強迫性障害とは?具体的な症状や治療、気にしない方法などを紹介

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「家の鍵閉めたかな?」
「ガスの元栓閉めたかな?」
「風邪を引かないように手を洗わなきゃ」

日常生活において上記のような不安を感じることもあるでしょう。強迫性障害の場合、こういった不安感が強く表れ、度を超えた行動へと繋がってしまいます。

強迫性障害とは、強迫観念を取り払うためにおこなう行動によって(強迫行為)、日常生活に支障をきたしている状態のこと。強迫観念とは、自分の意思とは無関係にしつこく湧き起こる不快感や恐怖感のことです。

この記事では、強迫性障害について詳しく解説します。「自分は強迫性障害では?」「家族や周りの人が強迫性障害かも?」とお悩みの方は参考にしてみてください。

強迫性障害とは

強迫性障害とは、強迫観念と強迫行為によって成り立っている精神疾患です。

強迫観念:自分の意思とは無関係にしつこく湧き起こる不安や不快感

強迫行為:強迫観念を取り払い安心感を得るためにおこなう行動

「強迫観念」と「強迫行為」の両者が存在することが強迫性障害と診断される指標の1つとなります。強迫性障害では、強迫観念を自分の意思では取り払うことができません。不安を取り払う努力をするほど不安が増強し悪循環に陥ってしまいます。

この疾患の特徴の1つは、自分の行動は不合理、過剰だと認識していることです。また、家族や周囲の方を巻き込んでしまうことも珍しくありません。

  強迫観念と強迫行為の具体例は以下の通りです。

強迫観念強迫行為
(実際は汚れていないのに)自分以外のものはすべて汚れていると感じてしまう自分以外の物に触れるたびに手を洗ったり消毒したりを繰り返す
(実際に危害を加えていないのに)自分が誰かに危害を加えたかもしれないと思ってしまう何度もテレビやネットのニュースを確認する
(鍵は閉めているのに)家の戸締まりをしたか何度も不安に襲われてしまう何度も家に戻り戸締まりをしているか確認する
(実際はそうではないのに)ラッキーナンバーの数字を選ばないと人生が不幸になってしまうと思ってしまう・ロッカーの番号は必ずラッキーナンバーでないと気が済まない

・ラッキーナンバーの時にならないと行動できない

(実際は轢いていないのに)車を運転していると誰かを轢いたのではないかと心配になってしまう通った道を引き返し、誰か轢いていないか何度も確認する

強迫性障害の原因やなりやすい人の特徴

強迫性障害の原因ははっきりとは分かっていません。ただこれまでの研究結果より、セロトニン神経が上手く働いていないことや強迫性格の遺伝が1つの原因であるのではないかと考えられています。また、発症の誘因として生活上での大きな出来事が存在する場合もあります。

なりやすい人の特徴としては完璧主義や完全主義が挙げられ、元々の性格や生活上の大きな出来事が発症に影響しているのではないかと言われています。

強迫性障害の具体的な症状|当てはまるものがないかチェックしてみよう

「強迫性障害かも?」「これって強迫性障害の症状?」とお悩みの方は以下のチェックに当てはまるものがないか確認してみましょう。

※このチェックリストの結果は強迫性障害の診断ではありません。あくまでも指標の1つとして参考にしてください。強迫性障害かどうかの診断を受けるには医師の診察を受ける必要があります。

問1.AまたはBにあてはまる項目がありますか?

A:何度も頭に浮かぶ考えに悩まされていますか?B:何度も繰り返したり、特別な方法でおこなわないと気が済まない行動がありますか?
症状の例・自分や周りが不潔なのではないかと感じる

・誰かを傷付けてしまうのではないかと怖くなる

・汚れやばい菌が過剰なほど気になる

・自分は病気にかかっているのではないかと過剰に心配する

・4や9など不運な数に執着してしまう

・戸締まりをしたか、ガスの元栓は閉めたか何度も確認してしまう

・手洗いは5分以上決まった方法でやらないと気が済まない

・入浴方法に特別なこだわりがある

・人が触ったものは一旦消毒しないと気が済まない

・異常なしと言われているのに、何件も病院を受診して回っている

・不吉な数を避けて行動してしまう

回答
AかBどちらにも当てはまらない

強迫性障害の可能性は低いと考えられます。しかし、気になる症状がある場合は精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

AかBのどちらかまたは両方が当てはまる場合は問2へ

問2.以下のCの条件に当てはまりますか?

C:以下の条件に当てはまる項目がありますか?
  • AやBについて無意味であると思っている
  • 「こだわるのをやめたい」と思っても、どうしてもやめられない
  • その考えが正しいという確信はない
  • AやBの考えや行動によって日常生活に支障をきたしている
  • AやBの考えや行動によって人間関係が障害されている
  • AやBの考えや行動が苦痛に感じる

