妊娠中のつわり、本当につらいですよね。吐き気や嘔吐が続き、思うように食事が摂れなかったり、日常生活に支障が出たり…。「少しでも楽になりたいけど、妊娠中に薬を使っても大丈夫?」「どんな薬があるの?」「赤ちゃんへの影響はないの?」など、つわりの薬に対する期待と同時に、たくさんの不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、つわりの症状を和らげるために使われる薬について、医療の専門的な視点から、そして妊婦さんの気持ちに寄り添いながら、わかりやすく解説します。
この記事を読むことで、あなたは以下のことを知ることができます。
- 妊娠中に薬を使う際の基本的な考え方
- つわりの治療に使われる主な薬の種類、効果、安全性
- 薬の入手方法(クリニックでの処方やオンライン診療について)
- 薬だけに頼らないセルフケアの方法
- 医師に薬について相談する際のポイント
つらいつわりの時期を乗り越えるために、正しい知識を身につけ、ご自身に合った対処法を見つけるお手伝いができれば幸いです。
まず知っておきたい、妊娠中に薬を使うときの基本的な考え方
妊娠中に薬を使うことに対して、不安を感じるのは当然のことです。お腹の赤ちゃんへの影響を考えると、慎重になるのは当たり前ですよね。
医療の現場では、妊娠中の薬物使用に関して、とても大切な原則があります。それは、「薬を使うことによるメリット(治療上の有益性)が、考えられるリスク(危険性)を上回ると判断される場合にのみ使用する」という考え方です。これは、日本産科婦人科学会やACOG(アメリカ産婦人科学会)といった専門機関のガイドラインでも示されている、世界共通の基本的な考え方です。
「リスク」と聞くと怖く感じてしまうかもしれませんが、実は、つらい症状を我慢しすぎることにもリスクは潜んでいます。例えば、重症化したつわり(妊娠悪 sauvegarde)は、脱水症状や栄養不足を引き起こし、お母さん自身の体調を著しく悪化させるだけでなく、場合によっては早産や赤ちゃんの低出生体重につながる可能性も指摘されています。ある研究データによれば、適切な薬物治療によって、早産のリスクが低減したり、赤ちゃんの出生体重が増加したりする可能性も示唆されています。
もちろん、だからといって安易に薬を使うべきということではありません。大切なのは、自己判断せず、必ず医師に相談することです。医師は、あなたの症状の程度、健康状態、妊娠週数などを総合的に判断し、薬を使うべきかどうか、使うとしたらどの薬が最適かを慎重に検討します。
【医師監修】つわりの症状緩和に使われる薬の種類と特徴
つわりの症状を和らげるために、医師の判断で処方される可能性のある薬には、いくつかの種類があります。ここでは、代表的なつわりの改善薬や治療薬について、それぞれの特徴(期待される効果、なぜ効くのか、安全性、副作用など)を解説します。おすすめの薬は、個々の症状や体質によって異なりますので、あくまで一般的な情報として参考にしてください。
ビタミンB6(ピリドキシン)
- 特徴: ビタミンB群の一種で、比較的安全性が高いと考えられており、ACOG(アメリカ産婦人科学会)のガイドラインでも、軽度から中等度のつわりの初期治療として推奨されています。
- 期待される効果: 吐き気を軽減する効果が期待されます。一部の研究では、吐き気の頻度が減少し、生活の質(QOL)が改善したという報告もあります。
- 作用機序(なぜ効くのか): 正確なメカニズムは完全には解明されていませんが、脳内の神経伝達物質(特にGABA)の合成を助けることで、吐き気に関わる神経の過剰な興奮を抑えるのではないかと考えられています。
- 安全性・副作用: 適切に使用すれば、一般的に安全な薬とされています。ただし、過剰摂取は神経障害などを引き起こす可能性があるため、必ず医師の指示通りの量を守りましょう。効果には個人差があります。
抗ヒスタミン薬/ビタミンB6配合剤(ドキシラミン/ピリドキシン配合剤など)
- 特徴: アメリカやカナダなど海外では、つわりの第一選択薬として広く使われている薬(代表的な商品名: ボンジェスタ)です。日本では現在、保険適用外の未承認薬となります。
