つらい「つわりの薬」種類と安全性|医師が解説する処方・費用・オンライン診療

妊娠おめでとうございます。新しい命の訪れは大きな喜びですが、同時に「つわり」という大きな試練に直面している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「食べても吐いてしまう」「匂いがダメになった」「とにかく気持ち悪い」…そんなつらい症状が続くと、心身ともに疲弊してしまいますよね。

「つわりくらい、みんな経験するものだから我慢しなきゃ…」と思っていませんか?あるいは、「妊娠中につわりの薬なんて使っても大丈夫なの?赤ちゃんへの影響はないの?」と不安に感じているかもしれません。

この記事では、そんなつわりの辛さを抱える妊婦さんとそのご家族のために、産婦人科で処方されるつわりの薬(つわり 改善薬)について、種類、効果、安全性、そしてどのように処方してもらうのかを、医療の専門的な視点から分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、以下のことが分かります。

  • つわりが起こるメカニズムと、なぜ薬が必要になる場合があるのか
  • 産婦人科で処方される主なつわりの薬の種類とそれぞれの特徴
  • つわりの薬の赤ちゃんへの影響(安全性)についての最新情報
  • 市販薬についての注意点
  • つわりの薬を処方してもらうための受診の流れ(クリニック選び、オンライン診療の活用法含む)
  • 薬だけに頼らない、つわりを乗り切るためのセルフケアのヒント

つらい症状を一人で抱え込まず、正しい知識を得て、あなたに合った対処法を見つけるための一歩を踏み出しましょう。

まず知っておきたい「つわり」の基本

つわりとは?原因と症状、重症化(妊娠悪óso)について

つわりは、妊娠初期、多くの場合、妊娠5~6週頃から始まり、12~16週頃までに自然に落ち着くことが多い、吐き気や嘔吐などの不快な症状の総称です。これは病気ではなく、妊娠に伴う生理的な変化の一つと考えられています。

主な症状としては、

  • 吐き気、むかつき
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 特定の匂いに敏感になる
  • よだれが多くなる
  • 眠気、だるさ

などが挙げられます。症状の種類や程度には大きな個人差があります。

つわりの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関わっていると考えられています。

  • hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンの急増: 妊娠によって胎盤から分泌されるhCGホルモンが、脳の嘔吐中枢を刺激するため。特にhCG濃度がピークを迎える妊娠8~10週頃に症状が強くなる傾向があります。

  • ホルモンバランスの変化: エストロゲン(卵胞ホルモン)などの女性ホルモンの変動。

  • その他の要因: ビタミン不足、血糖値の変動、精神的なストレスなども影響すると言われています。

ほとんどのつわりは一時的なものですが、症状が極度に重くなり、吐き気嘔吐が激しくなって、水分や食事がほとんど摂れなくなる状態を「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼びます。これは治療が必要な状態で、以下のような症状が見られます。

  • 著しい体重減少(妊娠前の体重から5%以上減少)
  • 脱水症状(尿量が減る、色が濃くなる、めまい、ふらつき)
  • 電解質異常
  • 栄養障害

重症度の判断には、嘔吐の回数や悪心の持続時間などを点数化する「PUQEスコア」や、体重減少率、尿中のケトン体(体がエネルギー不足で脂肪を分解する時に出る物質)の有無などが参考にされます。

なぜ薬物治療が必要になるの?

「つわりは自然なことだから、薬に頼らず乗り切りたい」と考える方もいるでしょう。

しかし、つわりの症状がひどい場合、それは単に不快なだけでなく、母体の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

  • 脱水: 嘔吐が続くと体から水分が失われ、脱水状態になります。脱水は倦怠感や頭痛を引き起こすだけでなく、重症化すると腎臓機能の低下などを招く恐れがあります。

  • 栄養障害: 食事が摂れない状態が続くと、母体だけでなく、胎児の発育に必要な栄養素も不足してしまいます。

  • 体重減少: 急激な体重減少は、母体の体力を奪います。

  • QOL(生活の質)の低下: 日常生活や仕事に支障をきたし、精神的な負担も大きくなります。

つわりに対する薬物治療は、これらのリスクを防ぎ、母体の健康を守り、つらい時期を少しでも楽に乗り越え、妊娠悪阻への重症化を防ぐことを目的としています。我慢しすぎず、適切なタイミングで医療のサポートを受けることが大切です。