回答
AかBには該当するが、Cには該当しない場合

強迫性障害の可能性は低いですが、気になる場合は精神科や医療機関を受診しましょう。

ABC全てに該当する場合

強迫性障害の可能性があります。

精神科や心療内科などの医療機関の受診をおすすめします。

YALE-BROWN 強迫観念・強迫行為評価スケール(Y-BOCS)日本語一般社団法人日本うつ病センターの情報をもとに作成しております。

強迫性障害はうつ病などの精神疾患と併存することが多い

これまでの研究結果より、強迫性障害はほかの精神疾患との併存が多いことが分かっています。

特にうつ病の併存が多く、生涯有病率は6〜7割にも及ぶとも言われているのです。また、子どもの場合、強迫性障害の背景に自閉症スペクトラムがあることも。自閉症スペクトラムの併存率は3〜7%であり、一般人口における自閉症スペクトラムの出現率に比べて4〜6倍の高さであるといった研究結果があります。物のため込みは自閉症との関連があるのではないかとも示唆されているのです。

ほかにもチック症やトゥレット症候群との合併も多いと言われています。

強迫性障害の2つの治療法

強迫性障害の治療法は以下の2つです。

  • 薬物療法
  • 認知行動療法

それぞれ詳しく解説します。

1.薬物療法

強迫性障害の薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられます。この薬はうつ病などの治療にも使われるものです。

薬の効果は人それぞれ異なるため、ひとりひとりに合った量を調整していきます。自己判断で薬を増減したり、止めたりするのはリスクを伴います。医師の指示に従って服用するようにしましょう。

なかには薬の副作用が怖いといった方もいるかもしれません。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は比較的副作用の少ない薬です。ただ、吐き気や口渇、便秘といった副作用が起こることもありますので、体の異変を感じたら医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

2.認知行動療法

強迫性障害の治療では、認知行動療法もおこなわれます。症状や普段の生活の様子を整理し、治療目標が明確になった場合に強迫観念や強迫行為を減らすために用いられるのが曝露反応妨害法です。

曝露反応妨害法では、これまで恐れて回避していたことにあえて立ち向かい、不安を和らげるための強迫行為をおこなわないように繰り返し練習します。

この練習を繰り返しおこなうことで、体と心を慣れさせていくのです。

強迫性障害の経過

強迫性障害は、よくなったり悪くなったりを繰り返していくのが特徴です。適切な治療を受けることで寛解へと至ることもある一方で、再発しやすいといった特徴もあります。

そのため、強迫性障害は継続的な治療が大切になります。

強迫性障害に関するよくある質問

ここでは強迫性障害に関するよくある質問を紹介します。

  • 強迫性障害を気にしない方法と乗り越えるためのポイントは?
  • 家族、周囲の人はどう接すればいい?

それぞれ回答していきます。

強迫性障害を気にしない方法と乗り越えるためのポイントは?

強迫性障害を気にしない方法は、頭に浮かんできた強迫観念を放っておくことです。

強迫観念だけでなく、人間は嫌なことが頭に浮かんでくると「考えないようにしなきゃ」と思ってしまいがちです。しかし、考えないようにすればするほど、逆にそのことが頭から離れなくなってしまいます。別のことを考えたり身体を動かしたりして対処するとよいでしょう。

強迫性障害を乗り越えるためには、精神科や心療内科などで適切な治療を受けることが大切です。強迫性障害は「完治」が難しい精神疾患です。ただ、適切な治療を受けることで「よい状態」を長く保つことが可能になります。

家族、周囲の人はどう接すればいい?

家族や周囲の人は、本人が焦らず安心して治療に取り組めるような環境調整をおこなってください。強迫性障害の治療には時間も根気も必要となり、本人には大きな負担がかかります。

「ゆっくりでいいからね」「焦らず少しずつ取り組んでいこうね」というような寄り添うような声かけをしつつ、少しでも成果につながったら頑張りを評価してあげてください。周りからの評価は、達成感へとつながり、治療を頑張ろうといった意欲になります。

早く治ってほしい気持ちから「頑張って」「早く治るといいね」といった励ましや回復を急かすような言葉をかけるのは控えましょう。励ましの言葉をかけることは本人への負担となり、治療の妨げになってしまうことも珍しくありません。

強迫性障害の治療は、周りが思っている以上に大きな負担がかかるものです。家族や周囲の人のサポートは治療の経過に影響を与えかねませんので注意して接していきましょう。

強迫性障害を正しく理解して生活しよう

強迫性障害は強迫観念と強迫行為によって日常生活に支障をきたしてしまう精神疾患です。適切な治療を受けることで症状を抑えることが可能です。

今現在、強迫観念や強迫行為に悩まされている方や日常生活に支障をきたしている状態の方は、早めに精神科や心療内科などの医療機関を受診することをおすすめします。

「自分のこの考えや行動は強迫性障害と関係あるの?」と気になる点がある方も受診していただくことで悩みを解決できるかもしれません。受診を検討してみるのも1つの方法でしょう。

参考サイト・文献
強迫症・強迫性障害|e-ヘルスネット
精神医学第5版|著:大月三郎(岡山大学名誉教授,慈圭会精神医学研究所顧問)ほか
強迫性障害(強迫症)の認知行動療法
公益社団法人日本精神神経学会
一般社団法人日本うつ病センター
自己記入式YALE-BROWN 強迫観念・強迫行為評価スケール(Y-BOCS)日本語版
自閉スペクトラム症における強迫関連現象の一考察 –“見る”ことによる心的体験に着目して–
こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)処方箋医薬品
強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル (治療者用)
強迫性障害の臨床像・治療・予後ー難治例の判定、特徴、そして対応ー

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精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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