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うつ病

うつ病の初期症状とは|重症化しないためのポイントを解説

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当



うつ病の発症率は高く、約15人に1人はうつ病を経験しているといわれています。決して珍しいものではなく、身近な病気といえるでしょう。

皆さんのなかにも、いつもとは異なる不調から「これってうつ病の症状なの?」と悩んでいる人がいるかもしれません。

うつ病はいきなり悪化することはなく、小さなサインや初期症状がみられてから徐々に心身ともに苦痛を感じるようになります。この状態が続くことで、日常生活や社会活動に支障が出てしまう人もいます。

本記事では、うつ病の初期症状や病院で受診する目安、治療法や症状を悪化させない過ごし方などを解説します。

「自分がうつ病なのか確認したい」「いつもと様子が異なる人がいて心配」などの悩みをお持ちの人は、ぜひ参考にしてください。

うつ病とは?

うつ病とは、気分の落ち込みや何事に対しても楽しさや喜びを感じないなどの心理的症状と、不眠や食欲不振などの身体的症状がみられる精神疾患です。症状が悪化すると、日常生活や社会活動に支障が生じてしまうことも珍しくありません。

原因ははっきりと解明されていませんが、心的ストレスや身体的変化(妊娠や加齢など)によって心身への負担が大きくなると発症すると考えられています。

うつ病は、未治療の場合6~12カ月で6~7割改善するとされており、薬物療法を開始すると3カ月ほどで回復に向かいます。しかしなかには、治療しても慢性的な経過をたどる人や、再発してしまう人も少なくありません。

うつ病にみられる5つの初期症状・サイン

うつ病は小さなサインや初期症状から、徐々に悪化していくのが特徴です。また、自分では症状に気づきにくいことも多く、周囲がいつもと違う様子に気がつくケースもあります

この章では、うつ病にみられる初期症状とサインを5つご紹介します。

  • 何事も楽しめない・興味がない
  • 気分の落ち込みが続く
  • 睡眠障害などの身体的不調がみられる
  • 集中力が続かず仕事でミスが増える
  • 休んでも疲れがとれにくい

上記の初期症状について、ひとつずつ解説します。

初期症状(1)何事も楽しめない・興味がない

うつ病の基本症状は「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」とされています。今まで楽しんでいたことが楽しめなくなった、あらゆることに興味が湧かないなどの状態は、うつ病の初期段階といえるでしょう。

さらに、他人と会うことを避ける、出かけることをおっくうに感じて外出しなくなるなどの行動の変化がみられることもあります。

初期症状(2)気分の落ち込みが続く

人は誰でも失敗したり悲しいことが起きたりすると気分が落ち込みますが、通常は数日ほどで回復することが多いでしょう。

しかしうつ病の場合は、気分の落ち込みが2週間以上続くのが特徴です。常に嫌な出来事や失敗したことを考えてしまい、なかなか立ち直れなくなってしまいます。

その結果、自分を責めつづけ、自分には価値がないと感じるなど症状の悪化につながる恐れがあります。

初期症状(3)睡眠障害などの身体的不調がみられる

うつ病の初期症状としてあらわれやすい症状の一つに睡眠障害があり、うつ病患者の約8割以上に睡眠障害がみられるとのデータがあります。入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒など、人によってみられる症状は異なります。

睡眠障害があると、日常生活への支障が生じやすくなるだけでなく、頭痛や肩こりなど身体的不調の原因にもなるのです。結果として、うつ病の症状悪化にもつながります。

また、十分な睡眠が取れていないことによって、目の下にクマができたり疲れている様子がみられたり、外見に変化があらわれることもあります。

うつ病の睡眠障害については、こちらの記事でも詳しく解説していますので参考にしてみてください。

初期症状(4)集中力が続かず仕事でミスが増える

うつ病では、集中力や思考力の低下がみられます。そのため、家事や仕事の能率が悪くなり、ミスが増えるなどの状態が起こります。この状態のときは、自分で気づくよりも周囲が気づくことが多いでしょう。

