避妊リング(ミレーナ)完全ガイド|生理痛改善?費用は?副作用は?

避妊方法には様々な選択肢がありますが、その中でも「避妊リング」は、一度装着すれば長期間効果が持続する手軽さから注目を集めています。
一方で、「どんな種類があるの?」「本当に安全?」「費用はどのくらいかかるの?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
避妊リングは、正しく理解し、ご自身の体に合ったものを選ぶことが非常に重要です。
この記事では、避妊リングの種類や仕組み、期待できる効果、そして気になるメリットやデメリット、費用について詳しく解説します。
避妊リングに関する疑問を解消し、納得のいく選択をするための一助となれば幸いです。

避妊リングとは?

避妊リングとは、子宮内に装着して妊娠を防ぐ医療機器の総称です。
「IUD(Intrauterine Device:子宮内避妊器具)」または「IUS(Intrauterine System:子宮内システム)」と呼ばれます。
主にT字型の小さな器具で、種類によって避妊の仕組みや効果の持続期間、期待できる追加効果が異なります。

避妊リングは、女性自身が主体的に行う避妊方法の一つであり、毎日服用する必要があるピルや、毎回使用するコンドームとは異なり、一度装着すれば数年間避妊効果が持続するのが大きな特徴です。
正しく使用すれば非常に高い避妊効果が得られることから、世界中で広く利用されています。

避妊リング(IUD/IUS)の種類と仕組み

避妊リングは、主に含まれる成分によって大きく2種類に分けられます。
それぞれ避妊の仕組みや期待できる効果が異なるため、ご自身の目的や体の状態に合わせて選択することが重要です。

IUD(銅付加避妊リング)とは

IUD(銅付加避妊リング)について詳しく見ていきましょう。
IUDは、器具の表面に銅が巻き付けられたタイプの避妊リングです。
子宮内に放出された銅イオンが、受精や着床を妨げることで避妊効果を発揮します。

具体的な仕組みとしては、以下の点が考えられています。

  • 受精の阻害: 銅イオンが精子の運動能力を低下させたり、卵子の機能を変化させたりすることで、受精が起こりにくくする。
  • 着床の阻害: 子宮内膜に炎症を起こし、受精卵が子宮内膜に着床しにくい状態を作る。

IUDの主な目的は避妊であり、生理に関する症状(生理痛や過多月経)の改善効果は期待できません。
むしろ、銅イオンによる子宮内膜への刺激により、生理の量が増えたり、生理痛が重くなったりする可能性があります。

代表的な製品としては、「ノバT」「マルチロード」などがありますが、使用するクリニックによって取り扱っている製品は異なります。
持続期間は製品によって異なりますが、一般的に約3~5年間です。

IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナについて

IUSは、器具に黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が含まれており、これが子宮内にゆっくりと放出されることで避妊効果や生理に関連する症状の改善効果を発揮するタイプの避妊リングです。
IUSの代表的な製品がミレーナです。
日本ではミレーナ52mgが広く使用されています。

IUS(ミレーナ)の避妊の仕組みは、主に以下の通りです。

  • 子宮内膜の変化: ホルモンの作用により子宮内膜が薄くなり、受精卵が着床しにくくなる。
  • 子宮頸管粘液の変化: 子宮頸管の粘液が濃くなり、精子が子宮内に侵入しにくくなる。
  • 排卵の抑制(補助的効果): ホルモン量が多い場合、排卵が抑制されることもありますが、これは主要な避妊の仕組みではありません。
    主に上記の作用によって高い避妊効果が得られます。

IUS(ミレーナ)は、避妊効果が高いだけでなく、生理痛や過多月経、子宮内膜症といった婦人科疾患の治療にも有効である点が大きな特徴です。
これは、ホルモンが子宮内膜の増殖を抑える作用によるものです。

