「双極性障害だけど、薬を飲まないとどうなるの?」
「今は調子良いから薬を飲みたくない」
このように思われている方もいるかもしれません。
双極性障害の方の中には、薬を飲まないとどうなるのか知らない方もいるでしょう。薬を飲まないと、症状が悪化したり、再発するリスクが高くなったりする可能性があります。
この記事では、双極性障害の方が薬を飲まないとどうなるか、薬を飲みたくないときの対処法も解説します。双極性障害の方で、薬を飲まないとどうなるかわからず不安な方、飲みたくないときの対処法に悩んでいる方は、ぜひ、最後までご覧ください。
双極性障害の方が薬を飲まないとどうなる?
双極性障害の方が薬を飲まないと、主に下記2つのリスクが生じると考えられます。
- 症状が悪化する可能性がある
- 寛解期の場合は再発するリスクが高くなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
症状が悪化する可能性がある
双極性障害の方が薬を飲まないと、症状が悪化する可能性があります。
薬物療法の目的は躁状態の治療、抑うつ状態の治療、予防の3つです。
双極性障害の方が日常生活を維持するためには、薬物療法が重要です。正しく薬を飲まないと症状が悪化し、特に抑うつ状態では自殺のリスクが高まる可能性があります。
また、躁/軽躁状態では、薬を飲まず症状が落ち着かなければ、他者へ暴力をふるったり、買い物やギャンブルに莫大なお金をつぎ込んだりすることもあるでしょう。離婚したり友人が離れたりなど人間関係を失い、社会的な地位が崩れかねません。
以上のことから、抑うつ状態や躁/軽躁状態の症状が悪化する可能性があるため、薬を飲み続け症状をコントロールすることが大切です。
寛解期の場合は再発するリスクが高くなる
双極性障害の方が薬を飲まないと、寛解期の場合は再発するリスクが高くなります。
なぜなら、薬を飲むことは症状のコントロールだけではなく、再発を予防する効果があるためです。
寛解とは、慢性的な病気の症状が一時的に落ち着いている状態を指します。双極性障害は、抑うつ状態と躁/軽躁状態を繰り返す精神疾患であり、一旦症状が落ち着いても、発症後5年以内に約8割の方が再発すると言われています。
双極性障害の方にとって、症状が落ち着いても薬を飲み続けることはとても重要なのです。薬物療法を続けていても 1 年後に再発するリスクは約40%と言われていますが、薬物療法を中断すると再発するリスクが約65%に上がるという報告もあります。
ところが、症状が落ち着いている時期に「症状は何もないから、薬を飲まなくてもいいのでは?」「もう治ったから薬を飲まなくて大丈夫」と思い、薬を飲まなくなる方も少なくありません。
しかし、適切に薬を飲まなければ、再発のリスクが上がるだけでなく、抑うつ状態と躁/軽躁状態の症状が表れる間隔が徐々に短くなり、次第に薬が効きにくくなる可能性もあります。
寛解期で症状が表れておらず落ち着いていると感じる時期でも、薬を飲み再発の予防に努めなければなりません。
薬を飲みたくないときの対処法
薬を飲みたくないときの対処法は、以下の2つです。
- 主治医に相談する
- 周囲の人に協力してもらう
それぞれの対処法を具体的にみていきましょう。
主治医に相談する
薬を飲みたくないときは、まず主治医に相談しましょう。
なぜなら、飲みたくないと感じて自己判断でやめたり、用量を減らしたりすると、症状が悪化したり、再発するリスクが高まったりするためです。
「薬を飲みたくない」と感じるのには、さまざま要因が考えられます。例えば、薬を飲む回数が多いためわずらわしく感じる場合や薬の副作用が出てつらい場合などです。
主治医に相談することで、薬を飲む回数を減らせる可能性があります。薬を飲む回数が減ると、こころの負担も軽減できるでしょう。
また、薬を持続注射剤に変更できるかもしれません。持続性注射剤は、一度注射すると4週間効果が持続します。そのため、持続性注射剤に変更できれば、薬を管理するわずらわしさが減り、薬を飲む時間を気にしないで生活できるようになる可能性があります。
薬の副作用が出てつらい場合も、主治医に相談しましょう。双極性障害でよく使われるリチウムは、双極性障害の特効薬であり、躁状態や抑うつ状態を改善する効果があります。
