわれています。

たとえば脳内の神経伝達物質に起因するものです。脳内の神経伝達物質の1つであるドーパミンは脳を活性化させる中心的な役割を担っています。

しかし、脳の前頭葉や線条体と呼ばれる部位でドーパミンの機能が障害とされてしまうとADHDを誘引する可能性があるのです。

またMRI機器などを用いた脳画像研究では、ADHDの人は前頭葉や側頭葉、頭頂葉で発達の遅れが認められ、脳の成熟に遅れがあることも分かっています。

出典:ADHDのMRI研究-ADHDの神経生物学的基盤の解明に向けて-

双極性障害の原因

双極性障害の原因は明らかになっていません。しかし、これまでの研究結果により遺伝子や脳の神経伝達物質に原因があるのではないかと考えられています。

また遺伝子や脳に影響を与える環境因子として、妊娠中のインフルエンザ感染や喫煙など、周産期にまつわる要因が多く報告されています。

ストレスなどの外部環境が原因とも言われている双極性障害ですが、はっきりとした原因の解明はされていません。

ADHDと双極性障害のそれぞれの診断基準

ADHDと双極性障害の診断基準をそれぞれ詳しく解説します。

ADHDの診断基準

ADHDの診断には、アメリカ精神医学会のDSM-5が用いられます。下記の表はDSM-5を一部改変し、簡潔に表したものです。

【不注意】

  • 活動に集中できない
  • 気が散りやすい
  • 物をなくしやすい
  • 順序立てて活動に取り組めない
【多動・衝動性】

  • じっとしていられない
  • 静かに遊べない
  • 待つのが苦手で他人のじゃまをしてしまう
  • しゃべりすぎる
1.上記の症状が同程度の年齢の発達水準と比べて頻繁に強く認められること
2.症状のいくつかが12歳より前に認められること
3.家庭や学校、職場、その他の活動場面のうち、2つ以上の状況において障害となっていること
4.発達に応じた対人関係や学習能力、職業的な機能が障害されていること
5.これらの症状が統合失調症またはほかの精神疾患の経過中に生じるものではなく、ほかの精神疾患ではうまく説明されないこと

上記の診断基準をもとに、患者さんの行動上の特徴をよく観察した上で医師が診断をします。

双極性障害の診断基準

双極性障害の診断はアメリカ精神医学界のDSM-5などが診断基準として用いられます。双極性障害の診断は、躁病エピソード、軽躁病エピソード、抑うつエピソードに分けられ、組み合わせにより双極Ⅰ型障害、双極性Ⅱ型障害に分類されます。

  • 双極Ⅰ型障害:躁病エピソード+抑うつエピソード
  • 双極Ⅱ型障害:軽躁病エピソード+抑うつエピソード
躁病エピソード
A. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が少なくとも1週間ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。

B. 気分が障害され, 活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上) (気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

  1.  自尊心の肥大または誇大
  2.  睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3.  普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4.  観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5.  注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる) が報告される、または観察される。
  6. 目標指向性の活動 (社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
  7.  困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)

C. この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である。また精神病性の特徴を伴う。

D.本エピソードは、物質(例: 乱用薬物、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

出典:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

軽躁病エピソード
A. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力のある普段とは異なる期間が少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。

B. 気分が障害され、かつ活力および活動が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上) (気分が易怒性のみの場合は4つ)が持続しており、普段の行動とは明らかに異なった変化を示しており、それらは有意の差をもつほどに示されている。

  1.  自尊心の肥大、または誇大
  2.  睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3.  普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5.  注意散漫(すなわち注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される、または観察される。
  6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥
  7.  困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)

C.本エピソード中は、症状のないときのその人固有のものではないような疑う余地のない機能の変化と関連する。

D. 気分の障害や機能の変化は他者から観察可能である。

E.本エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要とするほど重篤ではない。もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。

F.本エピソードは物質 (例: 乱用薬物、医薬品、あるいは他の治療) の生理学的作用によるものではない。

出典:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

抑うつエピソード
A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、胸前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1) 抑うつ気分または (2)興味または喜びの喪失である。

  1. その人自身の言葉(例: 悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる) か、他者の観察 (例: 涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分 (注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる)
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日のすべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)
  3.  食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加 (例:1ヵ月で体重の5%以上の変化) またはほとんど毎日の食欲の減退または増加(注:子どもの場合、期待される体重増加がみられないことも考慮せよ)
  4. ほとんど毎日の不眠または過眠
  5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)
  6. ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退
  7. ほとんど毎日の無価値感。または過剰であるか不適切な罪責感 (妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)
  8. 思考力や集中力の減退または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言葉による。または他者によって観察される)。
  9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

B. その症状は臨床的に意味のある苦痛、または社会的職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C. そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

