ICL(眼内コンタクトレンズ)の手術を検討する際、多くの人が直面するのが「どのレンズを選べばいいのかわからない」という悩みです。「ICLとIPCLは何が違うのか」「乱視用や老眼用もあるのか」「認可されたレンズを選ぶべきか」など、専門的な用語や種類が多く、判断に迷ってしまうことは珍しくありません。
結論からお伝えすると、ICLレンズ選びで最も重要なのは、ご自身の目の状態(近視・乱視の度数、老眼の有無)と、ライフスタイルにおける優先順位(安全性の実績重視か、見え方の機能重視か)を明確にすることです。手術の満足度を高めるためには、それぞれのレンズが持つ特徴とリスクを正しく理解する必要があります。
この記事では、国内で承認されているスターサージカル社のICLと、近年注目されているIPCLの違いを徹底比較し、機能別のレンズ特性や選び方のポイントを詳しく解説します。
この記事で分かること:
- スターサージカル社製ICLと他社製IPCLの決定的な違いと選び方
- 近視用・乱視用・老眼用(多焦点)それぞれの機能と適応ケース
- 自分に合うレンズの傾向がわかるセルフチェックリスト
- ホールICL(KS-AquaPORT)が白内障リスクを低減する仕組み
- レンズの種類による費用相場と手元に届くまでの期間
ICLレンズの種類

この章で分かること:
- 現在国内で厚生労働省の承認を受けているのはスターサージカル社のICLのみである
- 未承認ではあるがIPCLなど他社製レンズには豊富なラインナップが存在する
- レンズ選びの基本はメーカーの選択と、近視・乱視・老眼という機能の選択の2軸である
国内承認レンズはスターサージカル社のICLのみ
現在、日本国内で厚生労働省から正式に薬事承認を受けている有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)は、米国スターサージカル社(STAAR Surgical)製の「ICL」のみです。スターサージカル社は眼内レンズの開発において30年以上の歴史を持ち、世界75ヶ国以上で使用されている実績があります。
承認されているということは、国が定めた厳しい審査基準をクリアし、有効性と安全性が一定レベルで確認されていることを意味します。そのため、多くの眼科クリニックではスターサージカル社のICLを第一選択として推奨する傾向にあります。特に「ホールICL」と呼ばれる、レンズ中央に小さな穴が開いたモデルが登場してからは、合併症のリスクが大幅に低下し、現在の主流となっています。国内における承認情報の詳細はPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の医療機器承認情報でも確認できます。
また、承認レンズであるため、万が一トラブルが発生した場合の対応やデータの蓄積も豊富です。初めて眼内コンタクトレンズの手術を受ける方や、長期的な安心感を最優先したい方にとっては、この「国内承認」という事実は非常に大きな判断材料となります。
未承認だが種類の多いIPCLなどの他社製レンズ
スターサージカル社のICL以外にも、世界には様々なメーカーが製造する眼内レンズが存在します。その代表格が、2014年に登場したEyeOL社(イギリス・インド)製の「IPCL」です。日本では厚生労働省の承認を受けていないため「未承認レンズ」という扱いになりますが、医師の個人輸入という形で多くのクリニックで導入されています。
未承認と聞くと不安に感じるかもしれませんが、これらはヨーロッパの安全規格であるCEマークを取得していることが多く、世界的には使用実績がある製品です。IPCLの最大の特徴は、ラインナップの豊富さとカスタマイズ性の高さにあります。例えば、スターサージカル製のICLでは対応しきれないような強度近視や強度乱視、あるいは老眼矯正を目的とした多焦点レンズなど、特殊なニーズに応える製品が揃っています。
