フーナーテストは「意味ない」?検査でわかること・原因・次の一歩【妊活】

妊活を進める中で、「フーナーテスト」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この検査は、赤ちゃんを迎えるための大切なステップの一つとなることがあります。
しかし、どのような目的で行われ、結果から何が分かり、そしてもし結果が思わしくなかった場合はどうすれば良いのでしょうか。

この記事では、フーナーテストの目的や検査方法、結果の見方について詳しく解説します。
さらに、結果が不良だった場合に考えられる原因や、その後の治療選択肢、他の不妊検査との関連性についてもご紹介します。
フーナーテストについて理解を深め、今後の妊活をよりスムーズに進めるための参考にしてください。

フーナーテストとは?目的と概要

フーナーテストは、正式名称を「性交後検査(Post-Coital Test: PCT)」といい、自然な性交の後、女性の体内(主に子宮頸部)に到達した精子が、どのくらい元気であるか、そして子宮へ向かうことができるかを評価する検査です。
オランダの医師フーナーによって考案されたため、一般的にフーナーテストと呼ばれています。
福田病院のサイトでも「排卵前、頚管粘液が出ていると思われる時期に性交していただき、その粘液の中に精子がどのくらいいるかを調べるテスト」と紹介されています。

この検査の主な目的は、性交によって腟内に放出された精子が、子宮の入り口にある頚管粘液を通過し、適切な運動性を保っているかを確認することです。
妊娠を成立させるためには、精子が頚管粘液をうまく泳ぎ、子宮、そして卵管へとたどり着く必要があります。
フーナーテストは、この「精子の通り道」の初期段階に問題がないかを知るための重要な検査の一つです。

特に、原因不明不妊の場合や、精液検査の結果が正常であるにも関わらず妊娠に至らない場合などに検討されることがあります。

頚管粘液の役割

フーナーテストを理解する上で欠かせないのが、頚管粘液の存在です。
頚管粘液とは、子宮頸部から分泌される粘液で、月経周期によってその量や性質が大きく変化します。

排卵期に近づくと、女性ホルモンのエストロゲンの影響で頚管粘液の量が増え、サラサラとして透明度が高まります。
これは、精子が粘液の中をスムーズに移動しやすくなるため、妊娠にとって非常に重要な変化です。
この排卵期に分泌される粘液は、精子にとって以下のような役割を果たします。

  • 精子の保護: 腟内の酸性環境から精子を保護し、生存率を高めます。
  • 精子の選別: 運動性の高い元気な精子のみを子宮内に通します。
  • 精子の運動支援: 粘液の構造が精子の動きを助けます。
  • 精子の輸送: 粘液の流れに乗って精子が子宮へ向かうのを助けます。
  • 精子の貯蔵: 一部の精子を数日間にわたって貯蔵し、受精の機会を増やします。

フーナーテストでは、この排卵期の頚管粘液中に、性交後の精子がどれだけ活発に運動しているかを確認します。
頚管粘液の状態が良くても、精子がうまく泳げていなければ妊娠は難しくなりますし、逆に精子の状態が良くても、頚管粘液の質が悪ければ精子は子宮へたどり着けません。
フーナーテストは、この両方の要因をまとめて評価できる検査と言えます。

フーナーテストでわかること(検査内容)

フーナーテストでは、採取した女性の頚管粘液を顕微鏡で観察し、その中にいる精子の状態を詳細に評価します。
この検査によって、以下の情報が得られます。

頚管粘液中の精子の状態を確認

検査では、まず頚管粘液の量、色、粘稠度(粘り気)といった物理的な状態をチェックします。
排卵期であれば、通常は透明で量が多く、指で伸ばすと糸を引くようなサラサラした粘液(牽糸性がある粘液)が観察されます。

