不眠症の原因とは?うつ病との関連や不眠の対処法を紹介

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「不眠ってなんで起こるの?」
「私の不眠の原因ってなんだろう?」
「病気でステロイドを飲み始めて眠れなくなった」

睡眠は、健康に生活をする上で欠かせないものです。しかし、睡眠に関する悩みを抱えている人は多く、不眠症は国民病だともいわれています。不眠となるきっかけは人それぞれで、主に5つの原因があるとされています。

この記事では、不眠症の原因や不眠症の定義、また不眠症に対する治療などについて解説します。自分でできる対処法から、実際に病院でおこなわれる治療も紹介していますので、参考にしてください。

不眠症の原因

不眠症を引き起こす原因には、生理的要因・心理的要因・薬理学的要因・身体的要因・精神医学的要因の5つがあります。

不眠症の要因具体例
生理的要因(Physiologica)生活習慣や睡眠環境、交代勤務など
心理的要因(Psychological)心配事や不安、ストレスなど
薬理学的要因(Pharmacological)アルコールや薬の副作用など
身体的要因(Physical)痛み、かゆみ、咳、頻尿など
精神医学的要因(Psychiatric)うつ病や統合失調症など

これらは英語の頭文字をとって、「5つのP」と呼ばれています。この5つ以外にも女性ならではの原因が潜んでいることがあります。ここでは主な5つの要因について解説します。

1.生理学的要因

生理学的な要因とは、生活習慣や睡眠環境、時差ボケなどです。具体的な要因となり得る一例として以下のような事例が挙げられます。

  • 不規則勤務で昼夜逆転傾向
  • 周りの音がうるさい
  • 寝る部屋が明るすぎる
  • 寝具が自分に合っていない

2.心理的要因

心理学的要因とは、心配事や不安、ストレスなどです。ストレスによる一時的な不眠は不眠症でなくとも起こり得ます。ストレスを感じる出来事が影響し、不眠を経験したことは誰しもあるでしょう。この場合には、ストレスが消失すれば不眠の症状も改善します。しかし、不眠が持続する場合には、不眠症の可能性があります。

3.薬理学的要因

薬理学的要因となり得るものは、アルコールやカフェイン、ニコチン、服用中の薬などです。栄養剤などのドリンクにはカフェインが含まれているものもあり、知らぬ間にたくさん摂取していることもあるので注意しましょう。

以下は不眠の原因となり得る薬の一例です。

  • ステロイド
  • 中枢神経刺激薬 
  • 気管支拡張薬(テオフィリン) など

4.身体的要因

身体的要因は、身体の疾患や症状です。

たとえば、以下の疾患や症状が不眠の原因となることがあります。

  • 蕁麻疹や湿疹などの痒みを伴う疾患
  • 関節リウマチや外傷などの痛みを伴う疾患
  • がん性疼痛
  • 喘息発作
  • 頻尿 など

身体的な疾患の治療や症状の緩和で、不眠が改善されることがあります。

5.精神医学的要因

不安や抑うつなどが不眠に影響することもあります。ただの不眠かなと思っていたら実はうつ病だったというケースも少なくありません。

不眠の症状に加えて、憂うつな状態が続いたり、何ごとにも楽しめなかったりといった症状がある場合には、もしかしたらうつ病を発症している可能性があります。

不眠とうつについて詳しく知りたい方は、「​​不眠症とうつの関係について|ただの不眠が実はうつ病だったケースも」の記事もあわせて参考にしてみてください。

不眠症とは?