他にも、スイス製の「Eyecryl(アイクリル)」などがあり、これらも特定の機能に特化したレンズとして選択肢に入ることがあります。承認の有無だけでなく、自分の目の度数や見え方の希望に合致するかどうかが、他社製レンズを検討する際のポイントとなります。
目の状態に応じて近視・乱視・老眼用を選択する
レンズ選びには「メーカー」の違いだけでなく、「矯正機能」による違いがあります。基本的には、事前の適応検査で測定した目のデータに基づき、以下の3つのタイプから最適なものを医師と相談して決定します。
- 近視用レンズ(通常レンズ) 最も一般的なタイプで、近視のみを矯正します。球面レンズとも呼ばれ、乱視が少ない、または気にならない程度の方に適しています。
- 乱視用レンズ(トーリックレンズ) 近視と同時に乱視も矯正できるレンズです。一定以上の乱視がある場合、近視だけを治しても見え方の質(クリアさ)が上がらないため、このタイプが推奨されます。レンズの軸を目の乱視軸に合わせて固定する必要があります。
- 老眼用レンズ(多焦点レンズ) 遠くと近くの両方にピントが合うように設計されたレンズです。加齢により調節力が低下した40代・50代の方や、老眼鏡の使用頻度を減らしたい方に適しています。IPCLなどで選択可能です。
このように、レンズの種類は「メーカー(ICLかIPCLか)」と「機能(何を矯正するか)」の組み合わせで決まります。日本眼科学会の屈折矯正手術のガイドラインでは、適応年齢や慎重な実施について定められており、医師はこの基準に基づいて最適なレンズを提案します。
ICLとIPCLの違い

この章で分かること:
- ICLは世界的な実績数と国の認可による信頼性が最大のメリット
- IPCLはレンズサイズが豊富で老眼対応など細かいニーズに応えられる
- 基本的な安全性ならICL、特殊な条件があるならIPCLという選び方が一般的
ICL(スターサージカル社)は世界的な実績と厚生労働省の認可が強み
ICL(Implantable Collamer Lens)を選ぶ最大のメリットは、圧倒的な実績と信頼性にあります。前述の通り、国内で唯一の厚生労働省承認レンズであり、世界中で数百万眼以上の症例実績があります。長期的な予後データも豊富に存在するため、術後の経過やリスクについてもある程度予測がつきやすく、医師側も安心して勧められるレンズです。
米国においても、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けており、世界的な安全基準を満たしていることが証明されています。
素材には「コラマー(Collamer)」という独自開発の生体適合性が高い材料が使用されています。これはコラーゲンを含んでおり、目の中で異物として認識されにくく、炎症を起こしにくいという特長があります。また、紫外線をカットする機能も標準装備されています。
IPCL(EyeOL社)はレンズサイズや度数などカスタマイズ性が高い
IPCL(Implantable Phakic Contact Lens)の強みは、オーダーメイドに近いカスタマイズ性です。特にレンズのサイズ展開が豊富で、ICLよりも細かくサイズ設定が可能です。これにより、患者さんの目のスペース(前房深度や溝の大きさ)に対して、よりフィットするレンズを選べる可能性があります。
また、矯正できる度数の範囲が広いことも特徴です。ICLでは矯正しきれないほどの超強度近視や、強度の乱視に対しても、IPCLであれば特注で対応できるケースがあります。さらに、老眼治療に用いられる「多焦点(マルチフォーカル)レンズ」の種類が充実しており、遠近両用だけでなく、中間距離も見やすい3焦点レンズなども選択肢に含まれます。
素材はハイブリッドアクリルという素材で、こちらも生体適合性は高いとされていますが、コラマーとは異なります。実績数ではICLに劣るものの、「ICLでは適応外と言われた」「老眼も一緒に治したい」という方にとっては、非常に有力な選択肢となります。