次に、顕微鏡下で頚管粘液の中にいる精子の数を数え、それぞれの精子がどのように動いているか(運動性)を観察します。

  • 精子の有無: そもそも粘液中に精子が存在するかを確認します。
    性交があったにも関わらず精子が全く見られない場合は、何らかの問題がある可能性があります。
  • 精子の数: 1視野あたりに存在する運動精子の数を数えます。
  • 精子の運動性: 精子がまっすぐ力強く動いているか、あるいはその場で震えているだけか、全く動かないかなどを評価します。
    前進運動している精子の割合が重要視されます。
  • 精子の生存率: 運動していない精子の中に、まだ生きている精子がいるかどうかも確認する場合があります。

これらの観察結果を総合的に評価することで、精子が頚管粘液という関門を通過し、受精可能な状態を保っているかどうかが判断できます。

検査結果の評価基準

フーナーテストの結果は、一般的に以下のように評価されます。
ただし、明確な世界的な統一基準があるわけではなく、クリニックや医師によって判断基準が多少異なる場合があることに注意が必要です。

評価 基準(目安) 意味
良好 1視野あたりに運動精子が5個以上(または10個以上など、施設による)観察される。 精子は頚管粘液を通過でき、運動性を保っている可能性が高い。
不良 1視野あたりに運動精子がほとんど見られない、あるいは全く見られない。 精子の通過や運動性に問題がある可能性がある。
男性側、女性側、あるいは両方に原因がある。
不良 運動精子は存在するが、その場で震えているだけで前進運動が乏しい。 精子の質や頚管粘液の質に問題がある可能性がある。

結果が「不良」と判断された場合、それだけですぐに深刻な問題があるとは断定できません。
検査を受けるタイミングや性交からの経過時間、その時の体調など、様々な要因によって結果は変動する可能性があるからです。
そのため、不良だった場合は再検査を行ったり、他の不妊検査と組み合わせて総合的に判断したりすることが一般的です。

重要な点:

  • フーナーテストはあくまで性交後の「ある時点」の状態を評価するものであり、卵管や子宮内部の状態を直接見る検査ではありません。
  • 結果が良好であっても、他の要因(卵管の閉塞、排卵障害、着床障害など)によって妊娠に至らない可能性はあります。
  • 結果が不良であっても、必ずしも不妊の原因が特定できるわけではありません。
    他の精密検査が必要となることがあります。

フーナーテストの検査方法と手順

フーナーテストは、性交後の特定のタイミングでクリニックを訪れ、子宮頸部から粘液を採取する比較的簡単な検査です。
検査を受ける前に、いくつかの準備と注意点があります。

検査を受ける適切なタイミング

フーナーテストは、女性の排卵期に合わせて行うことが最も重要です。
排卵期には、妊娠しやすいように頚管粘液の量が増え、精子が通過しやすい状態になります。

  • 排卵日の予測: 基礎体温、排卵検査薬、超音波検査(卵胞チェック)などで排卵日を予測し、その前後の数日間(最もおりものが多い時期)に行います。
  • 予約: 検査を受けるには、事前にクリニックに予約を取り、検査当日の流れや性交のタイミングについて指示を受けておく必要があります。

性交後の推奨される時間

検査を受ける時間帯は、性交後数時間以内が推奨されています。
具体的には、性交後8〜12時間以内、あるいは6〜12時間以内など、クリニックによって推奨時間が異なる場合があります。

なぜ性交後すぐにではなく、ある程度時間が経ってから検査するのでしょうか。
これは、腟内に放出された精子が頚管粘液の中へ泳ぎ進み、ある程度「生存競争」を終えた状態を観察するためです。
時間が経ちすぎると、運動性の高い精子でもエネルギーを消耗したり、自然に死滅したりしてしまい、正確な評価が難しくなります。
逆に、早すぎるとまだ多くの精子が腟内に留まっている状態となり、これも適切な評価ができません。

したがって、クリニックの指示に従い、指定された時間内に来院することが非常に重要です。
例えば、朝に検査を受ける予約をした場合は、前日の夜に性交を行うように指示されることが多いです。

