「不安障害の影響で仕事が続かない」
「仕事をしないといけないけど、不安障害があるから就職するのが怖い」
「不安障害でもできる仕事や自分に合った仕事の探し方があれば知りたい」
このような悩みや疑問はありませんか?
不安障害は、
- 人前に出ると話せなくなる
- 急にパニックになる
- すぐ疲れる
などの症状があるため、仕事に大きな影響を及ぼします。
不安障害の人の中には、現在の仕事を続けるかどうか、どういった仕事に就職するべきか悩む人もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、不安障害があっても仕事を続けたり、自分に向いている仕事に就くことは可能です。しかし闇雲に行動するだけでは気持ちが焦るばかりで、問題の解決が遅れるかもしれません。
本記事では、不安障害の人が向いている仕事の特徴やおすすめの働き方、仕事を探す方法を丁寧に解説します。仕事に対して不安のある人は、ぜひ参考にしてください。
不安障害の人におすすめする仕事
不安障害の人に向いている仕事には、共通点や特徴があります。
具体例を交えて紹介します。
不安障害の人に向いている仕事の特徴とは
不安障害には以下のような症状があります。
- 人と話をする際に過度に緊張したり不安を抱いたりする
- 人前に出ると頭が真っ白になり汗が止まらなくなる
- 満員電車などの人混みで発作が起こる
そのため、不安障害の人に向いている仕事は「人と関わる機会が少ない仕事」であるといえます。また、「ほかの人に合わせて仕事をしないといけない」という焦りから不安が大きくならないよう、自分のペースで進められる仕事も向いているといえるでしょう。
不安障害の人に向いている仕事5選
不安障害の人に向いている仕事として、以下の5つが挙げられます。
それぞれ紹介します。
ライティング デザイン | ライティングやデザインは人と関わる機会が少ない仕事です。インタビュー記事などでない限り、誰かと実際に会って仕事をする場面がほとんどないからです。案件によっては、オンラインなどで打ち合わせをおこなう必要がありますが、事前に相談しておけば考慮してくれる可能性もあるでしょう。 また、納期さえ守れば自分のペースでスケジュールを組めるのも特徴です。お金を稼ぐにはスキルが必要ですが、高度な専門知識や技術は必ずしも必要ではないため、おすすめの仕事といえるでしょう。 |
動画編集 | 動画編集もライティングやデザインと同様、人と関わる機会が少ない仕事の1つです。近年では動画市場が伸びているため、動画編集者の需要も一定数あります。 動画を編集するにはスキルが必要ですが、スキルさえ身につけられれば安定した収入を得られる可能性があります。 |
ごみ収集作業 | ごみ収集作業は、同僚とのやり取りはあるものの、それ以外では人と接する機会が少ないため、不安障害の人におすすめの仕事です。 ごみ収集作業員になるために学歴や資格は必要ありません。しかし、自治体によっては年齢制限が設けられている場合や普通自動車免許が必要な場合があります。 粗大ゴミなどの重い廃品を扱う機会は多いですが、体力に自信のある人にとってはおすすめの仕事です。 |
新聞配達 | 新聞配達は、朝刊や夕刊の時間に合わせて配達するのが主な業務です。人と関わる機会が少なく、業務内容が比較的シンプルであるため自分のペースで仕事をしやすい特徴があります。 また、配達をする時間は早朝や夕方に固定されるので、昼の時間帯に通院ができるのも強みです。 |
工場作業 | 工場での業務は、任された作業を丁寧に安全におこなう能力が求められます。人を相手にする仕事ではないため、不安障害の人に向いている仕事といえます。 工場でおこなう作業には、安全や品質を考慮したルールが設けられているのが一般的です。ルールを守り、黙々と仕事をこなすことができる人には向いている仕事といえるでしょう。 |
不安障害の人には向いていない仕事5選
不安障害の人に向いていない仕事として、以下の5つが挙げられます。
- 営業職
- 受付
- 販売業
- 接客業
- 教職
上記5つの仕事は、いずれも同僚やお客さまなど、人と関わることが前提となる仕事です。また、仕事のペースを第三者に合わせる必要があるため、不安障害の人にとっては緊張や不安の症状が出やすい傾向があります。
上記5つの仕事は、不安障害の人には向いていない仕事といえるでしょう。
不安障害の人におすすめする働き方
不安障害の人が症状を抑えながら働ける、おすすめの働き方を紹介します。
合理的配慮を申し出て周囲の理解と協力を得る
合理的配慮とは
不安障害の人が勤務先で、できるだけストレスを受けずに長く働き続けるためには、周囲の理解とサポートが不可欠です。そこで重要なのが「合理的配慮」という考え方です。