「寝つきが悪い」「眠いのに眠れない」といった経験をしたことがある人は多いと思います。しかし、不眠症について正しく知らない人も多いでしょう。ここでは、どのような状態が不眠症なのか、その定義や診断基準などを具体的に解説していきます。

H3:不眠症の定義と実際

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によると、不眠障害の診断基準の概要は次の通りです。

  • 以下の症状のうち1つ以上を伴う

入眠困難、睡眠持続困難、早朝覚醒

  • 仕事や学業、行動などの障害を引き起こしている
  • 睡眠困難が少なくとも1週間に3回、3カ月間持続する

参照:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

つまり、症状が週に3回以上・3カ月以上続いており、仕事や学業などに支障をきたしている場合に「不眠症」と診断されます。

では、実際に不眠に悩む人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省の調査によると、「睡眠全体の質に満足できなかった」と答えた人は34.2%です。およそ3人に1人は、睡眠にまつわる悩みを抱えていることがわかります。

不眠症のタイプ

次に、不眠症のタイプについて見てみましょう。不眠症には、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つのタイプがあります。

不眠症のタイプ症状
入眠障害寝つきが悪く、布団に入ってから眠るまでに時間がかかる
中途覚醒途中で何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝つけない
早朝覚醒早朝または予定の起床時間より早く目が覚めて、再び眠ることができない
熟眠障害睡眠時間は足りているのに熟睡感が得られない、眠りが浅い

これらの不眠症の症状は1つの場合もあれば、2つ以上が該当する場合もあります。詳しくチェックしてみたいという方は、「​​【セルフチェックシート】不眠症の症状や原因は人によって異なる」をあわせてご覧ください。

不眠症のサイン

典型的な不眠の症状として、先ほどご紹介した入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などが表れます。しかし、これらは必ずしも不眠症と結びつきません。症状が続いたり、日常生活に支障をきたしたりしたときに、不眠症の可能性が高まります。

ただ単に「眠れないから」ではなく、下記のようなサインがないか確認しましょう。

  • 朝起きたときに休息がとれている感じがしない
  • 日中に眠くなって仕事や学業に支障をきたす
  • 活力や気分の低下が見られる

睡眠に関する症状のほか、日中に影響が出ていないかもポイントとなります。

不眠症かも?と思ったら

眠れない日が続き、「もしかしたら不眠症かもしれない……」と思ったら、どうすればいいのでしょうか。まずは自分が抱えているストレスや睡眠環境などについて考え、見直せるところは見直していきましょう。不眠の原因を明らかにして、それを取り除ければ、改善に向かう可能性があります

また、自分に合った方法で安眠できるよう工夫することも効果的です。ここでは、自分でできる不眠への対処法と、受診の目安をご紹介します。

まずは自分でできる対処法を試す

安眠のコツとして、一般的に挙げられるのは下記の通りです。

  • 就寝時間や起床時間を一定にする
  • 太陽の光を浴びる
  • 適度な運動をする
  • ストレスを解消する
  • 寝る前にリラックスタイムをつくる
  • 睡眠環境を見直す
  • 睡眠時間にこだわりすぎない

睡眠において体内時計は重要であり、これを乱さないようにできるだけ同じ時刻に就寝・起床しましょう。太陽の光も体内時計のリセットに有効だといわれています。適度な運動は適度な疲労感を生み出し、心地よい眠りに導きやすくなります。激しい運動は、交感神経の興奮によってむしろ寝つきを悪くするおそれがあるので注意が必要です。

上手に気分転換をしてストレスを解消したり、寝る前にゆったりとリラックスして過ごしたりするのも効果的だといわれています。また、寝室の環境も重要なポイントの1つです。布団の硬さや枕の高さ、照明、温度や湿度などに気を配ってみましょう。

改善しないときは受診する

自分でいろいろと試してみても不眠の症状が改善しない場合には、無理をせずに医療機関を受診することが大切です。先述したように、不眠症は3カ月以上持続する場合に診断されます。眠れない状態が慢性化している場合、自力で治すのは難しいケースもあります。まずはかかりつけ医でもいいので、相談してみるといいでしょう。不眠についての悩みを人に話すだけでも、不眠の症状が和らぐ可能性もあります。

「不眠症かもしれない」と考えすぎたり、「寝なくてはいけない」と思い込んだりすると、かえってストレスになる場合があります。不眠症を悪化させることもあるので、注意しましょう。