診察から検査実施までの流れ

一般的なフーナーテストの流れは以下のようになります。

  1. 事前予約: 排卵日を予測し、クリニックにフーナーテストの予約を入れます。
    検査日と性交のタイミングについて確認します。
  2. 性交: 予約日時の数時間前(クリニックの指示に従う)に性交を行います。
    性交時には、潤滑剤(ローションなど)の使用は避けるように指導されることがあります。
    これは、潤滑剤の種類によっては精子の運動性を妨げる可能性があるためです。
    また、性交後、女性はすぐに立ち上がったりシャワーを浴びたりせず、しばらく(例えば15分〜30分程度)横になっていると、精子が頚管へ到達しやすくなると言われています。
  3. クリニック来院: 指定された時間内にクリニックを訪れます。
  4. 頚管粘液の採取: 内診台で、医師が専用の器具(細いチューブやスプーン状の器具など)を用いて、子宮頸部から少量の頚管粘液を採取します。
    痛みはほとんどありません。
  5. 顕微鏡観察: 採取した粘液をすぐに顕微鏡で観察します。
    この場で医師が精子の数や運動性を評価し、結果を伝えてくれる場合もあれば、後日改めて説明がある場合もあります。
  6. 結果説明: 検査結果について医師から説明を受けます。
    結果が不良だった場合や、さらに詳しく調べる必要があると判断された場合は、今後の検査や治療方針について話し合います。

検査自体は数分で終わりますが、排卵時期に合わせたり、性交のタイミングを調整したりする必要があるため、事前の準備と計画が大切です。

フーナーテストの結果が不良の場合の原因

フーナーテストの結果が不良だった場合、考えられる原因はいくつかあります。
男性側、女性側、あるいは両方の要因が組み合わさっている可能性もあります。
不良だったからといって過度に心配する必要はありませんが、原因を探るためのさらなる検査が必要となることがあります。

頚管粘液の異常(量や質)

女性側の要因として、頚管粘液そのものに問題がある場合があります。

  • 頚管粘液の量が少ない: 排卵期にも関わらず、頚管粘液の分泌が少ない場合です。
    十分な量の粘液がないと、精子は腟内から子宮へと泳ぎ進むことが困難になります。
    これは、女性ホルモンのバランスの乱れなどが原因で起こることがあります。
  • 頚管粘液の質が悪い: 粘液の量が十分でも、粘稠度が高すぎたり(ドロっとしている)、濁っていたりする場合です。
    精子が通過しにくい「バリア」となってしまいます。
    炎症などが原因となることもあります。
  • 頚管炎: 子宮頸部に炎症がある場合、粘液の質が悪化し、精子の運動性が阻害されることがあります。

頚管粘液の異常が疑われる場合は、ホルモン検査でエストロゲンの分泌量を調べたり、頚管粘液の詳しい検査や、炎症の有無を調べたりすることがあります。

精子の運動性や数の問題

フーナーテストの結果不良は、男性側の精子の状態に問題がある可能性も示唆します。

  • 精子の運動率が低い: 精液中に運動している精子の割合が少ない場合、頚管粘液を通過し、子宮へ到達できる精子の数が極端に少なくなります。
  • 精子の数が少ない: 精液全体の精子数が少ない場合、性交によって腟内に放出される精子の絶対数が少なくなり、頚管粘液中に到達できる精子も少なくなります。
  • 精子の形態異常: 精子の形に問題がある場合、うまく泳ぐことができなかったり、受精能力が低かったりすることがあります。

これらの男性側の要因が疑われる場合は、精液検査が必須となります。
フーナーテストで精子が見られない、あるいは運動性が乏しい場合でも、精液検査で精子の状態が正常であれば、原因は一時的なものか、性交のタイミングや方法、あるいは女性側の要因によるものである可能性が高まります。
逆に、精液検査で精子の状態に問題が見つかれば、そちらに対する治療や、人工授精・体外受精といったステップを検討することになります。

抗精子抗体の関与

比較的まれな原因として、「抗精子抗体」が存在する場合があります。
これは、女性または男性の体内で、精子を自分のものではない異物とみなし、攻撃してしまう抗体(免疫物質)ができてしまう状態です。

