「双極性障害の友人に少し疲れた」
「双極性障害の友人とうまく付き合うためには、どうしたらいいの?」
など感じたり、悩んだりする方もいるかもしれません。
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患の一つであり、うつ状態と躁状態で大きく症状が変わります。躁状態のときに言動がキツくなる、症状の変化の予測がつかないなどの理由から、双極性障害の友人に疲れたと感じる場合もあるでしょう。
そこで本記事では、双極性障害である友人に疲れたと感じたときの3つの対処法や、疲れたと感じる理由を解説します。双極性障害の友人とのかかわりに悩んでいる方や、うまく付き合える方法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
双極性障害の友人に疲れたと感じたときの3つの対処法
ここでは、双極性障害である友人に疲れたと感じたときの対処法を解説します。詳しくは下記3つがあります。
- 「病気がさせている」と割り切る
- しばらく距離を置いて見守る
- 公的な機関に相談する
対処法を実践できれば、双極性障害である友人に疲れたと感じにくくなる可能性があります。
1. 「病気がさせている」と割り切る
まずは「病気がさせている」と割り切ることが大切です。
気分の波は、誰にでもあるでしょう。たとえば、悲しい気分のときもあれば、幸せな気分のときもありますが、その気分の波は一時的です。しかし、双極性障害のうつ状態のときは、抑うつ気分や意欲の低下が2週間以上続きます。躁状態のときは、1週間以上症状が表れ、気分がハイになったり、あまり眠らず行動したりします。
そのため、友人に「いつもとは違う」「ちょっとおかしいのでは?」と感じるかもしれません。本人には症状のコントロールは難しいため、「病気がさせている」と割り切れれば、冷静に対応できるでしょう。
2. しばらく距離を置いて見守る
しばらく距離を置いて見守ることは、双極性障害である友人に疲れたと感じた際の対処法の1つです。
かかわりをやめると、友人を孤独に追いやってしまうことがあるかもしれません。実際に双極性障害の方が、友人が離れてしまい孤独を感じたという話もあります。
さらに、孤独感が自殺のリスクを高める要因となる可能性があります。しかし、あなた自身が友人とのかかわりに疲れており、つらい思いをしているかもしれません。
そのため、かかわりを完全にやめるのではなく、しばらく距離を置いて見守ることが大切です。あなた自身の疲れが癒されたら、元の距離に戻してみましょう。
3. 公的な機関に相談する
公的な機関への相談は、双極性障害である友人に疲れた際に有効であるといえるでしょう。
なぜなら、信頼できる専門家から、双極性障害である友人とのかかわり方の疑問点や具体的な対処法についてアドバイスを受けられるためです。具体的には、保健所や精神保健福祉センターに加え、「こころの健康相談統一ダイヤル」や「みんなねっと相談室」などを活用しましょう。
公的な機関に相談し、具体的なアドバイスをもらうことで、悩みを軽減でき友人との関係性を維持できるでしょう。
双極性障害の友人に疲れたと感じる3つの理由
双極性障害である友人に疲れたと感じる理由はさまざまです。下記3つが疲れたと感じる主な理由です。
- うつ状態、躁状態で症状が大きく変わるから
- 躁状態のときに言動がキツくなるから
- 症状がどう変化するのか予測がつきにくいから
なぜ疲れたと感じるのか、それぞれの理由を詳しくみていきましょう。
1. うつ状態、躁状態で症状が大きく変わるから
理由の1つは、うつ状態と躁状態で症状が大きく変わるためです。それぞれの症状は下記の通りです。
うつ状態 |
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躁状態 |
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上記の表で、うつ状態と躁状態では大きく症状が異なることがわかります。
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患です。うつ状態は2週間以上、躁状態は1週間以上続くと診断に至ります。また、うつ状態と躁状態では、うつ状態の期間のほうがはるかに長いといわれています。
友人は、家族と比べると毎日長時間一緒に過ごすわけではないため、症状が変わるサイクルが短いと感じるでしょう。そのため、うつ状態と躁状態による症状の変化に疲れたと感じる可能性があります。
2. 躁状態のときに言動がキツくなるから
躁状態のときに言動がキツくなることも、双極性障害である友人に疲れたと感じる理由としてあげられます。
うつ状態のときは、抑うつ気分や気分の低下が主な症状です。周囲とかかわる機会が減るため、周囲に強く当たることは少ないでしょう。
しかし、躁状態のときは気分が高揚し、イライラしやすいため、周囲に強く当たる可能性があります。さらには、怒りやすくしばしば暴言を吐くため、「病気だから仕方ない」と思っていても傷つくでしょう。
キツいことを言われて傷ついた気持ちを抱え込まざるを得ず、疲れたと感じることがあります。
3. 症状がどう変化するのか予測がつきにくいから
双極性障害である友人に疲れたと感じるもう1つの理由は、症状がどう変化するのか予測がつきにくいためです。
なぜなら、双極性障害について詳しく知る機会はあまりないと考えられるためです。具体的には、双極性障害の方の割合は、重症と軽症を合わせても0.4〜0.7%といわれており、100人に1人もいません。
そのため、双極性障害がどのような病気であるのか、どのような症状が表れるのか、どのように接したらいいのかなど、理解している方は少ないといえるでしょう。
予測がつかない症状に振り回されてしまうことで、疲れたと感じることがあります。
双極性障害の状態別のかかわり方