産婦人科で処方される「つわりの薬」の種類と特徴

産婦人科では、妊婦さんの症状の重症度、全身状態、妊娠週数などを総合的に判断し、つわりの薬を処方します。「おすすめ」の薬というものはなく、個々の状態に合わせて最適なものが選択されます。

ここでは、主に処方される処方薬の種類と特徴について解説します。

ビタミンB6製剤(ピリドキシン)

  • 主な使われ方: 比較的軽症~中等症のつわりの第一選択薬として用いられることが多い薬剤です。

  • 効果: 吐き気や嘔吐の症状を和らげる効果が期待されます。ビタミンB6は、脳内の神経伝達物質GABAの合成を助け、嘔吐中枢の興奮を抑える働きがあると考えられています。

  • 使い方: 通常、1日に数回に分けて服用します。医師の指示通りの用法・用量を守ることが大切です。

  • 副作用: 一般的に安全性が高く、副作用は少ないとされています。ただし、極めて大量に摂取すると神経障害のリスクがあるため、自己判断で量を増やしたりせず、必ず処方された用量を守ってください。

制吐剤(吐き気止め)

ビタミンB6だけでは効果が不十分な場合や、中等症以上のつわりに用いられることが多いのが制吐剤です。

  • メトクロプラミド(商品名:プリンペランなど)
    • 効果: 胃腸の動きを活発にし、脳の嘔吐中枢に作用して吐き気を抑えます(ドパミンD2受容体拮抗作用)。

    • 使い方・注意点: 医師の指示に従って使用します。まれに眠気や錐体外路症状(体が意図せず動くなど)の副作用が出ることがあるため、長期的な使用は避けられる傾向にあります。

  • オンダンセトロン(商品名:ゾフランなど)
    • 効果: より強力な吐き気止めで、セロトニンという物質が脳の嘔吐中枢に作用するのをブロックします(セロトニン5-HT3受容体拮抗作用)。重症のつわり(妊娠悪阻)などで、他の薬が効かない場合に使われることがあります。

    • 使い方・注意点: 胎児への影響についてはまだ議論があるため、医師がリスクとベネフィットを慎重に評価した上で処方されます。

これらの制吐剤は、いずれも医師の処方が必要です。

漢方薬

体質や症状に合わせて、漢方薬が処方されることもあります。西洋薬と併用されることもあります。

  • 小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)
    • 効果: 吐き気、嘔吐、食欲不振などに用いられる代表的な漢方薬です。特に、水分の代謝を整え、胃のあたりがポチャポチャするような感覚や、食後に吐き気が強まるタイプの方に効果が期待されます。吐き気に関わるセロトニン(5-HT3)受容体をブロックする作用も報告されています。

    • 副作用: 比較的少ないとされますが、体質に合わない場合(胃の不快感など)もあります。

  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
    • 効果: 吐き気に加えて、喉のつかえ感、気分の落ち込み、不安感など、精神的な症状を伴う場合に用いられることがあります。神経をリラックスさせる作用(GABA受容体への作用など)も期待されます。

    • 副作用: 比較的少ないとされますが、体質に合わない場合もあります。

漢方薬も、副作用がないわけではありません。必ず医師や薬剤師に相談し、自分の体質や症状に合ったものを選んでもらいましょう。

【補足】海外で標準的な薬と日本の状況

海外(特にアメリカやカナダ)では、「ドキシラミン(抗ヒスタミン薬の一種)」と「ビタミンB6」を組み合わせた配合剤(商品名:DiclegisBonjestaなど)が、つわりの第一選択薬として広く使われています。

多くの研究でその有効性と安全性が確認されており、米国産科婦人科学会(ACOG)のガイドラインでも推奨されています。

しかし、残念ながら日本ではこの配合剤は承認されておらず、保険診療で処方することはできません。この情報は知識として知っておくのは良いですが、安易に個人輸入などに頼るのはリスクが伴います。必ず日本の医師に相談してください。

