【体験談あり】涙が止まらないなどの症状は適応障害かも?

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「勝手に涙が出る」
「涙が出るとなかなか止まらない」

このような状況が続くときは、心身が疲れているのかもしれません。

「涙が止まらない」という状態は、適応障害の症状の一つと考えられています。

適応障害は、原因となるストレスから離れることで、症状が改善に向かうとされています。

原因に応じた対処法を取ることが大切です。

本記事では、適応障害の特徴や症状、悪化させないための過ごし方などを解説します。

「自分は適応障害なの?」「涙が出るのは何が原因?」とお悩みの人は、ぜひお読みください。

涙が止まらない……もしかすると適応障害かも?

適応障害とは、特定のストレスが原因となり、心身の健康のバランスが崩れて社会生活に支障をきたす精神疾患です

ストレスへの対処がうまくできず、心身の負担が大きくなると発症し、原因がはっきりとしていることが特徴です。涙が止まらないなどの症状のほか、不安や不眠などの精神的・身体的苦痛が生じます。

ストレスの原因が発生してからだいたい3カ月以内に症状が出現するとされており、その原因から離れることで改善します。多くの場合、6カ月以上続くことはないといわれ、適切な治療が開始されれば経過は良好です。

「涙が止まらない」のは適応障害の症状の一つ

適応障害の症状は、精神症状・身体症状・普段と異なる行動に大きく分かれ、「涙が止まらない」などの症状が現れます。

ストレスの原因から離れると次第に改善へと向かいますが、うまく対処できないまま経過すると症状が悪化して、うつ病などのほかの精神疾患に移行する恐れがあります。

「最近疲れているな」「自分の様子がいつもと違う」と感じたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

この章では、適応障害に見られる代表的な症状をご紹介します。

心理的(情緒的)症状

適応障害の人には、以下の心理的(情緒的)症状が見られます。

  • 不安
  • 抑うつ
  • 無気力
  • 思考力や集中力の低下
  • 悲壮感
  • イライラ
  • 不安感や焦り
  • 緊張
  • 混乱

上記のような症状が現れると、何かを計画したり成し遂げようとしたりする意欲の低下や、興味関心の喪失につながり、思うように社会生活を送れなくなることがあります。

身体的症状

適応障害の人には、以下の身体的症状が見られます。

  • 全身のだるさ
  • 不眠
  • 涙が止まらない
  • 食欲不振
  • 動悸
  • 過呼吸
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 腹痛
  • 発汗
  • めまい
  • 手の震え

上記のような身体の不調が現れることで学校や職場での活動が難しくなり、生活にさまざまな支障が出てしまいます。

普段と異なる行動

適応障害では、心理的(情緒的)症状や身体的症状と同時に、普段と異なる行動が見られることもあります。

  • 無断欠勤
  • 遅刻や早退
  • 不登校
  • 仕事でのミス
  • 過剰飲酒
  • 暴食
  • 危険な運転
  • ギャンブル中毒
  • 喧嘩や器物損害
  • ひきこもり

上記のような行動が続くと、人間関係でのトラブルが起きるなど、社会生活を送るうえで支障が生じます。集団生活がうまくいかず、周囲に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。

このような行動で、周囲の人が異変に気が付くケースも少なくありません。

体験談|「涙が止まらない」ことで異変に気が付いた

以下は、実際に大学病院で看護師として働いていたAさんの体験談です。

私も過去に、適応障害と診断された経験があります。

ストレスの原因は仕事でした。看護師として大学病院に勤めて10年、大きな責任をともなう仕事を任されることが多くなり、心身ともに負担を感じていました。

疲れていながらも、家に帰れば子育てに追われる毎日。夫など周囲への相談もできず数カ月が過ぎていきました。

そんなある日、突然涙が出て止まらなくなり、今までこのようなことはなかったので、そこで初めて自分の異変に気が付きました。

今思えば、その前から全身のだるさや意欲の低下、過度な疲労を感じていたように思います。その数日後、いきなり職場に行けなくなり、結果的に休職することになりました。

休職中は、月に2回のカウンセリングを受け、2カ月ほどで症状は回復。その後は子育てとの両立を図るために一度退職して転職し、現在症状は改善しています。

実際に経験して感じたことは、適応障害の症状は気付きにくいということです。「最近疲れているかも」と思っていても、心身のSOSには気付かず、無理をしてしまうことは珍しくないことを皆さんにも知っておいてほしいです。

ストレスを完全に失くすことは難しいかもしれませんが、症状が悪化する前に精神科や心療内科を受診することや自分なりのストレス対処法を取り入れることなどが大切となります。

適応障害チェックシート|涙が止まらないときはキャパオーバーのサイン?

この記事を読んでいる人のなかには、「自分は適応障害かもしれない」と不安に感じている人もいるかもしれません。

そのような人のために、適応障害チェックシートをご用意しました。

「涙が止まらない」などの症状は、ストレスや負担を抱え続けてキャパオーバーになっているサインかもしれません。

上記の項目に複数当てはまる場合や、症状が何日も続いている場合は、メンタルクリニックなどの医療機関を受診しましょう

適応障害は、早期発見・早期治療が大切です。

適応障害の3つの治し方

適応障害に効果的な治療法は、大きく分けて3つあります。

  • 休養・環境調整
  • 精神療法(心理療法)
  • 薬物療法

ストレスの原因から離れることが最も効果的とされていますが、複数の治療法を組み合わせるケースも少なくありません。

医師と相談のうえで、症状に合わせた治療法が決定されます。

ここでは、適応障害の治療法について解説します。

治療法1.休養・環境調整

適応障害は、原因を特定できるケースが多いため、まずはストレスの原因から離れて休養を取ることが大切です。学校や仕事を休み、休養しながら環境を調整しましょう。

たとえば、部署異動や転職のほか人間関係が原因の場合は特定の人と関わらないようにすることが有効です。

しかし、家族間での問題など環境を変えるのが難しい場合は、ほかの治療法を実践しながら経過をみることもあります。

治療法2.精神療法(心理療法)