長期的な安全性重視ならICL、特殊な度数や老眼対応ならIPCLが選択肢
ICLとIPCLを比較検討する際、どちらが優れているか一概に決めることはできません。それぞれ重視するポイントが異なるからです。以下の表に、主な違いを整理しました。
| 項目 | ICL(スターサージカル社) | IPCL(EyeOL社ほか) |
|---|---|---|
| 国の承認 | あり(厚生労働省承認) | なし(CEマーク等は取得) |
| 実績 | 世界的に非常に多い | ICLに比べると少ない |
| レンズ素材 | コラマー(Collamer) | ハイブリッドアクリル等 |
| サイズ展開 | 4種類 | 細かく選択可能(10種類以上) |
| 老眼対応 | 基本的に単焦点(近視・乱視) | 多焦点レンズの選択肢が豊富 |
| 度数範囲 | 広いが限界がある | 超強度近視・乱視も対応可能 |
基本的には、「国内承認の安心感と長期実績を最優先する」のであればICLが推奨されます。特に20代・30代で老眼の心配がなく、標準的な近視・乱視の範囲内であれば、ICLを選ぶのがスタンダードな判断です。
一方で、「老眼治療を希望する」「ICLのサイズが合わない」「強度の乱視がある」といった特殊な事情がある場合はIPCLが適しています。未承認であるリスク(万が一の公的な救済制度の対象外になる可能性など)を理解した上で、機能性を追求する選択となります。
iclとipclはどっちがいいかは医師の診断とライフスタイル次第

最終的に「どっちがいいか」を決めるのは、インターネットの情報だけではなく、精密検査の結果と医師の診断です。目の内部の空間(前房)の深さや形状によっては、医学的にどちらかしか選べないこともあります。また、職業や趣味によって「夜間の見え方」や「手元の作業頻度」が異なるため、ライフスタイルに合わせた見え方を医師に伝え、最適なレンズを提案してもらうことが重要です。
多焦点・乱視用など機能別のICLレンズ

この章で分かること:
- 近視用レンズは幅広い度数に対応し、裸眼でのクリアな視界を実現する
- 乱視用ICLは軸を固定することでブレのない見え方を提供する
- 老眼治療には多焦点IPCLが有効だが、見え方の質には慣れが必要な場合もある
通常の近視用レンズは中等度から強度近視に対応
通常の近視用レンズ(単焦点レンズ)は、ICL手術の中で最も多く使用されているスタンダードなタイプです。軽度から強度までの幅広い近視度数に対応しており、角膜を削るレーシック手術では対応が難しい強度近視の方でも、鮮明な視力を得られる可能性が高いのが特徴です。
このレンズは、ピントを合わせる距離を一点(通常は遠方)に設定します。そのため、遠くの景色や信号、看板などは非常にクリアに見えるようになります。一方で、40代以降で老眼が始まっている場合、遠くが良く見えるようになった分、近く(スマホや読書など)を見る際に老眼鏡が必要になることがあります。
若い世代の方であれば、目の調節力が十分にあるため、遠くにピントを合わせたレンズを入れても、自分の力で近くにピントを合わせることが可能です。そのため、20代〜30代の方の多くはこの通常の近視用レンズを選択し、快適な裸眼生活を送っています。
乱視用ICL(トーリックレンズ)は近視と乱視の同時矯正が可能
近視の方の多くは、程度の差こそあれ乱視を併発しています。乱視があると、景色が二重に見えたり、夜間の光がにじんで見えたりするため、近視だけを矯正しても「すっきり見えない」という不満が残ることがあります。これを解消するのが「乱視用ICL(トーリックレンズ)」です。
乱視用レンズには、乱視を打ち消すための特殊な構造が施されており、手術時に個々の患者さんの「乱視の角度(軸)」に合わせてレンズを挿入します。これにより、近視と乱視を一度の手術で同時に矯正することが可能です。