合理的配慮とは、障害のある人が社会生活を営む上で不当な扱いをされないような配慮のことで、これに基づいた対応や調整が法律で定められています。2024年4月1日からは行政機関だけではなく事業者に対しても、合理的配慮の提供が義務化されることが決まっています。
合理的配慮の提供には、障害のある人や家族から勤務先に配慮を求める意思表明をおこなう必要があります。申請する際に、障害者手帳や疾患を証明する診断書の提示を求められることもあるため、事前に医師と相談しておくとよいでしょう。
合理的配慮の具体例
合理的配慮の内容は勤務先と相談して決められます。具体例としては以下のようなものがあります。
そのほかの具体例としては
- 出退勤の時間を調整する
- 休憩の頻度を増やす
- 業務内容を調整する
- 本人同意のもと、症状について同僚と共有する
などがあります。このような対応とともに周囲の理解と協力を得られると、仕事に対する不安や緊張が軽減され、働きやすさにつながります。
合理的配慮は聞き慣れない制度かもしれませんが、2024年4月1日から事業者に対して義務化されるため、少しずつ浸透してくると予想されます。
理解のある会社に転職する
愛着のある会社で働き続けられるのが理想ですが、必ずしも周囲の理解と協力が得られるわけではありません。不安障害があるのを打ち明けても理解が得られないケースもあるでしょう。
そのような場合は、思い切って転職するのもよいかもしれません。転職する場合は、先述した「不安障害の人に向いている仕事5選」を参考にするとよいでしょう。
合理的配慮に理解のある会社に転職できれば、その先長く勤めることも可能です。現在の職場環境に不安や悩みがある場合には、転職も選択肢の一つとして検討してみてください。
不安障害の診断を受け、障害者雇用枠で仕事をする
障害者雇用枠は、企業や公的機関が一定数の障害者を採用する制度により設けられました。障害者雇用促進法によって定められており、障害を持つ人々の社会参加や雇用の機会を増やすことを目的としています。
障害者雇用枠で働くには
不安障害の人が障害者雇用枠で働くには、以下のような手順が必要です。
- 精神障害者保健福祉手帳を取得します。取得方法は住んでいる地域によって異なる可能性があるため、居住する自治体に確認しましょう。
- 次に、ハローワークなどで企業や公的機関の障害者雇用枠に関する求人情報を探します。
- 対象の求人に応募し、採用試験や面接を受けます。
なお、仕事の探し方に関してはこのあと詳しく解説します。
障害者雇用枠で働くメリットとデメリット
障害者雇用枠で働くメリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 合理的配慮を受けられやすく、障害に応じたサポートや調整がある
- 長く勤められる可能性が高くなるため、経済的に安定する
- 不安障害の治療が必要な場合は、通院する時間を確保しやすい
【デメリット】
- 一部の企業や職種では、障害者雇用枠の人が就ける役職に制限がある場合がある
- 一般雇用とくらべて求人数が少ない傾向にあるため、希望する会社に入れない可能性がある
- 障害者に対してのサポートや環境の整備が十分でない場合があり、期待と実態にギャップが生じる可能性がある
不安障害の人が仕事を探す方法
不安障害の人が症状と向き合いながら仕事を探すには、以下の3つの機関を利用して探す方法があります。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
それぞれ詳しく解説します。
ハローワーク
ハローワークには多様な職種や条件の求人が存在します。
一般求人のほかに、不安障害の人を含め特定のサポートが必要な人に向けた情報やサービスを提供しています。
症状に配慮可能な職場や、働きやすい環境を持つ企業の情報を提供してくれるのが特徴です。
また、職業相談では、必要に応じて障害者試行(トライアル)雇用や職場適応訓練などの案内や、自身の状況や悩みに沿ったアドバイスがもらえます。
利用するにあたって、障害者手帳は必要ありません。ハローワークを活用して、安心して働ける場所を見つけましょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、障害者の職業生活における自立のために多種多様なサポートをしてくれます。
ハローワークや保健所、学校や医療機関などの関連施設と連携をとり、障害者の就業や生活面における一体的なサポートを提供しているのが特徴です。
障害者の雇用の促進や安定を目的として、全国337箇所に設置されています。
地域障害者職業センター
不安障害の人が仕事を検討する際には、地域障害者職業センターの利用も有効です。地域障害者職業センターは、ハローワークと連携し、障害者の就職や再就職をサポートする専門の公的機関だからです。