ここでは、双極性障害の状態別のかかわり方を解説します。重要なのは下記2つです。
- 躁状態のとき:病気によるものであることを忘れない
- うつ状態のとき:自殺をほのめかす言葉に注意する
うつ状態のとき、躁状態のとき、それぞれのかかわり方をみていきましょう。
躁状態のとき:病気によるものであることを忘れない
躁状態であるときのかかわり方は、「普段と異なる友人の言動は病気によるものであることを忘れない」ことが重要です。
その理由は、双極性障害の症状を本人がコントロールするのは難しいためです。
実際に、躁状態にあるときは気持ちが高揚しており、自身が偉くなったように感じます。大切な存在であるはずの家族や友人に尊大な態度をとったり、イライラをぶつけたりします。
双極性障害である友人の変化に戸惑い、「こんな言葉をいうなんて、人が変わってしまった」と驚くこともあるでしょう。
そのため、躁状態のときは「普段と異なる言動は病気によるものであることを忘れない」ことが重要です。あくまで病気のせいであり、本来の友人の性格によるものではないと考えられれば、こころの負担を少し軽減できるでしょう。
うつ状態のとき:自殺をほのめかす言葉に注意する
うつ状態のときは、自殺をほのめかす言葉に注意しなければなりません。
なぜなら、一般の方と比較し双極性障害の方は、自殺のリスクが20〜30倍高いといわれているからです。実際に、うつ状態のときは「死んで楽になりたい」「早く消えてしまいたい」と考える傾向にあります。
自殺のサインはさまざまですが、たとえば下記のようなものがあります。
- 自殺の準備をしたり遺書を用意したりする
- 自殺をほのめかす
- 突然家出したり過度に危険な行為に及んだりする
- 大切なものを整理したり人にあげたりする
- 多量の飲酒や薬物の乱用
- 抑うつ的な態度だったのに急に不自然なほど明るく振る舞う
双極性障害の方は、躁状態を軽く考える傾向にあり、うつ状態が一番つらく感じます。家族の認識はその反対で、手に負えない躁状態よりも、静かに過ごしているうつ状態の方がよいのではと考えます。
うつ状態自体の苦しさや家族との認識のずれが、双極性障害にある友人をより苦しめている可能性があります。
うつ状態にあるとき、自殺をほのめかす言葉を発していないか、自殺のサインがないか注意することが大切です。
そもそも双極性障害とは|うつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患
双極性障害とは、うつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患です。ここでは、双極性障害について下記2つを解説します。
- 双極性障害の主な症状
- 双極性障害の主な治療法
それぞれを詳しくみていきましょう。
双極性障害の主な症状
双極性障害の主な症状には、大きく分けて下記の4つがあります。
- うつ状態
- 躁状態
- 軽躁状態
- 混合状態
気分が高揚したりイライラしたりする「躁状態」と、抑うつ気分や意欲の低下がみられる「うつ状態」のほかに、軽躁状態と混合状態があります。
軽躁状態は、躁状態の症状が軽く数日間も続きません。周囲から「調子がよい」と勘違いされるため、見逃されるケースが多いといえます。また、混合状態とはうつ状態と躁状態、それぞれに移行する際にみられます。
双極性障害の主な治療法
双極性障害は、早期に精神科や心療内科などの医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。治療を受け続けることで症状をコントロールできるため、日常生活を送りやすくなる可能性があります。
双極性障害の主な治療法は、下記2つあります。
- 薬物療法
- 精神療法(心理療法)
薬物療法と精神療法(心理療法)は並行して実施します。症状が強く表れている場合は、電気けいれん療法がおこなわれることもあります。
治療において重要なのは「双極性障害であることを受け入れ治療を続けること」です。
しかし、精神疾患への偏見は周囲から向けられるだけではなく、本人自身が抱えている場合もあります。双極性障害である友人が負い目を感じたり、否定的な気持ちになったりしないように、自然体で接し、様子を見守りましょう。
双極性障害である友人が効果的な治療を受けるためには、周囲のサポートが欠かせません。
ときには距離を取りながら双極性障害の友人を見守ろう
双極性障害はうつ状態と躁状態を繰り返す精神疾患です。
うつ状態と躁状態では症状が大きく異なります。症状がどのように変化するのか予測できない、躁状態のときは言動がキツくなるなどの理由から、双極性障害である友人に疲れを感じてしまう可能性があります。そんなときは「病気がさせている」と割り切り、ときには公的な機関に相談しながら対処することが大切です。
また、付き合うのに疲れたからといって完全に離れてしまうのは危険です。友人が孤独を感じてしまい、自殺のリスクが高まるかもしれません。お互いを守るために、ときには距離を取りながら、友人を見守りましょう。
参考サイト・文献
・双極性障害(躁うつ病)とつきあうために|日本うつ病学会 双極性障害委員会
・当事者会の視点からみた双極性障害の予後を悪化させる不適切な対応|精神経誌(2020)122巻3号
・家族や友人が双極性障害になったとき|厚生労働省
・双極性障害|MSDマニュアル
・知ることからはじめよう こころの情報サイト|厚生労働省
・加藤忠史先生に「双極性障害」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
・日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023|日本うつ病学会
・双極性障害(そううつ病)|国立精神・神経医療研究センター
・厚生労働省|職場における自殺の予防と対応