葉酸の効果・副作用を徹底解説!妊活・妊娠中に『やばい』は嘘?

葉酸は、私たちが健康的な生活を送る上で欠かせない栄養素の一つです。
特に、細胞の増殖や新しい赤血球が作られる際に重要な働きを担っており、体の成長や維持には必要不可欠です。
また、妊娠を希望する女性や妊娠中の女性にとっては、胎児の正常な発育のために非常に重要な栄養素として広く知られています。
しかし、葉酸の重要性はそれだけにとどまりません。
男性を含むすべての人にとって、葉酸は健康維持のために意識して摂りたい栄養素です。
この記事では、葉酸が体内でどのような働きをするのか、どのくらい摂るべきなのか、どのような食品に多く含まれているのか、サプリメント利用の注意点、そして気になる効果や副作用まで、管理栄養士監修のもと、詳しく分かりやすく解説します。
葉酸について正しい知識を身につけ、日々の健康管理に役立てましょう。

葉酸の発見と栄養素としての性質

葉酸は、1940年代にホウレンソウから発見されたことから、ラテン語の「葉(folium)」にちなんで名付けられました。
発見当初は貧血の改善に効果があることが注目されていましたが、その後の研究で細胞分裂やDNA合成など、生命維持に不可欠な幅広い働きがあることが明らかになりました。

葉酸は水溶性ビタミンであるため、水に溶けやすく、加熱によって壊れやすい性質を持っています。
体内に蓄積されにくいため、毎日意識して摂取する必要があります。
食品中に含まれる葉酸は「ポリグルタミン酸型葉酸」と呼ばれ、サプリメントなどに含まれる葉酸は「モノグルタミン酸型葉酸」と呼ばれます。
これらには体内での吸収率に違いがあります。

葉酸の体内での働きと重要な役割

葉酸の主な働きは、以下の通りです。

  • DNAおよびRNAの合成と修復: 葉酸は、遺伝情報の設計図であるDNAや、タンパク質合成に関わるRNAを作るために不可欠な補酵素として働きます。
    これにより、新しい細胞が作られたり、傷ついた細胞が修復されたりすることが可能になります。
  • 細胞の分裂と増殖: DNA合成に関わるため、特に細胞分裂が活発に行われる組織(骨髄での赤血球生成、胎児の発育など)において重要な役割を果たします。
  • 赤血球の生成(造血作用): 葉酸は、ビタミンB12と協力して、骨髄で正常な赤血球を作るために必要です。
    葉酸が不足すると、DNA合成がうまくいかず、未熟で巨大な赤血球(巨赤芽球)が作られ、貧血(巨赤芽球性貧血)の原因となります。
  • アミノ酸の代謝: 特に、動脈硬化のリスク因子とされるホモシステインというアミノ酸を、無害なメチオニンに変換する反応に関与しています。
    葉酸が不足するとホモシステインの血中濃度が上昇し、血管への負担が増えると考えられています。
  • 神経伝達物質の合成: セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の合成にも関与しており、精神的な健康維持にも間接的に影響を与える可能性があります。

これらの働きからもわかるように、葉酸は体の基本的な機能を維持し、新しい生命を育む上で非常に重要な栄養素です。

目次

葉酸の推奨摂取量と必要性が高い人

健康を維持するために必要な葉酸の量は、年齢や性別、ライフステージによって異なります。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、それぞれの対象者に対して推奨量や目安量、さらにはサプリメントなどで摂取する場合の付加量や耐容上限量が定められています。

葉酸の1日の摂取推奨量・目安量

成人(18歳以上)における葉酸の1日の摂取推奨量は240µg(マイクログラム)です。これは、食品から摂取する場合の量です。

対象者 推奨量/目安量 (µg/日)
18歳以上 240
妊婦(初期) 240 + 240(付加量)
妊婦(中期以降) 240 + 240(付加量)
授乳婦 240 + 80(付加量)

※妊婦・授乳婦の付加量は、サプリメントなどからのモノグルタミン酸型葉酸としての量。

重要な点:

  • 食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸型)の吸収率は約50%と低いですが、サプリメントなどに含まれるモノグルタミン酸型葉酸は吸収率が高く約85%と言われています。
    そのため、サプリメントで摂取する際の付加量は、食品からの必要量とは別に設定されています。
  • 妊娠を希望する女性や妊娠初期の女性がサプリメントからモノグルタミン酸型葉酸を摂取する場合は、通常の推奨量240µgに加えて400µgの付加量が推奨されています(合計で640µg相当)。
    ただし、この付加量のうちサプリメント等からの摂取は240µg + 400µgではなく、サプリメントからのモノグルタミン酸型葉酸として400μgを推奨し、食品からの葉酸240μgと合わせて摂取することを推奨している資料もあります。
    これは神経管閉鎖障害のリスク低減を目的としており、特に重要視されています。
    日本人の食事摂取基準2020年版では、妊娠を計画している女性及び妊娠初期の妊婦は、通常の食事に加えて、サプリメント等から葉酸400µg/日を摂取することが望ましいとされています。

妊娠を希望する女性・妊婦における葉酸の重要性

妊娠初期は、胎児の脳や脊髄など神経系のもととなる神経管が形成される非常に重要な時期です。
この時期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害(無脳症や二分脊椎など)のリスクが高まることが分かっています。
神経管は妊娠のごく初期、多くの女性が妊娠に気づく前に形成が完了するため、妊娠を計画している段階から十分な葉酸を摂取することが極めて重要となります。

食品からの葉酸摂取だけでは、このリスクを十分に低減することが難しいため、妊娠を希望する女性や妊娠初期(妊娠13週まで)の女性は、通常の食事からの摂取に加え、サプリメントなどからモノグルタミン酸型葉酸を1日あたり400µg摂取することが厚生労働省からも推奨されています。

妊娠中期以降も、胎児の成長や母体の健康維持のために葉酸は必要ですが、神経管閉鎖障害のリスクは初期に比べて低くなるため、付加量の目的が変わります。
引き続き推奨量を満たすように摂取することが大切です。

男性にも葉酸が必要?

葉酸は女性だけに必要な栄養素だと思われがちですが、男性にとっても健康維持のために重要な役割を果たします。

  • 精子の生成と質: 葉酸はDNA合成に不可欠であるため、精子の生成過程においても重要です。
    葉酸の不足が精子の質や量に影響を与える可能性を示唆する研究も報告されています。
  • 心血管疾患のリスク低減: 前述のように、葉酸はホモシステインをメチオニンに変換することで、血中ホモシステイン濃度の上昇を抑える働きがあります。
    男性も女性と同様に、ホモシステイン濃度が高いと心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクが高まるため、葉酸を十分に摂取することは重要です。

男性も成人として推奨されている葉酸量(240µg/日)を食事から十分に摂取することを心がけましょう。

葉酸を多く含む食べ物

葉酸は様々な食品に含まれていますが、特に多く含まれている食品を知っておくと、日々の食事で意識的に摂取しやすくなります。

葉酸が豊富な食品とその含有量リスト

葉酸は、特に以下の食品に豊富に含まれています。(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より抜粋)

食品名(可食部100gあたり) 葉酸含有量 (µg) カテゴリ
鶏肝(生) 1300 肉類
豚肝臓(生) 810 肉類
牛肝臓(生) 1000 肉類
枝豆(ゆで) 260 豆類
ほうれんそう(生) 210 野菜類
菜の花(ゆで) 250 野菜類
モロヘイヤ(ゆで) 220 野菜類
ブロッコリー(ゆで) 220 野菜類
アスパラガス(ゆで) 190 野菜類
納豆 120 豆類
いちご(生) 90 果実類
アボカド(生) 89 果実類

※上記はあくまで一例であり、調理法によって含有量は変動します。

葉酸を効果的に摂る調理法・食べ方

葉酸は水溶性で熱に弱い性質を持つため、調理方法によっては損失しやすい栄養素です。
食品からの葉酸を効率よく摂取するためには、以下の点を意識しましょう。

  • 生で食べる: 熱に弱い性質を考えると、生のまま食べられる野菜や果物(ほうれん草のサラダ、レタス、アボカド、いちごなど)は葉酸を壊さずに摂取しやすい方法です。
  • 短時間で加熱する: 加熱が必要な場合でも、加熱時間を短くすることで葉酸の損失を抑えられます。
    炒め物や蒸し料理などがおすすめです。
  • 汁ごといただく: 葉酸は水に溶け出しやすいため、スープや味噌汁など、汁ごと摂取できる料理にすると、溶け出した葉酸も無駄なく摂取できます。
  • 電子レンジ加熱: 電子レンジ加熱は、比較的短時間で済むため、葉酸の損失が少ない調理法とされています。
  • 切り方を工夫する: 葉酸は表面積が大きいほど損失しやすい傾向があるため、葉物野菜などは切る前に洗う、大きく切ってから調理するなど工夫するのも良いでしょう。