- 期待される効果: ドキシラミン(抗ヒスタミン薬)とピリドキシン(ビタミンB6)の2つの成分が、それぞれ異なる作用で吐き気や嘔吐を抑える効果が期待されます。臨床試験では、プラセボ(偽薬)と比較して有意に症状を改善したというデータがあり、比較的少ない人数(NNT=約3人)に投与すれば1人が改善するという、良好な有効性が示されています。
- 作用機序(なぜ効くのか): ドキシラミンは、脳の嘔吐中枢に作用したり、胃腸の運動に関わるヒスタミンの働きを抑えたりすることで制吐作用を発揮します。ピリドキシンは前述の通り、神経伝達物質のバランスを整えると考えられています。
- 安全性・副作用: 長年の使用実績があり、多くの研究で胎児への先天異常のリスクを増加させないことが示されています。主な副作用としては、眠気、めまい、口の渇きなどが報告されています。
- 注意点: 日本では未承認薬のため、入手するには医師による個人輸入などの手続きが必要となり、保険も適用されません。費用や入手方法については、処方を検討する際に医師とよく相談する必要があります。
制吐剤(メトクロプラミドなど)
- 特徴: 日本の産婦人科で、比較的よく処方されている吐き気止めの薬です(代表的な商品名: プリンペラン)。
- 期待される効果: 吐き気や嘔吐を抑える効果があります。特に、他の治療(漢方薬など)で効果が見られなかった場合に使われることがあります。日本産科婦人科学会の調査では、多くの施設で使われており、漢方薬が無効だった場合の有効率も報告されています。
- 作用機序(なぜ効くのか): 脳の嘔吐中枢や、消化管にあるドパミンという物質の受け皿(受容体)に作用し、吐き気を抑えるとともに、胃腸の動きを活発にして食べ物の流れを良くする効果があります。
- 安全性・副作用: 比較的安全に使われていますが、眠気、めまい、下痢などの副作用が出ることがあります。まれに、錐体外路症状(ふるえ、筋肉のこわばりなど)が起こる可能性も指摘されています。欧米では、長期使用によるリスク(遅発性ジスキネジア:意図しない体の動き)から使用期間に制限が設けられており、日本でも漫然とした長期使用(例: 14日を超える継続投与)には注意が必要です。
漢方薬(小半夏加茯苓湯など)
- 特徴: 日本のつわり治療では、古くから用いられてきた選択肢の一つです。いくつかの種類があり、個人の体質(証)に合わせて処方されます。代表的なものに「小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)」があります。
- 期待される効果: 吐き気、嘔吐、食欲不振などの症状を和らげる効果が期待されます。小半夏加茯苓湯を用いた臨床研究(RCT:信頼性の高い研究デザイン)では、プラセボと比較して症状改善効果が認められたという報告もあります。
- 作用機序(なぜ効くのか): 複数の生薬が組み合わさって効果を発揮します。例えば、小半夏加茯苓湯に含まれる「半夏(はんげ)」などの成分が、延髄にある嘔吐中枢(CTZ)に作用することなどが研究で示唆されています。
- 安全性・副作用: 一般的に副作用は少ないとされていますが、体質に合わない場合や、まれに肝機能障害や間質性肺炎などが起こる可能性もゼロではありません。
- 注意点: 漢方薬は品質にばらつきがある可能性も指摘されているため、医師が処方する医療用漢方製剤を使用することが推奨されます。効果が出るまでに時間がかかる場合もあります。
【見落としがちなポイント:薬の種類による注意点の違い】
それぞれの薬に特徴があるように、注意すべき点も異なります。例えば、ドキシラミン/ビタミンB6配合剤は効果が期待される一方で、日本では未承認薬であり、入手方法や費用面で特別な配慮が必要です。また、広く使われているメトクロプラミドも、長期使用には注意が必要であるという点は、意外と知られていないかもしれません。どの薬を選択するにしても、医師から十分な説明を受け、納得した上で治療を開始することが大切です。
気になる胎児への影響は?つわりの薬の安全性と副作用まとめ
妊娠中に薬を使う上で、最も気になるのはやはり「お腹の赤ちゃんへの影響」ですよね。つわりの薬の安全性について、現時点でわかっていることをお伝えします。
これまでに紹介したつわり治療薬の多くは、比較的長い使用経験があり、多くの研究で「適切に使用すれば、胎児の奇形リスクを著しく高めることはない」と考えられています。例えば、北欧で行われた大規模な追跡調査(コホート研究)では、つわり治療薬を使用したお母さんから生まれた子どもの5歳時点での神経発達は、薬を使用しなかった子どもと同等であったと報告されています。