医療従事者による面談やカウンセリングなどの心理療法も効果的です。心理療法では、本人がストレスの原因を理解しながら医療従事者と一緒に解決方法を見出します。ストレスへの対処法が身につくため、症状悪化や再発の予防にも効果が期待できるでしょう。

心理療法では、「認知行動療法」や「問題解決療法」などを用います。

認知行動療法とは、考え方や行動のクセを意識的に変え、柔軟にストレスへの対処ができるようになることを目指す心理療法です。生活リズムを整えるなどの「行動面へのアプローチ」と、ストレスに対する考え方を見直すなどの「認知面へのアプローチ」を組み合わせて介入していきます。

対して問題解決療法は、現在抱えている悩みや問題と症状にフォーカスして、本人と医療従事者が協同的に具体的な解決方法を見つける治療法です。

どちらも、医療従事者と本人が協同しながら進めていくことが大切です。本人が前向きに問題解決に取り組む姿勢が必要といえるでしょう。

治療法3.薬物療法

症状に対して、薬物を使用する場合もあります。たとえば、不安や不眠に対して、抗不安薬を内服するというものです。

ただし、適応障害に対する薬物療法は、症状の緩和や身体的苦痛の軽減を目的としている対症療法のため、疾患の根本的治療にはなりません

そのため、休養を取りながら環境調整や心理療法を併せておこなうことが必要です。

適応障害で涙が止まらないときの過ごし方

適応障害を発症して涙が止まらないなどの症状が出ているときは、過ごし方にも工夫が必要です。

以下の4つのポイントを意識して過ごすことで、症状を悪化させることなく効果的に治療を進められるでしょう。

  • バランスのよい食事をとりゆっくりと休養する
  • 気分転換を取り入れる
  • 周囲に相談する
  • 現状を把握して今後のことを考える

具体的にどのように過ごしたらよいのか、一つずつ解説します。

バランスのよい食事をとりゆっくりと休養する

涙が止まらないなど、適応障害の症状が強く出ている場合には、ゆっくりと休養することが大切です。バランスのよい食事をとり、十分な睡眠時間を確保することを意識しましょう

睡眠不足は、全身のだるさや思考力・集中力の低下、イライラなどにつながります。いつもよりも早くベッドに入り、ゆっくりと身体を休めるのが有効です。

ただし、適応障害の症状である不眠(寝たくても寝られない状態)が見られる場合は、医師へ相談するとよいでしょう

気分転換を取り入れる

ストレスの原因になっていることばかり考えてしまい、涙が止まらないなどの症状が続くときには気分転換を取り入れるのが効果的です。運動や趣味など、自分の好きなことをするのがよいでしょう。

なかでも運動は、自律神経を整えて交感神経と副交感神経の働きを高められ、以下の効果が期待できます。

  • 気分の落ち込み改善やストレスの発散
  • 心身のリラックス効果
  • 睡眠リズムの改善
  • 健康維持
  • ストレスへの抵抗力アップ

まずは、ウォーキングなどの軽い有酸素運動から始めてみましょう。ヨガやストレッチなどのゆっくりとした運動も、身体の緊張をほぐし精神的なリラックスにつながるためおすすめです。

周囲に相談する

ストレスを感じたときや環境を変えたいと思ったときは、一人で抱え込まず、周囲に相談することが大切です。家族や友人はもちろん、話しやすい同僚などでもよいでしょう。

誰かに話すだけで心が軽くなり、自分の気持ちや考えを整理するきっかけとなります。

現状を把握して今後のことを考える

症状が強く出ていてつらい時期は何も考えずに休養をとったほうがよいですが、症状が落ち着いてきたら今後のことを考える時間も大切です。今の状況を書き出し、自分の気持ちを整理してみましょう。

実際に私も気持ちを書き出して、何がストレスだったのか、これからどうしたいのかを考える時間を作りました。そうすることで、環境の変え方や再発しないための対処法が分かります。

仕事中に泣きそうになるときは休職するのも選択肢の一つ

仕事中に「涙が出てしまう」「泣きそうになる」などの症状がある場合は、ストレスの原因が仕事である可能性が高いと考えられます。

この場合は一度休職して、適切な治療を開始したほうが回復しやすいでしょう。症状が悪化する前に休職して、しっかりと休むことが大切です。

休職すべきかの判断に迷う場合は、医療機関を受診して医師やカウンセラーなどに相談して決めるようにしましょう。

仕事を休職する流れや必要な手続きなどについては、こちらの記事でまとめています。

適応障害で涙が止まらないのは決して甘えではない

適応障害では、不安や不眠、涙が止まらないなどの心理的・身体的症状が出現します。これらの症状が続く場合は、心身ともに疲れているサインです。

「適応障害は甘えではないか?」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、過度なストレスを感じている状態であり、決して甘えではありません。疲れていると感じたら、十分な休養をとりストレスの原因から離れることが効果的です。

気になる症状がある場合は、一人で抱え込まず早めにメンタルクリニックなどの医療機関を受診しましょう。

参考サイト・文献
厚生労働省 e-ヘルスネット「適応障害」
NCNP病院「そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?」
国立精神・神経医療研究センター「問題解決療法」
文部科学省「第2章 心のケア 各論」

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精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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