【Q&A付き】うつ病のお薬|基本を理解して疑問や不安を解消しよう!

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うつ病は気分の落ち込みを主な症状として、不眠や食欲低下などの身体症状もみられる気分障害の一つです。日本人100人のうち約6人が経験するといわれる、けっしてめずらしくない疾患です

うつ病と診断された方の中には、

「抗うつ薬は副作用が強いイメージがあって怖い」
「軽いうつ病でも薬を飲む必要があるのだろうか」
「うつ病の薬はいつまで飲み続けなければならないのか」

このような不安や疑問を抱いている方もいるでしょう。

今回はこのような不安や疑問が少しでも緩和されるように、以下について解説します。

  • 抗うつ薬の効果や副作用
  • うつ病の治療で用いられる5つの薬
  • 薬以外でうつ病を改善する3つの方法

記事の最後では、うつ病の薬に関するよくある質問にもお答えします。うつ病の薬治療に不安や疑問のある方は参考にしてみてください。

抗うつ薬とは?

抗うつ薬とは名前の通り、うつ症状やうつ病の治療に用いる薬です。脳内の神経伝達物質に作用し、うつ症状の緩和を図ります。

ここでは抗うつ薬について、以下の3点を解説します。

  • 効果と使用する目的
  • 服用する期間の目安
  • 使用される場合とされない場合

抗うつ薬の基礎知識を身につけ、理解を深めていきましょう。

抗うつ薬の効果と使用する目的

抗うつ薬を使用する目的は、気分の変動に関連している脳の神経伝達物質の働きを手助けすることです。うつ病の原因はまだ解明されていませんが、多くの研究から脳の神経伝達物質が影響していることがわかってきています。

脳で情報を処理する際には、神経細胞から神経細胞へ目まぐるしく情報が伝達されていきます。その伝達の役割を果たすのが神経伝達物質です。

何らかの要因でこの神経伝達物質の機能低下が生じると、うつ病を発症すると考えられています。

抗うつ薬は神経伝達物質の作用を手助けする効果があるため、うつ症状の緩和を目的に使用されています

抗うつ薬を服用する期間の目安

抗うつ薬を服用する期間は、疾患の程度や副作用の強弱によって異なります。しかし、寛解後に継続して服用する期間にはある程度の目安があり、4〜9カ月程度とされています。寛解とは、症状がなくなり以前と同様の生活を送れるような状態になることです。

まず、抗うつ薬は即効性がある薬ではありません。服用を開始してから効果を実感するまでに1〜2週間必要とされています。その後、寛解するまでの期間服用を続けます。

寛解後も抗うつ薬の服用は続ける必要があります。なぜなら、うつ病は再発しやすい特徴があるため、回復したと感じていても「完治した」とはいえないからです。うつ病の症状がよくなってからも4〜9カ月は服用を継続するのが望ましいでしょう

ただし、上記はあくまで目安であり、副作用が強い場合にはこの限りではありません。一方で、うつ病の再発を認める場合には、2年以上抗うつ薬による維持療法が継続される場合もあります。そのため、根気強く治療していく必要があるといえるでしょう。

抗うつ薬が使用される場合とされない場合

うつ病であっても、抗うつ薬などの薬物療法が使用されないケースがあります。それは、仕事や家事などにあまり影響がない程度の軽症のうつ病の場合です

中等度や重度のうつ病には薬物療法の有効性が示されている一方で、軽症のうつ病への有効性がまだ認められていないからです。

とはいえ、軽症のうつ病であっても薬物療法が効果的な場合もあります。軽症のうつ病に対する治療で抗うつ薬を選択する際は、本人と家族、医師が慎重に相談した上で決定していきます。

うつ病の治療で用いられる薬5つ

うつ病の治療で用いられる代表的な薬は以下の5種類です。それぞれに特徴があるため、確認しておきましょう。

  • 三環系抗うつ薬
  • 四環系抗うつ薬
  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  • NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

それぞれ順番に解説します。

三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬は、抗うつ薬の中で最も歴史のある薬です

三環系抗うつ薬には以下のような種類があります。

  • トフラニール(イミプラミン)
  • アナフラニール(クロミプラミン)
  • トリプタノール(アミトリプチリン)
  • ノリトレン(ノルトリプチリン)
三環系抗うつ薬の特徴
  • 抗うつ薬の中で最も効果が強いとされているが、副作用が多い
  • まれに重篤な不整脈などを生じ、生命に関わることもある
  • 新薬の登場により、現在はあまり用いられていない