ただし、乱視用レンズは目の中で回転してしまうと矯正効果が弱まるため、固定位置が非常に重要になります。また、通常のレンズに比べて費用が高くなる傾向があります。軽度の乱視であれば、通常のレンズでも気にならない程度まで改善することもあるため、乱視用にするかどうかは検査データをもとに医師と慎重に相談する必要があります。
老眼治療には多焦点眼内レンズ(遠近両用)という選択肢
40代・50代になり、近視の矯正と同時に老眼の対策もしたいというニーズに応えるのが「多焦点眼内レンズ」です。これは、レンズに複数の焦点を設けることで、遠くと近く(あるいは中間距離)の両方にピントが合いやすくする設計になっています。
多焦点レンズを入れることで、眼鏡や老眼鏡への依存度を減らし、活動的な生活を送れるようになるのが最大のメリットです。しかし、独特の見え方(コントラスト感度の低下や、夜間のハロー・グレアが強く出る傾向)があるため、脳がその見え方に慣れるまで時間がかかる場合があります。また、すべての人に適応するわけではなく、見え方の質にこだわりが強い方には向かない場合もあります。
この分野では、前述の通りIPCLが豊富なラインナップ(3焦点レンズなど)を持っており、老眼治療を目的とする場合はIPCLが第一選択になることが多いのが現状です。
多焦点レンズはICLよりもIPCLの方が種類を選べる傾向
スターサージカル社のICLにも、海外では「EDOF(拡張焦点深度)」などの老眼対応レンズが登場していますが、日本国内での導入や承認状況は限定的です。現時点で日本国内において老眼治療(多焦点)を積極的に行う場合、種類の豊富さや入手しやすさの観点から、IPCLなどの他社製レンズが提案されるケースが一般的です。老眼対応を希望する場合は、取り扱いのあるクリニックを事前にリサーチすることが重要です。
自分に適したレンズを見極めるチェックリスト

この章で分かること:
- 自分が乱視用レンズや多焦点レンズを検討すべきかの目安
- 安全性(認可)と機能性(老眼対応等)のどちらを優先するかの整理
- 医師への相談前に自分の希望を言語化するための判断材料
乱視の有無と程度でトーリックレンズの必要性を判断する
自分には乱視用レンズ(トーリック)が必要なのか、通常のレンズで十分なのか。これは費用にも関わる重要な問題です。以下のチェックリストで、ご自身の状況を確認してみましょう。
- 乱視用レンズ検討チェックリスト
- 現在使用しているコンタクトレンズや眼鏡は「乱視用」である
- 裸眼で見ると、月や信号の光が二重・三重にダブって見える
- 視力検査でCマークの切れ目が判別しづらく、方向が歪んで見える
- 「費用がかかっても、見え方の質(クリアさ)を妥協したくない」と思う
上記に2つ以上当てはまる場合、乱視用ICLの適応となる可能性が高いです。特に「見え方の質」にこだわる場合は、軽度の乱視であってもトーリックレンズを選択する価値があります。逆に、普段乱視用の矯正をしておらず不便を感じていないなら、通常のレンズで適応可能か医師に確認してみましょう。
年齢と手元の見え方から多焦点レンズの適性を確認する
次に、老眼対応の多焦点レンズ(主にIPCL)を検討すべきかどうかのチェックリストです。
- 多焦点レンズ(老眼対応)検討チェックリスト
- 年齢が40代半ば〜50代以上である
- 最近、スマホの画面や新聞の文字を離さないと見えにくくなってきた
- 近視の手術をしても、術後に老眼鏡をかける生活は絶対に避けたい
- 夜間の運転はあまりしない(多焦点は夜間のハロー・グレアが強く出る傾向があるため)
- 多少の見え方のクセ(コントラスト低下など)には慣れる自信がある
これらに当てはまる方は、単焦点レンズ(通常のICL)ではなく、多焦点レンズ(IPCLなど)の適応を相談する価値があります。特に「老眼鏡をかけたくない」という強い希望があるかどうかが分かれ道です。
予算と安全性の優先順位を整理して医師に伝える準備が必要

