ICLは保険適用される?適用される条件や制度を紹介!医療費控除についても解説

ICLは、1980年代にその原型が開発され、日本では2010年に厚生労働省の承認を受けた比較的新しい視力矯正手術です。現在では、その安全性と優れた見え方の質から、レーシックよりも主流の選択肢となりつつあります。

しかし、ICLを検討する上で最も大きなハードルとなるのが、保険適用や費用に関する問題ではないでしょうか。「高額な費用は保険でカバーできるのか」「費用を抑える方法はないのか」といった疑問は、多くの方が抱く不安です。

まず、この記事で解説するICLの費用に関するポイントを、以下の図にまとめました。

ICLの費用・保険適用に関するまとめ

ICLの費用・保険適用に関するまとめ

この記事では、そんなICLの費用に関するあらゆる疑問に答えます。保険適用の真実から、費用負担を賢く軽減できる「医療費控除」の具体的な申請方法、そして民間保険の適用まで、専門的な知見から徹底解説します。

この記事を最後まで読めば、ICLの費用に関する不安が解消され、安心して手術への一歩を踏み出すための具体的な知識が身につくでしょう。

ICLは保険適用外!その理由と保険の適用条件を解説

ICLは保険適用外!その理由と保険の適用条件を解説

ICLは、結論から言うと公的医療保険の適用外となる「自由診療」です。なぜ保険が適用されないのか、その理由とICL手術の基本的な情報・費用相場を詳しく見ていきましょう。

ICLは保険適用外の理由とは?

ICL手術が保険適用外となる主な理由は、厚生労働省がこの手術を「病気の治療」ではなく、「視力矯正を目的とした、生活の質(QOL)を向上させるための施術」と位置づけているためです。

日本の公的医療保険制度は、病気やケガの「治療」にかかる医療費の負担を軽減することを目的としています。例えば、白内障手術は、進行すると失明に至る可能性がある病気の治療と見なされるため、保険が適用されます。

一方で、ICLやレーシックのような視力矯正手術は、メガネやコンタクトレンズといった代替手段があることから、必ずしも医療行為として必須ではないと判断されています。このような、保険が適用されず、医療機関が独自に価格を設定できる診療を「自由診療」と呼びます。

ICLの費用が高額になるのは、この自由診療にあたり、精密なレンズの製作費用や、高度な技術を持つ執刀医への技術料などが含まれているためです。

そもそもICL手術とは?

ICL(Implantable Collamer Lens)手術とは、目の中に非常に薄くて柔らかい特殊なコンタクトレンズを挿入することで、近視や遠視、乱視を矯正する視力回復手術です。虹彩(茶目)と水晶体の間にレンズを固定するため、「眼内コンタクトレンズ」とも呼ばれます。

角膜をレーザーで削るレーシックとは異なり、ICLは角膜の形状を一切変えません。そのため、レーシックが適応外となるような強度近視の方や、角膜が薄い方でも手術を受けられる可能性があります。

ICLの主なメリットとデメリット

メリットデメリット
幅広い度数に対応可能費用が高額
見え方の質が高い内眼手術のリスク
可逆性があるハロー・グレア
ドライアイになりにくい手術を受けられる眼科が限られる

ICLは、一度手術を受ければ、日々のコンタクトレンズの着脱や洗浄といった手間から解放される、非常に優れた視力矯正方法の一つです。

ICL手術の相場費用は?

ICL手術の費用は自由診療のため、クリニックによって大きく異なりますが、両眼でおおよそ45万円~70万円程度が相場となっています。

費用の内訳には、手術代のほかに、術前の適応検査費用や、術後の定期検診、薬代などが含まれているのが一般的です。ただし、どこまでの費用が含まれているかはクリニックによって異なるため、事前の確認が非常に重要です。

また、費用が変動する主な要因として、以下の点が挙げられます。

乱視の有無

乱視を矯正するための「トーリックレンズ」を使用する場合、通常のレンズよりも数万円~10万円程度高くなる傾向があります。

レンズの種類

近方にもピントが合う多焦点レンズなど、特殊なレンズを選択すると費用が上がることがあります。

執刀医の指名

院長や経験豊富な医師を指名する場合、追加料金がかかるクリニックもあります。

保証制度

術後の見え方に不具合があった場合の追加矯正や、定期検診の期間など、保証内容が手厚いほど費用が高くなることがあります。

多くのクリニックでは無料の説明会やカウンセリングを実施していますので、複数のクリニックで話を聞き、費用とサービス内容を比較検討することをおすすめします。

ICLは医療費控除の対象!実際にはいくら戻るの?

ICLは医療費控除の対象!実際にはいくら戻るの?

高額なICL手術ですが、支払った費用の一部が税金から戻ってくる「医療費控除」の対象になります。ご自身の年収だといくら戻るのか、具体的な計算例を交えて解説していきます。

そもそも医療費控除とは?