抗精子抗体が頚管粘液中に存在すると、精子の動きを妨げたり、精子を破壊したりするため、精子が子宮内へ進むことができなくなります。
フーナーテストでは、粘液中で精子が震えているだけで前進しない、あるいは粘液の中で固まって動かないといった所見として観察されることがあります。

こうせいしこうたい なりやすい人

抗精子抗体ができやすい「なりやすい人」という明確な基準はありませんが、以下のような場合に抗体が産生されるリスクがわずかに高まる可能性が示唆されています。

  • 男性: 精路(精子の通り道)の閉塞や炎症、精巣上体炎などの既往がある場合。
    外傷や手術によって血液と精子が接触する機会があった場合。
  • 女性: 子宮や卵管の炎症、子宮内膜症、過去の手術(特に子宮頸部の手術など)によって血液と精子が接触する機会があった場合。

しかし、上記のような既往がなくても抗体ができることもありますし、抗精子抗体があっても自然妊娠するケースも報告されています。
抗精子抗体の有無を確定するためには、血液検査などで抗体価を調べる必要があります。
もし抗精子抗体が高い場合は、タイミング法や人工授精では妊娠が難しく、体外受精(特に顕微授精)が主な治療選択肢となります。

フーナーテストの臨床的意義とエビデンス

フーナーテストは長年にわたり不妊検査の一つとして行われてきましたが、その臨床的な意義やエビデンスについては、近年議論がなされています。

近年の評価と検査の位置づけ

かつては不妊検査の初期段階で必ず行われる検査の一つと考えられていましたが、近年の研究や専門機関のガイドラインでは、フーナーテストの必須性は低下傾向にあります。
その理由として、以下の点が挙げられます。

  • 検査結果のばらつき: フーナーテストの結果は、性交のタイミング、検査までの時間、性交渉の質、女性のその日の体調やストレス、頚管粘液の分泌状態など、様々な要因に影響されやすく、日によって結果が変動しやすいという特徴があります。
    一度の検査結果だけで正確な生殖能力を判断するのが難しい場合があります。
  • 解釈の難しさ: 結果が不良だった場合でも、原因が頚管粘液にあるのか、精子側にあるのか、あるいは免疫的な問題なのかをフーナーテスト単独で明確に区別するのは難しい場合があります。
  • 代替検査の存在: 精液検査やその他の検査によって、男性側の精子の状態や女性側の粘液の状態にある程度のアセスメントが可能になってきました。

これらの理由から、最近ではフーナーテストを行わずに、まず男性の精液検査と女性の排卵機能、卵管の通過性などを調べる検査を優先し、その結果に基づいて治療方針を検討するというアプローチをとるクリニックも増えています。
しかし、フーナーテストは不妊検査として広く認識されており、例えば大阪市の不妊検査費助成事業や、東京都の不妊検査等助成事業など、公的な助成制度の対象にも含まれています。

検査の省略や代替手段

フーナーテストを必須としない場合でも、以下の検査は不妊の原因を探る上で非常に重要です。

  • 精液検査: 精子の数、運動率、形態などを詳しく調べることで、男性不妊の有無を評価します。
    フーナーテストよりも精子の状態を客観的に把握できます。
  • 排卵機能検査: 基礎体温、ホルモン検査、超音波検査などで、排卵が正常に行われているか、頚管粘液が適切に分泌されるホルモン環境にあるかなどを評価します。
  • 卵管検査: 子宮卵管造影検査や卵管通水検査などで、精子や卵子、受精卵が通過する卵管が開通しているかを確認します。
  • 抗精子抗体検査: 血液検査で抗精子抗体の有無を直接調べます。

これらの検査結果を総合的に判断することで、フーナーテストを行わなくても、性交後の精子の通過性にある程度のアセスメントができると考えられています。
ただし、フーナーテストは「実際に体内で精子が頚管粘液と出会った際にどうなるか」を直接観察できる唯一の検査であり、臨床的な意味が全くないわけではありません。
特に、原因不明不妊の場合や、他の検査では問題が見つからない場合に、ヒントを与えてくれる可能性はあります。
検査を行うかどうかは、夫婦の状態や既往歴、他の検査結果、そして医師の判断によって異なります。