点滴(輸液療法)

つわりが悪化し、水分や食事がほとんど摂れず、脱水症状や栄養不足が深刻な場合(特に妊娠悪阻と診断された場合)には、点滴による治療(輸液療法)が行われます。

  • 目的: 不足している水分、電解質(ナトリウム、カリウムなど)、ビタミン、ブドウ糖などを直接血管から補給します。症状に応じて、点滴内にビタミンB6や制吐剤を入れることもあります。

  • 場所: 多くの場合、入院が必要となりますが、外来で点滴を行うこともあります。

点滴は、つらい症状を和らげ、母体の状態を改善するための重要な治療法です。

つわりの薬、赤ちゃんへの影響は?安全性について

妊娠中の薬の使用で最も気になるのが、胎児への影響、特に催奇形性(赤ちゃんの形態異常を引き起こす可能性)のリスクだと思います。

まず大前提として、産婦人科医は、薬を処方する際に、母体の症状改善のメリットと、胎児への潜在的なリスクを十分に比較検討し、安全性を最優先に考えています

現在、日本でつわり治療に使われている主な薬の安全性については、以下のように考えられています。

  • ビタミンB6: 一般的に安全性が高いとされています。推奨される用量を守れば、胎児への悪影響は報告されていません。

  • メトクロプラミド: これまでに多くの妊婦さんに使用されてきた経験があり、大規模な研究でも、妊娠初期の使用による明らかな催奇形性リスクの増加は報告されていません。

  • ドキシラミン/ビタミンB6配合剤(海外標準薬): 大規模な研究で、主要な先天異常のリスク増加は認められていません。

  • オンダンセトロン: 比較的新しい薬であり、胎児への影響についてはまだ研究が続けられています。一部の研究で心臓奇形との関連を指摘するものもありますが、結論は出ていません。そのため、使用は他の治療法で効果がない重症例などに限定され、慎重に判断されます。

  • 漢方薬: 構成生薬の種類にもよりますが、一般的に西洋薬に比べて副作用は少ないとされています。しかし、妊娠中の安全性に関するデータが十分でないものもあるため、必ず医師・薬剤師の指導のもとで使用する必要があります。

最も重要なことは、自己判断で薬を使用しないことです。 特に市販薬の中には、妊娠中の安全性が確立されていない成分が含まれている場合があります。

必ず医師に相談し、処方された薬を指示通りに使用してください。心配なことがあれば、遠慮なく医師や薬剤師に質問しましょう。

市販の酔い止めやつわりの薬はある?

現在、「つわり専用」として販売されている市販薬は基本的にありません。

乗り物酔いの薬(酔い止め)には、つわりの薬と同じような成分(抗ヒスタミン薬など)が含まれていることがありますが、妊娠中の安全性が確認されていない成分が含まれていたり、用量が適切でなかったりする可能性があります

「妊娠中でも使える」といった表示があったとしても、自己判断で使用するのは非常に危険です。必ず、かかりつけの産婦人科医または薬剤師に使用の可否を確認してください。

つわりの薬はどうやって処方してもらう?受診の流れ(ステップガイド)

つわりの薬は医師の処方が必要です。ここでは、産婦人科・クリニックへの受診の流れをステップで解説します。

ステップ1: 受診を検討するサインを見極める

つらい症状を我慢しすぎないことが大切です。以下のような症状が見られたら、早めに受診を検討しましょう。

  • 水分がほとんど摂れない、または飲んでもすぐに吐いてしまう
  • 1日に何度も(例:5~6回以上)嘔吐する
  • 食事がほとんど摂れない状態が続いている
  • 体重が妊娠前より5%以上減った (例: 50kgの人なら2.5kg以上)
  • 尿の量が減った、色が濃くなった(脱水のサイン)
  • めまいやふらつきがひどい
  • つらくて日常生活が送れない