再発予防の効果もある一方で副作用が多く、稀にではありますが、ほかの薬との飲み合わせで中毒を起こすこともあります。手が震えたり、意識がぼんやりしたり、吐き気が出る場合もあり、この症状に悩む方が少なからずいるでしょう。
主治医に相談すると、副作用が少なくその方に合った薬へ変更できる可能性があります。
ほかにも、さまざま理由により薬を飲みたくないと感じている方がいるかもしれません。しかし、双極性障害に薬物療法は欠かせません。
そのため、まずは主治医に「飲みたくない」と感じている理由を素直に打ち明け相談しましょう。薬を飲みたくないと思わない方法はないのか、どの方法であれば薬を飲み続けられるのかなど、双極性障害の方に合った方法を主治医と検討していくことが大切です。
周囲の方に協力してもらう
薬を飲みたくないときは、周囲の人に協力してもらうことも一つの手段です。
双極性障害の方は、症状が落ち着いている寛解期でも薬を飲み続ける必要があります。しかも、長期間続けなければならないため、非常にわずらわしく、大きなストレスといえます。
こういったわずらわしさを少しでも軽減しながら、薬を飲み続けるためには周囲の人に協力してもらうことがおすすめです。しかし中には、薬を飲んでいるということを知られたくない方もいるかもしれません。その場合には、まずは話しやすい人に相談してみる、上司にのみ相談してみるなどして自分以外の人が病気について知っている状況を作っておくとよいでしょう。
また、躁/軽躁状態、抑うつ状態、症状が落ち着いている寛解期で薬の飲み方は異なります。抑うつ状態や躁状態は、自他共に気づきやすいですが、軽躁状態は「調子がよい」と自覚し、周囲の方も見逃してしまうことが少なくありません。
受診が遅れてしまうと、症状に合った薬を飲めなくなります。結果、「薬を飲みたくない」とより強く感じるケースも考えられます。
そのため、周囲の人に「少しでも様子が変わった」と感じた際には伝えてもらい、すぐに受診するようにしましょう。周囲の方に協力してもらいながら、症状を観察してもらったり薬を飲み続けたりすることが大切となります。
双極性障害の治療は薬以外も大切
双極性障害の治療では薬以外にも大切なことが2つあります。
まずは「病気であることを受け入れる」ことが大切です。
受け入れなければ、双極性障害の方が自身の病気を正しく理解し、うまく付き合っていくことは難しいでしょう。「ずっと薬を飲み続けられるか不安」「なんともないのに、薬を飲み続けないといけないのか」と薬を飲み続けながらも、不安を抱き、否定的な感情になっている方もいるかもしれません。
精神療法(心理療法)を受けると、受け入れがよりスムーズになります。病気の性質だけではなく、薬を飲み続ける必要性、どのようなサインが出たら再発しやすいのかなど把握できます。
双極性障害の治療は、いかに早く病気であることを受け入れるかが重要です。主体的に薬を飲み再発予防に取り組めれば、病気にとらわれることなく日常生活を送れるでしょう。
また「規則正しい生活を送る」ことも大切です。
一晩の徹夜でも、躁状態の引き金になる可能性があります。朝はしっかり日光を浴びて、軽い運動をして、一定のスケジュールで生活することが大切です。生活の工夫により、病気が安定するでしょう。
双極性障害とうまく付き合うために薬はしっかり飲もう
双極性障害の方の中には「薬を飲みたくない」「飲み続けられるか心配」と感じる方もいるでしょう。
症状が安定しているときにも、薬は飲み続けなければなりません。薬を自己中断したり、量を減らしたりすると、症状の悪化や再発のリスクを高める可能性があります。
薬を飲みたくないと悩んだり、薬を飲み続けるためにはどうすればいいのか不安を感じている方は、主治医に相談しましょう。自身に合った薬の飲み方で、しっかり薬を飲めれば双極性障害とうまく付き合っていけるでしょう。
参考サイト・文献
・双極性障害の第一人者に聞く 「躁・うつと上手くつきあう方法」とは?|順天堂大学
・双極性障害とは|順天堂大学医学部/大学院医学研究科 気分障害分子病態学講座
・双極性障害(躁うつ病)とつきあうために|日本うつ病学会 双極性障害委員会
・重篤副作用疾患別対応マニュアルリチウム中毒|厚生労働省
・日本うつ病学会診療ガイドライン双極性障害(双極症)2023