フーナーテスト後のステップ(治療選択肢)

フーナーテストの結果や他の不妊検査の結果を踏まえて、今後の治療方針が検討されます。
フーナーテストの結果が良好か不良かによって、推奨されるステップは異なります。

タイミング法

フーナーテストの結果が良好で、かつ他の不妊検査(排卵、卵管通過性など)にも大きな問題が見られない場合は、引き続きタイミング法が基本的な治療選択肢となります。

タイミング法は、排卵日を正確に予測し、その時期に合わせて性交を行うことで、自然妊娠を目指す方法です。
フーナーテストで精子と頚管粘液の相性が良いことが確認できていれば、タイミング法による妊娠の可能性は十分にあります。
医師の指導のもと、排卵日をより正確に特定したり、必要に応じて排卵誘発剤を使用したりしながら、数周期様子を見ることが一般的です。

人工授精(IUI)

フーナーテストの結果が不良だった場合や、タイミング法を数周期試しても妊娠に至らない場合、あるいは男性側に軽度〜中等度の精液所見の異常がある場合などに、人工授精(Intrauterine Insemination: IUI)が検討されます。

人工授精は、採取した精液から運動性の高い元気な精子を選別・濃縮し、排卵日に合わせて細いカテーテルを使って直接子宮内に注入する方法です。
これにより、精子が頚管粘液を通過する過程を省くことができます。
フーナーテストで頚管粘液の通過に問題が示唆された場合に有効な治療法の一つと言えます。

人工授精 意味 ない?

「人工授精は意味がない」という意見を聞くことがあるかもしれません。
これは、人工授精の1回あたりの妊娠率が、体外受精と比較すると高くないことや、適応を間違えると成功しにくいといった背景があるためかもしれません。

しかし、人工授精は適切な適応に行えば、妊娠の可能性を高める有効な治療法です。

人工授精が有効な場合:

  • フーナーテスト不良
  • 男性の精子数や運動率が軽度〜中等度低い
  • 原因不明不妊でタイミング法で妊娠しない場合
  • 性交渉が困難な場合(EDなど)
  • 抗精子抗体がある場合(軽度の場合や、精子を洗浄・濃縮することで効果が期待できる場合もある)

人工授精の限界:

  • 卵管が閉塞している場合は妊娠できません(精子や受精卵が卵管を通過できないため)。
  • 女性の年齢が高い場合や、男性の精液所見が高度に悪い場合は、人工授精では妊娠が難しいことがあります。
  • 1回あたりの妊娠率は5〜20%程度とされており、数回試しても妊娠に至らない場合は、体外受精へのステップアップが検討されます。

人工授精は、体外受精よりも費用や体への負担が少ないため、まずは人工授精を数回試してみるという選択をすることも多いです。
しかし、やみくもに繰り返すのではなく、年齢や他の検査結果を考慮しながら、適切な回数で区切りをつけ、次のステップを検討することが重要です。
医師とよく相談して、ご自身に合った治療計画を立てましょう。

体外受精(IVF)

人工授精を数回行っても妊娠しない場合や、以下のような場合には、体外受精(In Vitro Fertilization: IVF)が主な治療選択肢となります。

  • 卵管が閉塞または癒着している場合
  • 男性の精子の数や運動率が著しく低い場合(高度男性不妊)
  • 抗精子抗体価が高い場合
  • 女性の年齢が高い場合
  • その他、人工授精では妊娠が難しいと判断される場合

体外受精とは

体外受精は、女性の卵巣から採取した卵子と、男性から採取した精子を、体の外(培養皿の中)で受精させ、受精卵(胚)を数日間培養した後、子宮内に移植して着床を試みる高度な生殖医療です。

