「寝ている途中で何度も目が覚めてしまう」
「目が覚める時間はだいたい同じで午前2時頃」
「この症状は治るの?」
など、睡眠に関する悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
寝ている途中で目が覚める、いわゆる中途覚醒は、不眠症の仲間とされています。
この記事では、中途覚醒の原因や対策、薬物療法について紹介します。中途覚醒のために熟睡できずに困っている方は、ぜひ参考になさってください。
中途覚醒とは
中途覚醒とは不眠症の症状の1つで、いったん眠りについたあと、翌朝まで何度も目を覚ましてしまう症状です。
不眠症の典型的な症状は、以下の4つです。
- 入眠障害(床についても寝つけない)
- 中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)
- 早朝覚醒(朝早く目が覚めて、再度眠れない)
- 熟眠障害(熟睡した感じを得られない)
中途覚醒は、年齢とともに出現しやすくなるほか、うつ病や睡眠時無呼吸症候群などの影響で出現する場合もあります。
こんな中途覚醒はない?チェックしてみよう
夜中に目が覚めるからといって、必ずしも問題があるとは限りません。ただ、夜中に何度も目が覚める、一日だけでなく何日も続いているといった場合は注意が必要です。たとえば以下に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
特に理由がないのに夜中に何度も目が覚める
眠りが浅く小さな物音でも目が覚めてしまう
一度目が覚めたらなかなか寝つけない
夜中に目が覚めることが何日も続いている
日中、眠気があったり気分がすぐれなかったりする
トイレに行きたくなったり、雷や地震など大きな音や衝撃で目が覚めたりした経験がある方は少なくないでしょう。また、大事な用事の直前や、気持ちが高ぶっている時などは一時的に眠りづらくなることがあります。ですが、上記の複数にチェックがつき、つらい、困っているといった自覚がある場合は、中途覚醒が出現している可能性があります。
不眠症全体のセルフチェックに関しては、「【セルフチェックシート】不眠症の症状や原因は人によって異なる」の記事をご覧ください。
中途覚醒の6つの原因
中途覚醒が発生する原因はさまざまです。ここでは、主なものとして6つご紹介します。
1.ストレスや精神疾患
ストレスがたまると、その影響で自律神経が乱れ、中途覚醒が起こりやすくなります。具体的に言うと、ストレスにより交感神経が強く刺激されて緊張状態が続き、身体を目覚めさせたり、脳を興奮させたりするのです。そのため、寝床についても熟睡できずに、中途覚醒が起こりやすくなります。
また、うつ病などの精神疾患の症状としても睡眠障害が表れることが多く、寝つきが悪くなったり、夜目が覚めたりするのです。
2.生活リズムの乱れ
生活リズムの乱れも、中途覚醒の原因として考えられます。夜更かしが続くと、体内時計がずれてしまい、睡眠が不規則になりがちです。また、交代制勤務や時差の影響で体内時計が狂うことにより、不眠症などの睡眠障害を引き起こしやすくなります。
就寝直前までのスマートフォンやパソコンの操作、ゲームなどは、脳に強い光刺激が入ります。そのため、脳が「今は夜ではなく昼である」と錯覚を起こす可能性もあるのです。
3.妊娠中〜産後
妊娠出産は、ホルモンバランスを大きく変化させます。そのことが睡眠にも関係します。それだけではありません。妊娠による諸症状や、産後の育児も睡眠に大きな影響を与えるのです。
妊娠後期は、お腹が大きくなることやひんぱんに張ること、胎動などにより中途覚醒が起きやすくなります。頻尿や腰痛も中途覚醒の原因として考えられます。
また、出産後は、夜間の授乳や夜泣きへの対応で睡眠が中断され、結果として中途覚醒につながるのです。
このほか、マタニティーブルーや産後うつなど、妊娠出産がきっかけで発症する精神疾患も、睡眠障害の原因とされています。
4.加齢
年を重ねると、中途覚醒しやすくなる状況にあります。
1つ目の理由は、年齢とともに睡眠と覚醒のリズムのメリハリが少なくなることです。
2つ目の理由は、加齢により睡眠が浅くなることです。高齢になると、深い眠りであるノンレム睡眠が減って、浅い眠りであるレム睡眠が増えてしまいます。その結果、ちょっとした物音や尿意で目が覚めてしまうのです。
