「不安障害って自力で治せるの?」
「薬を飲まずに不安障害を治したい」などと悩んでいる方もいるかもしれません。
不安障害は複数に分類でき、誰もが経験する不安とは異なる症状が表れます。不安や心配が過度となり、日常生活に影響をきたします。
不安障害の症状に悩む方の中には、病院の受診が苦手な方もいるでしょう。そのため、病院を受診したり、薬を飲んだりせず、できれば自力で治したいと考えている方もいるかもしれません。
そこで本記事では、不安障害の自力での治し方3選や不安障害に関するよくある質問を紹介します。不安障害の症状を自力でどうにかしたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
不安障害とは?分類と症状について解説
不安障害とは、不安が伴うさまざまな症状が通常の限度を超えてしまい、行動や心理的に障害をもたらす精神疾患です。また、不安障害は下記のように分類されます。
- パニック障害
- 社交不安障害(社会不安障害)
- 強迫性障害
- 全般性不安障害
- 恐怖症 など
一般的な不安は誰にでもあり、正常な反応です。しかし、もともとは正常な反応であるはずの不安が日常生活に支障をきたすほど持続し、動悸や呼吸困難、めまい、不眠などの症状が表れます。
不安によって強い苦痛が生じたり、繰り返したりします。症状は個人差が大きく、周期や時間、強さもさまざまです。ほかの精神的な疾患との判別が必要です。
自力での不安障害の治し方3選
過度な不安や心配などの症状が表れている不安障害に対しては、通院したり、抗うつ薬や抗不安薬などの薬を飲んだりする治療があります。不安障害のなかには治療開始が遅れるほど回復が遅くなるものもあるため、できるだけ早く、専門の医療機関で治療を受けるのが望ましいでしょう。
しかし、なかには「病院は苦手だから行きたくない」「できれば薬に頼りたくない」と考える方がいるかもしれません。
そこで、ここでは自力での不安障害の治し方を3つ紹介します。
- 腹式呼吸法|自律神経を安定させる
- リラクセーション法|リラックス状態を身につける
- 生活習慣の改善|規則正しい生活をする
それぞれの治し方を実践すると、過度な不安や心配などの症状が軽減できる可能性があります。
1.腹式呼吸法|自律神経を安定させる
まず紹介するのは、自律神経を安定させる腹式呼吸法です。
不安障害の方は、過度な緊張状態にあるため、運動していないにもかかわらず運動した後のように息が上がっている場合があります。呼吸が速くて浅くなり、汗をかくこともあるでしょう。
腹式呼吸法により、空気をゆっくり吐き出すことで副交感神経優位となるため、身体の緊張状態を緩められます。自律神経を整えることで、リラックス効果を得られるでしょう。
腹式呼吸法の実施方法は、下記3つの手順です。
- 背筋を伸ばして椅子に座り、目を閉じてお腹に手を当てる
- 口からゆっくり息を吐きながら「いーち、にー、さーん」と3秒数える
- 同じように3秒数えながら鼻から息を吸う
1〜3の手順を5〜10分間繰り返すとより効果的です。息を吸ったり、吐いたりしているときはお腹が上下に動いているか確認しながら実施しましょう。
2.リラクセーション法|リラックス状態を身につける
リラックス状態を身につけるリラクセーション法も、不安障害の症状を軽減する効果が期待できます。ここでは漸進的筋弛緩法を紹介します。
漸進的筋弛緩法は、意識的に身体の一部に力を入れ、直後に力を抜く動作をおこなうことで、その部分がリラックスする感じを味わう方法です。腕や肩、背中や足などいろんな部分でおこなえますが、ここでは肩の漸進的筋弛緩法を紹介します。
- 両肩をすくめて肩が緊張した状態を5秒間維持する。このとき力を入れすぎず、全力の6~7割の力に留めるのがポイント。
- 一気に肩の力を抜く。両肩がじんわりと温かい感じがすればリラックスした状態。この状態を20秒ほど味わい、力を入れているときと抜いているときの違いを感じる。