最後に、レンズ選びの決定打となる「価値観」の整理です。クリニックでのカウンセリング時に、以下のどちらを重視するかを伝えると、提案のミスマッチを防げます。
- タイプA:安心・実績重視派(推奨:スターサージカル社製ICL)
- 「とにかく実績が多く、国に認められた安全なものを使いたい」
- 「老眼への対応は、将来必要になったら老眼鏡で対応しても良い」
- 「万が一のトラブル時の保証や対応事例が多い方が安心する」
- タイプB:機能・カスタマイズ重視派(推奨:IPCL等の多焦点・特注レンズ)
- 「未承認でも、自分の目に完璧に合うサイズや度数を追求したい」
- 「老眼も同時に治して、眼鏡のない生活を完全に手に入れたい」
- 「多少のリスクを理解した上で、最新の機能性レンズを試したい」
ご自身がどちらのタイプに近いかを把握し、医師に「私は安心感を最優先したいです」「私はどうしても老眼も治したいです」と明確に伝えることが、納得のいくレンズ選びの第一歩です。
ホールICLの特徴

この章で分かること:
- レンズ中央の穴(ホール)が房水の流れを確保し合併症を防ぐ
- 以前は必要だった虹彩切開術が不要になり、手術がシンプルになった
- 視界の中心に穴があっても、脳の補正により見え方には影響しない
レンズ中央の穴が房水の循環を維持し白内障リスクを抑制
現在主流となっている「ホールICL(KS-AquaPORT)」の最大の特徴は、レンズの中心に0.36mmのごく小さな穴(ホール)が開いていることです。この穴は単なるデザインではなく、目の健康を維持するために極めて重要な役割を果たしています。
目の中には「房水(ぼうすい)」と呼ばれる栄養を含んだ水が循環しており、水晶体などに栄養を届けています。従来の穴のないレンズでは、この房水の流れをレンズが妨げてしまい、水晶体の代謝が悪くなることで「白内障」が進行するリスクがわずかにありました。しかし、ホールICLではこの穴を通じて房水がスムーズに循環するため、水晶体が栄養不足になることを防ぎ、白内障の発症リスクを大幅に抑制することに成功しました。
虹彩切開術が不要になり手術における目の負担が軽減
ホールICLが登場する以前は、房水の流れを確保し眼圧の上昇を防ぐために、ICL手術の前に「虹彩切開術」という別の処置を行う必要がありました。これはレーザーで虹彩(茶目の部分)に小さな穴を開けるもので、患者さんにとっては手術の工程が増え、目の出血や炎症などの負担がかかるものでした。
しかし、ホールICLの登場により、レンズ自体が房水の循環を確保できるようになったため、事前の虹彩切開術が不要になりました。これにより、手術は両眼で20分程度と大幅に短縮され、目への侵襲(ダメージ)も最小限に抑えられるようになりました。患者さんの身体的・時間的負担が減ったことは、ホールICLの大きな功績です。スターサージカル社の歴史においても、このホールICL(EVO ICL)の登場は、屈折矯正手術における大きな転換点として紹介されています。
ホールがあっても見え方や視力への影響はほとんどない
「レンズの真ん中に穴が開いていて、見え方に影響はないのか?」と心配される方も多いですが、結論から言えば、視力や見え方への実質的な影響はほとんどありません。
0.36mmという穴は非常に微細であり、光学的な設計によって光の屈折に悪影響を与えないよう工夫されています。また、人間の脳には映像を補正して認識する機能があるため、穴の存在を異物として認識することは通常ありません。ごく稀に、光の加減によって何かが見えるような感覚を持つ方もいますが、時間の経過とともに気にならなくなるケースがほとんどです。視力検査の結果においても、穴のないレンズと比較して遜色のない良好な結果が得られることが実証されています。
ICLレンズの素材とカラーレンズについて
この章で分かること:
- ICLの素材「コラマー」は生体適合性が高く、長期使用に適している
