うつ病でも人前では明るいことがある?微笑みうつ病の特徴を解説

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うつ病だとしても、人前では明るいことがあるのか気になる人はいるのではないでしょうか。うつ病の人のなかには人前ではつらさを隠して明るく対応している人がおり、その状態を「微笑みうつ病」と呼びます。

本記事では、微笑みうつ病の特徴やそのほかの種類のうつ病との違い、どのような人がなりやすいかなどをご紹介します。微笑みうつ病にどのような傾向があるのかを知れば、早期の対処につながるでしょう。

うつ病でも人前では明るいことがある?

うつ病だとしても、常に落ち込んでいるような状態であるとは限りません。なかには人前では明るく振る舞っているケースもあり、その状態を「微笑みうつ病」といいます。ここでは微笑みうつ病の特徴と、ほかに類似した種類について解説します。

微笑みうつ病の特徴

微笑みうつ病とは、内心では落ち込んだり苦しんだりしていても、それを表面に出さずに明るく振る舞っている状態のことです。

微笑みうつ病の人はつらい気持ちが表面上に現れにくいので、周囲の人からすると一見問題がないようにみえます。しかし、それは他人に悟られないように努力して作ったものである可能性もあります。また、無理をしているという自覚がなく、無意識に周囲に明るく振る舞うこともあるとされています。微笑みうつ病は若い女性に多いといわれており、決して珍しい状態というわけではありません。

非定型うつ病の可能性

微笑みうつ病以外にも、「非定型うつ病」の可能性も考えられます。非定型うつ病とは、後述する一般的なうつ病とは異なる特徴を持ったものです。

非定型うつ病は、抑うつ状態をはじめとした症状はみられるものの、よいことや楽しい出来事が起きた際は気分が明るくなるのが特徴です。そのため、楽しいことがあれば人前では明るく振る舞える可能性があります。また、非定型うつ病は他人からの批判に敏感になりやすい傾向があります。

そのほかの特徴的な症状としては、以下の通りです。

  • 食欲・体重の増加
  • 過眠傾向(寝過ぎ)
  • 強い倦怠感
  • 手や足の重さ 

季節性うつ病の可能性

そのほかにも、「季節性うつ病」の可能性が考えられます。季節性うつ病とは、特定の季節にうつ病を発症し、季節の移り変わりにともなって回復することを繰り返すものです。「季節性感情障害」や「季節性気分障害」ともいわれており、特に冬の時期に季節性うつ病を発症しやすいといわれています。季節の移り変わりによって症状が回復していれば、人前でも通常通り明るく振る舞っていることがあるでしょう。

季節性うつ病はストレスではなく、日照時間が関係していると考えられています。そのため、照射された光を長時間浴びる「光療法」という、ほかのうつ病とは異なる治療法をおこなうこともあります。 

人前では明るい微笑みうつ病と、ほかのタイプとの違い

微笑みうつ病の状態の人は、ほかのうつ病とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは一般的なタイプや非定型うつ病、季節性うつ病との違いについて解説します。

 一般的なうつ病との違い

一般的なうつ病は、身体的・精神的なストレスによって脳のエネルギーが不足してしまう状態のことです。うつ病になると、以下のような精神的・身体的な症状が現れます。

  • 表情が暗い
  • 気分の落ち込み
  • 涙もろい
  • 落ち着きがない
  • めまい
  • 食欲不振
  • 不眠・過眠
  • 倦怠感
  • 頭痛・肩こり

特に表面上に現れるような症状があるときは、周りの人も変化に気づくこともあるでしょう。一方で、微笑みうつ病の人は周囲にはできる限り感情を見せず、変化に気づかれないようにする傾向があります。微笑みうつ病の症状が現れていると周囲から気づかれにくいので、対応が遅れる恐れがあります。 

非定型うつ病との違い

非定型うつ病は、落ち込みや抑うつ状態はみられているものの、楽しい出来事が起きた際には実際に気分が明るくなるのが特徴です。一方、微笑みうつ病の人は明るく振る舞っているだけで、本当は気分が落ち込んでいるという傾向があります。

一見すると、どちらも人前では明るいと思われるでしょう。

季節性うつ病との違い

季節性うつ病は、特定の季節に発症するタイプです。季節が変わるたびに発症と回復を繰り返すのが特徴で、ストレスよりも日照時間の影響が大きいとされています

一方、微笑みうつ病は身体的・精神的なストレスをきっかけにさまざまな症状が現れます。また、季節性うつ病が季節の移り変わりで回復しやすいのに対して、微笑みうつ病はすぐに回復するとは限りません。症状が良くなったり悪くなったりなどを繰り返して、長い期間をかけて少しずつ改善に向かうのが一般的とされています。