出典:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

上記の診断基準にあてはまる人は双極性障害の可能性があります。不安な人は、早めに精神科や心療内科などの専門の医療機関を受診しましょう。

ADHDと双極性障害のそれぞれの治療方法

ADHDと双極性障害には似ている症状はありますが、治療方法は異なります。それぞれの治療方法を詳しく解説します。

ADHDの治療方法

ADHDの治療方法には薬物療法と薬を使わない治療方法があります。

薬物療法では主に、メチルフェニデート塩酸塩徐放剤やアトモキセチンなどを使用し、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を調整して行動の改善を図ります。

薬の種類によっては中枢神経を刺激する作用があるため、食欲低下などの副作用が生じるケースもあります。

次に薬を使わない治療方法です。薬を使わない治療方法の例としては、行動そのものへの介入が挙げられます。具体的には、よい行動へは褒めるなどの「報酬」を与え、逆に好ましくない行動に対しては報酬を与えない方法です。

この方法により、好ましくない行動が減り、よい行動が増えることが期待できます。

ADHDは本人が意識的に予防や症状を改善するのが難しいとされているため、周囲の協力が不可欠です。そのため、家族や周囲の人に対してもソーシャルスキルトレーニングが用いられます。

ADHDの治療は、症状を単に押さえ込むのではなく、周囲の協力を得ながら障害を乗り越えるのに必要な力を身につけるのが重要です。

双極性障害の治療方法

双極性障害の治療方法を「躁」と「うつ」に分けてそれぞれ解説します。

躁に対する治療方法

躁に対する治療は、気分安定薬と抗精神病薬の単体使用または併用使用が一般的です。気分安定薬としてはバルプロ酸または炭酸リチウムが用いられ、抗精神病薬としてはアリピプラゾールなどが提案されます。ただし治療薬の選択は、過去の薬剤反応性や副作用、患者さんの希望を考慮し選択されます。

また速やかに治療が必要な場合や重症例では、電気けいれん療法が検討されます。電気けいれん療法は、電気刺激によって脳に刺激を与え、脳の機能を改善させる治療法です。

電気けいれん療法の有効性は実証されていますが、以下のような副作用があります。

  • 心血管系合併症
  • 頭痛
  • 筋肉痛
  • 嘔気
  • せん妄
  • 認知機能障害

電気けいれん療法を導入する際には、本人・家族に丁寧な説明をした上で十分に話し合い、希望を聞いた上で適用するかどうかが判断されます。

うつに対する治療方法

うつに対する標準的な治療としては、第2世代抗精神病薬や気分安定薬が提案されます。躁に対する治療薬と同じように、有効性や安全性などを確認しながら患者さんと決定します。

またうつに対する薬物を用いない治療方法としても、電気けいれん療法が検討されます。

ほかの精神疾患には精神療法(心理療法)が用いられるケースが多いですが、双極性障害に対する精神療法は効果が認められていません。しかし、病気の性質や薬の副作用などを理解するように促す「心理教育」は必須です。

病気の初期兆候を見逃さず、早期発見や早期治療ができるよう患者さん自身の理解を求めることが必要といえるでしょう。

ADHDと双極性障害の人が仕事を続けるための工夫

ここでは、ADHDと双極性の人が仕事を続けるための工夫についてそれぞれ詳しく解説します。

ADHDの人が仕事を続けるための工夫

ADHDの人が仕事を続けるためには、症状をカバーする工夫が必要です。

たとえば、

  • 仕事に必要なものを一通りカバンに入れておく
  • 予定をすべてスケジュール帳で管理する
  • スマホのアプリを活用し遅刻対策をする
  • 財布やスマホなどの重要なものにはGPSをつけておく
  • フレックスタイム制または個人事業など時間に縛られない働き方をする

などが挙げられます。

もちろん、これらの対策がすべての人に有効とは限りません。1つずつ試してみて、自分に合った工夫を凝らしてみましょう。

双極性障害の人が仕事を続けるための工夫

双極性障害は躁状態とうつ状態のときで症状が異なるのが特徴です。躁状態のときは気分が高揚し、自信過剰になる傾向にあるため「なんでも自分でできる」と思い込んでしまうケースがあります。

一方、うつ状態のときは気分の落ち込みがあり、集中力が低くなる場合があります。そのため双極性障害の人は、躁状態・うつ状態それぞれの症状にできるかぎり影響されない工夫が必要です。

たとえば、

  • 定期的な受診を怠らない
  • 会社に相談し、疾患に対する理解を得る
  • 規則正しい生活を心がける

などが挙げられます。

定期的な受診を怠らない

双極性障害の人が仕事を続けるために重要なのは、症状をコントロールすることです。症状のコントロールは薬物療法がメインになるため、定期的に受診し、医師の指示を仰ぐ必要があります。

症状がなくなった、あるいは軽くなったといって自己判断で服薬をやめてしまうと、悪化したり再発したりする可能性があります。

どんなに忙しくても、定期的な受診を怠らないように気をつけましょう。

会社に相談し、疾患に対する理解を得る

双極性障害の症状は、周りから理解されづらい場合があります。そのため、あらかじめ双極性障害について相談しておくと、業務上さまざまな面で配慮してくれる可能性があります。

2024年4月に障害者差別解消法により「合理的配慮」が義務化されます。合理的配慮とは、障害のある人が職場などで平等に活動できるようにするための特別な措置や調整のことです。

出典:内閣府ホームページ「合理的配慮」を知っていますか?