ミレーナの持続期間は最長で5年間です。
一度装着すれば、5年間効果が持続するため、長期的な避妊や生理の悩みの改善を求める方に適しています。

避妊リングの効果と持続期間

避妊リングは、適切に使用された場合に非常に高い避妊効果を発揮します。
その効果の高さと、一度装着すれば長期間効果が持続する点が、多くの方に選ばれる理由です。

高い避妊効果

避妊方法の効果を示す指標として「パール指数」があります。
これは、ある避妊法を1年間続けた場合に、100人の女性が妊娠する人数を示したものです。
パール指数の数値が低いほど、避妊効果が高いということになります。

避妊リングのパール指数は、種類によって若干異なりますが、IUD(銅付加避妊リング)で約0.6~0.8、IUS(ミレーナ)で約0.2と報告されています。
これは、他の一般的な避妊方法と比較しても非常に低い数値です。

例えば、一般的なコンドームのパール指数は適切に使用しても約2~15、低用量ピルは正しく毎日服用した場合で約0.3、一般的な使用方法で約5~9とされています。
避妊リング、特にIUS(ミレーナ)の避妊効果は、これらの方法と比較して非常に高い水準にあると言えます。

ただし、この数値は「理想的な使用」を想定したものであり、実際には個人の体質や生活習慣、器具の脱出などによって効果が変わる可能性はゼロではありません。
それでも、他の多くの避妊方法と比較して、使用者自身の努力に左右される部分が少ないため、安定した高い避妊効果が期待できます。

避妊効果が持続する期間

避妊リングの大きなメリットの一つは、その効果の持続期間の長さです。

  • IUD(銅付加避妊リング): 製品によりますが、一般的に3年または5年間避妊効果が持続します。
  • IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナ: 最長で5年間避妊効果が持続します。

一度装着すれば、その期間中は避妊効果が維持されるため、毎日の服用や性交のたびの準備が不要になります。
これにより、避妊に関する手間やストレスを大幅に軽減することができます。

ただし、設定された期間が過ぎると避妊効果は低下します。
計画的に新しいものに交換するか、他の避妊方法に切り替える必要があります。
また、まれに自然に脱出してしまうことがあり、その場合は避妊効果がなくなってしまうため、定期的な検診でリングが正しく装着されているか確認することが推奨されます。

避妊リングのメリット

避妊リングは、その高い避妊効果と手軽さから、様々なメリットをもたらします。
特に、長期的な避妊を希望する方や、生理の悩みを抱えている方にとって、大きな利点となり得ます。

長期間の避妊が可能

最も大きなメリットは、一度装着すれば数年間、確実な避妊効果が持続することです。

  • 毎日のピル服用を忘れる心配がない
  • 性交のたびに避妊を意識する必要がない
  • 計画的な妊娠のタイミングを立てやすい

これらの点から、避妊に関する精神的な負担が軽減され、より自然な形でパートナーとの関係を築くことができます。
特に、今後数年間にわたって妊娠を希望しない方にとっては、非常に便利な避妊方法と言えるでしょう。

避妊以外の効果(生理痛・過多月経の改善)

IUS(ミレーナ)を選択した場合に得られる重要なメリットです。
放出される黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑制するため、以下の症状の改善が期待できます。

  • 生理痛の軽減: 子宮内膜が厚くならないことで、生理時の経血量が減り、子宮の収縮も抑えられるため、生理痛が和らぐことが期待できます。
  • 過多月経の改善: 経血量が著しく多い状態(過多月経)を改善し、それに伴う貧血のリスクを減らすことができます。
  • 生理期間の短縮・生理量の減少: 多くの使用で、生理の期間が短くなったり、量が大幅に減ったりします。
    中には生理がほとんど来なくなる方もいます。
    これは病気ではなく、IUS(ミレーナ)の効果によるもので、医学的にも問題ないとされています。

これらの効果により、生理のたびに辛い症状に悩まされていた方のQOL(生活の質)が大きく向上する可能性があります。
過多月経や生理痛がひどい場合は、IUS(ミレーナ)が治療法として保険適用されるケースもあります(これについては費用に関する項目で詳しく解説します)。

費用対効果について

避妊リングの初期費用は、低用量ピルなどと比較すると高額に感じられるかもしれません。
しかし、数年間の避妊費用をトータルで考えると、避妊リングの方が経済的になる場合が多いです。

