うつ病で療養しているとき、自宅でどのように過ごせばよいのかわからずに悩む人はいるのではないでしょうか。うつ病での療養中は、基本的に心身をゆっくり休めることを優先するとよいでしょう。また、経過によって状態は変化していくので、そのときの調子にあわせた過ごし方をすることも大切です。
この記事では、自宅で過ごすときの大切なポイントや回復過程における過ごし方についてご紹介します。自宅での過ごし方を知ることで療養に対しての迷いが少なくなり、うつ病の回復に専念できるようになるでしょう。
うつ病後の自宅での過ごし方で大切なこと
うつ病の治療を進めるにあたって、自宅でどのように過ごせばよいのでしょうか。ここでは自宅療養で大切なポイントについて解説します。
休養に専念する
自宅で過ごしているうつ病の人は、まずは休養に専念することが大切です。うつ病は、ストレスなどによって脳のエネルギーが欠乏しうまく働かなくなり、さまざまな症状が現れる状態とされています。疲れてしまった脳を回復させるには、心身を休めるのが治療の基本といえるでしょう。
場合によっては、休むことに抵抗を感じたり罪悪感を覚えたりするかもしれません。しかし、休まずに行動しようとすると、余計にストレスがかかってしまいます。休養が大切であることを理解したうえで、しっかりと心身を休めましょう。
休養中は焦らない
休養中は焦らずに、ゆっくりと過ごすことが大切です。うつ病の治療にはある程度の期間が必要で、すぐに治るものではありません。少し調子が戻ってきたとしても、そのタイミングで無理をすると、症状が悪化する恐れがあります。
たとえば休職して治療をしている人は、「すぐに職場に戻らないと……」という焦りの気持ちが強いのではないでしょうか。しかし、復帰を急いでも症状がよくなるわけではありません。
自宅で過ごしているあいだは焦らず、「心身を休めるのが仕事」という気持ちをもって少しずつ治療を進めていきましょう。
自己判断で治療を中断しない
調子が戻ってきたとしても、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。うつ病は右肩上がりで改善するというわけではなく、よくなったり悪くなったりの波があります。そして、波がありつつも少しずつ段階的に改善に向かうといわれています。
症状が落ち着くようになっても、そのタイミングで治療をやめないように注意してください。うつ病が改善したと思っても、次第に症状が悪化してしまう恐れがあります。自己判断で治療を中断するのではなく、必ず医師と相談するようにしましょう。
うつ病の回復過程にあわせた自宅での過ごし方
うつ病の治療では、経過によって以下の3つの回復過程に分かれています。
- 急性期
- 回復期
- 再発予防期
ここでは、それぞれの期間の特徴と、どのような過ごし方がよいかについて解説します。
急性期の特徴と過ごし方
急性期はうつ病と診断されてすぐの過程で、回復過程のなかでも特に症状が強く出やすいのが特徴です。急性期の期間の目安は、うつ病と診断され治療をはじめてから1~3カ月程度です。
うつ病の症状が強く出ている時期なので、意欲の低下や気分の落ち込みなどが激しく、活動するためのエネルギーが著しく不足している状態といえます。急性期はストレスからなるべく離れて、とにかく休養に専念することが大切です。
この期間に無理をすると余計に症状が悪化する恐れがあるので、心身を休めることを優先しましょう。
回復期の特徴と過ごし方
症状が落ち着つくようになり、調子が少しずつ戻ってくる過程が回復期です。4〜6カ月ほどの時間を要するといわれています。
この期間の症状は改善傾向にあるものの、調子の波は残っています。そのため、状態が落ち着いているからといって無理に復帰しようとすると、再び症状が悪化してしまう恐れがあります。調子がよくても、医師に指示されている薬の服用や通院をやめないように注意しましょう。
回復期ではまだ症状が不安定である点を理解しつつ、少しずつできることを増やしていきましょう。
再発予防期の特徴と過ごし方
回復期が過ぎて、さらに調子が戻ってきている過程が再発予防期です。再発予防期は「維持期」と呼ぶこともあり、1年以上を目安とすることが多いようです。
この期間は回復期よりも症状が安定しており、なかには復職して仕事をしている人や復学して学校に通っている人もいるでしょう。しかし、うつ病が寛解し以前の状態まで回復していたとしても、再発するリスクはゼロではないため、まだ油断はできません。引き続き治療を継続して、症状の悪化や再発の予防に努めることが重要です。
また、環境調整でストレスを最小限にする、家族や職場の人に状況を説明して協力を得るなどの対策をしておくのもおすすめです。
うつ病の自宅での過ごし方で大切な5つのポイント
うつ病の人が自宅療養するときに意識してほしい過ごし方のポイントは、以下の5つです。
- 日の光を浴びる
