「不眠症ってストレスと関係あるの?」
「ストレスによる不眠症か自分でチェックする方法は?」
「ストレス性の不眠症のセルフケア法を知りたい」
このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
睡眠の悩みを持つ人は3人に1人、不眠症は10人に1人といわれています。ストレスと不眠には密接な関わりがあります。ストレスから不眠症になる可能性もあるため、早めの対策が大切です。
この記事では、不眠症につながるストレスの原因についてわかりやすく解説します。不眠症のセルフチェック法も紹介するので、自分の症状が不眠症にあたるか確かめてみましょう。
ストレス性の不眠症のセルフケア法も紹介しますので、不眠症とストレスについて知りたい方はぜひ参考になさってください。
不眠症とストレスには密接な関係がある
ストレスは不眠症の原因のひとつです。ストレスによって緊張状態が続くことで、睡眠リズムが乱れてしまうためと考えられています。
強いストレスを感じたあと、眠れなくなってしまったという経験のある方もいるのではないでしょうか。一時的に眠れなくなっただけなら、数日から数週間で回復するケースがほとんどです。しかし、睡眠リズムを取り戻せず1カ月以上続いてしまう場合もあります。
ストレスが原因で眠れない期間が長期間続く場合は、不眠症に移行しているかもしれません。不眠症の診断基準は以下の通りです。
- 夜間の不眠が続く
- 日中に精神や体の不調を感じ生活の質が低下する
上記の症状が3カ月未満の場合は短期不眠症、それ以上続く場合は慢性不眠症と診断されます。慢性不眠症は日中の不調や不眠を感じるのが週3日以上あり、それが3カ月以上続いた場合です。
ストレスで不眠症になるメカニズム
ストレスで不眠になるのは、脳が興奮状態になり自律神経のリズムが乱れるためと考えられています。自律神経は呼吸や体温、心臓の動きなどを調節する、生命維持に必要な体の機能をつかさどる神経です。
自律神経は交感神経と副交感神経にわかれています。交感神経は体を動かし、副交感神経はリラックスさせる働きを持ちます。
強いストレスを感じると交感神経が優位に働き、脳や体が緊張状態になります。夜になっても副交感神経に切り替わらず、リラックスできません。
ストレス状態が続くと、自律神経のリズムが崩れ眠れない日が続くでしょう。ストレスによる一時的な睡眠困難が不眠症につながってしまうのです。
不眠につながるストレスの原因
厚生労働省の「令和4年度 健康実態調査結果の報告」では、悩みやストレスの原因について、下記の項目が上位を占めています。
項目 | 割合 |
自分の健康状態、病気や介護 | 69.0% |
家族の健康状態、病気や介護 | 41.0% |
収入・家計・借金など | 33.3% |
自分の仕事 | 28.3% |
家族以外の人間関係 | 19.7% |
参照:厚生労働省「令和4年度 健康実態調査結果の報告」悩みやストレスの原因(複数回答)
これらのストレスは不眠へと繋がる可能性が高いと考えられます。ここでは不眠につながる可能性のある主なストレス原因について具体的にみていきましょう。
健康上の悩み
健康の悩みがストレスになり、不眠を引き起こすかもしれません。年齢を重ねると病気になる可能性が高まり、不安を抱えやすくなるためです。
厚生労働省の国民基礎調査を見ると、35歳以降で何らかの体調不良を訴える方が増加傾向にあります。40代以降では、更年期障害により心身の調子を崩すことも考えられます。
体調不良は心身に大きなストレスを与えますし、将来への不安から眠れなくなる可能性もあるでしょう。
家庭問題
家族に関する問題がストレスになり、不眠を引き起こす可能性があるでしょう。解決に時間がかかることも多く、ストレスを感じやすいためです。
子育て中、子どもの反抗期や進路問題などでストレスを抱えるケースが考えられます。母親の更年期と重なり、余計にストレスを感じるかもしれません。年齢を重ねると親の介護問題もストレスになる可能性があるでしょう。
家庭問題は相談しにくく、ひとりで悩みを抱えやすい傾向です。ストレス解消がうまくできず、不眠になってしまうかもしれません。
経済的な悩み