高齢者の場合、さまざまな病気にかかることも多くなり、薬を飲む量や種類も増えます。薬の副作用により、睡眠障害につながることもあります。また、認知症やうつ病などの精神疾患の影響で、中途覚醒をはじめとする睡眠障害が生じる可能性も少なくありません。
中途覚醒により日常生活に支障をきたすようであれば、精神科や心療内科などの専門医の受診をおすすめします。
5.睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害の一種で、文字通り睡眠中に呼吸が止まる症状を伴います。
原因は、睡眠中に舌の付け根が下がってしまい(舌根沈下)、気道がふさがれることです。そのために呼吸が止まったり、大きないびきをかいたりします。呼吸が止まることにより、脳を含めた身体が酸素不足になり、目が覚めてしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質を悪化させて、昼間に強烈な眠気やだるさ、集中力低下などを引き起こします。
6.睡眠関連運動障害
睡眠関連運動障害とは、睡眠中や睡眠前後に出現するものです。比較的単純で同じような体の動きが生じることで、睡眠が妨げられます。
睡眠関連運動障害の代表的なものは、周期性四肢運動障害とむずむず脚症候群ですが、足がつること(こむら返り)や歯ぎしりも含まれます。
ここでは、周期性四肢運動障害とむずむず脚症候群について説明します。
1.周期性四肢運動障害
周期性四肢運動障害は、睡眠中に繰り返し起こる、手や腕、脚などの不規則な動きのことです。この動きは、本人の意思とは無関係に起こっています。
軽い症状の場合は、本人も気づかず、睡眠に支障は生じにくいとされます。しかし、重症化すると中途覚醒や日中の眠気につながりやすくなるのです。
2.むずむず脚症候群
むずむず脚症候群は、睡眠中に脚全体、特にふくらはぎや足の裏にかけて生じる不快感のことです。別名「レストレッグス症候群」とも呼ばれます。
具体的には
- ほてるような感覚
- むずむずした感覚
- 虫が這っているような感覚
- 脚がピクピクする感覚
という不快感の訴えがあげられます。このために、中途覚醒が起こったり、床に入っても寝付けなかったりするのです。
中途覚醒の5つの対策
中途覚醒の主な対策として考えられるのが、生活習慣の見直しです。ここでは5つの対策を挙げてみました。
1.適度に運動する
適度な運動は夜の睡眠を促し、中途覚醒を減らすことにつながります。
また、日中適度に身体を動かすことで、昼と夜のメリハリがつきます。このことも、中途覚醒減少に働くのです。
ただし、激しい運動や就寝前の運動は、身体を興奮させて逆に睡眠を妨げてしまいます。ウォーキングやストレッチなど軽い運動がよいでしょう。
2.寝室環境を整える
深い眠りのためには、体温調節が大切です。
夜になると、皮膚が身体の熱を逃がして、深部体温が下がります。この結果生じるのが、眠気です。
室温が低すぎたり高すぎたりすると、皮膚が熱を逃しにくくなります。その結果、深部体温がうまく下がらずに寝つきが悪くなり、睡眠の質が下がるとされるのです。
寝床内の温度は33℃、湿度は50%が適切と言われます。個人差もありますので、眠りを妨げない程度に、自分が心地よいと感じる温度や室温にしましょう。
また、寝る前には照明を落とし、寝室のドアを閉めて、周りの音が小さくなるように調整してください。
3.飲酒喫煙を控える
飲酒や喫煙は睡眠の質を低下させます。
就寝前のアルコール摂取、いわゆる「寝酒」は、眠りを促す効果がある反面、中途覚醒を引き起こしやすくします。また、たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があるほか、眠りの質を低下させます。
就寝前の飲酒と喫煙は、睡眠の質自体を低下させるだけではありません。中途覚醒の原因になる、睡眠時無呼吸症候群のリスクを上げるとも言われているのです。
4.就寝前のカフェインを控える
就寝3~4時間前には、カフェインを控えましょう。カフェインが含まれているものとしては、コーヒーや紅茶、緑茶、ココア、健康ドリンクなどがあります。
これらを摂取すると寝つきを悪くしたり、中途覚醒を促したりします。これは、カフェインの覚醒効果によるものです。カフェインの覚醒効果は、3~5時間程度続くと言われています。
また、カフェインには利尿作用もあります。就寝前のカフェイン摂取により、夜に尿意を感じて目が覚めることもあるので、注意が必要です。
5.眠くなってから布団に入る
「眠くなってから布団に入る」という習慣を心がけましょう。