ただし、「100%安全」と言い切れる薬はありません。比較的起こりやすい副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 眠気: 特に抗ヒスタミン薬(ドキシラミンなど)やメトクロプラミドでみられやすい副作用です。車の運転や危険な機械の操作は避ける必要があります。
- 口の渇き
- 便秘
- めまい
これらの副作用の頻度は、日本の「妊娠と薬情報センター」などで集められているデータ(妊娠中薬剤曝露登録制度)からも報告されており、眠気が最も多いようです。重篤な副作用はまれですが、ゼロではありません。また、妊娠後期まで長期にわたって薬を使用した場合、生まれた赤ちゃんに一時的な離脱症状(ふるえ、イライラしやすいなど)が見られる可能性も指摘されています。
安全性に関する情報は、常に新しい研究によって更新されています。 ここで紹介した情報は一般的なものであり、最新かつ詳細な情報については、必ず担当の医師や薬剤師に確認するようにしましょう。また、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)、関連学会などが提供する情報を参照することも役立ちます。
つわりの薬はどうやって手に入れる?処方までの流れと注意点
つらいつわりの症状を和らげる薬は、どうすれば手に入れられるのでしょうか? 基本的な流れと注意点、そして最近利用が増えているオンライン診療についても解説します。
産婦人科・クリニックでの処方が基本
つわりの薬は、ドラッグストアなどで買える市販薬とは異なり、医師の診断と処方が必要です。自己判断で市販の吐き気止めなどを使うことは、妊娠中においては原則として推奨されません。
まずは、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。医師は、あなたの症状の重さ、全身状態、妊娠週数、既往歴などを詳しく診察し、薬による治療が必要かどうか、必要であればどの薬が最も適しているかを判断して処方してくれます。
【クリニックでの相談シナリオ例】
あなた: 「先生、つわりがひどくて…。吐き気がずっと続いて、食事もほとんど摂れません。何か楽になる薬はありますか?」
医師: 「それはお辛いですね。いつから症状がありますか? 1日に何回くらい吐いてしまいますか? 水分は摂れていますか? 体重は減っていませんか?」
あなた: 「(具体的な症状を伝える)…薬を使うのは少し不安なのですが、赤ちゃんへの影響はどうでしょうか?」
医師: 「お気持ちお察しします。妊娠中の薬は慎重に考える必要がありますが、今の〇〇さんの状態ですと、お母さんの体調を整えることが赤ちゃんにとっても大切です。いくつか選択肢がありますが、例えば△△という薬は比較的安全性が高いとされており…(効果や副作用、使い方を説明)。一緒に考えていきましょう。」
このように、ご自身の状態や不安な点を正直に伝えることが大切です。
つわり治療におけるオンライン診療の活用
最近では、つわりの治療に関してもオンライン診療を活用するケースが増えています。特に、つわりで外出が困難な方にとっては、大きな助けとなる可能性があります。
- メリット:
- 自宅にいながら診察を受けられるため、通院の負担が軽減される。
- 待ち時間が少ない場合がある。
- 感染症のリスクを避けられる。
- デメリット・注意点:
- 直接的な診察(触診、聴診など)ができないため、得られる情報に限界がある。
- 症状によっては、対面での診察や検査(血液検査、尿検査、超音波検査など)が必要になる場合がある。
- 緊急時の対応が難しい場合があるため、連携している対面診療可能な医療機関を確認しておくことが非常に重要です。
- 処方された薬の受け取りに時間がかかる場合がある(薬局での受け取りまたは配送)。
オンライン診療を利用する場合、事前にスマートフォンのアプリやウェブサイトから予約し、ビデオ通話などで医師の診察を受けます。必要に応じて、自宅で尿中のケトン体(脱水の指標)を測定する検査キットが送られてくることもあります。診察の結果、薬が必要と判断されれば、処方箋が発行され、自宅近くの薬局で薬を受け取るか、自宅へ配送されるのが一般的な流れです。
つわりの薬と治療は保険適用される?