例えば、低用量ピルを毎月約2,000円~3,000円で購入して服用する場合、1年間で24,000円~36,000円、5年間では120,000円~180,000円程度の費用がかかります。

一方、避妊リング(IUD/IUS)の装着費用は、種類やクリニックによって異なりますが、自費診療の場合でおおよそ5万円~10万円程度が目安となります。
一度この費用を支払えば、その後3~5年間は大きな追加費用なく避妊効果が得られます。

費用対効果の比較例(5年間の場合):

避妊方法 5年間の総費用(目安) 備考
低用量ピル 120,000円~180,000円 毎月購入費用が必要
IUD/IUS 50,000円~100,000円 初期費用のみ(検査費用等は別途必要)

※上記の費用はあくまで目安であり、クリニックや製品、保険適用の有無によって大きく異なります。

このように、長期的に避妊を継続する意思がある方にとっては、初期投資はかかりますが、結果的に避妊リングの方が費用負担を抑えられる可能性が高いと言えます。

避妊リングのデメリット・副作用

避妊リングは多くのメリットがある一方で、デメリットや副作用がないわけではありません。
どのようなリスクや不快な症状が起こりうるかを事前に理解しておくことが重要です。

主な副作用について(痛み・不正出血など)

避妊リング装着後、多くの人に一時的に見られる可能性のある副作用です。

  • 挿入時の痛み: 器具を子宮内に挿入する際に、痛みを伴うことがあります。
    痛みの感じ方には個人差がありますが、数分で治まることがほとんどです。
    痛みが強い場合は、麻酔などを使用することもあります。
  • 装着直後の痛み・腹部不快感: 挿入後、数時間から数日間、生理痛のような下腹部痛や腰痛を感じることがあります。
    これは子宮が器具に慣れるまでの反応であり、自然に軽快することが多いです。
    必要に応じて鎮痛剤で対処できます。
  • 不正出血: 装着後数ヶ月間は、生理とは関係ない時期に出血(不正出血)が見られることがあります。
    IUD(銅付加避妊リング)の場合は、生理の量が増えたり、生理期間が長くなったりすることもあります。
    IUS(ミレーナ)の場合も、最初のうちは不正出血が起こりやすいですが、多くは数ヶ月で落ち着き、その後は生理量が減ったり、生理がなくなったりする傾向があります。

これらの副作用は、多くの場合一時的なもので、体が避妊リングに慣れるにつれて軽減または消失します。
しかし、痛みが強い、出血が止まらないなど、症状が重い場合や長く続く場合は、必ず医療機関に相談してください。

稀な副作用とリスク

頻度は低いものの、注意すべき稀なリスクも存在します。

  • 子宮穿孔: 非常に稀ですが、避妊リングを挿入する際に子宮の壁を傷つけてしまうリスクがあります。
    経験豊富な医師が適切な手技を行えばリスクは低いですが、ゼロではありません。
  • 骨盤内感染症: 装着後、特に最初の20日間に骨盤内感染症のリスクがわずかに高まるという報告があります。
    これは、挿入時に膣や子宮頸管に存在する細菌が子宮内に持ち込まれる可能性があるためです。
    挿入前に感染症の検査を行うなど、リスクを減らすための対策が取られます。
    発熱、激しい下腹部痛、異常なおりものなどの症状がある場合は、速やかに受診が必要です。
  • 自然脱出: まれに、避妊リングが知らない間に子宮から自然に外れてしまうことがあります。
    特に生理量の多い方や、出産経験のない方に起こりやすいとされます。
    リングが脱出すると避妊効果がなくなってしまうため、定期的にリングの糸が出ているか確認したり、超音波検査を受けたりすることが推奨されます。
  • 異所性妊娠(子宮外妊娠): 避妊リングは子宮内での妊娠をほぼ完全に防ぎますが、子宮外での妊娠(異所性妊娠)を完全に防ぐ効果はありません。
    避妊リング装着中の妊娠自体が非常に稀ですが、万が一妊娠した場合は、その妊娠が異所性妊娠である可能性は、避妊をしていない場合と比較して高まります。
    激しい下腹部痛や不正出血などの症状に注意が必要です。