四環系抗うつ薬

四環系抗うつ薬は、三環系抗うつ薬の改良版として開発された抗うつ薬です

四環系抗うつ薬には以下の種類があります。

  • テトラミド(ミアンセリン)
  • ルジオミール(マプロチリン)
  • テシプール(セチプリン)
四環系抗うつ薬の特徴
  • ほかの抗うつ薬とくらべて効果が出るのが比較的早い
  • うつ症状緩和への作用が弱い
  • 睡眠改善効果があるため不眠に用いられることもある

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、脳の神経伝達物質であるセロトニンを増やす作用に優れている抗うつ薬です

SSRIには、以下の種類があります。

  • パキシル(パロキセチン)
  • ジェイゾロフト(セルトラリン)
  • レクサプロ(エスシタロプラム)
  • ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の特徴
  • 三環系抗うつ薬と比較すると副作用が少ない
  • 性機能障害や吐き気など、セロトニン関係の副作用は多い
  • 気分の落ち込みや不安が強いうつ病に適している

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、脳の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンを増やす作用に優れている抗うつ薬です

SNRIには、以下の種類があります。

  • サインバルタ(デュロキセチン)
  • トレドミン(ミルナシプラン)
  • イフェクサー(ベンラファキシン)
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の特徴
  • SSRIと同じく副作用が比較的少ない
  • 血圧上昇や頭痛、尿閉(尿が出ない)など、ノルアドレナリン関係の副作用は多い
  • 意欲の低下や無気力などの症状があるうつ病に適している

NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)は、紹介した5つの中で最も新しい抗うつ薬です

NaSSAには、以下の種類があります。

  • レメロン/リフレックス(ミルタザピン)
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)の特徴
  • 四環系抗うつ薬の改良版であり、効果が出るのが早い
  • 四環系抗うつ薬よりもうつ病に対する効果が高い
  • 体重増加や眠気などの副作用が高頻度で生じる

抗うつ薬でよくみられる副作用

どのような薬にも副作用がつきものです。それは、抗うつ薬も例外ではありません。

抗うつ薬でよくみられる副作用は以下の通りです。

【吐き気】
SSRIでよくみられる副作用です。ただし吐き気の副作用は、服用を続けていると自然消失するケースが多いです。

【体重増加】
体重増加の副作用は、NaSSAや三環系抗うつ薬で多く認められます。抗うつ薬に含まれる成分が、食欲を抑える物質の作用を阻害してしまい、食欲が増すためです。

【眠気、不眠】
眠気の副作用は、四環系抗うつ薬や NaSSAなどで認められます。眠気を起こしやすいことから「鎮静系抗うつ剤」と呼ばれることもあります。

反対にSSRI や SNRI では不眠が出現することがあるため注意が必要です。

【性機能障害】
性機能障害とは、勃起障害や射精障害、性欲低下を指します。SSRIやSNRIに多い副作用といわれています。

【立ちくらみ、ふらつき】
立ちくらみやふらつきは、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬など比較的古い薬によくみられる副作用です。

【頭痛、血圧上昇】
頭痛や血圧上昇はSNRIでよくみられます。

【口渇、便秘、尿閉】
口渇、便秘、尿閉は、三環系抗うつ薬を服用した際に多くみられます。

【不整脈】
不整脈は主に三環系抗うつ薬でみられる副作用ですが、そのほかの抗うつ薬でも発生する可能性はあります。重篤な場合は生命にかかわるため、胸部に違和感を感じる場合は医師に相談する必要があります。

抗うつ薬には上記のような副作用があります。薬が合わず、副作用が強い場合には状態をみながら薬の変更ができます。副作用かな?と感じたらがまんせずに、主治医に相談するようにしましょう

薬以外でうつ病を改善する3つの方法

うつ病の治療方法は薬物療法だけではありません。薬以外の主な治療方法として、以下の3つが挙げられます。

  • 精神療法(心理療法)
  • 電気けいれん療法
  • 高照度光療法

それぞれ解説します。

精神療法(心理療法)

うつ病に対する精神療法(心理療法)には、認知行動療法と対人関係療法があります。抗うつ薬での治療と調整しながら用いられます。

認知行動療法

うつ病の方は、否定的な考えを持ちやすく、それが行動や気分に悪影響を与えるとされています。

認知行動療法は、このような認知の歪みを修正し、より健全な思考や行動パターンを身につけることで症状の緩和を図ります

対人関係療法

対人関係療法は、家族や友人、勤め先の同僚など、比較的近い間柄の関係に注目します。対人関係での課題を理解しながら対処方法を学ぶことで、うつ症状の緩和が期待できます

認知行動療法と対人関係療法は、うつ病に対して有効性が示されています。医師や家族と相談し、薬物療法と調整しながら治療を受けるとよいでしょう。

電気けいれん療法

電気けいれん療法(ECT)は、頭部に電流を流して脳の機能を改善する治療方法です。

電気けいれん療法は、治療方法などからあまりよいイメージを持たれません。しかし、治療が難しいうつ病であっても、約8割の確率で改善効果がみられたなどの報告もあります

電気けいれん療法は、すべてのうつ病でおこなわれるわけではありません。薬物療法が効果を示さない場合や、重度のうつ病の場合に検討されます。注意点として、治療後に頭痛や吐き気、口腔内損傷がみられる場合があります。