障害の特性を理解した専門スタッフが、それぞれの症状に合わせた評価や指導、職業訓練などの職業リハビリテーションをおこなってくれます。
さらに、希望により就業後も職場でのコミュニケーションや仕事の進め方についてのアドバイスが受けられるため、安定した職業生活を築くことができます。
不安障害の人が仕事を続けるためには治療が必須
自分に向いている仕事や働き方を見つけられたら、長く働き続けることも可能です。しかし長期的に考えると、不安障害の人が仕事を続けるためには症状を緩和するための治療が必須となります。なぜなら、不安障害はうつ病などほかの精神疾患を併発する可能性があるからです。
不安障害とうまく付き合いながら仕事をしていくことは大切ですが、将来を考慮するならば治療が必須です。
この先、10年20年と仕事を続けていく必要がある人は、まずは不安障害の治療を検討しましょう。
不安障害の人が利用できる社会資源
不安障害の症状が強く、仕事ができなかったり辞めたりする場合に利用したいのが、公的な制度です。ここでは以下の3つの社会資源について紹介します。
- 傷病手当金
- 失業保険
- 自立支援医療制度
それぞれ詳しく解説します。
傷病手当金
不安障害の人が仕事を休む際の経済的なサポートとして、傷病手当金があります。傷病手当金は、労働者が病気や怪我で仕事を休む際に、健康保険から支給される給付金です。
傷病手当金を受け取るための基本的な条件は、以下の通りです。
- 仕事以外の理由で病気やケガをして療養するために休業すること
- 仕事に従事することができないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に従事できなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
以上の4つの条件をすべて満たした際に、支給日から換算して最長で1年6カ月支給されます。
手当の金額は、基本的には平均給与額の約3分の2に設定されていますが、加入している健康保険の種類によって異なりますので確認が必要です。
傷病手当金制度を利用することで、治療に専念する間の経済的な負担を軽減できるでしょう。
失業保険
失業保険は、労働者が職を失ったときに一時的な生計の支援や再就職の援助をおこなうことを目的とした社会保障制度です。
失業保険を受給するための基本的な条件は以下の通りです。
- 雇用保険に加入していた期間が一定以上であること
- 自己都合、会社都合を問わず、失業者としての資格が認められること
- 雇用先さえ決まればすぐに仕事ができる状態であること
- 仕事を探す意思があること
給付金額は仕事を辞めた際の収入や年齢によって異なります。また失業保険の申請には、会社から離職票を発行してもらう必要があります。
離職票を受け取ったら、ハローワークに提出し、案内に応じて必要な手続きをしましょう。
失業保険は、転職活動中の経済的なサポート制度として非常に役立ちます。不安障害の人が転職を考える際にも、とても心強い制度といえるでしょう。
治療費負担軽減のための自立支援医療制度
自立支援医療制度は、通院治療を必要とする人に対して国や自治体が医療費を負担する制度です。統合失調症やうつ病をはじめ、不安障害も自立支援医療制度の対象です。
本来は3割の医療費を負担しているところを、1割負担に軽減されるため積極的に治療を受けられます。不安障害の影響で思うように働けず経済的な不安を抱えている人は、ぜひ利用したい制度です。
申請は居住する市町村の担当窓口でおこないます。医師の診断書や健康保険証など、必要書類を事前に確認してから申請するようにしましょう。
自立支援医療制度は、不安障害を含む精神疾患を抱える人が、医療を受けやすくするために有効な制度です。不安障害の治療を考えている人は、利用を検討してみましょう。
そもそも不安障害とは
不安障害は精神的な不安から、こころと体にさまざま症状が現れます。また、症状や発症の経緯などによっていくつかのタイプに分類されています。ここでは、代表的なものを紹介します。
社会不安障害 | 社会不安障害は、人前で話したり見られたりすることに強い苦痛を感じます。過去の失敗や恥ずかしかった出来事がきっかけになるケースが多い疾患です。 |
パニック障害 | パニック障害は、突然激しい不安に襲われてめまいや呼吸困難などの症状が現れる疾患です。「また発作が起きたらどうしよう」という思いから、電車やエレベーターなどの人混みを避ける行動がみられるようになります。 |
強迫性障害 | 強迫性障害は、不安な思いから、ある特定の行為を繰り返しおこなってしまう特徴があります。たとえば「何度も施錠を確認する」や「何回も手を洗う」などです。頭では意味のない行為と理解していても、なかなかやめることができないため、日常生活に支障をきたすこともあります。 |