このように、発症のきっかけや回復過程が異なることがわかります。

微笑みうつ病の診断基準

微笑みうつ病には、明確に決められている診断基準はないとされています。しかし、微笑みうつ病の症状を抱えている人は一般的なうつ病の診断基準を満たしていることが多くあります。国際的に定められているうつ病の診断基準は以下の通りです。

【うつ病の診断基準】

  1. ほとんど1日中抑うつ気分が続く
  2. ほとんど1日中興味や喜びが喪失する
  3. 体重や食欲が減少・増加している
  4. 不眠あるいは過眠となっている
  5. 自分に価値がないと思う、自責感がある
  6. 自殺する計画を考えるときがある
  7. 疲労感や気力の低下がある
  8. うまく集中できない
  9. 焦燥感を覚える、あるいは動きたくない気分になる

参考:うつ病の診断基準|日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014

1と2を含めた5つ以上の項目が2週間以上続いており、その影響で日常生活に支障が出ていること、それがほかの疾患や薬物・アルコールなどの影響ではないことがうつ病の診断基準とされています。

この診断基準に当てはまっていると思う人は、メンタルクリニックを受診してみましょう。

微笑みうつ病になりやすい人の特徴

どのような人が微笑みうつ病の状態になりやすいのでしょうか。ここでは微笑みうつ病の状態になりやすい人の特徴の一例をご紹介します。

つらくても常に明るく振る舞っている

元からつらかったり悲しかったりしても、他人の前では明るく振る舞おうとする傾向がある人は、微笑みうつ病の症状が現れやすいといえるでしょう。たとえば、職場に行くまでは憂うつな気持ちなのに、仕事中は本当の感情を押し殺して明るく振る舞っているような人が当てはまります。

無意識にこのような振る舞いをしている人もおり、この状況が繰り返し続くとやがて微笑みうつ病になる恐れもあるのです。

相手に気をつかいすぎている

相手に気をつかいすぎている人も微笑みうつ病の症状が現れる恐れがあります。たとえば、相手が不快にならないような配慮や、相手の気持ちを優先した行動を常にしている人などがあげられます。気をつかいすぎている人は、自分よりも相手のことを考えるあまり、無理してしまう傾向があります。

この状態が続いてストレスが蓄積されると、やがてキャパシティオーバーとなって微笑みうつ病となってしまうのです。また、気をつかいすぎていると自己犠牲が当たり前になったり、罪悪感を覚えやすくなったりして、さらに自分を追い込むこととなります。 

うまくストレスを解消できない

うまくストレスを解消できない人も、微笑みうつ病の状態になりやすいといえます。微笑みうつ病になりやすい人は、周囲に気づかれずに1人で抱え込む傾向があるため多くのストレスが溜まってしまいます。

うまく気分転換できる方法を持っていないと、ストレスは溜まるばかりです。日々溜まっているストレスを解消できないと微笑みうつ病を発症するだけでなく、その後も症状が悪化してしまう恐れがあります。

真面目で正義感が強い

真面目で正義感が強い人も、微笑みうつ病の状態となりやすいとされています。このような人は責任感が強く勤勉、周囲に気をつかえるなどの長所を持っています。

しかし、必要以上に頑張りすぎたり物事を1人で抱え込んだりする傾向があるため、ストレスを溜め込んでしまうのです。溜まったストレスによって心のバランスが崩れてしまい、微笑みうつ病につながります。

今回紹介した特徴が自分には当てはまっていないか確認してみましょう。 

微笑みうつ病になったときの治し方

微笑みうつ病の状態になった場合、どのような治療がおこなわれるのでしょうか。ここでは代表的な治療法をご紹介します。 

休養

ストレスから離れられるような環境を整えて、心身の休養をする方法です。ストレスによってエネルギーが不足した脳を休ませることは、うつ病の基本的な治療といえるでしょう。微笑みうつ病の症状がある人は、明るく振る舞う必要のない環境にできる限り整えることが大切です。

働いている人は仕事量を減らしたり、勤務形態を変更したりするなどの工夫をとってみましょう。場合によっては有給休暇や休職などの制度を活用して、長期的に休むことも検討してみてください。家族や職場の上司と相談して、心身を休められるような環境を整えてみましょう。