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間で、本人または生計を同一にする家族のために支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額等の5%のいずれか低い方)を超えた場合に、その超えた金額を所得から差し引くことができる制度です。

所得から医療費控除額を差し引く(これを「所得控除」と言います)ことで、課税対象となる所得が減り、結果として納めるべき所得税や住民税が安くなります。すでに納めた税金がある場合は、差額が「還付金」として手元に戻ってくる仕組みです。

国税庁は、ICLやレーシック手術について「視力回復を目的とした治療」と認めており、これらは医療費控除の対象となります。対象となるのは手術費用だけでなく、術前検査や術後検診の費用、処方された薬代、さらには通院にかかった公共交通機関の交通費も含まれます。

この制度を利用するには、翌年の確定申告期間中(原則2月16日~3月15日)に、ご自身で税務署へ申告手続きを行う必要があります。

ICLの医療費控除は実際にはいくら戻るの?実際の計算例で解説

では、実際にICL手術で医療費控除を申請した場合、いくらくらいのお金が戻ってくるのでしょうか。還付される金額は、手術費用そのものではなく、あなたの「課税所得金額(年収とは異なります)」によって決まる「所得税率」によって変動します。

還付金の計算式

  1. 医療費控除額の計算(上限200万円)
    (年間に支払った医療費の合計) – (保険金などで補填された金額) – 10万円 = 医療費控除額
  2. 還付金の計算
    (1.で計算した医療費控除額) × (あなたの所得税率) = 還付金額(目安)

【計算例】課税所得500万円の人が60万円のICL手術を受けた場合

この方の所得税率は20%です。

  1. 医療費控除額の計算
    60万円(ICL費用) – 0円(保険金等) – 10万円 = 50万円
  2. 還付金の計算
    50万円 × 20%(所得税率) = 10万円

このケースでは、確定申告をすることで約10万円の所得税が還付されることになります。

さらに、医療費控除を申請すると、翌年度の住民税も安くなります。住民税は一律で医療費控除額の10%が減額されるため、この例では 50万円 × 10% = 5万円 となり、所得税と合わせて合計約15万円もの負担が軽減される計算です。

課税所得金額と所得税率

課税される所得金額税率
195万円以下5%
195万円超 330万円以下10%
330万円超 695万円以下20%
695万円超 900万円以下23%
900万円超 1,800万円以下33%
1,800万円超 4,000万円以下40%
4,000万円超45%

ご自身の正確な課税所得金額は、会社員の方であれば毎年年末に受け取る「源泉徴収票」の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引くことで確認できます。

ICLを医療費控除の対象とするための手続きの流れを解説

ICLを医療費控除の対象とするための手続きの流れを解説

医療費控除は自動的に適用されるわけではなく、ご自身での申請が必要です。ここでは、会社員の方でも分かりやすいように、申請手続きの流れと必要書類をステップごとに解説します。

手続きに必要な必要書類

医療費控除の確定申告には、主に以下の書類が必要となります。計画的に準備を進めましょう。

確定申告書

国税庁のウェブサイトで作成するか、税務署で入手します。

医療費控除の明細書

支払った医療費の内訳を記入する書類です。クリニックから受け取った領収書をもとに作成します。

ポイント

医療費の領収書そのものを提出する必要はありませんが、内容を確認するために自宅で5年間保管する義務があります。

源泉徴収票(原本)

会社員の場合、勤務先から年末に発行されるものです。申告書を作成する際に、年収や所得税額などの情報を転記するために必要です。

マイナンバーが確認できる書類

マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類(運転免許証など)のセットです。

還付金を受け取る口座情報

申告者本人名義の銀行口座の情報が必要です。

(e-Taxで申告する場合)ICカードリーダライタ

マイナンバーカードを読み取るために必要ですが、スマートフォンで代用できる場合もあります。

これらの書類を準備し、翌年の確定申告期間(原則2月16日~3月15日)に、e-Tax(電子申告)、郵送、または税務署の窓口に直接持参して提出します。申告後、おおむね1ヶ月から1ヶ月半ほどで指定した口座に還付金が振り込まれます。

ICLの保険適用に関するよくある質問

ICLの保険適用に関するよくある質問

ここまでで解説しきれなかった、ICLの保険や費用に関する細かい疑問について回答します。「先進医療特約は使える?」「ローン払いでも大丈夫?」といった疑問をここで解決しましょう。

Q1. 民間の生命保険や医療保険の「手術給付金」は受け取れますか?

A1. ご加入の保険契約の内容によっては、受け取れる可能性があります。

公的医療保険は適用外ですが、民間の保険会社が提供する医療保険では、ICL手術が「手術給付金」の支払い対象となる場合があります。ただし、これは保険の契約内容や加入時期によって大きく異なります。

給付の対象となるかどうかを確認するためには、まずご自身の保険証券や約款を確認し、保険会社のコールセンターに問い合わせるのが最も確実です。その際、手術の正式名称である**「有水晶体眼内レンズ挿入術」**と伝えると、スムーズに確認が進みます。

Q2. 高額療養費制度は利用できますか?

A2. いいえ、利用できません。

高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。しかし、この制度は公的医療保険が適用される診療を対象としています。ICL手術は保険適用外の「自由診療」であるため、高額療養費制度の対象にはなりません。

Q3. レーシック手術も保険適用外・医療費控除の対象ですか?

A3. はい、その通りです。

レーシック手術も、ICL手術と同様の理由(視力矯正を目的とした自由診療)から、公的医療保険の適用外です。一方で、ICLと同じく「視力回復のための治療」と見なされるため、医療費控除の対象となります。手続きの流れや考え方もICLの場合と全く同じです。

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