これらはあくまで目安です。「まだ大丈夫かな?」と迷う場合でも、心配なことがあれば遠慮なく相談しましょう。

ステップ2: 産婦人科医に相談する準備をする

受診の際は、医師に状況を正確に伝えることが大切です。事前に以下の情報を整理しておくとスムーズです。

  • いつから症状が始まったか
  • 具体的な症状:
    • 吐き気はいつ、どんな時に強いか(空腹時、食後など)
    • 1日に何回くらい嘔吐するか
    • どんなものが食べられるか、飲めるか
    • 水分はどのくらい摂れているか
  • 体重の変化: 妊娠前と現在の体重
  • 他に服用中の薬やサプリメントはあるか
  • 持病はあるか
  • 特に困っていること、不安なこと

メモにまとめて持っていくと良いでしょう。

ステップ3: 診察・検査を受ける

クリニックでは、まず問診で詳しく症状を聞かれます。その後、必要に応じて以下のような診察や検査が行われます。

  • 体重測定
  • 血圧測定
  • 尿検査: 尿中のケトン体の有無をチェックし、栄養状態や脱水の程度を確認します。
  • 血液検査: 脱水や電解質異常がないかなどを確認します。
  • 超音波検査: 赤ちゃんの状態を確認します。

***(シナリオ例:診察室にて)***

あなた: 「先生、妊娠7週目なんですが、ここ1週間くらい吐き気がひどくて…。特に朝と、匂いを嗅いだ時がつらいです。昨日は3回吐いてしまって、水分もあまり摂れていません。」
医師: 「そうですか、それはお辛いですね。体重は減っていませんか?尿の量はどうでしょう?」
あなた: 「体重は1キロくらい減りました。尿は少し色が濃い気がします。」
医師: 「分かりました。少し脱水気味かもしれませんね。まずは尿検査をして、体の状態を確認しましょう。」

ステップ4: 治療方針の説明を受ける

診察や検査の結果に基づき、医師が現在の状態と今後の治療方針について説明します。

***(シナリオ例:診察後)***

医師: 「検査の結果、尿からケトン体が少し出ていますね。軽い脱水と栄養不足の状態です。まずは吐き気を和らげるために、ビタミンB6のお薬を出してみましょう。1日3回、食後に飲んでください。これで少し楽になる方が多いですよ。食事は無理せず、食べられるものを少しずつ摂るようにしてくださいね。」
あなた: 「はい、分かりました。薬で赤ちゃんに影響はありませんか?」
医師: 「ビタミンB6は比較的安全性の高いお薬で、多くの妊婦さんに使われています。過剰に摂取しなければ心配いりませんよ。まずはこれで様子を見て、もし症状が改善しないようでしたら、また相談してください。別の薬を検討したり、場合によっては点滴も考えましょう。」

ステップ5: オンライン診療も選択肢に

つわりがひどくて外出が難しい場合や、近くにかかりつけ医がいない場合など、つわりの症状についてオンライン診療で相談できるクリニックも増えています。

  • メリット: 自宅にいながら受診できる、待ち時間が少ない、感染症のリスクが低い。
  • デメリット: 直接的な診察(触診、詳しい検査など)ができないため、重症度の正確な判断が難しい場合がある、対応している医療機関が限られる。

オンライン診療を利用する場合、まずは対応している医療機関を探し、予約を取ります。ビデオ通話などで医師の診察を受け、必要であれば薬が処方され、処方箋が自宅に郵送されたり、近くの薬局に送られたりします。

ただし、初診は対面での診察が推奨される場合や、症状によってはオンライン診療が適さないケースもありますので、事前に確認が必要です。

ステップ6: 【多くの方が見落としがちなポイント】症状の変化を正直に伝えることの重要性

薬を飲み始めても、「あまり効いていない気がする」「副作用かもしれない症状が出た」「吐き気は少しマシになったけど、別の症状が出てきた」など、変化があれば、どんな些細なことでも正直に医師に伝えましょう

「これくらいでまた相談するのは申し訳ない…」「薬を変えてもらうのは気が引ける…」などと遠慮してしまう方もいますが、あなたの体の状態を一番よく知っているのはあなた自身です。正確な情報が医師に伝わることで、より適切な治療(薬の変更や調整、追加の対策など)につながります。医師との良好なコミュニケーションが、安心して治療を続けるための鍵となります。

ステップ7: 処方された薬を正しく使う

医師から処方された薬は、指示された用法・用量を守って正しく服用しましょう。自己判断で量を減らしたり、中止したりしないでください。飲み忘れた場合の対処法なども、事前に確認しておくと安心です。

よくある質問と回答 (Q&A)

つわりの薬に関して、よく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 薬の副作用が出たらどうすればいいですか?