不眠の原因となるストレスには、お金に関する悩みもあるでしょう。結婚や出産などライフスタイルの変化に応じて、生活に必要な金額も変わってくるためです。
結婚で家族が増えると、住宅ローンや教育ローンを借りる場合もあるでしょう。転職で収入の減少などが重なれば、ローンなどの返済が重く感じるかもしれません。その結果、経済的なストレスを強く感じ、不眠になる方もいると考えられます。
仕事の悩み
仕事の悩みも不眠につながるストレスになるでしょう。厚生労働省の調査でも、仕事の量に強いストレスを感じると答えた方の割合が36.3%と最も多い結果でした。仕事量が自分の能力や希望にあっていないと、不安やストレスを感じるといえます。
また、仕事の質に強いストレスを感じると答えた方も27.1%でした。仕事の内容が自分に合っていないのも、強いストレス源となる傾向です。
人間関係の悩み
人間関係の悩みは、不眠につながる大きなストレスになります。相手があることなので解決が難しく、問題が長期化しやすいためです。
人間関係の悩みを感じやすい場のひとつが職場です。厚生労働省がおこなった「仕事や職業生活に関する強いストレスの有無」の調査結果を見てみましょう。仕事で強いストレスを感じる内容として対人関係が26.2%、顧客や取引先からのクレームが21.9%という割合でした。
人間関係の悩みは多くの人が抱えています。悩みが長期化しやすく、不眠につながるストレスになりやすいといえるでしょう。
生活環境の変化
生活環境が変わった場合、変化に適応できずストレスを抱え不眠になる可能性があります。
生活環境が変わるきっかけは、転職や引っ越しなどさまざまです。家族の転勤についていくため、自分の意志とは関係なく引っ越しが必要な場合もあります。環境や人間関係が一気に変わるため、慣れるまでストレスを感じやすいでしょう。
そのまま新しい環境に適応できないと、ストレスが続き不眠を引き起こしかねません。
ショックな出来事
一時的に起きたショックな出来事から立ち直れず、不眠症を引き起こすケースも考えられます。
たとえば配偶者など身近な人との死別を経験すると、強いストレスを受けやすいといわれています。時間がたてば癒やされる苦しみですが、中には立ち直れない場合もあるでしょう。ストレスから睡眠リズムが崩れたままになり、不眠につながってしまいます。
ほかには、会社の倒産や離婚などもストレスの強い出来事です。小さなことでもさまざまな出来事が重なった場合、不眠症につながるようなストレスになりかねません。
不眠症の特徴
不眠症には、睡眠リズムの崩れによりいくつかのパターンがあります。ここでは、ストレスによる不眠症の特徴についてくわしく解説します。
寝つきが悪い
ストレスを感じると、寝つきが悪くなる場合があります。入眠障害と呼ばれる状態で、眠りにつけないのが特徴です
入眠障害になると、普段眠っている時間に布団に入っても眠気を感じません。ストレスによる緊張で、交感神経が優位な状態が続いているためと考えられます。眠ろうと焦るほど寝つけなくなり、悪循環におちいってしまうでしょう。
途中で目が覚める
ストレスによる不眠症には、寝ても途中で目が覚めるケースがあります。中途覚醒と呼ばれ、何度も目が覚めてしまうのが特徴です。
中途覚醒では、眠っている時間が持続しにくくなります。眠りにつくことはできるのですが、夜中に目が覚め眠りが浅くなってしまいます。再び眠ろうとしても眠れず、熟睡できないまま朝になることもあるでしょう。
朝早く目が覚める
ストレス性の不眠症には、朝早く目が覚めるタイプがあります。早朝覚醒といい、朝早く起きて、そのまま目が冴えてしまうのが特徴です。
早朝覚醒では、起きたい時間より早く目が覚めてしまいます。二度寝しようと思っても寝つけず、疲れが取れません。満足できる睡眠時間が取れず、日中の眠気など影響が出る可能性もあります。
熟睡した感じがしない
十分な時間寝ているはずなのに、熟睡した感じがしないケースも不眠症です。熟眠障害といい、寝た時間が長くても熟睡感が得られないのが特徴です。
眠っている時間が取れているのにぐっすり寝た感じがしないのは、眠りが浅いためと考えられます。眠りの質が悪くなるので熟睡した感じがなく、眠気が残る場合もあるでしょう。
ストレス原因が解消されても眠れないのはなぜ?
