人は、さまざまな理由で気分が落ち込みます。
- 人間関係
- 仕事
- 学業
- 健康
- 経済面
このように気分が落ち込む理由は人それぞれであり、その悩みは多岐に渡ります。人が生きる上で、気分が落ち込むのは自然な現象ともいえるでしょう。一方で、気分が落ち込む要因が、うつ病などの精神疾患である可能性もあります。
気分の落ち込みを抱える人の中には、
「気分が落ち込みやすいのは自分だけだろうか」
「気分が落ち込みやすい原因や理由があるのだろうか」
「落ち込みやすいのは心の病気かもしれない、不安だ」
このような悩みや疑問を抱えている方もいるでしょう。
そこで今回は、気分が落ち込みやすい人に向けて、以下の内容を解説します。
- 気分の落ち込みの症状が出る疾患
- 気分が落ち込んだときにおこなうチェックリスト
- うつ病を予防する3つの方法
気分が落ち込みやすく、うつ病などの疾患に対する不安がある方は参考にしてみてください。
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気分の落ち込みの症状が出る疾患一覧
症状としての気分の落ち込みは、「抑うつ気分」や「抑うつ状態」ともいわれます。抑うつ気分が出現する疾患としては、以下が挙げられます。
- うつ病
- 双極性障害
- 適応障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 月経前症候群
- 器質性精神障害
それぞれ解説します。
うつ病
うつ病は、抑うつを主症状とする精神疾患の1つです。日本人の約15人に1人がかかるといわれているため、決してめずらしい疾患ではありません。
うつ病の原因はまだはっきりとわかっていません。しかし近年では、脳の神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」が影響していると考えられるようになってきています。うつ病は「こころの疾患」ではなく脳のエネルギー不足により生じる「脳に関連する疾患」と捉えるのが正しいといえるでしょう。
うつ病には、たとえば以下のような症状があります。
- 悲しみや憂うつなどの気分の落ち込みがある
- 今まで好きだったことに興味がもてなくなる
- すぐイライラしたり怒ったりする
またうつ病の症状は、午前中は調子がわるく、午後から改善していくのが特徴的です。
うつ病の治療は、抗うつ薬を用いた薬物療法を中心に、精神療法(心理療法)や電気けいれん療法などがあります。また、脳のエネルギー不足を解消するために、十分な休養をとるのも重要です。
双極性障害
双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す疾患です。うつ状態の症状はうつ病と同様ですが、躁状態の症状には以下のような特徴があります。
- 睡眠時間が極端に短くても平気
- 人の意見を聞き入れられない
- 話しつづける
- 根拠のない自信に満ちあふれる
- 他人に高価なプレゼントを贈る
- ギャンブルに多額のお金をつぎ込む
- 初対面の人でもどんどん話しかける
双極性障害は、躁症状の程度によってⅠ型とⅡ型に分かれます。躁症状が軽いⅡ型の場合、うつ病と間違われるケースもあります。
双極性障害の治療は薬物療法が中心です。うつ状態のときと躁状態のときでは用いられる薬が異なります。それぞれの状態に適した薬を、医師の指示を守って服用するのが重要です。
適応障害
適応障害は、ストレスが原因で生じる症状により仕事や学校、家庭生活に支障をきたす状態を指します。適応障害の原因となるストレスは人によって異なり、職場や学校でのトラブル、日常の人間関係などが要因となります。
適応障害の代表的な症状は以下の通りです。
- 気分の落ち込みがある
- 不安になる
- 理由もなく焦る
- イライラする
- 暴飲暴食をする
適応障害の治療はまず、休養や環境調整によりストレスを減らすことが重要です。症状が強い場合には薬物療法も用いられますが、根本的な治療方法ではないことを理解しておく必要があります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、自身の生死に関わる体験をしたあとに生じる疾患です。生死に関わる体験とは、たとえば災害や暴力、重大な交通事故などが挙げられます。
PTSDの主な症状は以下の4つです。
- 意思とは無関係に、当時の恐怖が現実に起きているように感じる
- 当時のできごとを思い出せなかったり、人ごとのように感じたりする
- さまざまなことに対して否定的になったり無関心になったりする
- いつも緊張し、過剰に驚いたり怒りっぽくなったりする