- 生活リズムを整える
- 食事の栄養バランスを整える
- 体調の変化を記録しておく
- 外出や運動は調子がよいタイミングでおこなう
ここでは1つずつ詳しく解説していきます。
1.日の光を浴びる
1つ目は、日光を浴びる習慣を作ることです。日光を浴びると、「セロトニン」と呼ばれる脳内ホルモンが活性化されます。このセロトニンには、感情のバランスを整えて精神を安定化させる働きがあるとされています。セロトニンがうまく働かなくなると、感情のコントロール不良となり、うつ病の症状が悪化する恐れがあります。
また、日光を浴びると体内時計がリセットされて、生活リズムが整いやすくなります。無理に外に出る必要はなく、屋内からでもよいので、なるべく毎朝日光を浴びる習慣を作ってみましょう。
2.生活リズムを整える
2つ目は、就寝時間と起床時間を一定にして、生活リズムを整えることです。夜更かしをしたり、遅くまで寝ていたりすると、体内時計が乱れて生活リズムが崩れる原因となります。その結果、睡眠の質の低下や不眠につながり、うつ病の状態を悪化させてしまう恐れがあります。
特に職場や学校への復帰を考えている人は、決まった時間にあわせた生活リズムの定着が重要です。就寝時間と起床時間を決めておくのはもちろん、先ほど紹介したように、日光を浴びることもおすすめです。
3.食事の栄養バランスを整える
3つ目は、食事の栄養バランスを整えることです。栄養バランスの崩れは、うつ病に悪影響を及ぼすとされています。お菓子やジュースばかりを飲食するなど、栄養が偏った食事の仕方には注意しましょう。
栄養バランスを整えるには、なるべく多くの種類の食材を取り入れるなどの工夫が必要です。食事のタイミングが不規則だと消化器へ負荷がかかるので、3食規則正しい時間に食べることも意識してみましょう。また、偏った食生活は肥満や高血圧などの「生活習慣病」につながる恐れもあります。うつ病だけでなく生活習慣病の面からも、栄養バランスを整えることは大切です。
4.体調の変化を記録しておく
4つ目は、体調の変化を記録しておくことです。うつ病になるとネガティブな気持ちが強くなりやすいため、「休んでも改善しない」と思ってしまうこともあるでしょう。
睡眠や活動内容、その日の出来事などを記録しておくと、日々の変化に気づきやすくなります。「前よりも眠れるようになった」「症状が軽減した」などの経過を客観的に把握できれば、改善の自覚が芽生えやすくなります。また、状態の変化を追うことで、どのような体調管理をすればよいのかを見つけるきっかけにもなるでしょう。
5.外出や運動は調子がよいタイミングでおこなう
5つ目は、外出や運動は調子がよいタイミングでおこなうことです。外出や運動は心身をリフレッシュさせるきっかけとなりますが、調子が悪いタイミングでは無理におこなう必要はありません。
特に症状が強く出やすい急性期では、アクティブに動くとかえって状態が悪化する恐れもあります。調子が悪い場合は長時間の外出や運動を避けて、自宅での休養に専念しましょう。
また、外出・運動は短時間からはじめて、少しずつ慣れていくことが大切です。最初から長時間おこなうと疲労感が強くなるので、無理のないペースで進めていきましょう。
療養後の復帰のタイミングは主治医と相談しよう
うつ病で休職や休学をした後、症状が改善したら復職・転職・復学をする予定の人は多いのではないでしょうか。
ここで注意したいのが、うつ病の改善の兆しがみえても焦らないことです。「調子も戻ってきたし、もう大丈夫だろう」と自己判断で復帰すると、症状が悪化して仕事や学業を継続できなくなる恐れがあります。自宅療養の後にどのタイミングで復帰すればよいのかは、主治医と相談することをおすすめします。
「せっかく復職・転職・復学したのに、またうつ病が悪化した……」とならないように、主治医と相談して慎重に復帰の時期を決めましょう。
うつ病で休養中は焦らず自宅でゆっくり過ごそう
うつ病の療養のために自宅で過ごす場合は、まずは焦らずに休養に専念することが大切です。また、調子が戻ってきても、自己判断で治療を中断しないように注意しましょう。
うつ病は経過によって徐々に症状が落ち着くとされていますが、調子の波が出る場合があります。調子が悪いときは無理をせずに心身を休めて、症状が安定してきたタイミングで少しずつ活動量を増やしてみてください。
参考サイト・文献
・こころの耳| 厚生労働省 – 3 うつ病の治療と予後
・e-ヘルスネット|厚生労働省 – セロトニン
・東邦大学|幸せホルモン「セロトニン」
・e-ヘルスネット|厚生労働省 – 睡眠・覚醒リズム障害
・e-ヘルスネット|厚生労働省 – 健やかな眠りの意義
・国立精神・神経医療研究センター|肥満や高脂血症、食生活・運動習慣がうつ病と関連~11,876 人を対象とした大規模ウエッブ調査で明らかに~
・e-ヘルスネット|厚生労働省 – 肥満と健康