- 有害な紫外線をカットする機能が含まれており、目の保護に役立つ
- ICLは視力矯正用であり、瞳の色を変えるカラーコンタクトとは異なる
コラマー(Collamer)素材は生体適合性が高く異物反応が少ない
スターサージカル社のICLレンズには、「コラマー(Collamer)」という独自開発の素材が使用されています。これは、HEMA(水酸化エチルメタクリレート)というソフトコンタクトレンズに近い素材と、コラーゲンを含んだ重合体です。
コラマーの最大の特徴は、優れた「生体適合性」です。人間の体にとって非常に馴染みが良く、目の中に入れても異物として認識されにくいため、炎症反応や拒絶反応が起こるリスクが極めて低く抑えられています。また、レンズの表面がマイナスの電荷を帯びており、タンパク質などの汚れが反発して付着しにくい性質を持っています。これにより、メンテナンスフリーで長期間(半永久的)にわたって透明性を維持し、目の中でクリアな視界を保ち続けることが可能です。
紫外線をカットする機能が含まれているため眼病予防に寄与
ICLレンズには、UV(紫外線)吸収剤が含まれており、目に有害な紫外線をカットする機能が備わっています。紫外線は肌だけでなく目にとっても大敵であり、長期間浴び続けると白内障や加齢黄斑変性といった眼病のリスクを高める要因となります。
ICLを挿入することで、目の中に入る紫外線を大幅に低減できるため、視力を回復させるだけでなく、将来的な眼病予防という観点でもメリットがあります。日常生活でサングラスをかけられない場面でも、ICLが入っていれば目の中かから紫外線対策ができている状態になります。
ICLは透明な眼内レンズであり瞳の色を変えるカラーレンズではない
「ICL カラーレンズ」と検索されることがありますが、ここで注意が必要なのは、ICLはあくまで視力矯正手術のための医療用レンズであり、おしゃれ目的の「カラーコンタクトレンズ」とは全く別物であるということです。
ICLのレンズ自体は無色透明(わずかに素材の色味がある場合もありますが、見た目には分かりません)であり、瞳孔の後ろにある後房という位置に挿入されます。そのため、手術後に瞳の色が変わったり、黒目が大きく見えたりすることはありません。外見上の変化は全くなく、誰かに気づかれることもありません。もし瞳の色を変えたいという希望がある場合は、ICLではなく、通常のカラーコンタクトレンズを使用するか、別の美容的な施術を検討する必要があります(ただし、ICL術後にカラーコンタクトを使用できるかは医師への確認が必要です)。
ICLレンズの費用と届くまでの期間

この章で分かること:
- 乱視用やIPCLなどの特殊レンズは通常よりも費用が高くなる
- 在庫があれば早いが、特注レンズの場合は数ヶ月待ちもあり得る
- 検査を受けて初めて、自分に必要なレンズの納期と費用が確定する
レンズの種類や乱視の有無によって費用は変動
ICL手術は自由診療(公的医療保険の適用外)であるため、費用はクリニックによって異なりますが、選ぶレンズの種類によっても相場が変わります。
一般的な目安としては以下の通りです。
- 通常のICL(近視用): 両眼で45万円〜60万円程度
- 乱視用ICL(トーリック): 通常レンズにプラス5万円〜10万円程度
- IPCL(多焦点・老眼用): 両眼で60万円〜80万円程度(クリニックによる差が大きい)
乱視用レンズや、IPCLのような多焦点レンズは、通常のレンズよりも製造コストや技術料がかかるため、費用が高額になる傾向があります。クリニックによっては、アフターケア代や定期検診代が含まれている場合とそうでない場合があるため、総額でいくらかかるかを事前に確認することが大切です。
国内在庫があれば早くて数日、オーダーメイドなら数ヶ月が必要
手術を受けたいと思ってから、実際に手術ができるまでの期間は、レンズの在庫状況に大きく左右されます。