不眠で十分な睡眠がとれていない場合も集中力が低下し、仕事などでのパフォーマンスに影響します。

初期症状(5)休んでも疲れがとれにくい

休日にゆっくり休んでもなんとなく疲れている、全身のだるさがとれないなど、疲れが回復しない状態もうつ病の特徴の一つです

このような身体症状は、内科などの病院に行っても異常が見つからないため、精神科や心療内科などの受診を勧められるケースも少なくありません。

以上、うつ病のサインや初期症状について5つの例を紹介しました。

いずれも少しの影響であれば、「疲れているだけかな」と見過ごしてしまうほどの日常的な症状でもあります。そのため、うつ病だとは気づかずに重篤化してしまうことも少なくありません。不調が気になったときは、うつ病の可能性も念頭に置いておきましょう。

そのほかの症状を確認したい人は、こちらの記事のチェックシートをご活用ください。

うつ病による初期症状の期間|病院を受診する目安

抑うつ気分や興味・喜びの喪失などの精神症状、不眠や食欲不振などの身体症状が2週間以上続いている場合は、医療機関で受診しましょう。受診する診療科は、「精神科」や「心療内科」、「メンタルクリニック」などがあります。

初めての受診で不安な人は、家族や友人など誰かと一緒に行くと安心でしょう。

うつ病はいきなり重い症状があらわれるわけではありません。症状が重症化する前にさまざまな精神的・身体的症状がみられ、徐々に悪化するのが特徴です。つらい状態で我慢してしまうと、症状の悪化や慢性化の恐れがあるため注意しましょう。

2週間という期間はあくまで目安ですので、症状がつらい、日常生活や社会活動に支障が出ている場合は早めに受診することが大切です。うつ病は、早期発見・早期治療が重要であり、早くに治療が開始されれば、その分回復までの期間も短くなるとされています。

「いつもと様子が違う」と思ったら早めに受診しましょう。

うつ病の治し方

うつ病を発症したら、まずはゆっくりと休養をとることが大切です。そして、医師より病状や症状に合わせて選択された適切な治療法で、回復を目指しましょう。

うつ病の治療法は以下の3つです。

  • 休養、環境調整
  • 薬物療法
  • 精神療法

上記の治療法を、ひとつずつ解説します。

治療法(1)休養、環境調整

うつ病の治療で大切なのは、しっかりと休養をとり、心身を休ませることです。同時に、ストレスを軽減するための環境調整も重要となります。

状況によっては、学校や仕事を休んだほうがよいケースもあります。

なかには、休むことで「職場や家族に迷惑をかけてしまうのでは」と考え、無理をしてしまう人もいるでしょう。しかしまずはゆっくりと休み、治療に専念することが早く回復するための秘訣です。

休職をお考えの人は、こちらの記事も参考にしてください。

治療法(2)薬物療法

うつ病では、休養や精神療法と併せて、薬物療法も欠かせません。

うつ病で使われる薬剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬が一般的です。ほかにも個人の症状に合わせて、抗不安薬や睡眠薬などが選択されることもあります。

ただし、薬剤には少なからず副作用の可能性があるため、医師の指示に従い、用法用量を守って服用する必要があります。もし、吐き気や便秘・下痢などなんらかの症状がみられた場合は、早めに医師へ相談しましょう。

なお、抗うつ薬の効果が発現するには、2週間以上かかるといわれています。効果が出ないからといって内服を中断してしまうことがないように注意しましょう。

もしかすると、「抗うつ薬で、性格や人格が変わるのでは?」と不安を抱いている人もいるかもしれません。しかし抗うつ薬は、脳内神経伝達物質のバランスを整えることが目的で、抗うつ薬を内服したからといって人格や性格が変わることはないとされています

治療法(3)精神療法

カウンセリングなどの精神療法も、うつ病には必要不可欠な治療法の一つです。

精神療法では、うつ病の症状悪化や再発の防止としての意味合いが強く、思考パターン・行動パターンを見直して、ストレスへの耐性を強化し、適切な対処法を身につけます。「認知行動療法」や「対人関係療法」、「森田療法」などが用いられます。

それぞれの治療の特徴は以下の通りです。

認知行動療法・患者自身の対人関係に焦点をあて、対人関係による問題と出現している症状の関連性を理解し、問題解決に取り組む治療法

・認知療法や薬物療法に匹敵するほどの効果が期待されていると言われいる

対人関係療法・対人関係に焦点をあて、そこで生じる感情や行動、関係性を変化させながら、問題を解決したり、対処法などを身につける。
森田療法・日本の精神科医、森田正馬によって作られた神経症に対する独自の精神療法