A1. まずは自己判断で薬の服用を中止せず、速やかに処方を受けた医師または薬剤師に連絡して相談してください。どのような症状がいつから出ているのかを具体的に伝えましょう。

副作用の種類や程度に応じて、医師が薬の変更や中止、あるいは副作用を和らげるための対処法などを検討します。眠気など、生活に支障が出る副作用の場合も遠慮なく相談しましょう。

Q2. 薬はいつまで飲み続ける必要がありますか?

A2. つわりの症状が続く期間には個人差が大きく、一般的には妊娠12~16週頃までに落ち着くことが多いですが、妊娠中期以降まで続く方や、出産まで続く方もまれにいらっしゃいます。

薬をいつまで続ける必要があるかは、あなたの症状の改善具合を見ながら、医師が判断します。「もう大丈夫かな?」と思っても、自己判断で中断せず、必ず医師の指示に従ってください。急にやめると症状がぶり返すこともあります。

Q3. つわりの薬や治療に健康保険は適用されますか?

A3. 医師が医学的に必要と判断して行うつわりの治療(診察、検査、処方される薬、点滴など)は、基本的に健康保険が適用されます。自己負担割合(通常は3割)に応じて費用がかかります。

ただし、使用する薬剤の種類や、入院の場合の部屋代などによっては、保険適用外の費用が発生することもあります。詳細については、受診する医療機関に事前に確認するとよいでしょう。

Q4. 薬を飲んでも症状が良くならない場合はどうすれば?(それが難しい場合どうすれば?)

A4. 処方された薬を飲んでも症状が改善しない、あるいは悪化していると感じる場合は、我慢せずに再度医師に相談することが非常に重要です。効果がないからといって諦めないでください。

医師は、あなたの状況に合わせて以下のような代替策(ステップアップ治療)を検討します。

  • 薬の量の調整: 現在の薬の量を増やす、または減らす。
  • 薬の種類の変更: 別の作用機序を持つ薬(例:ビタミンB6からメトクロプラミドへ、あるいは漢方薬へ変更・追加など)を試す。
  • 漢方薬の併用: 西洋薬と漢方薬を組み合わせて効果を高める。
  • 点滴療法(輸液): 外来または入院で点滴を行い、脱水や栄養状態を改善する。点滴に制吐剤を入れることもあります。
  • 入院管理: 症状が非常に重い場合(妊娠悪阻)は、入院して集中的な治療(中心静脈栄養など)が必要になることもあります。

「薬が効かない」と感じる背景には、薬が合っていない、症状が薬だけではコントロールできないほど重い、あるいは心理的な要因が影響しているなど、様々な可能性があります。諦めずに医師とコミュニケーションを取り、次のステップの治療法を探っていくことが大切です

薬だけに頼らない!つわりを乗り切るための3つのヒント

つわりの薬は症状緩和に役立ちますが、同時に日常生活での工夫(セルフケア)も改善のためには大切です。ここでは、すぐに試せる3つのヒントをご紹介します。

1. 食事の工夫:食べられるものを、少しずつ

栄養バランスを考えすぎるよりも、まずは「食べられるものを、食べられる時に、食べられるだけ」を心がけましょう。

  • 空腹を避ける: 空腹になると吐き気が強まることがあります。枕元にクラッカーや飴などを置いておき、目が覚めたらすぐに口にするのもおすすめです。1回の食事量を減らし、回数を増やしてこまめに食べるようにしましょう。

  • 食べやすいものを選ぶ: 冷たいもの(ゼリー、アイス、冷奴、そうめんなど)、口当たりの良いもの、さっぱりしたもの(果物、トマト、梅干しなど)、炭水化物(パン、ご飯、麺類)などが比較的食べやすいと言われます。自分が受け付けられるものを探してみましょう。