高照度光療法

高照度光療法は、光療法とも呼ばれます。太陽の光やそれに近い光を浴びることで体内時計を調整し、概日リズムを整えるのを目的としています

高照度光療法は、睡眠障害の改善に有効な治療法として知られていますが、うつ病にも効果的です。専用の設備のもと一日1〜2時間、2500〜10000ルクスの光を浴びる治療方法です。一般的な蛍光灯の明るさが300〜500ルクス程度であるため、かなり明るい光が用いられます。

うつ病を改善するには生活習慣の見直しも有効

うつ病を改善するには、生活習慣の見直しが有効といわれており、とくに睡眠は重要です。なぜなら睡眠不足に陥ると、脳の機能回復が間に合わないためうつ症状の悪化につながりかねないからです。

健康のための睡眠のとり方については、以下を参考にしてみましょう。

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」

うつ病の薬に関するよくある質問

最後に、うつ病の薬に関するよくある質問に対してお答えします。気になる方は参考にしてください。

今回ピックアップする質問は、以下の通りです。

  • 健康な人が抗うつ薬を飲んだらどうなりますか?
  • 抗うつ薬を飲まない方がいいケースはありますか?
  • 市販の抗うつ薬はないのですか?

それぞれ順番に回答します。

健康な人が抗うつ薬を飲んだらどうなりますか?

うつ病の方に限らず、どんな方でも気分が落ち込むことはあります。しかし、抗うつ薬を飲んだからといって気分の落ち込みが解消されるわけではありません。抗うつ薬は脳内の機能を改善する薬であるため、対象の疾患をお持ちの方のみに効果的です。

また、効果を得られないだけではなく、吐き気や眠気などの副作用が生じる可能性があります。むやみに抗うつ薬を服用するのはお控えください。

抗うつ薬を飲まない方がいいケースはありますか?

「飲まない方がいい」というと少々語弊があるかもしれませんが、「飲まなくてもよい」ケースはあります。それはうつ病が軽症の場合です

うつ病が中〜重度の場合であれば、抗うつ薬の効果が認められています。しかし軽症のうつ病の場合、効果がまだ実証されていないため、慎重に処方するようにしています。

抗うつ薬は市販されていないのですか?

抗うつ薬は副作用が強く出る場合や、依存をきたす可能性があるため、市販されていません。一方で、うつ病に効果があるとされている漢方薬や、不眠の症状を緩和する薬は薬局でも販売されています。

ただし、市販薬にも副作用があり、加えて十分な効果が得られない場合があります。安易に市販薬だけに頼るのはおすすめしません。

抗うつ薬の基本を理解して、うつ病を正しく治療しよう

うつ病の治療に用いる抗うつ薬は、改良を重ねながら多くの種類が登場しています。薬の副作用や服薬期間は、薬の種類や個人の症状、体質によって異なります。そのため、医師と相談しながら服用量や種類を検討していく必要があるでしょう

当院では、薬での治療を開始する前に丁寧な説明をおこない、低用量から開始するようにしています。また薬の効果や副作用についても、正確に評価しながら治療を進めています。

うつ病の治療でお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。

参考サイト・文献
国立精神・神経医療研究センター|こころの情報サイト|うつ病
厚生労働省|こころの耳|うつ病の主な症状と原因
J-STAGE|ファルマシア 56巻7号|坂本将俊|抗うつ剤の種類・特徴とその限界
CONVENTION LINKAGE|日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害2016
厚生労働省|e-ヘルスネット|抗うつ薬
産業医実務研修センター|産業医のための職域メンタルヘルス 不調の予防と早期介入・支援ワークブック 職場でよく見る精神科治療薬
J-STAGE|女性心身医学 Vol. 27, No. 2|大坪天平|抗うつ薬を使いこなす
J-STAGE日本生物学的精神医学会誌 29巻4号|澤山恵波|電気けいれん療法〜効果を最大に引き出すために〜
厚生労働省|こころの耳|高照度光療法
大阪市立科学館|照度と明るさの目安
日本を元気にする光療法の総合サイト|高照度光療法とは – 体内時計、生体リズム
厚生労働省健康局|健康づくりのための睡眠指針2014
J-STAGE|杏林医会誌 49巻1号|坪井貴嗣|うつについて改めて知ってみませんか?:うつ病の治療について

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精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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