これらのリスクは低いですが、起こりうる可能性として理解しておき、異常を感じた場合はすぐに医師に相談することが大切です。

避妊リング装着中の妊娠について

前述の通り、避妊リングの避妊効果は非常に高いですが、100%ではありません
ごく稀に、避妊リングが正しく装着されているにも関わらず妊娠に至るケースがあります。

避妊リング装着中に妊娠が判明した場合、以下の点が考慮されます。

  • リングの抜去: 可能であれば、妊娠初期にリングを抜去します。
    リングを抜去しないと、流産や感染症のリスクが高まる可能性があります。
    ただし、リングを抜去することで流産のリスクが高まる場合や、抜去が難しい位置にある場合は、そのまま経過を観察することもあります。
  • 異所性妊娠のリスク: 避妊リングは子宮内妊娠を強く抑制するため、万が一の妊娠が異所性妊娠(子宮外妊娠)である確率が、避妊をしていない場合に比べて高くなります。
    異所性妊娠は危険な状態ですので、避妊リング装着中に妊娠の兆候(生理が遅れる、不正出血、下腹部痛など)がある場合は、速やかに医療機関を受診し、妊娠の場所を確認してもらう必要があります。

避妊リング装着中に生理が止まった、普段と違う出血があるなど、妊娠の可能性を疑うような症状があれば、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。

男性が違和感を感じる可能性

避妊リングには、正しく装着されているか確認するために子宮頸管から膣内に数センチメートル程度の糸が出ています。
この糸を、性行為の際にまれにパートナー(男性)が陰茎で感じて違和感を覚えるという報告があります。

ただし、これは頻繁に起こることではなく、ほとんどのケースでは気にならないとされています。
もしパートナーが糸の存在を気にするようであれば、医師に相談して糸の長さを調整してもらうことが可能な場合もあります。
糸の長さの調整は、自己判断では絶対に行わないでください。

また、避妊リングそのものが性行為の妨げになったり、男性の感度に影響を与えたりすることは基本的にありません。

体重増加(太る)との関連性

IUS(ミレーナ)のようなホルモン付加避妊リングを使用すると、体重が増加するのではないかと心配される方がいます。
これは、経口避妊薬(ピル)に含まれるホルモンの影響でむくみや食欲増進が見られることがあるため、同様のことが起こるのではないかという懸念に基づいています。

しかし、IUS(ミレーナ)に含まれるホルモンは、主に子宮内で局所的に作用するため、全身への影響は経口避妊薬と比べて少ないと考えられています。
これまでの研究結果を見ても、IUS(ミレーナ)の使用と有意な体重増加との明確な関連性は確認されていません。

もちろん、ホルモンに対する体の反応には個人差があるため、ごくまれに体重の変化を感じる方もいるかもしれませんが、多くの使用者において、避妊リングが直接の原因となって大幅に体重が増加する可能性は低いと言えます。
体重の変化が気になる場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。

生理への影響(生理がなくなる・軽くなるなど)

避妊リングは、種類によって生理に与える影響が異なります。

  • IUD(銅付加避妊リング):
    装着後数ヶ月間は、生理の量が増えたり、生理期間が長くなったり、生理痛が重くなったりする可能性があります。
    その後落ち着くことが多いですが、装着前よりも生理が重くなる状態が続く方もいます。
  • IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナ:
    装着後数ヶ月間は、不正出血が見られることがよくあります。
    数ヶ月経過すると、多くの使用者で生理の量や期間が大幅に減少します。
    使用者の約20%は、1年以内に生理がほとんど来なくなる(無月経)という報告があります。
    これはホルモンが子宮内膜の増殖を強く抑制しているためであり、医学的には問題ありません。
    生理が軽くなることや無月経になることは、過多月経や生理痛に悩む方にとっては大きなメリットとなります。

生理周期や生理量、生理痛の変化は、避妊リングの効果を示す兆候の一つでもあります。
特にIUS(ミレーナ)による生理の変化は多くの使用者に見られる正常な反応ですが、不安な場合は医師に相談しましょう。