不眠症に対する治療

医療機関を受診した場合、不眠症に対して実際にどのような治療がされるのでしょうか。睡眠薬を用いた薬物療法のイメージが強いかもしれませんが、不眠症の治療は睡眠習慣や対処法の見直しから始まります

それでも改善しないときにおこなわれるのが、睡眠薬による治療です。ここでは、不眠症に対する治療について解説していきます。

睡眠衛生と日常生活の改善

不眠症の治療は、まず下記の1~4に該当する不適切な睡眠衛生や習慣を改善することから始まります。

1.寝る前の覚醒促進物質の摂取

寝る前のカフェイン(緑茶、紅茶、コーヒー)・ニコチン(タバコ)の摂取、寝酒

2.床上時間のミスマッチ

寝不足を取り戻そうとして普段より長く寝床に居続けることで、かえって寝つきが悪化し、眠りが浅くなる

3.日中の活動量減少

不眠が続くと日中に動くのが億劫になりがちだが、日中の活動量が減ると寝つきが悪くなり、眠りが浅くなる

4.睡眠状態誤認

実際の(客観的な)睡眠時間と、自覚的な睡眠時間が一致しないことがあるため、睡眠時間をむしろ積極的に短くすることが、睡眠を濃縮させ、不眠の解消に役立つことがある

ちなみに睡眠衛生とは、質のいい睡眠をとるための行動や環境を整える方法のことです。このように睡眠衛生や日常生活・習慣を見直して改善することで、不眠症の改善にもつながることがあります。

なお、不眠症の治し方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

薬物療法

睡眠衛生や日常生活の改善をしても不眠が改善しない場合には、睡眠薬による治療がおこなわれます。薬物療法は、もっとも多く用いられている治療法です。睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動系があります。これらは持続時間によって4つに分類されます。それぞれの持続時間や代表的な薬剤は下記の通りです。

分類持続時間(半減期)主な薬剤名(商品名)
超短時間型6時間ロゼレム、マイスリー、アモバン
短時間型6~12時間デパス、レンドルミン、リスミー
中間型12~24時間サイレース、ユーロジン、ベンザリン
長時間型24時間以上ダルメート、ソメリン

また、不眠症のタイプによる睡眠薬の使い分けについて、下記に図で示します。

睡眠薬は、必ず主治医の判断のもとで、用法用量を守って使用しましょう。

非薬物療法

不眠に対する認知行動療法は、「CBT-I」と呼ばれる心理療法の1つです。不眠の原因となっている生活習慣や睡眠習慣を明らかにし、改善につながる生活習慣を身につけることを目的としています。

欧米では認知行動療法などによる非薬物療法が推奨されていますが、日本では医療保険が適用されていません。治療を提供できる医療機関も多くなく、不眠症における認知行動療法は普及していないといえるでしょう。

不眠症の原因について知り正しく対処しよう

不眠症を引き起こす原因はさまざまです。不眠症だと思っていても、実は別の原因があったり、何らかの疾患が隠れていたりする可能性もあります。

現在不眠に悩まれている方は、この記事で紹介した対処法を試してみることをおすすめします。不眠の症状が改善しない場合には、専門医に相談しましょう。睡眠薬に対してマイナスなイメージをもっている人もいるかもしれませんが、正しく使用すれば決して怖いものではありません。不眠を解消することは生活の質改善にもつながりますので、一人で抱えこまずに医療機関での受診の検討をおすすめします。

参考サイト・文献
e-ヘルスネット|厚生労働省
こころの情報サイト|国立・精神医療研究センター
不眠症|日本臨床内科医会
日本神経治療学会|標準的神経治療:不眠・過眠と概日リズム障害
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
不眠で困ったときは|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
不眠症|全国健康保険協会
こころの耳|厚生労働省
より健康的な睡眠を確保するための生活術|厚生労働省
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン
JーSTAGE「CBT‒I の理論と実践」

心療内科をお探しなら
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  1. 365日いつでも利用できます!土日祝日いつでも「ツライときすぐに使える
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精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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