全般性不安障害 | 全般性不安障害は、家庭や学校などさまざまなことに対して過度な不安や憂慮を感じる疾患です。不安以外にも、疲れやすさや集中力の欠如などの症状もみられます。 |
不安障害の治療方法
不安障害の治療は、主に薬物療法と認知行動療法の2つがあります。
それぞれ詳しく解説します。
薬物療法
不安障害の薬物療法には、主に抗不安薬と抗うつ薬が用いられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)
抗不安薬は、その名の通り不安や緊張を緩和する作用があります。抗不安薬の中で代表的なのが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬です。作用時間や効き目は商品によって異なりますが、即効性で効き目が強い特徴があるため、不安が顕著な場合に用いられるケースが多いです。
一方で、眠気や倦怠感、依存性、離脱症状などの副作用があるため、服用には注意が必要です。長期的な使用や、一度に大量に服用することは避け、医師の指示に従って正確に服用するようにしましょう。
抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬【SSRI】)
抗うつ薬は主にうつ病治療に用いられますが、不安障害の症状の改善にも効果的です。抗不安薬は副作用が強いのに対し、抗うつ薬は比較的副作用が少なく、長期間の服用も可能です。
しかし、抗うつ薬を飲み始めてから効果が出てくるまでには2週間程度かかるため、すぐに症状を改善したい場合には不向きです。
また、副作用が少ないといっても、まったくないわけではありません。服用し始めて、吐き気やめまい、口の渇きなどの症状がみられる場合には医師に相談しましょう。
認知行動療法
認知行動療法は、精神療法(心理療法)の一つです。偏った考え方や行動を見直し、コントロールすることで症状の緩和を図ります。
治療は、実生活の中で症状が出現する場面を想定しておこなわれるため、日常生活に即した治療が可能です。
たとえば、「今回のプレゼンですべての案を採用されなければ意味がない、どうしよう」と考えてしまうと、気持ちが焦り不安につながる可能性があります。しかし、「今回のプレゼンでは、3つ中、1つでも採用されれば上出来だ、次の機会もある」と考え方を変えると、不安は軽減され症状の緩和につながります。
治療は、比較的長い期間(数カ月程度)をかけて、考え方と行動を一から見直します。セルフコントロールの力が身につくため、不安障害の根本治療や再発予防が期待できるのが特徴です。
認知行動療法を受けられる医療機関は全国各地にあり、治療は保険が適用されます。
不安障害の人は、自分に合った仕事をしつつ治療を受けよう
不安障害の人は、さまざまな場面で症状が生じるため、仕事にも影響を及ぼす可能性があります。
また、不安障害の症状をそのままにしておくと、うつ病などほかの精神疾患を併発する恐れがあります。健康面や、将来のことを考慮すると適切な治療が必要です。
不安障害で悩んでいる人は、心療内科や精神科を受診して医師のカウンセリングや治療を受けることをおすすめします。
その上で、公的な制度や支援機関を利用し、自分に合った仕事を見つけましょう。
参考文献サイト
・厚生労働省|不安障害:ヘルプノート:こころもメンテしよう
・厚生労働省|合理的配慮指針
・厚生労働省|障害者雇用促進法の概要
・厚生労働省|ハローワークインターネットサービス|障害者の方の雇用に向けて
・厚生労働省|障害者就業・生活支援センターについて
・厚生労働省|地域障害者職業センターの概要
・精神神経学雑誌地域障害者職業センターの概要|朝倉聡|社交不安障害の診断と治療
・厚生労働省|傷病手当金について
・全国健康保険協会|傷病手当金
・厚生労働省|第13章 失業等給付について
・厚生労働省』自立支援医療制度の概要
・厚生労働省|自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み
・厚生労働省|自立支援医療(精神通院医療)について
・社交不安症治療における薬物療法の位置づけ・厚生労働省|重篤副作用疾患別対応マニュアル|ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存
・厚生労働省|e-ヘルスネット 認知行動療法
・日本精神神経学会|不安障害に対する認知行動療法
・厚生労働省|選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)と攻撃性等について
・厚生労働省|障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関する Q&A【第二版】