これらの調理法を組み合わせることで、食品からより多くの葉酸を摂取することが期待できます。

葉酸が多い食べ物ランキング

先ほどのリストから、特に葉酸が豊富な食品をランキング形式で見てみましょう。(可食部100gあたりの含有量目安)

  1. 鶏肝、牛肝臓、豚肝臓 (1000~1300µg):圧倒的に含有量が多いですが、ビタミンAも非常に多いため、特に妊娠中の過剰摂取には注意が必要です。
  2. 枝豆(ゆで) (260µg):手軽に食べられる豆類として優秀です。
  3. 菜の花(ゆで) (250µg):春が旬の美味しい野菜です。
  4. モロヘイヤ(ゆで) (220µg):粘り気のある野菜で、栄養価が高いです。
  5. ブロッコリー(ゆで) (220µg):年間を通して入手しやすく、料理にも使いやすい野菜です。
  6. ほうれんそう(生) (210µg):サラダやスムージーなどに生で利用できます。
  7. アスパラガス(ゆで) (190µg):こちらも年間を通して利用しやすい野菜です。

緑黄色野菜や豆類、そして肝臓に葉酸が多く含まれていることが分かります。
これらの食品を日々の食事にバランスよく取り入れることが、葉酸不足の予防につながります。

葉酸サプリメントの基礎知識

食品からの摂取に加え、特に妊娠を計画している方や妊娠初期の方にはサプリメントの利用が推奨されています。
しかし、サプリメントには食品とは異なる特徴や注意点があります。

サプリメントの種類とメリット・デメリット

葉酸サプリメントに含まれる葉酸は、主に「モノグルタミン酸型葉酸」です。
これに対して、食品に含まれる葉酸は「ポリグルタミン酸型葉酸」です。

葉酸の種類 含まれる場所 吸収率 体内での安定性
ポリグルタミン酸型 食品 約50% 不安定
モノグルタミン酸型 サプリメントなど 約85% 安定

サプリメント(モノグルタミン酸型葉酸)のメリット:

  • 吸収率が高い: 食品からの葉酸よりも効率よく体内に吸収されます。
  • 手軽に摂取できる: 食事で必要量を摂取するのが難しい場合でも、サプリメントなら簡単に摂取できます。
  • 含有量が一定: 製品ごとに葉酸の含有量が明確に表示されているため、摂取量を管理しやすいです。
  • 保存しやすい: 食品に比べて保存中の葉酸の損失が少ないです。

サプリメント(モノグルタミン酸型葉酸)のデメリット:

  • 過剰摂取のリスク: 吸収率が高いため、摂りすぎると過剰摂取になりやすい可能性があります。
    食品からの摂取では過剰摂取のリスクは低いとされていますが、サプリメントでは注意が必要です。
  • 他の栄養素の摂取が偏る可能性: サプリメントだけに頼ると、葉酸以外の食品に含まれる様々な栄養素がおろそかになる可能性があります。
  • コストがかかる: 食品に比べて費用がかかります。

食品からの葉酸摂取とサプリメントからの摂取をうまく組み合わせることが、バランスの取れた摂取につながります。

「葉酸サプリは飲まない方がいい」は本当?懸念点と正しい理解

インターネット上などで「葉酸サプリはやばい」「飲まない方がいい」といった情報を見かけることがありますが、これは正しい理解に基づかない情報である場合が多いです。
しかし、全く懸念点がないわけではありません。
主な懸念点は以下の通りです。

  • ビタミンB12欠乏症の診断遅延: 葉酸とビタミンB12は、体内で協力して働くため、葉酸を過剰に摂取すると、ビタミンB12が不足していても血液検査などで葉酸の数値が高く出るため、ビタミンB12欠乏症の発見が遅れる可能性があります。
    ビタミンB12欠乏症は神経障害を引き起こすことがあるため、これは重要な懸念点です。
  • モノグルタミン酸型葉酸の過剰摂取: 食品からの摂取では過剰摂取のリスクは低いですが、吸収率の高いモノグルタミン酸型葉酸をサプリメントで過剰に摂取すると、健康への影響が懸念されることがあります。

正しい理解:

  • 「日本人の食事摂取基準」で定められた耐容上限量(モノグルタミン酸型葉酸として1000µg/日、ただし妊娠を計画している女性及び妊娠初期の妊婦については800µg/日)を超えない範囲でのサプリメント摂取は、健康な成人においては基本的に安全と考えられています。
  • 特に妊娠を希望する女性や妊娠初期の女性にとっては、神経管閉鎖障害のリスク低減という明確なメリットがあり、このリスクを低減するためにはサプリメントからのモノグルタミン酸型葉酸400µg/日の摂取が推奨されています。
    これは、食品からの摂取だけではリスク低減に不十分であるという科学的根拠に基づいています。
  • ビタミンB12も一緒に摂取することで、葉酸過剰摂取によるビタミンB12欠乏症の診断遅延リスクを低減できます。
    多くの葉酸サプリメントにはビタミンB12も配合されています。
  • 持病があったり、他の薬を服用している場合は、サプリメントを摂取する前に医師や薬剤師に相談することが重要です。

結論として、葉酸サプリメントは、特に推奨されている対象者(妊娠を希望する女性・妊娠初期の妊婦)にとっては重要な役割を果たし、正しく使用すればメリットが大きいものです。
「やばい」という情報に惑わされず、信頼できる情報源に基づいて、自身の状況に合わせて適切に利用することが大切です。

失敗しない葉酸サプリの選び方

葉酸サプリメントを選ぶ際には、以下の点に注目しましょう。

  1. 葉酸の含有量と種類: 目的(妊娠を希望・妊娠中、一般健康維持など)に合わせて、必要な葉酸量が含まれているか確認します。
    特に妊娠関連の場合は、モノグルタミン酸型葉酸が400µg含まれているか確認しましょう。
  2. 他の栄養素の配合: 葉酸の働きを助けるビタミンB12やビタミンB6、造血に関わる鉄分、胎児の発育に必要なカルシウムやビタミンDなどが一緒に配合されているかもチェックポイントです。
  3. 安全性: GMP(適正製造規範)認証など、製造管理や品質管理が適切に行われている証明がある製品を選ぶと安心です。
    原材料や添加物についても確認し、気になるものが入っていないか確認しましょう。
  4. 形状と飲みやすさ: 粒の大きさや形状など、継続して飲みやすいものを選びましょう。
  5. 価格: 無理なく続けられる価格帯であることも重要です。

これらの点を踏まえて、ご自身の目的や体質に合った葉酸サプリメントを選びましょう。
迷う場合は、医師や薬剤師、管理栄養士に相談してみるのも良い方法です。

葉酸の期待される効果・効能

葉酸は体内で多様な働きをしているため、様々な健康効果が期待されています。

葉酸が健康にもたらす効果

  • 貧血の予防・改善: 葉酸はビタミンB12とともに正常な赤血球を作るために必要不可欠です。
    葉酸不足による巨赤芽球性貧血の予防や改善に効果が期待できます。
  • 動脈硬化の予防: ホモシステイン濃度の上昇を抑えることで、血管へのダメージを減らし、動脈硬化や心血管疾患のリスク低減につながる可能性があります。
  • 精神的な健康維持: 神経伝達物質の合成に関わることから、気分の安定やうつ症状の改善に間接的に関与する可能性が研究されています。
  • 肌や髪の健康維持: 細胞分裂や新陳代謝をサポートすることで、健康な肌や髪の維持にも貢献します。

これらの効果は葉酸の基本的な体内での働きに基づいています。

葉酸と病気予防・健康維持

葉酸は特定の病気の予防や健康維持に対しても様々な研究が行われています。

  • 神経管閉鎖障害のリスク低減: これは最も確立された葉酸の効果であり、妊娠を希望する女性や妊娠初期の女性に対するサプリメントからの摂取推奨の根拠となっています。
  • 心血管疾患予防: ホモシステイン代謝への関与から、心筋梗塞や脳卒中などのリスク低減効果が期待されており、多くの研究が行われています。
    ただし、葉酸摂取だけですべてのリスクが予防できるわけではなく、食生活全体や他の生活習慣も重要です。
  • 特定の癌のリスクとの関連: 葉酸と大腸がん、乳がんなどのリスクとの関連について研究が行われています。
    葉酸はDNA合成に関わるため、細胞の異常な増殖(がん化)に関係する可能性が指摘されていますが、研究結果は一致しておらず、葉酸摂取ががん予防に効果があるかどうかはまだ明確な結論が出ていません。
    葉酸の摂取量やタイミングによって、予防的に働く場合と、すでに発生しているがん細胞の増殖を促進する可能性がある場合があるという複雑な報告もあります。
  • 認知機能との関連: 葉酸不足が認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクと関連している可能性が研究されています。
    ホモシステイン濃度の上昇が脳血管に影響を与えることなどが関係していると考えられています。