避妊リングの挿入・抜去について

避妊リングの装着や取り外しは、必ず医療機関で医師が行います。
ご自身で行うことはできません。
ここでは、一般的な挿入・抜去の流れと注意点について説明します。

避妊リング挿入時の流れと注意点

避妊リングの挿入は、通常、生理期間中または生理直後に行われることが多いです。
これは、子宮頸管がやや開いており、挿入が比較的容易であること、また妊娠していない状態であることを確実に確認できるためです。

  1. 事前の診察と検査:
    避妊リングが適しているか、既往症や現在の健康状態を確認します。
    内診や超音波検査で子宮の大きさや形、位置を確認します。
    性感染症の検査などが必要となる場合もあります。
    避妊リングの種類(IUDかIUSか、製品名など)や期待できる効果、リスクについて十分な説明を受けます。
  2. 挿入処置:
    子宮頸管を器具で固定し、子宮の深さを測定します。
    避妊リングを専用の挿入器にセットし、子宮腔内にゆっくりと挿入します。
    挿入後、器具が子宮内に正しく留置されているか確認します。
    リングから出ている糸を、確認のために子宮頸管から数センチメートル出した状態でカットします。
  3. 挿入後の確認と診察:
    超音波検査で、リングが子宮内の正しい位置にあることを確認します。
    挿入後の注意点や、次回の検診の指示を受けます。

挿入時の注意点:

  • 挿入時に痛みを伴うことがあります。
    痛みが苦手な方や不安が強い方は、事前に医師に相談してください。
    痛みを和らげるための処置(麻酔や痛み止めなど)が可能か確認しましょう。
  • 挿入後は、数日間、下腹部痛や少量の出血が見られることがあります。
    無理せず安静に過ごしましょう。
  • まれにリングが脱出したり、位置がずれたりすることがあります。
    挿入後1ヶ月検診などで位置を確認してもらうことが重要です。

避妊リング抜去時の流れと注意点

避妊リングは、効果持続期間が過ぎた場合や、妊娠を希望する場合、または何らかの理由で継続使用が難しくなった場合に抜去します。

  1. 事前の診察:
    抜去の目的や今後の避妊計画(妊娠希望か、他の避妊法に切り替えるかなど)を確認します。
  2. 抜去処置:
    内診台で、子宮頸管から出ている糸を鉗子でつかみ、リングをゆっくりと引き抜きます。
    通常、抜去は挿入時よりも痛みが少ないことが多いですが、個人差があります。
  3. 抜去後の確認と診察:
    子宮の状態を確認します。
    抜去後の注意点や、次の生理、今後の避妊計画について説明を受けます。

抜去時の注意点:

  • 糸が見えない場合や、抜去が難しい場合は、超音波検査や特殊な器具を使用したり、日を改めて抜去したりすることもあります。
  • 抜去後は、一時的に少量の出血が見られることがあります。
  • 抜去後すぐに妊娠を希望する場合は、抜去後最初の生理が来てから計画を立てるのが一般的ですが、医師と相談して決めましょう。
    避妊リングの効果は抜去と同時に失われます。

装着中の性行為について

避妊リングを装着した後、いつから性行為が可能になるか、また避妊効果はいつから得られるかは、リングの種類や挿入のタイミングによって異なります。

  • 性行為について: 通常、挿入後の出血や痛みが落ち着けば性行為は可能です。
    具体的な期間は医師に確認してください。
    一般的には、挿入後数日~1週間程度様子を見るように指導されることが多いです。
  • 避妊効果について:
    IUD(銅付加避妊リング): 生理中に正しく挿入された場合、挿入直後から避妊効果が得られます。
    IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナ: 生理開始から7日以内に挿入された場合、挿入直後から避妊効果が得られます。
    それ以外の時期に挿入された場合は、挿入後7日間は他の避妊法を併用する必要があります。

いずれの場合も、挿入時期や製品によって異なる可能性があるため、必ず医師に確認し、適切な時期から避妊リングのみでの避妊を開始するようにしてください。

避妊リングにかかる費用

避妊リングの費用は、使用するリングの種類、目的(避妊目的か治療目的か)、そして受診する医療機関によって大きく異なります。
特に、保険が適用されるかどうかが費用に大きく影響します。

避妊目的の場合の費用

避妊を目的として避妊リング(IUDまたはIUS/ミレーナ)を装着する場合、医療行為は自費診療となります。

  • IUD(銅付加避妊リング): 製品やクリニックによって異なりますが、挿入費用はおおよそ4万円~7万円程度が目安です。
  • IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナ: 自費診療の場合、挿入費用はおおよそ7万円~10万円程度が目安です。
    IUDと比較すると、器具自体の価格が高いため、費用も高くなる傾向があります。

これらの費用には、避妊リング本体の価格、挿入の手技料が含まれます。
ただし、後述する事前の診察や検査、挿入後の検診費用は別途かかることがほとんどです。

治療目的(生理痛・過多月経)の費用と保険適用

IUS(ミレーナ)は、避妊目的だけでなく、過多月経や月経困難症(生理痛が重い状態)、子宮内膜症などの治療にも効果が認められています。
これらの病気の診断があり、治療を目的としてIUS(ミレーナ)を装着する場合は、保険が適用されます。

保険適用となった場合のIUS(ミレーナ)の費用は、3割負担の場合、おおよそ1万円~2万円程度が目安となります。
これは、自費診療の場合と比較して大幅に費用を抑えることができます。

ご自身の症状が保険適用の対象となるかは、医師の診断が必要です。
過多月経や生理痛でお悩みの方は、まずは婦人科を受診し、医師に相談してみましょう。

挿入・抜去以外の費用(診察・検査など)

避妊リングの費用は、器具の価格と手技料だけではありません。
装着前後の診察や検査にかかる費用も考慮する必要があります。

  • 初回カウンセリング・診察料: 避妊リングについて相談し、適応を確認するための診察料。
  • 事前の検査費用: 超音波検査で子宮の状態を確認したり、感染症がないか検査したりするための費用。
    これらの検査は、安全に避妊リングを装着するために重要です。
  • 挿入後の検診費用: リングが正しく装着されているか、位置がずれていないかなどを確認するための検診費用。
    通常、挿入後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、その後は1年に1回程度の検診が推奨されます。
  • 抜去費用: 効果持続期間が過ぎた場合や、妊娠を希望する場合などにリングを抜去するための費用。
    抜去費用も、挿入時と同様に数千円~1万円程度かかるのが一般的です。

これらの費用は、医療機関によって異なります。
保険適用となる部分(病気に関する診察・検査など)と自費となる部分が混在する場合もあります。
避妊リングを検討する際は、総額でどのくらいの費用がかかるのか、事前にクリニックに確認することをおすすめします。

避妊リングが向いている人・向いていない人

避妊リングは、多くの女性にとって有効な避妊方法ですが、すべての人に適しているわけではありません。
ご自身のライフスタイルや健康状態を考慮し、避妊リングが向いているか、あるいは他の方法が良いかを検討することが大切です。

避妊リングが向いている可能性のある人:

  • 今後数年間、妊娠を希望しない方: 最長5年間という長い期間、避妊効果が持続するため、計画的な妊娠を希望する方や、しばらく妊娠を考えていない方に適しています。
  • 毎日のピル服用が煩わしいと感じる方: 一度装着すれば、毎日の管理が必要ないため、飲み忘れの心配から解放されます。
  • 経口避妊薬(ピル)が体質に合わない方: ホルモンの影響が全身に及びにくいIUS(ミレーナ)は、ピルによる副作用(吐き気、むくみ、血栓症リスクの上昇など)が気になる方や、ピルを服用できない持病がある方の選択肢となります。(ただし、IUSにもホルモンが含まれるため、全ての方に当てはまるわけではありません。)
  • 過多月経や生理痛に悩んでいる方(IUS/ミレーナの場合): 避妊と同時に、生理の症状を改善したい方に非常に有効です。
  • 経済的に避妊を続けたい方: 長期的に見ると、他の避妊法よりも費用対効果が高い場合があります。

避妊リングが向いていない可能性のある人:

  • 性感染症(STD)にかかるリスクが高い方: 複数のパートナーがいるなど、性感染症のリスクが高い場合、避妊リングを装着することで骨盤内感染症のリスクがわずかに高まる可能性があります。
    性感染症の予防には、避妊リングではなくコンドームが有効です。
  • 子宮の形に異常がある方: 子宮の形が特殊な場合、避妊リングが正しく装着できなかったり、脱出しやすかったりすることがあります。
  • 最近、骨盤内感染症にかかった方や、慢性的な骨盤内感染症がある方: 感染症が完全に治癒していない場合は、症状が悪化するリスクがあります。
  • 子宮筋腫や子宮腺筋症がひどい場合: 子宮の変形が著しい場合、リングの装着が難しかったり、効果が得られにくかったりすることがあります。
  • 子宮頸がんや子宮体がんなどの悪性腫瘍がある、または疑われる場合: 装着前にこれらの疾患がないか確認が必要です。
  • 原因不明の不正出血がある場合: 出血の原因を特定するまで、避妊リングの装着は控えるべきです。
  • 妊娠の可能性がある方、または妊娠している方: 避妊リングは妊娠中には装着できません。
  • 避妊リングの成分(銅または黄体ホルモン)に対してアレルギーがある方:
  • 頻繁に妊娠の希望が変わる方: 避妊リングは長期的な避妊に適した方法であり、すぐに妊娠を希望する可能性がある場合は、他の避妊方法の方が適しているかもしれません。

ご自身が避妊リングに適しているかどうかは、自己判断せず、必ず医療機関で医師に相談し、診断を受けることが最も重要です。
医師は、問診や検査結果に基づいて、あなたにとって最適な避妊方法を提案してくれます。

他の避妊方法との比較

避妊リングを検討する上で、他の代表的な避妊方法と比較してその特徴を理解しておくと、より適切な選択ができます。
ここでは、避妊リング(IUS/ミレーナ)を、低用量ピル、コンドームと比較してみましょう。

避妊方法 避妊効果(パール指数:理想的な使用) 効果持続期間 管理の手間 生理への影響(主なもの) 性感染症予防効果 費用(目安)
避妊リング(IUS/ミレーナ) 約0.2 最長5年間 一度装着すれば不要 生理量・期間が減少、無月経になることも なし 自費:7~10万円程度
保険適用:1~2万円程度
低用量ピル 約0.3 毎日服用 毎日決まった時間に服用 生理周期が安定、生理痛・量が軽減 なし 月2,000~3,000円程度
コンドーム 約2 性交ごと 性交のたびに装着 なし あり(予防効果) 1個あたり数十円~数百円

比較から分かること:

  • 避妊効果: IUS(ミレーナ)と低用量ピルは、適切に使用した場合の避妊効果が非常に高いです。
    コンドームは、他の方法に比べて効果が劣りますが、性感染症予防効果がある点が大きな違いです。
  • 持続期間と管理: 避妊リングは一度装着すれば長期にわたって効果が持続するため、毎日の管理が不要です。
    低用量ピルは毎日の服用が必要、コンドームは性交ごとの装着が必要です。
  • 生理への影響: IUS(ミレーナ)は生理の量や期間を減らし、無月経になる可能性もあります。
    低用量ピルも生理周期を安定させ、生理痛や量を軽減する効果があります。
    IUDやコンドームは生理そのものへの影響は少ないです(IUDは生理が重くなる可能性あり)。
  • 性感染症予防: 避妊リングや低用量ピルは、妊娠は防ぎますが性感染症を防ぐ効果はありません。
    性感染症の予防には、コンドームの使用が必須です。
  • 費用: 初期費用は避妊リングが高額ですが、長期的な総費用は他の方法より安くなる可能性があります。

どの避妊方法が最適かは、ご自身のライフスタイル、健康状態、パートナーとの関係、避妊への考え方などによって異なります。
それぞれの方法のメリット・デメリットを十分に理解し、必要であれば複数の方法を併用することも検討しましょう。

避妊リングに関するよくある質問(FAQ)

避妊リングについて、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

避妊リングの欠点は何ですか?