ストレスによる不眠症では、原因が解消されても眠れない場合があります。仕事のストレスで退職したのに、不眠症が続く場合などです。
布団に入っても眠れない経験を重ねると、眠れないこと自体がストレスになります。寝ようと焦るほど目が冴えてしまい、不眠が悪化してしまうのです。真面目な性格など、眠れない状態にこだわり不眠になってしまうと考えられています。
不眠症とストレスのチェック方法
「不眠症かどうか気になる」「自分のストレスの度合いは大丈夫?」と気になる方はそれぞれ以下のページでセルフチェックをおこなってみましょう。
不眠症チェック | ストレスチェック |
【セルフチェックシート】不眠症の症状や原因は人によって異なる | 厚生労働省の「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(所要時間5分ほど) |
ストレスによる不眠症を改善するセルフケア法
ストレスによる不眠を感じたとき、早い段階であれば生活改善などで改善できる可能性があります。自分に合った方法を見つけて眠れるよう工夫してみましょう。ここでは、眠れるようになるためのセルフケア法を紹介します。
悩みを相談できる相手を見つける
ストレスによる不眠を長引かせないよう、悩みを相談できる相手や場所を見つけましょう。悩みを聞いてもらうだけで気持ちが楽になるかもしれません。
悩みの相談先は友人や家族のほか、自治体の相談窓口があります。悩みの種類によっては、親しい人に話すよりも自治体の相談員のほうが話しやすいかもしれません。
厚生労働省でも困ったときの相談方法や窓口を紹介しています。電話やSNSなどの窓口があるので、自分にあった相談場所を利用してみましょう。
自分なりのストレス解消法を持つ
ストレス性の不眠がひどくなる前に、ストレス解消法を見つけましょう。自分の好きな活動でストレス解消できれば眠りが改善されるかもしれません。
スポーツが好きな方ならチームやサークルに入り、体を動かすとよい眠りにつながります。旅行や映画鑑賞なども楽しみが増え、ストレス発散できるのでおすすめです。ストレス解消のため、生活の中に好きなことを取り入れることからはじめましょう。
寝る前にリラックスする時間をとる
寝る前にリラックスする時間をとると、副交感神経が優位になり眠りにつきやすくなるといわれています。
お風呂をシャワーで済ませている方は、ぬるめの湯船にゆっくりつかりましょう。半身浴も睡眠の質が良くなるのでおすすめです。寝る前は好きな音楽を聴いたり、軽いストレッチで体をほぐしたりすると、さらにリラックスできるでしょう。
生活習慣を整える
ストレスで生活が乱れているなら、生活習慣を見直してみましょう。食事や運動、起床時間など生活リズムに気をつけると不眠が改善されるかもしれません。
睡眠時間ばかりを気にして、ほかのことがおろそかになっていませんか。より良い睡眠のためには、栄養のある食事も大切です。朝起きて日光を浴びるのも、体内時計をリセットする効果があります。
心地よい疲れを感じる程度の運動を続けるのも、寝つきが良くなるのでおすすめです。
眠れないときもあると割り切る
ストレスにより寝つきが悪いときは、眠れないときもあると割り切ってしまいましょう。眠りにこだわりすぎないことが快眠のポイントです。
眠れないのに、無理して布団にいると余計眠れなくなる場合があります。「眠らなければ」と頑張った結果、布団に入ること自体がストレスになるのです。この状態を不眠恐怖といい、不眠が慢性化してしまう原因といえます。
ストレスによる不眠を悪化させないよう、眠れない日は割り切って布団から出ましょう。リビングなどで起きているうちに眠れる場合もあるでしょう。どうしても眠れないときは、短時間の昼寝で調整する方法もあります。
ストレス性の不眠症でつらいときは精神科や心療内科を受診しよう
強いストレスが原因で、一時的な不眠になる方は多いといわれています。時間がたてばストレス状態から解放され、睡眠リズムも元に戻ります。しかし、ストレス状態が続き、不眠が1カ月以上続く方もいます。
眠れない日が続くと、日中に眠気を感じたり集中力が低下したりなど、生活の質が下がってしまいます。週3日以上の不眠が3カ月以上続くなら病院での治療を考えましょう。
不眠症の治療は精神科や心療内科でおこないます。投薬治療が中心で、眠りの状態にあわせた睡眠薬が処方されます。薬に怖いイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、現在使われている睡眠薬は用法を守れば安全です。
不眠症が慢性化すると、セルフケアでの改善が難しくなります。ストレス性の不眠が続く場合は精神科や心療内科に相談し、快眠を取り戻しましょう。
参考サイト・文献
・心の情報サイト「不眠症(睡眠障害)」
・e-ヘルスネット「不眠症」
・こころの耳「ストレスへの気づき」
・働く女性の心とからだの応援サイト「睡眠とストレスの関係」
・NCNP病院「4月から環境が変わった方へ~ライフイベントのストレスについて~」
・まもろうよこころ「困った時の相談方法・窓口」
・ストレスについて|日本成人病予防協会
・令和4年度 健康実態調査結果の報告|厚生労働省
・令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省
・ストレスチェック制度導入ガイド|厚生労働省