力を入れるときに呼吸を止めたり、痛みや疲労を感じるほど力を入れたりすると逆効果になるので注意が必要です。自分が心地よい、落ち着けると感じられる程度でやってみるとよいでしょう。
リラクセーション法には、ほかにも誘導イメージ法や自己催眠、深呼吸法などがあります。
誘導イメージ法 | ネガティブな気分やストレスフルな気分の代わりに楽しいイメージを意識することで不安を軽減する。 |
自己催眠 | 特定の言葉やフレーズを使わない合図を使って、リラックス反応を引き起こすことで不安を軽減する。 |
深呼吸法 | 深くゆっくりとした呼吸法により不安を軽減する。 |
リラクセーション法は、病気や治療に対する不安、不眠症など不安障害の症状に効果的です。継続して実施することで、リラックスできる状態を作りやすくなります。
3.生活習慣の改善|規則正しい生活をする
規則正しく生活し生活習慣を改善することも、不安障害の症状を軽くするために自力でできる方法です。
食事や睡眠、活動など1日の生活リズムは不安障害の症状に影響すると考えられています。毎日決まった時間に食事したり、早寝早起きを心がけたりするなど、ある程度決めた時間で規則正しい生活を送ると、体内リズムを整えられるでしょう。
適度な運動は、脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンの代謝を促します。セロトニンには脳をリラックスさせ、精神を安定させる効果があるため、不安の軽減が期待できるでしょう。ウォーキングやジョギングなどの軽い運動でも、継続的に取り組むことで効果が表れます。
また、カフェインの摂取も控えましょう。コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、興奮物質の一つであり、交感神経が刺激され、脳内を緊張状態に保ちます。
普段何気なくおこなっている生活習慣を少し見直すことで、不安障害の症状軽減につながるのです。
不安障害の症状が自力で治せなかった場合の対処法
腹式呼吸法を取り入れたり、生活習慣の改善を進めたりしても、不安障害の症状を自力では治せない場合もあります。過度な不安や心配が続くときは、下記2つの対処法を実施しましょう。
- 医療機関を受診する
- 働く人の「こころの耳相談」を活用する
それぞれについて詳しく紹介します。
医療機関を受診する
不安障害の症状が続いたり、強く表れる場合は医療機関を受診しましょう。
症状が悪化すると、日常生活に影響を与えるだけではなく、ほかの精神疾患を引き起こす要因となり得ます。
医療機関を受診すると、薬物療法や認知行動療法を受けられます。薬物療法は、医師の診断をもとに抗うつ薬や抗不安薬で不安障害の症状を抑え、改善を図ります。認知行動療法は、医師や臨床心理士との話し合いを通して、不安のメカニズムに注目し、不安を悪化させる考えや行動を徐々に修正し不安をコントロールするための治療です。認知行動療法には、薬物療法と同じか、それ以上の効果があるとされています。
不安障害の症状改善には、早期受診が大切です。自力で治せない場合は、ためらわずすぐに受診しましょう。
働く人の「こころの耳相談」を活用する
働く人の「こころの耳相談」を活用することも対処法の一つです。悩みに耳を傾けてくれる専門の相談機関や相談窓口があります。
SNSやメールでの相談にも対応しており、電話は月曜日・火曜日であれば22時まで対応しています。所定の訓練を受けた産業カウンセラーが対応しているため、病院受診にためらいがある方は、まず働く人の「こころの耳相談」を活用してもいいでしょう。
自分一人で悩まずに、客観的な意見を聞き入れることは問題解決に向けて大切です。匿名で相談できるので、安心して相談できます。
「不安障害を自力で治す方法」に関するよくある質問
最後に「不安障害を自力で治す方法」に関するよくある質問を3つ紹介します。
- どんな症状が出たら病院を受診したほうがよいですか?
- 実際に自力で治ったきっかけはなんですか?