これらの病気予防や健康維持に関する効果は、まだ研究段階のものや、葉酸以外の要因も複雑に関係しているものが多く含まれます。
特定の疾患の治療目的で葉酸を摂取する場合は、必ず医師の指導のもとで行う必要があります。

葉酸の取りすぎ(過剰摂取)によるリスクと副作用

食品からの葉酸摂取で過剰症になることは稀ですが、サプリメントなどからのモノグルタミン酸型葉酸の摂りすぎには注意が必要です。
「やばい」という懸念は、主にこの過剰摂取のリスクに関連しています。

葉酸の過剰摂取とは?許容上限量

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、サプリメントなどから摂取するモノグルタミン酸型葉酸の1日の耐容上限量(この量を超えて摂取すると健康障害を起こすリスクが高まる量)が設定されています。

対象者 耐容上限量 (µg/日)
18歳以上 1000
妊娠を計画している女性及び妊娠初期の妊婦 800
妊婦(中期以降) 1000
授乳婦 1000

これは、サプリメントなどのモノグルタミン酸型葉酸としての量です。
食品からの摂取については、通常の食事の範囲では過剰摂取による健康障害の報告がないため、耐容上限量は設定されていません。

なぜ耐容上限量が設定されているのか?

主に、ビタミンB12欠乏症の診断遅延を防ぐためです。
葉酸を大量に摂取すると、ビタミンB12が不足していても血液中の葉酸濃度が高く示され、ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血が見過ごされてしまう可能性があります。
ビタミンB12欠乏が長く続くと、貧血だけでなく神経障害(手足のしびれ、記憶障害など)が進行してしまうリスクがあるため、これを防ぐ目的で上限量が設けられています。

葉酸を取りすぎるとどうなる?考えられる副作用

モノグルタミン酸型葉酸を耐容上限量を超えて過剰に摂取した場合に考えられるリスクや副作用は以下の通りです。

  • ビタミンB12欠乏症の診断遅延: 前述の通り、最も重要な懸念点です。
  • 亜鉛の吸収阻害: 大量の葉酸摂取が亜鉛の吸収を妨げる可能性があるという報告があります。
    亜鉛は様々な酵素反応に関わる重要なミネラルです。
  • 神経系の影響: 非常に稀ですが、不眠、イライラ、神経過敏などの症状が報告されることがあります。
  • アレルギー反応: 発熱、蕁麻疹、紅斑、かゆみ、呼吸困難などのアレルギー症状が起こる可能性もゼロではありません。
  • 特定の疾患リスクへの影響(懸念): 一部の研究では、大量の葉酸摂取が特定の癌(例えば前立腺がん)のリスクを上げる可能性を示唆するものもありますが、まだ明確な結論は得られていません。

これらのリスクは、あくまで耐容上限量を超えて長期間摂取した場合に考えられるものです。
妊娠を希望する女性や妊娠初期の妊婦に推奨されているサプリメントからの400µg/日の摂取量は、耐容上限量の範囲内であり、これらの深刻な副作用のリスクは非常に低いと考えられています。

重要なのは、「葉酸サプリは危険」と一概に恐れるのではなく、推奨量・上限量を理解し、正しく利用することです。
食品からの摂取は安全性が高いですが、サプリメントは手軽に利用できる反面、過剰摂取にならないように注意が必要です。

葉酸に関するよくある質問

葉酸について、多くの人が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

葉酸を摂取するタイミングは?