「つわりの治療って、保険がきくの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
通常の軽度なつわり症状だけでは、病気とはみなされず、保険適用外(自費診療)となることが多いです。しかし、症状が重症化し、「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と診断された場合は、薬物療法や点滴治療などが保険適用となります。
妊娠悪阻と診断される目安としては、一般的に以下のような基準があります。
- 妊娠前の体重から5%以上の体重減少
- 尿検査でケトン体が陽性(脱水や飢餓状態を示す)
- 頻回の嘔吐により、水分や食事がほとんど摂れない状態
これらの基準は目安であり、最終的な診断は医師が行います。最近では、妊娠悪阻に対する点滴治療などに対して、診療報酬(医療費の公定価格)で「周産期管理加算」といった評価がされるようにもなってきています。
また、妊娠悪阻で入院が必要になった場合、加入している民間の医療保険から給付金が支払われることがあります。ただし、保障内容は保険商品によって異なり、入院日数などの条件がある場合も多いです。最近では、「妊娠悪阻特約」のように、入院日数に関わらず給付されるプランも出てきていますので、ご自身の保険内容を確認してみるとよいでしょう。
費用について不安な点があれば、診察時に医師や医療機関の窓口に相談してみましょう。
薬だけに頼らない!つわりを乗り切るためのセルフケア3選
つわりの薬は症状緩和の助けになりますが、薬だけに頼るのではなく、日常生活での工夫(セルフケア)を併せて行うことで、より快適に過ごせる可能性があります。ここでは、すぐに試せる3つの対策をご紹介します。
食事の工夫:「食べられるものを、食べられるときに、少しずつ」
- 少量頻回食: 一度にたくさん食べようとせず、数回に分けて少量ずつ口にするのがおすすめです。空腹も満腹も吐き気を誘発することがあります。
- 食べやすいものを選ぶ: 冷たいもの(そうめん、ゼリー、果物など)、口当たりの良いもの、さっぱりしたものなど、その時々で「これなら食べられそう」と感じるものを選びましょう。無理に栄養バランスを考えすぎなくても大丈夫です。
- 水分補給を忘れずに: 吐き気があるときでも、水分はこまめに摂るように心がけましょう。水、麦茶、経口補水液、炭酸水、スポーツドリンクなど、飲みやすいものでOKです。氷をなめるのも良いでしょう。
- におい対策: 炊き立てのご飯のにおいなど、特定のにおいで気分が悪くなる場合は、調理を家族に頼んだり、冷ましてから食べたり、換気をしたりする工夫も有効です。
十分な休息:「無理をしない」が一番の薬
- 体を休める: 疲労はつわりを悪化させる要因の一つです。眠気を感じたら横になる、家事は無理のない範囲で行う、仕事をしている方は休憩をこまめに取るなど、意識的に休息を取りましょう。
- 睡眠環境を整える: 快適な寝具を選んだり、寝室の温度や湿度を調整したりして、質の高い睡眠を目指しましょう。
- 「休むことへの罪悪感」を手放す: 「家事ができない」「仕事に集中できない」と自分を責めないでください。今は、あなたと赤ちゃんの体を最優先に考えるべき大切な時期です。周囲の理解と協力を得ながら、心身を休ませることを第一に考えましょう。
心身のリフレッシュ:「気分転換」で乗り切る
- 軽い活動: 体調が良い時には、散歩や軽いストレッチなど、気分転換になる程度の活動を取り入れてみましょう。外の空気を吸うだけでも、気分がすっきりすることがあります。
- リラックス法: 深呼吸、好きな音楽を聴く、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる(体調が良ければ)、アロマテラピー(※下記注意)など、自分がリラックスできる方法を見つけましょう。
- 【意外性のある?ヒント】嗅覚過敏対策のアロマ: つわり中はにおいに敏感になりがちです。柑橘系(レモン、グレープフルーツなど)やミント系の爽やかな香りのアロマオイルを少量、ティッシュなどに垂らして香らせると、気分転換になることがあります。ただし、妊娠中に使用を避けるべき精油(禁忌精油)もあるため、使用前に必ず専門家(アロマテラピーの資格を持つ人や医師)に相談し、安全な種類と使い方を確認してください。
- 話を聞いてもらう: パートナーや家族、友人など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。一人で抱え込まず、周囲のサポートを頼りましょう。