・症状や問題行動にはあえて焦点を当てず、患者さんの固定化した視点を切りかえさせる。その結果、認知が修正され精神症状・身体症状が改善、そして行動や生活・生き方が変わっていくのを期待する方法

ここまで、うつ病の治療の3つである、「休養、環境調整」「薬物療法」「精神療法」について解説しました。

初期症状の段階であっても、基本となる治療法はこの3つです。症状によって、どの治療をどれだけおこなうかは変わってきます。しかし、初期であれば少ない負担での回復が見込めるのです。

うつ病の初期症状を悪化させない過ごし方

うつ病の初期症状がみられているときは、過ごし方にも注意が必要です。

この章では、うつ病の症状を悪化させず、効果的に回復に向かうための過ごし方をご紹介します。

  • 無理をしない
  • 規則正しい生活を送る
  • ストレスをためない
  • 一人で悩まず周囲に相談する

上記の過ごし方について、ひとつずつ解説します。

無理をしない

うつ病の症状がみられているときは、無理をせずゆっくりと過ごすことが大切です。状況によっては、学校や仕事を休むことも視野に入れましょう

悩んでいることから離れるために、自分の好きなことや趣味に没頭して過ごすのも有効です。

規則正しい生活を送る

うつ病の症状では、不眠や食欲不振などの身体症状がみられやすくなります。このような場合は、生活リズムを整えるのが効果的です。

適度な運動や睡眠環境の調整、バランスのよい食事をするなど、規則正しい生活を心がけましょう

特に睡眠障害がある場合は、生活習慣によって改善が期待できるとされています。朝起きたら日光を浴び、日中は適度な運動を実施。寝る2~3時間前を目安にお風呂に入り、早めに布団に入る。このような一日の生活リズムを意識すると、快眠を得られやすくなります。

無理のない範囲で生活リズムを整えていきましょう。

ストレスをためない

うつ病の初期症状を悪化させない、再発させないためには、ストレスを適切に対処する力が重要です。ストレスを感じたら、自分に合った方法で発散・休息して、ストレスをため込まないようにしましょう

ストレスを発散する方法として効果的とされているのは、以下のものがあります。

  • リラクゼーション(入浴・アロマセラピー・ヨガなど)
  • 適度な運動(散歩・スポーツなど)
  • コミュニケーション
  • 趣味

ストレスの緩和が目的なので、好ましいと感じるものを取り入れれば十分です。ただし、好きだからといって、過度な飲酒や買い物、ギャンブルなどに依存することはやめましょう。

一人で悩まず周囲に相談する

悩みや不安は一人で抱え込まず、家族や友人など話しやすい人に相談するのが効果的です。モヤモヤした気持ちを話すだけでも、自分の考えが整理され、心が楽になります。

もし気軽に相談できる人が身近にいない場合や、周囲の人では解決できない問題がある場合などは、医療者やカウンセラーに相談してみましょう。専門家に相談することで、問題の解決方法を見つけられるかもしれません。

うつ病には休養が大切ですが、ただ時間を過ごすだけではなく、より効果的な過ごし方を心がけてみましょう。十分な休養がとれない状況であっても、症状の悪化防止・改善を見込める過ごし方を意識してみてください。

うつ病の初期症状かも?と感じたら受診しよう

うつ病はいきなり症状が重くなることは少なく、小さなサインや初期症状からあらわれます。ストレスによる負担を受け続け、症状に気がつかないまま経過すると、症状の悪化や慢性化につながってしまうこともあります。

「おかしいな」と感じる、気になる症状がある場合は、早めにメンタルクリニックなどの医療機関で受診しましょう。早期に適切な治療を開始することが、回復への近道です。

参考文献・サイト
うつ病とは|厚生労働省 こころの耳
今日のうつ病事情|独立行政法人 国立病院機構 金沢医療センター
うつ病を知る|厚生労働省
気分障害に併存する睡眠障害|国立精神・神経医療研究センター NCNP病院
睡眠障害ガイドライン|国立精神・神経医療研究センター  NCNP病院
うつ病の治療と予後|厚生労働省 こころの耳
対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy)~|北海道過程医療学センター
ストレスへの対処|厚生労働省 こころの耳



藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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