「メガネやコンタクトレンズのない生活を送りたい」と考えたとき、ICLとレーシックは視力矯正手術の代表的な選択肢です。しかし、どちらも魅力的に見える一方で、「自分にはどちらが合っているのだろう?」「費用やリスク、見え方にはどんな違いがあるの?」といった疑問や不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ICLとレーシックの根本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、費用、そしてどのような人にどちらの手術が向いているのかまで、専門的な情報を分かりやすく網羅的に解説します。
この記事を最後まで読めば、ICLとレーシックに関するあなたの疑問は解消され、ご自身の希望やライフスタイルに合った選択肢はどちらなのか、明確な判断基準を持ってクリニックでの相談に臨めるようになるでしょう。
ICLとレーシックの違いは?

「眼の中にレンズを入れる」ICLと、「角膜を削る」レーシック。この根本的な違いが、費用や見え方の質、将来の選択肢にどう影響するのかを解説します。
ここでは、両者の主な違いを3つのポイントに分けて解説します。
手術の仕組み:レンズを”入れる”ICLと、角膜を”削る”レーシック
費用の違い:高額なICLと比較的安価なレーシック、そして医療費控除
適応条件:幅広いICLと、角膜の厚さが重要なレーシック
レンズを”入れるか”角膜を”削る”か
ICLとレーシックは、視力を矯正するという目的は同じですが、その仕組みは全く異なります。
ICL(Implantable Collamer Lens)は、眼の中にコンタクトレンズのような柔らかい特殊なレンズを挿入する手術方法です。角膜をほとんど削らず、虹彩と水晶体の間にレンズを固定することで視力を矯正します。万が一の場合にはレンズを取り出して元の状態に戻すことができる「可逆性」が最大の特徴です。
一方、レーシックは、エキシマレーザーというレーザーを角膜に照射し、角膜のカーブを変えることで光の屈折率を調整し、視力を矯正します。角膜の形状自体を変化させるため、一度手術を受けると元の状態には戻せない「不可逆性」の手術です。この手術方法の違いが、後述するメリットやデメリットに直結します。
手術方法が違うということは、もちろん良い点・注意すべき点も異なります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを掘り下げて比較してみましょう。
費用の違いと医療費控除について
視力矯正手術は、原則として自由診療のため、費用は全額自己負担となります。ICLとレーシックでは、費用に大きな差があります。
ICLの費用相場は、両眼で45万円〜80万円程度と、比較的高額です。これは、一人ひとりの眼に合わせてオーダーメイドでレンズを製造する必要があるためです。
それに対して、レーシックの費用相場は両眼で20万円〜40万円程度であり、ICLよりも費用を抑えることができます。多くのクリニックで実績が積み重ねられ、技術が確立されていることも価格に影響しています。
ただし、どちらの手術も治療目的の医療行為と見なされるため、確定申告を行うことで「医療費控除」の対象となり、所得税の一部が還付される可能性があります。高額な費用負担を少しでも軽減できる制度なので、忘れずに覚えておきましょう。
適応できる視力や条件の違い
どちらの手術を受けられるかは、眼の状態によって決まります。特に、角膜の厚さや近視・乱視の度数が重要な判断基準となります。
ICLは、眼内レンズで視力を矯正するため、角膜の厚さにほとんど影響されません。そのため、レーシックでは適応外となるような強度の近視や乱視を持つ方、または角膜が薄いと診断された方でも手術を受けられる可能性が高いのが特徴です。幅広い度数の患者に対応できるのがICLの強みと言えます。
一方、レーシックは角膜を削る手術であるため、安全に手術を行うためには一定以上の角膜の厚みが必要です。強度すぎる近視や乱視の場合、角膜を多く削る必要があり、リスクが高まるため適応外となることがあります。事前の適応検査で、角膜の形状や厚みを精密に測定し、手術が可能かどうかを慎重に判断する必要があります。
ICLとレーシックのメリット・デメリットをそれぞれ解説!