体外受精には、以下の方法があります。

  • 媒精(Conventional IVF): 培養皿の中で卵子と精子を一緒にし、自然に受精させる方法。
  • 顕微授精(Intracytoplasmic Sperm Injection: ICSI): 細い針を使って精子1匹を卵子の中に直接注入して受精させる方法。
    精子の数が極端に少ない場合や、運動性が低い場合、抗精子抗体価が高い場合などに適応となります。

体外受精は、精子が女性の体内を通過する過程や、卵管を通過する過程を完全に bypass するため、フーナーテストの結果が悪かった場合や、男性不妊、卵管因子など、様々な原因による不妊症に対して高い有効性が期待できます。
ただし、人工授精よりも費用や体への負担が大きくなります。

治療ステップの選択は、フーナーテストだけでなく、精液検査、ホルモン検査、卵管検査、女性の年齢、不妊期間など、総合的な検査結果に基づいて、医師と夫婦でしっかりと話し合って決定することが大切です。

フーナーテストに関するよくある質問

フーナーテストについて、妊活中の方からよく寄せられる質問にお答えします。

フーナー検査で何がわかるの?

フーナー検査(フーナーテスト)では、性交後、女性の子宮頸部に到達した精子が、子宮の入り口にある頚管粘液の中でどのくらい元気で、子宮へ向かって泳げているかがわかります。
具体的には、頚管粘液の量や質、そして粘液中の運動精子の数や運動性、生存率などが評価されます。
これにより、精子が頚管粘液をうまく通過できているかどうかが判断できます。

フーナーテスト 性交後何時間で受ける?

フーナーテストは、性交後6時間から12時間以内に受けることが推奨されることが多いです。
正確な時間はクリニックによって指示が異なる場合がありますので、必ず事前に確認してください。
この時間帯に検査するのは、腟内に放出された精子が頚管粘液へ泳ぎ込み、ある程度安定した状態になったところで、その生存能力と運動性を評価するためです。
早すぎても遅すぎても、正確な評価が難しくなります。

ヒューナーテストとの違いは?

ヒューナーテストとフーナーテストは、全く同じ検査を指します。
考案したオランダの医師の名前が「フーナー」であるため、「フーナーテスト」と呼ばれるのが一般的ですが、「ヒューナーテスト」という表記も広く使われています。
どちらも性交後検査(Post-Coital Test: PCT)のことです。

不妊検査におけるフーナーテストの位置づけ

不妊検査は様々な種類があり、それらを組み合わせて原因を探っていきます。
フーナーテストは、かつては初期検査の定番でしたが、近年はその位置づけが変わりつつあります。

他の主な不妊検査との関連

不妊検査は、主に女性側と男性側の両方について行われます。
以下に、フーナーテスト以外の主な不妊検査と、フーナーテストとの関連性を示します。

検査名 目的・内容 フーナーテストとの関連
精液検査 男性不妊の最も基本的な検査。
精子の数、運動率、形態、量などを詳しく調べます。
フーナーテストで精子が見られない、あるいは運動性が悪い場合に、男性側に原因があるかを確認するために必須の検査です。
精液検査の結果が悪ければ、フーナーテストが良好でも妊娠は難しい可能性があります。
基礎体温測定 女性のホルモンバランスや排卵の有無、時期を推測します。 フーナーテストは排卵期に行う必要があるため、基礎体温で排卵時期を予測する参考にします。
また、基礎体温からホルモンバランスの異常が疑われる場合は、頚管粘液の質に影響が出ている可能性も考えられます。
ホルモン検査 血液検査で女性ホルモン(LH, FSH, エストロゲン, プロゲステロンなど)の分泌状態を調べます。
排卵障害やホルモンバランスの乱れの有無を評価します。
特にエストロゲンの分泌が少ないと頚管粘液の分泌が悪くなるため、フーナーテストの結果不良の原因を探る手がかりとなります。
超音波検査 卵巣の卵胞の発育や子宮内膜の厚さ、排卵の有無、子宮や卵巣の形態異常などを確認します。 フーナーテストのタイミングを決定するために、卵胞の発育状況をチェックします。
また、頚管粘液の分泌状態も観察できることがあります。
子宮卵管造影検査 子宮内腔の形や卵管の開通性、卵管周囲の癒着の有無などを、造影剤とレントゲンを用いて調べます。 精子や受精卵が子宮から卵管へスムーズに移動できるかを確認する検査です。
フーナーテストで精子が頚管を通過できても、卵管が閉塞していれば妊娠は成立しません。
フーナーテストと合わせて、精子の「通り道」の全体を評価します。
卵管通水検査 子宮口から生理食塩水などを注入し、卵管を通過して腹腔内へ流れ出る様子を確認することで、卵管の開通性を調べます。 目的は子宮卵管造影検査と同様です。
造影剤アレルギーがある場合などに選択されることがあります。
子宮鏡検査 子宮内に細いカメラを入れて、子宮内腔のポリープ、筋腫、癒着などの有無を確認します。
着床障害の原因となる子宮内の病変を調べます。
フーナーテストの結果とは直接関連しませんが、着床という妊娠の最終段階に影響する因子を調べる重要な検査です。
抗精子抗体検査 血液検査で、精子に対する抗体の有無や量を調べます。 フーナーテストで精子が頚管粘液中で異常な動き(震えているだけ、固まるなど)を示す場合に、原因として抗精子抗体が疑われるため、行うことがあります。