  • 匂いを避ける: 炊き立てのご飯や調理中の匂いで気分が悪くなることも。可能であれば調理を家族に代わってもらったり、換気を十分に行ったりしましょう。冷めた料理の方が匂いが少ないこともあります。

  • 水分補給は最優先: 食事が摂れなくても、水分補給は非常に重要です。水、麦茶、炭酸水、スポーツドリンク、経口補水液などを、少量ずつこまめに摂るようにしましょう。氷をなめるのも効果的な場合があります。

2. 無理せず休息、ストレスを溜めない

疲労やストレスは、つわりの症状を悪化させる要因の一つです。

  • 十分な休息と睡眠: 眠気を感じたら無理せず横になりましょう。家事や仕事も完璧にこなそうとせず、パートナーや家族、周囲の人に頼れる部分は頼り、休息時間を確保することが大切です。

  • リラックスできる時間: 体調が良い時には、軽い散歩をしたり、好きな音楽を聴いたり、読書をしたりするなど、気分転換になることを見つけましょう。アロマテラピー(ただし、妊娠中に使用できる精油は限られます)や入浴などもリラックスに繋がります。

  • ストレスを溜め込まない: つわりの辛さや妊娠への不安などを一人で抱え込まず、パートナーや友人、家族など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。

3. 【意外なポイント?】医師とのコミュニケーションを大切に

これは「治療」の一部とも言えますが、セルフケアの観点からも非常に重要です。意外に思われるかもしれませんが、医師との良好なコミュニケーションは、つわりの辛さを乗り切る上で大きな助けとなります。

  • 遠慮なく伝える: 「薬が効かない」「副作用がつらい」「こんな症状も出てきた」「精神的にも落ち込んでいる」など、自分の状態や感じていることを正直に、具体的に医師に伝えましょう
  • 質問する: 疑問や不安があれば、どんな些細なことでも質問しましょう。納得して治療を受けることが安心につながります。
  • 信頼関係を築く: 医師はあなたの味方です。自分の状況を理解してもら
    い、適切なアドバイスや治療を受けることで、「一人ではない」という安心感を得られます。この安心感自体が、つわりの辛さを和らげる効果を持つことも少なくありません。

単に薬をもらうだけでなく、医師と協力してつわりに向き合っていくという姿勢が、つらい時期を乗り越えるための精神的な支えにもなります。

まとめ:つらいつわりは我慢しないで!医師に相談して適切な薬物治療を

つわりは多くの妊婦さんが経験するものですが、その辛さは人それぞれです。「妊娠中は当たり前」と我慢しすぎず、症状がつらいと感じたら、まずはかかりつけの産婦人科医に相談することが最も重要です。

現在では、つわりの症状を和らげるための薬物治療の選択肢があります。

  • ビタミンB6メトクロプラミドなどの制吐剤漢方薬などが、症状や体質に合わせて処方されます。
  • 医師は、胎児への安全性を十分に考慮した上で、最適な薬を選択・処方します。
  • 自己判断での市販薬の使用は絶対に避けましょう
  • 薬物療法で効果が見られない場合や、重症化した場合には、点滴療法や入院治療といった次のステップの治療があります。
  • オンライン診療も、状況に応じて活用できる選択肢の一つです。

薬による治療と並行して、食事の工夫十分な休息といったセルフケアも大切ですが、それだけで改善しない場合は、決して無理をしないでください。

そして、医師とのコミュニケーションを大切にし、自分の状態や不安を正直に伝えましょう。信頼できる医療専門家と協力して、つらい時期を乗り越えていくことが、安心してマタニティライフを送るための鍵となります。

一人で悩まず、適切なサポートを得て、少しでも穏やかな気持ちで赤ちゃんを迎える準備ができることを願っています。

【免責事項】

本記事は、つわりの薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。また、個別の医学的アドバイスや診断、治療に代わるものでもありません。妊娠中の薬の使用については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。本記事の情報に基づいて行われた行為の結果について、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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