合理的配慮の周知拡大により、双極性障害に対する理解が得られやすい環境が整いつつあります。仕事を続けるためには、疾患のことを会社に相談するのもよいかもしれません。

規則正しい生活を心がける

双極性障害の人が仕事を続ける上で、規則正しい生活をするのは必須です。なぜなら規則正しい生活を送ることで、双極性障害の再発や悪化を予防できるからです。

運動や食事、睡眠などの生活リズムを整えることを意識してみましょう。

具体的には以下のようなことがあります。

  • 就寝前にテレビやスマートフォンを見ない
  • 夕食は腹八分目にする
  • アルコールやコーヒーなどの刺激物は控える

仕事を無理なく続けるために、規則正しい生活を心がけましょう。

仕事ができない場合には障害年金を受給できる可能性がある

障害年金とは、疾患や怪我によって生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取れる年金です。

ADHDも双極性障害も障害年金の対象疾患であるため、条件を満たせば障害年金を受給できます。気になる人は、ここで確認しておきましょう。

障害年金を受給する前提条件

ADHDや双極性障害にかかわらず、障害年金を受給するには以下の条件があります。

  • 初診日が被保険者期間であること
  • 保険料の納付要件を満たしていること
  • 一定の障害(怪我や病気など)の状態にあること

出典:日本年金機構「障害年金制度について(障害年金を請求するお客様へ)」

以上の3つの条件を満たすと障害年金を受給できます。

障害年金の種類と等級によって受給できる金額が異なる

障害年金の受給額は、年金の種類と等級によって異なります

障害年金の種類とは、初診日が国民年金に加入中だった場合の障害基礎年金と、初診日が厚生年金に加入中だった場合の障害厚生年金の2種類です。

それぞれの受給額について解説します。

障害基礎年金の受給額

障害基礎年金の受給額を等級や家族構成をもとに計算したのが下記です。

等級/子ども人数子どもなし子ども1人子ども2人子ども3人
1級972,250円/年1,196,050円/年1,419,850円/年1,494,450円/年
2級777,800円/年1,001,600円/年1,225,400円/年1,300,000円/年

障害厚生年金の受給額

障害厚生年金は、上記の障害基礎年金に上乗せして受給できます。受給金額の目安は以下の通りです。

等級受給金額
1級上記、障害基礎年金(1級)に下記を加える

報酬比例の年金×1.25+配偶者加給年金(223,800円/年)

2級上記、障害基礎年金(2級)に下記を加える

報酬比例の年金+配偶者加給年金(223,800円/年)

3級報酬比例の年金(最低保証583,400円)

障害厚生年金の報酬比例の年金は個人によって異なります。詳しくは対象の年金事務所に確認しましょう。

ADHDと双極性障害は異なる疾患、気になる人は医療機関を受診しよう

ADHDと双極性障害は似ている症状があるものの、まったく異なる疾患です。

症状が似ているため、鑑別が難しい場合がありますが、治療方法や仕事への対応方法は異なります。また、ADHDと双極性障害は異なる疾患ではあるものの、併発する可能性があります。ADHDや双極性障害の影響で仕事を続けるのが困難な場合は、障害年金の受給を検討するとよいでしょう。

ADHDや双極性障害の症状により、日常生活や社会活動に支障をきたしている人は、精神科や心療内科で医師の診察を受けるようにしましょう。

参考サイト:

日健医誌|注意欠如多動性障害(ADHD)の疫学と病態:遺伝要因と環境要因の関係性の視点からP134-136
児童青年精神医学とその近接領域P8
厚生労働省|e-ヘルスネット|ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療
順天堂大学医学部|大学院医学研究科|気分障害分子病態学講座|双極性障害とは
ADHDのMRI研究-ADHDの神経生物学的基盤の解明に向けて
厚生労働省|e-ヘルスネット|双極性障害
アイデスクリニック|注意欠如・多動症:ADHD
一般社団法人日本小児神経学会|注意欠如・多動症(ADHD)にはどうのような治療法がありますか?
日本うつ病学会診療ガイドライン「双極性障害(双極症)2023」p45
精神神経学雑誌|電気けいれん療法(ECT)推奨事項改訂版
双極性障害(躁うつ病)で働くヒントがみつかるWebメディア|総局はたらくラボ
d-career|ADHDのある方に向いている仕事〜実践的な仕事の選び方〜
公益社団法人日本ケアフィット共育機構|合理的配慮とは?
内閣府ホームページ|「合理的配慮」を知っていますか?
大阪障害年金サポートセンター|ADHDは障害年金の対象になりますか?
NPO法人障害年金支援ネットワーク|双極性障害(躁うつ病)と障害年金
NPO法人障害年金支援ネットワーク|令和4年度の障害年金の金額



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当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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