一般的には3カ月以内に半数以上の方が自然回復します。自然回復しない場合には、薬物療法や精神療法(心理療法)が用いられます。
月経前症候群
月経前症候群は、月経前に以下のような症状が生じる疾患です。
- お腹の張り
- 肩こり
- 頭痛
- むくみ
- 体重増加
- 便秘
- イライラ感
- 集中力低下
月経前症候群は、神経伝達物質や食事、生活スタイルが要因となり引き起こされるという説がありますが、実のところ原因は解明されていません。そのため、効果的な治療方法も定まっていません。医師と相談しながら生活習慣の見直しや漢方薬の服用など、様子をみながら自分に合った改善方法を探っていきましょう。
気分が落ち込んだときにおこなうチェックリスト
気分が落ち込むのは自然な現象です。しかし2週間以上、気分が落ち込む場合には、下記の症状をチェックしてみてください。
「気分の落ち込み」に加えてこれらの症状がある場合には、うつ病などの精神疾患を発症している可能性があります。不安な方は、心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
うつ病を予防する3つの方法
頻繁に気分が落ち込む方の中には、うつ病などの疾患を発症しないか心配になる方もいるでしょう。うつ病を予防する3つの方法は以下の通りです。
- 生活習慣を見直す
- 自分自身の変化に気づけるようになる
- 休養をとる
それぞれ解説します。
生活習慣を見直す
生活習慣の見直しは、うつ病の予防効果があります。なぜなら、生活習慣が原因で生じる高血圧や脳卒中などの生活習慣病は、うつ病発症の危険因子になりうるからです。
生活習慣を見直す具体例としては以下の通りです。
- 適度な運動をする
- 規則正しい食生活を心がける
- 喫煙・飲酒をできるだけ控える
はじめからすべて取り入れるとストレスになり続かない可能性があるため、できることから少しずつ始めるようにしましょう。
自分自身の変化に気づけるようになる
うつ病を予防するには、自分自身で変化に気づき、早めに適切な治療やアドバイスを受けるのが重要です。うつ病を疑うサインとしては、下記を参考にしてください。
出典:厚生労働省|うつ病を知る「うつ病を疑うサイン-自分が気づく変化-」
上記のような変化に気づいた場合は、早めに心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
休養をとる
十分な休養は、うつ病の治療に有効であり、予防の観点からも効果的です。脳のエネルギー不足にならないよう、十分な休養をとりストレス発散をするとよいでしょう。
また、短い睡眠とうつ病に関連性があるとのデータも示されていることから、日常的な睡眠も重要です。「最近疲れているな」「なぜかわからないけど気分が落ち込むな」というときは、しっかり睡眠をとるようにしましょう。
気分が落ち込むときは一人で抱え込まずに相談しよう
気分の落ち込みは、誰しもが経験することです。一方で、気分が落ち込む原因がうつ病などの疾患の可能性もあります。気分の落ち込みが何らかの疾患の影響である場合、早期発見と早期治療が大切です。
また、疾患の影響ではなかったとしても、定常的に起こる気分の落ち込みを放置しておくと、うつ病などの疾患を発症するおそれもあります。生活習慣を見直したり、定期的に休養をとるなどして予防に努めましょう。
それでも気分が落ち込む場合は、一人で抱え込まずに誰かに相談するようにしましょう。うつ病などの精神疾患が疑われる場合には、心療内科や精神科を受診し、カウンセリングを受けるのがおすすめです。
参考サイト:
・厚生労働省|こころもメンテしよう|うつ病
・厚生労働省|こころの情報サイト|双極性障害(躁うつ病)
・厚生労働省|e-ヘルスネット|適応障害
・ドクターズファイル|適応障害
・厚生労働省|e-ヘルスネット|PTSD /心的外傷後ストレス障害
・厚生労働省|女性の健康推進室ヘルスケアラボ|月経前症候群(PMS)
・日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
・厚生労働省|地域におけるうつ対策検討会|予防の観点からうつ対策を考えてみましょう
・日本職業・災害医学会会誌第62巻第5号|東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科 忽滑谷和孝|生活習慣病とメンタルヘルス
・沖縄産業保健総合支援センター|うつ病と生活習慣病の関連〜内科医・産業医の立場から〜
・厚生労働省|生活習慣病予防
・厚生労働省|うつ病を知る
・j-stage|内山真|「休養・ストレスと精神医学」
・広島市|休養・メンタルヘルス
・大阪府|うつ病の治療-うつ病を予防するには?