避妊リングの主な欠点としては、以下の点が挙げられます。

  • 初期費用がかかること: 低用量ピルなどの他の方法と比較して、装着時にまとまった費用が必要です(ただし、保険適用される場合や長期使用では費用対効果が高くなることもあります)。
  • 挿入・抜去に医療機関の受診が必要なこと: ご自身で開始・中止することはできません。
  • 装着後の副作用の可能性: 特に装着初期に、痛みや不正出血が見られることがあります。
  • 稀ですが重篤な合併症のリスク: 子宮穿孔や骨盤内感染症などのリスクは非常に低いもののゼロではありません。
  • 性感染症を防ぐ効果がないこと: 妊娠は防げますが、クラミジアや淋病、HIVなどの性感染症からは体を守れません。
  • リングの自然脱出の可能性: まれに、リングが知らない間に外れてしまうことがあります。

これらの欠点を理解した上で、避妊リングを検討することが大切です。

ミレーナは性行為に影響しますか?

IUS(ミレーナ)を含む避妊リングは、基本的に性行為そのものや、性欲、感度に影響を与えることはありません。

ただし、稀に避妊リングから出ている糸を、パートナー(男性)が性行為中に感じて違和感を覚える可能性があります。
これは多くの場合は問題になりませんが、気になる場合は医師に相談して糸の長さを調整してもらうことも可能です。

避妊の心配が軽減されることで、精神的なゆとりが生まれ、かえって性行為の質が向上したと感じる方もいるかもしれません。

避妊リングの効果は何年もつ?

避妊リングの効果の持続期間は、リングの種類と製品によって異なります。

  • IUD(銅付加避妊リング): 製品によりますが、通常3年または5年間です。
  • IUS(ホルモン付加避妊リング)|ミレーナ: 最長で5年間避妊効果が持続します。

効果持続期間が過ぎる前に、新しいリングに交換するか、他の避妊方法に切り替える必要があります。
効果持続期間については、装着時に医師から説明がありますので、しっかりと確認しておきましょう。

避妊リングの費用はいくらですか?

避妊リングの費用は、目的(避妊目的か治療目的か)とリングの種類、受診する医療機関によって大きく異なります。

  • 避妊目的の場合(自費診療):
    IUD(銅付加避妊リング):挿入費用がおおよそ4万円~7万円程度。
    IUS(ミレーナ):挿入費用がおおよそ7万円~10万円程度。
  • 治療目的の場合(保険適用):
    IUS(ミレーナ)(過多月経や月経困難症などの治療目的):3割負担の場合、挿入費用がおおよそ1万円~2万円程度。

上記の費用には、器具本体価格と手技料が含まれますが、事前の診察、検査、挿入後の検診、抜去などの費用は別途かかるのが一般的です。
総額でいくらになるかは、受診前にクリニックに確認することをおすすめします。

避妊リングに関する相談はクリニックへ

避妊リングは、長期にわたって高い避妊効果が期待できる魅力的な避妊方法であり、IUS(ミレーナ)であれば生理の悩みの改善にもつながります。
しかし、その種類や仕組み、メリット・デメリット、費用、そしてご自身の体質との相性など、検討すべき点は複数あります。

どの避妊方法がご自身にとって最も適しているか、避妊リングが選択肢として適切かどうかを判断するためには、専門家である医師の診察とアドバイスが不可欠です。
避妊方法の選択は、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)に関わる大切な自己決定です。

避妊リングに関心がある方、現在の避妊方法に疑問や不安がある方、生理の悩みがあってIUS(ミレーナ)について詳しく知りたい方は、ぜひ婦人科クリニックに相談してみましょう。
医師は、あなたの健康状態やライフスタイル、避妊への考え方などを丁寧に聞き取り、最適な避妊方法を一緒に見つけてくれます。

※本記事で提供する情報は一般的なものであり、個人の体質や状況によって異なる場合があります。
避妊リングに関する最終的な判断や処置は、必ず医療機関で医師の診断を受けてください。
本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当サイトは責任を負いかねます。

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