これらの検査は、カップルの状態や既往歴、不妊期間などに応じて、必要なものから段階的に行われることが一般的です。
フーナーテストは、精子と頚管粘液の相互作用を評価する独特の検査ですが、他の検査結果と組み合わせて総合的に解釈することが不可欠です。
近年は、まず精液検査や排卵・卵管検査を優先し、フーナーテストは必須ではない、あるいは他の検査で原因が特定できない場合に行うという考え方も広まっています。
なお、頚管因子検査の一つであるフーナーテストは、自治体によっては不妊検査費用の助成対象となっている場合もあります(例:大阪市不妊検査費助成事業東京都不妊検査等助成事業)。

【まとめ】フーナーテストは妊活のヒントになる検査

フーナーテスト(性交後検査)は、自然な性交後、女性の子宮頸部にある頚管粘液中で精子がどのように振る舞うかを評価する検査です。
排卵期の頚管粘液を採取し、顕微鏡下で精子の数や運動性を観察することで、精子が子宮へ向かう初期の関門を通過できているかを確認できます。

この検査の結果が良好であれば、精子が頚管粘液を通過できる能力は高いと考えられ、タイミング法による妊娠の可能性が期待できます。
一方、結果が不良だった場合は、頚管粘液の量や質、男性側の精子の状態、あるいは抗精子抗体の存在など、様々な原因が考えられます。

近年、フーナーテストの臨床的意義については議論があり、必須の初期検査とされない場合もありますが、精子と頚管粘液の相互作用を直接観察できる独自の検査として、特に原因不明不妊の場合などにヒントを与えてくれる可能性はあります。
また、一部の自治体では不妊検査費用の助成対象として位置づけられています。

もしフーナーテストの結果が思わしくなかったり、タイミング法で妊娠に至らなかったりする場合は、人工授精や体外受精といった次のステップを検討することになります。
どのような検査が必要か、どのような治療が適切かは、フーナーテストの結果だけでなく、精液検査やホルモン検査、卵管検査など、他の不妊検査の結果や、女性の年齢、不妊期間などを総合的に判断して決定されます。

妊活の道のりは一人ひとり異なります。
フーナーテストは数ある検査の一つに過ぎません。
検査結果に一喜一憂しすぎず、専門の医師としっかりとコミュニケーションを取りながら、ご自身やパートナーにとって最適な方法を見つけていくことが大切です。
不安なことや疑問点があれば、遠慮なく医師に相談しましょう。

免責事項: 本記事で提供する情報は、一般的な知識をまとめたものであり、個々の病状や状況に対する医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。
不妊に関する診断や治療については、必ず医療機関を受診し、専門医の指導を受けてください。
検査や治療の選択は、ご自身の責任において行ってください。
本記事の情報に基づいて生じたいかなる結果についても、当方では一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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