医師にうまく伝えるために。つわりの薬について相談するときのポイント
つわりの薬について医師に相談する際、ご自身の状態や希望を的確に伝えることは、より良い治療を受けるために非常に重要です。以下の3つのポイントを参考に、クリニックでの診察に臨みましょう。
「自分の状態」を具体的に伝える
- 症状の詳細: いつから、どんな症状(吐き気、嘔吐、よだれ、食欲不振など)が、どのくらいの頻度・強さで出ているか。特に嘔吐の回数や、食事・水分がどの程度摂れているかは重要な情報です。体重の変化(減った場合はどのくらいか)も伝えましょう。
- 生活への影響: 仕事や家事など、日常生活にどの程度支障が出ているか。
- 既往歴・アレルギー: これまでにかかった病気や、薬・食べ物のアレルギーがあれば必ず伝えましょう。
- 他の薬やサプリメント: 現在、服用・使用している他の薬(市販薬含む)やサプリメントがあれば、すべて医師に伝えましょう。飲み合わせによっては、影響が出る可能性があります。
「知りたいこと・不安なこと」をしっかり確認する
- 提案された薬について:
- どんな効果が期待できるのか?
- 考えられる副作用は何か?(特に眠気など、生活に影響しそうなこと)
- どのように服用するのか?(用法・用量、服用タイミング)
- どのくらいの期間、服用する目安か?
- 胎児への影響について、現在わかっていることは何か?
- 費用について: 保険適用になるのか、自己負担はどのくらいか。
- その他の選択肢: 薬以外の治療法(点滴など)や、他の種類の薬はあるのか。
- 提案された薬について:
【盲点となりがちなアドバイス】希望や価値観を伝え、一緒に決める姿勢(Shared Decision Making)
- 「できるだけ薬は使いたくない」「副作用の眠気は避けたい」「多少費用がかかっても、海外で実績のある薬を試してみたい」など、ご自身の希望や考え、何に重きを置くかを正直に伝えましょう。
- 医師からの情報提供と、あなたの意向をすり合わせながら、治療方針を一緒に決定していく(Shared Decision Making)という姿勢が大切です。一方的に指示されるのを待つのではなく、積極的に話し合いに参加しましょう。
- オンライン診療を希望する場合でも、「緊急時に対応してくれる連携病院はどこか」を必ず確認しておくことは、見落としがちですが非常に重要です。
事前に伝えたいこと、聞きたいことをメモにまとめておくと、診察時に落ち着いて話せますよ。
【Q&A】つわりの薬に関する疑問にお答えします
ここでは、つわりの薬に関して、多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式でお答えします。
Q1: 薬はどのくらいで効果が出ますか?
A: 薬の効果が現れるまでの時間や、効果の程度は、薬の種類や個人の体質によって異なります。
例えば、ビタミンB6や漢方薬は、効果を実感するまでに数日から1週間程度かかる場合もあります。一方、メトクロプラミドなどの制吐剤は、比較的早く効果が現れることが期待されますが、これも個人差があります。
服用を開始して数日経っても効果が感じられない場合や、症状が悪化するような場合は、自己判断で服用を中止したり量を調整したりせず、必ず処方した医師に再度相談してください。 薬の種類を変更したり、他の治療法を検討したりする必要があるかもしれません。
Q2: 副作用(特に眠気)が心配です。対処法はありますか?
A: 確かにつわりの薬の中には、副作用として眠気が出やすいものがあります(特に抗ヒスタミン薬やメトクロプラミドなど)。
もし眠気が出た場合は、以下のような対処法を考えましょう。
- 生活上の注意: 車の運転や、集中力が必要な作業、危険な機械の操作は避けるようにしましょう。重要な判断をしなければならない場面も、可能であれば避けた方が安全です。日中に眠気を感じたら、無理せず短時間の休息をとるのも良いでしょう。
- 医師への相談: 眠気が強くて日常生活に支障が出る場合は、我慢せずに医師に相談してください。薬の量を調整したり、眠気の出にくい他の薬に変更したり、服用時間を調整したり(例:就寝前に服用するなど)といった対応が可能な場合があります。
副作用の出方にも個人差がありますので、ご自身の体調をよく観察し、不安な点は早めに医師に伝えることが大切です。
Q3: オンライン診療だけで薬をもらえますか?対面診療は必要ないですか?
