「双極性障害の混合状態の症状がつらい」
「双極性障害の混合状態はどんなときになりやすいの?」
このように思われている方もいるかもしれません。
また、双極性障害の混合状態と診断された方の中には、どのように過ごせばいいのかわからない方もいるでしょう。
混合状態に限らず双極性障害では、無理をせずに規則正しい生活を送ることが大切です。
本記事では、双極性障害「混合状態」の定義やなりやすいとき、過ごし方に加え、注意点も解説します。混合状態のときの過ごし方がわからない方や不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
双極性障害「混合状態」とは|抑うつ状態と躁/軽躁状態が併存する状態
日本うつ病学会の診療ガイドラインでは、双極性障害の混合状態を「抑うつ状態と躁/軽躁状態が併存する状態」と解説しています。
精神活動の3要素である気分、思考、意欲が一致して低下するのが抑うつ状態で、一致して亢進(高まること)するのが躁/軽躁状態です。
しかし混合状態では精神活動の3要素が一致せず、低下する要素と亢進する要素が混在します。
混合状態の一例
たとえば気分は低下し、思考や行動は亢進しているという状態です。この場合、思考や行動は亢進しているため躁状態のときのように考えが次々にわき、活動的でじっとしていられません。しかし、気分は低下しているため、抑うつ状態のときのように落ち込んでいます。うつ状態に傾いた状態では、希死念慮(死にたいという気持ち)が強くなることも。行動は躁状態で活動的になっていると自殺のリスクが非常に高まります。
上記の内容を表にすると以下の通りになります。
このように双極性障害の混合状態では、こころと身体の状況が一致していないため、本人にとってはきつい状態となってしまうことが多いのです。
混合状態の症状
前述したように双極性障害「混合状態」のときは、気分と思考、意欲の3つの要素がバラバラの方向へ動くのが特徴です。
双極性障害「混合状態」の方にみられる具体的な症状は、下記の通りです。
- 気分が高揚しているけど涙ぐむことがある
- 気分が沈んでいるけど次々と考えが思い浮かぶ
- 就寝時はうつ状態であったが、翌朝には元気に目が覚める
- 気分が沈んでいるけど焦ったり、怒りっぽかったりする
行動したいのにできない、逆にできないのに行動しようとしてしまうなど、精神と行動が一致していないケースが多くみられます。
混合状態の症状は、
- 躁状態からうつ状態に変わるとき
- 抑うつ状態から躁状態に変わるとき
- 抑うつ状態にある方に抗うつ薬を使用したとき
に出やすい傾向にあると言われています。
双極性障害「混合状態」のときの過ごし方
「混合状態」に限らず、双極性障害の治療では健康的な生活を送ることが大切になります。
治療の基本は薬物療法になりますが、規則正しい生活を送ることは治療の手助けともなり得ます。
具体的には、下記に示すような生活が望ましいでしょう。
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たとえば、ストレスを溜めないようにするためにはストレスマネジメントが大切となります。ストレスマネジメントとは、ストレスと上手く向き合い、適切な対処法をとっていくこと。ストレスの捉え方を変えることや、対処法を学ぶことは精神療法(心理療法)でもおこなわれます。
ここで紹介した過ごし方のなかで自分の生活に取り入れられることを探して、実践してみることをおすすめします。
双極性障害「混合状態」にあるときは自殺のリスクが高くなる
双極性障害「混合状態」にあるときは、自殺のリスクが高いことに注意しておきましょう。
双極性障害の方の自殺率は一般人口の20〜30倍であり、混合状態のときはさらに高くなります。
ただし混合状態にある方は、治療の効果が薄いことも明らかになっており、外来での治療が難しい場合は入院を考慮しなければなりません。
特に下記の6つに該当する場合は、入院を検討することをおすすめします。
- 自殺や他害のリスク
- 食事や安全を確保する能力の大幅な欠如
- 診断のために必要な場合
- 急速に症状が進行した既往のある場合
- 患者が通常得られる支援体制が破綻した場合
- 家庭で療養するのに十分な環境が整わない
出典:日本うつ病学会 Japanese Society of Mood Disorders 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023
上記に該当する項目がなくても、いつもと違うといった症状が見られた場合には、速やかに主治医に相談するようにしてください。
双極性障害「混合状態」の治療法
双極性障害「混合状態」の治療は、基本的には双極性障害の治療と同じです。躁状態や抑うつ状態の治療、再発予防を目標とした下記の3つが主な治療となります。
- 薬物療法
- 精神療法(心理療法)
- 電気けいれん療法
それぞれの治療法を具体的にみていきましょう。
1.薬物療法
双極性障害では混合状態に限らず、薬物療法が治療の基本です。
ただ、混合状態で使用する薬物は通常のうつ状態や躁状態と異なります。標準的には気分安定薬や抗精神病薬が検討されますが、それぞれ働き方が異なります。症状の特徴によっても使用すべき薬剤は変わってくるので、診察時には症状を具体的に伝えることが大切です。
双極性障害は再発を繰り返すため、症状が落ち着いたとしても自己中断しないよう注意しなければなりません。
2. 精神療法(心理療法)
精神療法(心理療法)は、疾患の理解を深め症状が表れた際の対処法や思考や考えをコントロールできるようにするための治療です。具体的な方法は下記の通りです。
- 心理教育
- 家族療法
- 認知行動療法
- 対人関係・社会リズム療法
薬物療法と組み合わせることで、薬物療法だけでは達成できない症状の改善などの効果があります。ほかにも、下記の効果が期待されています。
- 再燃・再発の予防
- 社会的な機能の回復
- QOLの向上
ただし、どの治療法においても治療者からの一方的なかかわりでは十分な効果を期待できません。双極性障害の方が病状について理解し、自分なりのコントロール方法を学び、うまく付き合っていくことが大切となります。
3.電気けいれん療法
電気けいれん療法とは、頭部に電流を流して脳を刺激することで、うつ状態による抑うつ状態や躁状態による気分高揚といった症状を改善する治療法です。
薬物療法で改善がみられない場合や自殺のリスクが高い場合、さらには症状が重く早急な対応が必要な場合などに適用されます。
双極性障害「混合状態」のときは無理せずゆっくり過ごそう
双極性障害「混合状態」の方は、気分と思考、意欲の3つの要素がバラバラの方向に動きます。
混合状態にある本人にとっては非常につらい状態であるため、症状に悩んでいる方は多いでしょう。
双極性障害「混合状態」の症状や過ごし方、注意点がわからず不安に感じた場合は、早めに精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。自身の症状に合った治療を受けることで、症状の改善が期待できます。
参考
・日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023|日本うつ病学会
・うつ病と双極性障害の「生命」「生活」「人生」に配慮した医療|日本うつ病学会
・肥満と精神障害|Vol. 61 No. 3. 2021|心身医
・DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル|医学書院
・日本うつ病学会 双極性障害委員会
・電気けいれん療法(ECT)に関するQ&A|日本精神神経学会
・e-ヘルスネット|ストレスマネジメント