ICLのメリット・デメリットは?
手術方法が違うということは、もちろん良い点・注意すべき点も異なります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを掘り下げて比較してみましょう。
質の高い見え方
角膜の形状をそのままに矯正するため、より鮮明でクリアな見え方が期待でき、ハロー・グレア(光のにじみ)が起こりにくいとされています。
幅広い適応範囲
前述の通り、強度の近視や乱視、角膜が薄い方でも手術が可能です。レーシックが受けられないと諦めていた方にとっての選択肢となります。
ドライアイになりにくい
角膜の表面にある知覚神経への影響が少ないため、術後のドライアイのリスクが低いのが大きな利点です。コンタクトレンズによるドライアイに悩んでいた方には特に魅力的です。
将来の選択肢
手術は可逆的であり、万が一の際にはレンズを取り出すことができます。また、将来白内障になった場合でも、通常通り白内障手術を受けることが可能です。
費用が高額
費用が高額 レーシックと比較して、手術費用が高額になる点が最大のデメリットです。
感染症などのリスク
眼の中にレンズを挿入するため、確率は極めて低いものの、感染症などのリスクはゼロではありません。信頼できるクリニックで、経験豊富な専門医による執刀が不可欠です。
執刀医の技量
手術には高度な技術が求められるため、経験豊富な専門医やICL認定医のいるクリニックを選ぶ必要があります。
レーシックのメリット・デメリットは?
レーシックは、費用の安さと実績の豊富さが魅力ですが、元に戻せない点や適応範囲に注意が必要です。
費用が比較的安い
ICLと比較して、経済的な負担を抑えて視力矯正を実現できます。多くのクリニックで価格競争も進んでいます。
手術実績が豊富
世界中で長い歴史と豊富な手術実績があり、広く認知されている術式です。確立された技術であるという安心感があります。
回復が早い
手術時間自体が短く、術後の視力回復が非常にスピーディです。多くの場合、手術の翌日には目標の視力に達し、すぐに快適な生活に戻ることができます。
元に戻せない
一度レーザーで削った角膜は、元の状態に戻すことはできません。将来、見え方に不満が出た場合でも、再手術には限界があります。
ドライアイ
手術の際に角膜の知覚神経が切断されるため、術後に一時的、あるいは長期的なドライアイを発症する可能性があります。
適応範囲が限られる
角膜の厚みや形状、近視の度数によっては手術が受けられません。
近視の戻り
長期的には、削った角膜の状態が変化し、少しだけ近視が戻ってしまう「近視の戻り」が起こることがあります。
結論:ICLとレーシックはどっちがいいの?

それぞれに長所と短所があるため、一概に「こちらが良い」とは言えません。ご自身のライフスタイルや価値観によって最適な選択は変わるため、判断のポイントを整理しました。
比較項目 | ICL(コンタクトレンズ) | レーシック |
---|---|---|
手術方法 | レンズを挿入(可逆性) | 角膜を削る(不可逆性) |
費用 | 高い(45万~80万円) | 比較的安い(20万~40万円) |
適応範囲 | 広い(強度近視・乱視も可) | 限られる(角膜の厚みが必要) |
見え方の質 | 鮮明でクリア | 良好だがハロー・グレアの可能性 |
ドライアイ | なりにくい | なりやすい |
回復期間 | 良好、手術翌日からよく見える | 非常に早い、翌日から視力回復 |
将来の治療 | 白内障手術なども問題なし | 白内障手術時の計算に工夫が必要 Google スプレッドシートにエクスポート |
最終的には、眼科医による検査結果とカウンセリングを通して、ご自身の眼の状態とライフプランに最も合った方法を選ぶことが重要です。
ICLがおすすめ・向いている人

ここまでの比較を踏まえ、ICLのメリットが特に活かせるのはどんな人かをまとめました。費用よりも見え方の質や将来への安心感を重視する方は、ぜひ参考にしてください。
- 強度近視や強い乱視で長年悩んでいる人
- 角膜が薄い、または不正乱視などの理由でレーシック不適応と診断された人
- 仕事や生活でコンタクトレンズが欠かせず、ドライアイに悩んでいる人
- 将来、白内障などの眼の病気になった際の治療の選択肢を狭めたくない人
- 万が一の際に元に戻せるという安心感を重視する人
レーシックがおすすめ・向いている人

一方で、レーシックのメリットを最大限に享受できるのはどのような人でしょうか。手術実績や費用を重視し、スピーディーに視力回復したい方におすすめの選択肢です。
- 費用をできるだけ抑えて視力矯正をしたい人
- 近視の度数が軽度~中程度の人
- 手術実績が豊富な方法で安心感を得たい人
- 手術の翌日からすぐにクリアな視界で活動したい人
- 適応検査の結果、角膜の厚みなどに問題がなかった人