- 病院選びで注意したほうがよいことはありませんか?
不安障害を自力で治す方法や症状、病院選びに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
どんな症状が出たら病院を受診したほうがよいですか?
過度な不安や心配が続き日常生活に影響をきたす場合は、病院を受診したほうがよいでしょう。
不安障害にはめまいや動悸、呼吸困難などさまざまな症状がありますが、見た目ではわからず、周囲から理解を得られない場合もあります。また、さまざまな理由から病院の受診がためらわれる場合もあるでしょう。そのため、病院の受診が遅れる可能性があるのです。
適切な対応でなければ、症状が悪化しほかの精神疾患の原因となり得ます。不安障害の一つである全般性不安障害(GAD)は、治療開始が遅くなれば回復が遅れることが明らかになっています。発症から1年以内の治療が重要です。
不安障害を治すためには、早期発見・早期治療が大切と言えます。
実際に自力で治ったきっかけはなんですか?
自力で不安障害が治ったきっかけは、人それぞれです。
腹式呼吸法のみを実践し治った方や腹式呼吸法やリラクゼーション法、生活習慣の改善を繰り返しおこなったことで治った方もいます。症状の度合いやもともとの性格も異なるため、不安障害が治るきっかけはさまざまです。
不安障害が治ると、疲労感がリセットされ、極度の緊張も感じにくくなります。不安障害の症状で悩んでいた頃と違う毎日を過ごせるでしょう。克服を諦めずに取り組むことが大切です。
病院選びで注意したほうがよいことはありませんか?
不安障害の症状で悩んでいる方は、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう
ほとんどの精神科や心療内科は、不安障害だけではなく、うつ病や統合失調症などの精神疾患を幅広く診療しています。一方で、子どもや思春期の時期を主に診療している病院や、アルコール依存症やてんかんなど特定の分野を専門とする病院もあります。
また、下記のポイントを確認したうえで病院を選びましょう。
- 治療プログラムの内容
- 所属している専門スタッフ
- 診療の時間帯、曜日
- 予約制かどうか
- 外来のみ対応か、入院可能かどうか
自身の症状と合った病院選びが適切な治療には重要です。
たとえば、医師だけでなく臨床心理士も在籍している病院なら、カウンセリングを受けることができるでしょう。また、不安障害を治すためには一定の期間通院を続ける必要があるため、通院しやすいかどうかも重要です。診療時間や休診日、予約制の有無を確認しておくとよいでしょう。
症状が非常に重い場合や治療法の種類によっては、入院する可能性もゼロではありません。外来診療のみの病院に通院している場合に入院が必要な状態になると、転院することになります。
自力での不安障害の治し方で効果がなければ医療機関を受診しよう
不安障害の症状に悩んでいるものの、さまざまな理由により病院の受診をためらう方もいるかもしれません。
腹式呼吸法やリラクセーション法、生活習慣の改善を実践すると、自力で不安障害の症状を改善できる可能性があります。自身の症状に合わせて適切に対応することが大切です。
しかし、自力では不安障害の症状が改善しない場合や、日常生活や社会活動に支障が生じている場合には、精神科や心療内科などの医療機関を受診しましょう。不安障害について正しく理解し、向き合うことが治すための第一歩です。
参考サイト・文献
・e-ヘルスネット|厚生労働省ー不安症/不安障害
・こころもメンテしよう|厚生労働省
・『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』|厚生労働省
・健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省
・ こころもメンテしよう|厚生労働省
・バイオフィードバック療法‐都田敦・端詰勝敬Vol. 63 No. 1. 2023|心身医
・e-ヘルスネット|厚生労働省
・カフェインの過剰摂取について|農林水産省
・こころの情報サイト|国立精神・神経医療研究センター
・こころの耳|厚生労働省
・大坪太平先生に「全般不安症(GAD)」を訊く|日本精神神経学会
・こころの耳|厚生労働省
・こころもメンテしよう|厚生労働省