葉酸は水溶性ビタミンなので、基本的にいつ摂取しても大きな差はありません
食事中や食後に摂ることで、他の栄養素と一緒に吸収されやすくなるという考え方もありますが、吸収率が劇的に変わるわけではありません。
最も大切なのは、毎日継続して摂取することです。
決まった時間に飲む習慣をつけると忘れにくいでしょう。
サプリメントの場合は、製品の指示に従ってください。

葉酸とビタミンB12の関係

葉酸とビタミンB12は、体内でお互いに協力して働く「協働ビタミン」です。
特に、DNA合成や、動脈硬化のリスク因子であるホモシステインの代謝において、両者は密接に関わっています。

体内で葉酸が働くためには、ビタミンB12が必要です。
また、ビタミンB12が不足すると、葉酸が細胞内に閉じ込められてしまい、利用できなくなります。
この状態が葉酸欠乏と同じような症状(巨赤芽球性貧血など)を引き起こします。

そのため、葉酸だけでなく、ビタミンB12も十分に摂取することが重要です。
特にベジタリアンやヴィーガンの方は、ビタミンB12は主に動物性食品に含まれるため不足しやすく、意識的な摂取が必要です。
葉酸サプリメントを選ぶ際も、ビタミンB12が配合されているか確認すると安心です。

食品中の葉酸は加熱に弱い?

はい、食品中の葉酸(ポリグルタミン酸型)は熱や光、水に弱い性質を持っています。
加熱によって最大50%程度が失われるという報告もあります。
特に長時間水にさらしたり、茹でたりすると損失が多くなります。

そのため、葉酸を効率よく摂るためには、前述したように、生で食べられるものはそのまま食べる、短時間で加熱する、汁ごと摂取できる料理にするなどの工夫が有効です。
ただし、加熱によって食品の細胞壁が壊れ、葉酸が溶け出しやすくなるという側面もあります。
完全に損失を防ぐことは難しいため、様々な食品からバランス良く摂取することが最も現実的な方法と言えます。

葉酸に関する専門家解説

葉酸に関する情報は、信頼できる専門家や公的機関からの情報に基づいていることが重要です。

公的機関発表の葉酸情報

日本国内の公的機関として、葉酸に関する信頼できる情報を発信しているのは厚生労働省です。

  • 「日本人の食事摂取基準」: 葉酸を含む様々な栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量などが科学的根拠に基づいて定められています。
    定期的に改定されており、最新版を参照することが重要です。
  • 「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」: 妊娠を希望する女性や妊娠初期の妊婦に対する葉酸摂取の重要性や推奨量が具体的に示されています。
    サプリメントからのモノグルタミン酸型葉酸400µg/日の摂取推奨は、この通知に基づいています。

これらの公的機関の情報は、葉酸摂取に関する最も信頼できる根拠となります。

本記事監修者の紹介

この記事は、管理栄養士〇〇 〇〇(氏名)が監修しました。
〇〇 〇〇(氏名)は、〇〇大学卒業後、病院栄養士として臨床経験を積み、現在は特定保健指導やメディアでの栄養情報発信など幅広く活動しています。
エビデンスに基づいた正確で分かりやすい情報提供を心がけています。

【まとめ】葉酸はすべての人が意識したい重要な栄養素

葉酸は、細胞の成長や増殖、DNA合成など、生命維持に不可欠な働きを担う重要なビタミンB群です。
特に妊娠を希望する女性や妊娠初期の妊婦にとっては、胎児の神経管閉鎖障害リスク低減のためにサプリメントからの摂取が強く推奨されています。

しかし、葉酸の重要性は特定のライフステージに限られるものではありません。
男性を含むすべての人が、貧血予防、動脈硬化予防、精神的な健康維持などのために、日々の食事から十分に葉酸を摂取することが大切です。

葉酸はほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、枝豆、納豆などの豆類、レバーなどに豊富に含まれています。
葉酸は熱や水に弱い性質があるため、調理方法を工夫することで効率よく摂取できます。

サプリメントは葉酸を効率的に摂取できる便利なツールですが、吸収率の高いモノグルタミン酸型葉酸は過剰摂取のリスクも伴います。
「日本人の食事摂取基準」で定められた耐容上限量を守り、ビタミンB12もバランス良く摂取することが重要です。
「葉酸サプリはやばい」という情報は、適切な使用方法を知ることで不要な心配であると理解できます。

ご自身の状況に合わせて、食品からの摂取を基本としつつ、必要に応じてサプリメントを賢く活用しましょう。
葉酸に関する不安や疑問がある場合は、医師、薬剤師、管理栄養士などの専門家に相談することをおすすめします。


免責事項
この記事は、葉酸に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
また、特定の製品の推奨をするものではありません。
個人の健康状態や治療に関しては、必ず医師や管理栄養士などの専門家の指示に従ってください。
情報の利用によって生じた結果に関しては、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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