身体が必要とする睡眠時間は成人であれば6~8時間程度ですが、体内時計の周期のなかで、寝る2~3時間前はもっとも寝つきにくい時間とされています。
長く眠ろうとしていつもより早く寝床に入ると、寝つきにくい時間と重なり、浅い眠りになりがちです。その結果、中途覚醒の頻度が高くなる可能性があります。
加えて、眠くなる前に寝床に入ると「今日は眠れるだろうか」、「また目が覚めたらどうしよう」など考えすぎる場合があります。そのため緊張が高まり、不眠を助長する可能性があるのです。
眠りが浅いときは、むしろ「遅寝早起き」にして、体内時計を整えることをおすすめします。
中途覚醒の薬物治療と薬の4分類
生活習慣の見直しをしてもなお中途覚醒が続く場合は、睡眠薬による薬物療法が必要です。睡眠薬は作用時間別に4つの種類に分けられます。
薬物治療を受ける場合、かかりつけ医がいる方は、最初にかかりつけ医に相談なさってください。かかりつけ医がいない方は、精神科や心療内科を受診しましょう。
1.超短時間作用型
内服後にすぐに効果が現れる反面、作用時間も2~4時間と短いタイプです。睡眠導入剤とも呼ばれ、入眠障害タイプに用いられることが多いとされています。
主な商品名としては、ハルシオン、マイスリー、アモバンなどが挙げられます。
2.短時間作用型
比較的速く効果が現れるものの、作用時間は6~10時間とあまり長くないタイプです。超短時間作用型と同じく、入眠障害や熟眠障害で使われることが多いとされています。
主な商品名としては、リスミー、デパス、レンドルミンなどが挙げられます。
3.中間作用型
中途覚醒の治療で多く用いられるのが、中間作用型です。効き目が現れるまでの時間がやや長く、その分持続性があるタイプです。作用時間は、12~24時程度と言われています。
主な商品名としては、サイレース、ユーロジン、ネルボンなどが挙げられます。
4.長時間作用型
薬の作用時間が35~85時間と長いことが特徴です。うつ病などの精神疾患による睡眠障害で用いられるとされています。
主な商品名としては、ダルメート、ソメリン、ドラールなどが挙げられます。
中途覚醒の薬物治療にあたっての注意点
睡眠薬を飲むにあたっての主な注意点は、以下のとおりです。
- 寝る前に服用し、服用したらすぐに寝床に就く
- アルコールとの併用はおこなわない
- 睡眠薬服用の翌日は自動車等の運転を控える
- 自己判断で内服量を増やしたり減らしたりしない
「薬について不安な点は、医師や薬剤師に相談する」と覚えておくといいでしょう。
中途覚醒で大切なのは生活習慣の見直しや薬物治療
この記事では、中途覚醒の原因や対策、治療法について紹介いたしました。
中途覚醒改善のためには、生活習慣の見直しや薬物治療が大切になってきます。しかし、生活習慣を見直しても中途覚醒が続く場合は、薬物治療が必要です。
薬物治療では、睡眠薬が使われます。適切な睡眠薬の処方を受けたり、症状の変化に応じて薬を調整したりするためにも、精神科や心療内科などの専門医を受診することが大切です。
参考サイト・文献
不眠症|全国健康保険協会
不眠症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
夜中に目が覚める、熟睡できない原因と改善について|監修医院にしかわ耳鼻咽喉科
健康づくりのための睡眠指針2014|厚生労働省健康局
女性の睡眠障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
不眠症|一般社団法人日本臨床内科医会
高齢者の睡眠 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
不眠症(睡眠障害)こころの情報サイト|国立・精神医療研究センター
睡眠障害ガイドライン わが国における睡眠問題の現状
不眠症と過眠症|内山真|日大医誌(2010)
睡眠覚醒障害の概念と病態の理解|堀口淳|第103回日本精神神経学会総会
快眠と生活習慣 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
温度、湿度と睡眠 | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
睡眠障害について|東北大学保健管理センター
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン ー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアルー