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適応障害は、近年増加傾向にある精神疾患のひとつです。2008年と比較すると、2017年の適応障害の総患者数は約2.5倍におよぶとのデータがあります。
適応障害は、ストレスによって心身の健康のバランスが崩れ、社会生活に支障がでてしまう精神疾患ですが、症状は人によってさまざまです。
この記事では、適応障害の症状や特徴的な行動について、詳しく解説します。さらに、治療法や過ごし方、適応障害の人との関わり方もあわせてご紹介。気になる症状がある人は、本記事でチェックしてみましょう。適応障害について詳しく知りたいといった方は「適応障害とは?症状やなりやすい人、セルフチェック方法まで解説」の記事を参考にしてみてください。
適応障害とは
適応障害とは、ストレスが原因となり、心身の健康のバランスが崩れて社会生活に支障が生じている状態です。ストレス性障害のひとつとされています。
比較的原因がはっきりとしており、その状況やストレスにうまく対処できず、負担が大きくなると発症するとされている精神疾患です。ストレスの感じ方は人それぞれであり、ほかの人にとっては大した出来事ではなくても、本人にとっては大きな苦痛となることがあります。
適応障害は、生活の変化やストレスになる出来事などが生じてから、約1~2カ月で症状が出現するといわれています。場合によっては原因となる出来事の直後もしくは数日で症状が出現することも。
そして多くの場合、その原因から解放されると症状が改善する傾向にあります。適切な治療が開始され、有効な働きかけがあれば、予後は良好です。
適応障害の主な症状
適応障害の症状は、大きく心理的(情緒的)症状と身体的症状に分けられます。これらの症状に加えて、普段と異なる行動もみられます。
原因となるストレスから解放されると症状は落ち着き、改善に向かうことが多いといわれています。しかし、ストレスが継続して改善がみられない場合は、症状が悪化して、うつ病や不安障害などほかの精神疾患に移行する可能性も珍しくありません。
ここでは、適応障害の人にみられる症状と問題行動をまとめました。
1.心理的(情緒的)症状
適応障害の人には、以下のような心理的(情緒的)症状が現れます。
- 不安
- 抑うつ
- 無気力
- 思考力や集中力の低下
- 悲壮感
- イライラ
- 不安感や焦り
- 緊張
- 混乱
上記のような症状が出現することで、何かを計画したり継続して成し遂げたりといった、社会的行動が難しくなります。また、子どもの場合は実年齢より幼く振る舞う赤ちゃん返りのような行動がみられることもあります。
症状が悪化すると、興味関心の喪失や意欲低下につながり、物事を楽しめなくなってしまうことも。
このような憂うつな気分が続くと、身体の健康にも影響を与えかねません。
2.身体的症状
心理的(情緒的)症状のほかには、以下の身体的症状が現れます。
- 全身のだるさ
- 不眠
- 勝手に涙が出る
- 食欲不振
- 動悸
- 過呼吸
- 頭痛
- 肩こり
- 腹痛
- 発汗
- めまい
- 手の震え
上記のような身体的症状が出現すると、学校や職場での活動が難しくなり、普段通りに社会生活を送れなくなることもあります。
憂うつな気分に加えて不眠などの症状が2週間以上続くと、うつ病と診断されることもあるでしょう。
3.普段と異なる行動
心理的(情緒的)・身体的症状がみられると同時に、普段と異なる行動が現れることがあります。
具体的には、以下のような行動がみられます。
- 無断欠勤
- 遅刻
- 早退
- 不登校
- 仕事のパフォーマンスの低下
- 過剰飲酒
- 暴食
- 危険な運転
- ギャンブル中毒
- 喧嘩や器物損害
- ひきこもり
上記のような行動が続くと、職場での立場が不利になったり人間関係のトラブルが起きたりと、社会生活になんらかの支障が出ます。
学校や職場でうまく集団生活が送れず、周囲に迷惑をかけてしまうことも少なくありません。
これらの行動がみられると、周囲の人が本人の様子が違うことに気がつくケースもあるでしょう。
適応障害の受診の目安【症状チェックシート付】
この記事を読んでいる人のなかには「自分が適応障害かもしれない……」と感じている人もいるかもしれません。
ここでは、自分で症状を確認できる「チェックシート」を用意しました。項目をチェックすることで、今の自分の状況が分かるでしょう。
上記項目に複数当てはまる場合や何日も続いているような場合は、医療機関を受診しましょう。適応障害は、早期発見・早期治療が大切です。
適応障害の原因と考えられる3つの影響
適応障害はストレスが主な要因であり、強くストレスを受けた出来事が直接的な原因となります。災害や事故のような大きな出来事だけでなく、日常の小さな出来事もストレスの原因になり得ます。
個人のストレスに対する感じ方や耐性によっても、影響の受け方は大きく異なるでしょう。
ストレスや悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向にある人が、適応障害になりやすいとされています。そのため、真面目で几帳面な人や内向的で受け身の人、責任感が強く完璧主義な人などは注意が必要です。
ここでは、適応障害の原因として考えられる、3つの影響についてまとめました。
仕事環境のストレス
仕事で感じるストレスは、適応障害の原因となる大きな要因のひとつです。
上司からのパワーハラスメントや長時間労働などは、職場によっては声をあげにくいことがあります。そのような仕事環境で日々ストレスを抱えながらも、我慢して働き続けてしまうケースもあるでしょう。
職場を変えるのはそう簡単ではないため、ストレスを継続的に受けて、次第に症状が悪化してしまうことがあります。のちに、会社に行けなくなってしまうケースも少なくありません。
職場は、一日の大半を過ごす場所です。「働き過ぎて疲れた」「上司とうまく関われない」などと悩んでいる人は、同僚など周囲に相談して、働きやすい環境を作ることが大切です。
ライフスタイルの変化
ライフスタイルの変化によっても、人によってはストレスを感じることがあります。
たとえば、以下のような状況が考えられます。
- 学校の入学や進学
- 会社の異動や転職
- 一人暮らし
- 結婚や出産・育児
- 病気やケガ
たとえその変化が喜ばしいことであっても、生活環境が変わることはストレスになりかねません。環境の変化に敏感な人は、新しい環境に慣れるまでは自分のペースでゆっくりと過ごし、無理をしないことが大切です。
人間関係の悩み
人間関係の悩みは、どこにいってもついてまわる問題です。
会社の上司や同僚、友人や恋人だけでなく、家族でも関係が思わしくなければ、悩みの原因となるでしょう。生活環境が変わらなくても、関わる人が大きく変わるだけで負担を感じる人もいます。
人間関係の悩みについても、苦手な人や悪影響を与える人と離れて過ごすことが大切ですが、家族などは簡単に距離を置くことが難しくなります。
そのため、なかなか問題が解決せず、適応障害に発展してしまう可能性も少なくありません。
適応障害の診断基準
適応障害の診断には「DSM-5」や「ICD-10」の指標が使用されます。DSMー5の適応障害の診断基準は、以下の通りです。
A | はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因のはじまりから3カ月以内に精神、身体症状が出現する。 |
B | 以下のいずれかの1つ以上当てはまっている。 ア)大きな苦痛となるほど症状が重い イ)日常生活に支障が出るほどの障害が現れている |
C | ほかの精神疾患の基準を満たしていない、すでに存在している精神疾患の単なる悪化ではない。 |
D | その症状は正常の死別反応を示すものではない。 |
E | 原因となるストレスがなくなれば、6か月以内に症状が改善する |
※参考:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
一般的には、上記A~Eのすべてを満たすと、適応障害と診断されます。
なお適応障害は、うつ病などほかの精神疾患の診断基準を満たさない、もしくは既往に精神疾患を患っていない場合に診断されます。もしも、うつ病の診断基準を満たしている場合であれば、適応障害ではなく、うつ病の診断が優先されるのです。
ただし、適応障害とほかの精神疾患双方の診断基準を満たす場合のみ、併存との形で診断されることもあります。
適応障害の症状を悪化させない過ごし方
適応障害の症状を悪化させないためには、十分な休養をとり、ストレスとなる原因から離れることが大切です。そのために、休学や休職も視野に入れましょう。
環境調整や心理療法(精神療法)が効果的に進めば、症状は落ち着き、社会復帰も望めます。
ただし、適応障害から回復し、再発を予防するには、自分自身が原因と向き合い、ストレスへの耐性や適応力を高める練習も重要です。環境を変えずそのまま生活していると、症状が悪化するだけでなく、ほかの精神疾患に移行しかねません。
また、自分一人で抱え込まずに、周囲の人に協力を求めるのもよいでしょう。いずれにせよ、早めに対応することが大切です。
適応障害の症状がある人への関わり方
身近に適応障害の人がいる場合は、本人の不調に気がつき、理解する必要があります。
先ほどご紹介した「症状のチェックシート」に当てはまる項目があれば、受診を勧めましょう。しかし、本人への過剰な配慮や励ましは逆効果になることがあるため、ストレスを減らす環境づくりや環境調整などのサポートが効果的です。
適応障害の症状を軽減させるためにはストレスから離れることが大切
適応障害は、原因となるストレスがはっきりしているのが特徴です。そのため、早い段階で適切な対処法がなされれば、症状は改善に向かいます。
まずは原因となるストレスから離れて、環境を変えることが大切です。適応障害の改善には、環境を変えるだけでなく、自分自身の柔軟性を養うことも大切です。カウンセリングや精神療法を通じて、周囲と協同しながら、自ら治療に取り組む姿勢が重要な役割を担うといえるでしょう。
もしも気になる症状や不安がある場合は、一人で抱え込まず、早めにメンタルクリニックを受診して対処しましょう。
参考サイト・文献
・国立研究開発法人 科学技術振興機構「日本における「適応障害」患者数
の増加」
・厚生労働省 e-ヘルスネット「適応障害」
・うつ病の新しい考え方
・国立精神・神経医療研究センター
・公益社団法人 日本精神神経学会|適応障害の診断と治療
・日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
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