- 国内在庫がある場合(一般的な度数のICL): メーカーや代理店に在庫があれば、早ければ数日〜1週間程度でレンズが届き、すぐに手術日程を組むことができます。
- 海外発注・特注の場合(乱視用、強度近視、IPCLなど): 国内に在庫がなく海外から取り寄せる場合や、オーダーメイドで製造が必要なIPCLの場合は、手元に届くまでに1ヶ月〜3ヶ月、長い場合は半年近くかかることもあります。
特に乱視用レンズや度数が強いレンズは、海外発注になるケースが多いです。「来月の旅行までに治したい」といった希望がある場合は、早めに検査を受ける必要があります。
自分の目に合うレンズの在庫状況は事前検査での確認が必須
自分がどのレンズに当てはまり、そのレンズの在庫がすぐにあるかどうかは、実際に適応検査を受けて目のデータを測定しないと分かりません。「自分は目が悪いから時間がかかるだろう」と思っていても意外と在庫があったり、逆に「軽い近視だからすぐできる」と思っていても乱視があって取り寄せになったりと、自己判断は難しいものです。
検討段階であっても、まずは早めに検査を受け、「自分の目に合うレンズは何か」「そのレンズだと費用と期間はどれくらいか」を具体的に把握することをおすすめします。多くのクリニックでは、適応検査やカウンセリングを無料または低価格で行っています。
ICLレンズのメリット・デメリット
この章で分かること:
- 可逆性(取り出し可能)はレーシックにはないICL最大のメリット
- ハロー・グレアなどの光の見え方の変化は事前に理解しておくべき
- レンズのサイズ選定や回転による再手術の可能性もゼロではない
角膜を削らないため可逆性がありレンズの取り出し・交換が可能
ICLの手術における最大のメリットは「可逆性(元に戻せること)」です。レーシック手術のように角膜を削ってしまうと、元の角膜に戻すことはできません。しかし、ICLは眼内にレンズを入れるだけなので、万が一不具合が生じたり、将来的に白内障手術が必要になったりした際には、レンズを取り出して元の状態に戻すことが可能です。
また、レンズの度数が合わなくなった場合に、レンズを入れ替えて再矯正を行うことも(目の負担を考慮する必要はありますが)理論上は可能です。この「やり直しがきく」という安心感は、多くの患者さんがICLを選ぶ大きな理由となっています。
術後に光の輪が見えるハロー・グレア現象が生じる可能性
ICL手術の代表的なデメリット(副作用)として、「ハロー・グレア現象」が挙げられます。
- ハロー: 夜間の街灯や信号の周りに、光の輪がかかって見える現象
- グレア: 光がギラギラと眩しく伸びて見える現象
これは、暗い場所で瞳孔が開いた際に、光がレンズの縁やホール部分で散乱することで起こります。術後数ヶ月で脳が順応し、気にならなくなることがほとんどですが、夜間の運転を頻繁にする方などは、事前に見え方のシミュレーション画像などでイメージを確認しておくことが重要です。特にホールICLでは、光の輪のようなものが見えることがありますが、これも時間の経過とともに軽減していきます。
レンズのサイズ選定や固定位置のズレによる再手術のリスク
ICL手術は非常に精度の高い手術ですが、ごく稀にレンズのサイズが目に合わない、あるいはレンズが回転して位置がずれるといったトラブルが起こる可能性があります。
- サイズ不適合: レンズが大きすぎて眼圧が上がる、または小さすぎて水晶体に触れるリスクがある場合は、レンズの入れ替え(サイズ交換)が必要になることがあります。
- レンズの回転: 特に乱視用レンズにおいて、軸が回転してしまうと乱視矯正効果が低下します。その場合は、位置を修正する処置が必要になります。
これらの再手術(位置修正やサイズ交換)が必要になる確率は1%未満と非常に低いですが、ゼロではありません。多くのクリニックでは、一定期間内の再手術を保証制度(無料や低額)でカバーしているため、契約前に保証内容もしっかり確認しておきましょう。