薬物療法

薬物療法は薬によって症状の改善・悪化防止を図り、心身の調子を整える方法です。うつ病の治療では心身の休養が重要となりますが、なかなか症状が改善しないケースもあります。そのような場合に、症状を軽減するための対症療法として薬物療法を併用します。

うつ病の人に使用される代表的な治療薬が「抗うつ薬」です。抗うつ薬には「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質に働きかけて脳のエネルギーを補う効果が期待されています。抗うつ薬はすぐに効果が現れるものではないので、焦らずに服用を継続することが大切です。 

精神療法(心理療法)

心理的な働きかけによってうつ病の改善を目指す精神療法(心理療法)の1つに、「認知行動療法」があります。認知行動療法とは、出来事に対する今までのとらえ方(認知)を変えることでストレスの軽減を目指す方法です。

うつ病を抱える人は、出来事をネガティブにとらえる傾向があります。認知行動療法では視野を広げて、ポジティブな面もとらえられるような練習をします。この練習によって、さまざまなとらえ方ができるようになり、ストレスの軽減につながるのです。また、認知行動療法による治療は薬物療法を比較すると、うつ病の再発率が低いといわれています。

微笑みうつ病を予防するためのポイント

微笑みうつ病の発症や症状の悪化を予防するには、普段の生活をよく見直す必要があります。ここでは日常生活で取り入れられるポイントをご紹介します。 

自分なりのストレス解消法を見つける

自分なりのストレス解消法を見つけてみましょう。微笑みうつ病の状態にになりやすい人は普段から自分の気持ちを押し殺し、ストレスを溜めやすい傾向があります。

ストレスが溜まった状態が続くと、やがて気分転換をする元気もなくなってしまいます。そのような状態になる前に、定期的にストレス解消をすることが大切です。スポーツや映画鑑賞など、自分にとって気分転換になるものを探してみましょう。

生活習慣を整える

生活習慣を整えて、余計なストレスが溜まらないように注意しましょう。生活習慣の1つである「睡眠」もうつ病と関係があり、不眠のある人は発症リスクが高くなるとされています。生活習慣を整えるには、以下のような工夫をしてみましょう。

  • 朝起きたら日光を浴びる
  • 寝る前にPCやスマートフォンを見ない
  • 仕事でストレスを溜め込まない
  • 起床時間と睡眠時間を一定にする
  • 入浴したり音楽を聴いたりなどのリラックスできる時間を作る
  • 決まった時間に食事をとる

また、生活習慣を整えることはうつ病だけでなく、生活習慣病の予防にもつながります。

1人で抱え込まずに相談してみる

ストレスを感じていたり、うつ病になっていないか不安だったりする人は、1人で抱え込まず誰かに相談してみましょう。1人でなんとかしようと考えていても、うまくいかないことや、思うような解決法を得られないこともあるでしょう。

まずは仲のよい友人や家族に話をするだけでもかまいません。それでもつらいと感じる場合は、一度メンタルクリニックを受診してみましょう。

人前では明るくてもうつ病の可能性がある

微笑みうつ病の人は、内面のつらさを隠して人前では明るく振る舞う傾向があります。しかし、本人はつらい気持ちを我慢して振る舞っているので、周囲が気づかないうちに症状が悪化してしまう恐れがあります。微笑みうつ病の対処には、早期の治療はもちろんストレス解消をしたり、誰かに相談したりして予防に努めることが大切です。

微笑みうつ病かもしれないと思ったら、1人で抱え込まずにメンタルクリニックを受診してみてください。適切な治療を受けることでストレスが軽減されて、いつも通りの気分で周囲とコミュニケーションがとれるようになるでしょう。

参考サイト・文献
心理臨床場面における笑いの取り扱い : その効用と実際, 展望について
厚生労働省 こころの耳|ご存知ですか?うつ病
厚生労働省 こころの耳|季節性うつ病:用語解説
厚生労働省 こころの耳|業務要因よりも季節性の要因により再燃するうつ病の事例
国立精神・神経医療研究センター|うつ病
うつ病の新しい考え方
日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
うつ病になりやすい人がいると聞いたのですが。 – 千葉県
厚生労働省|抗うつ薬 – e-ヘルスネット
厚生労働省|認知行動療法 – e-ヘルスネット
うつ病や自殺から守るために – 私たちに – 福島県
健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省健康局

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精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

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