A: オンライン診療でつわりの症状を相談し、薬を処方してもらうことは可能です。特に、外出が困難な方にとっては便利な選択肢です。
しかし、オンライン診療だけでは限界があることも理解しておく必要があります。画面越しの診察では、医師が得られる情報が限られます。例えば、脱水症状の程度を正確に把握したり、他の病気が隠れていないかを確認したりするためには、血液検査や尿検査、触診、超音波検査など、対面での診察が必要になる場合があります。
症状が重い場合や、オンライン診療で改善が見られない場合、あるいは医師が対面での診察が必要と判断した場合は、指定された医療機関を受診する必要があります。そのため、オンライン診療を利用する場合でも、緊急時に対応してくれる連携病院がどこなのか、事前に必ず確認しておくことが非常に重要です。
Q4: 薬を使わずに耐えるべきでしょうか?それが難しい場合どうすれば?
A: つわりのつらさは、経験した人にしかわからないものです。「妊娠中は仕方ない」「赤ちゃんのために我慢しなきゃ」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、つらさを我慢しすぎる必要はありません。
まずは、セルフケア(食事の工夫、休息、気分転換など)を試してみましょう。 それでも症状が改善しない場合や、水分も摂れず体重が減ってしまうなど、日常生活に大きな支障が出ている場合は、薬物療法は有効な選択肢の一つです。
薬を使うことに抵抗がある場合は、その気持ちも含めて正直に医師に伝えましょう。薬以外の治療法として、点滴による水分・栄養補給なども選択肢になります。
大切なのは、「薬を使うか、使わないか」の二択で悩むのではなく、医師と相談しながら、ご自身の状態や考えに合った最適な方法を見つけることです。薬を使うメリット(症状緩和によるQOL向上、重症化予防など)とデメリット(副作用の可能性など)をよく理解した上で、納得できる治療法を選びましょう。一人で抱え込まず、専門家である医師を頼ってください。
まとめ:つらいつわりは我慢しないで。薬を含めた最適な対処法を医師と見つけましょう
妊娠中のつわりは、多くの妊婦さんが経験するつらい症状ですが、決して「ただ耐えるしかない」ものではありません。薬物療法は、症状を和らげ、つらい時期を乗り越えるための有効な選択肢の一つです。
この記事では、以下の点について解説してきました。
- 妊娠中の薬物使用は、安全性を第一に、メリットとリスクを考慮して医師が慎重に判断します。
- つわりの薬には、ビタミンB6、抗ヒスタミン薬/B6配合剤(日本では未承認)、制吐剤、漢方薬など、いくつかの種類があり、それぞれ特徴や注意点が異なります。
- 薬の入手は、基本的に産婦人科クリニックでの医師の処方が必要です。オンライン診療も活用できますが、限界と注意点を理解しておくことが大切です。
- 重症化した「妊娠悪阻」と診断されれば、薬や治療は保険適用となる場合があります。
- 薬だけに頼らず、食事の工夫や十分な休息といったセルフケアも大切です。
- 医師への相談時には、症状や不安を具体的に伝え、納得できる治療法を一緒に見つけましょう。
つわりの薬に関する安全性の情報は日々更新されています。常に最新の情報を担当の医師や薬剤師に確認するようにしてください。
何よりも大切なのは、つらい症状を一人で抱え込まず、我慢しすぎないことです。かかりつけの産婦人科医は、あなたの味方です。ぜひ、ためらわずに相談し、あなたと赤ちゃんにとって最も良い方法を一緒に見つけていきましょう。
免責事項:
本記事は、妊娠中のつわりと薬に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。薬の使用を含む治療方針については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。個々の症状や健康状態に応じた専門的な判断が必要です。記載されている情報は、記事作成時点でのものであり、最新の情報と異なる場合があります。