五苓散は、古くから日本や中国で用いられてきた漢方薬の一つです。
体内の水分バランスを整える働きに優れており、様々な「水(すい)」に関わる不調に対して効果を発揮します。
具体的には、水分代謝の乱れによって起こるむくみや、それに伴う頭痛、めまい、吐き気、下痢、あるいは暑気あたりや二日酔いといった症状に用いられます。
体の中に余分な水分が溜まったり、必要な水分がうまく巡らなかったりすることで生じる様々なトラブルを改善へと導くのが五苓散の役割です。
この記事では、五苓散がどのようなメカニズムで効果を発揮するのか、どのような症状に使えるのか、また気になる副作用や正しい飲み方、さらには「やばい」といった噂の真相にまで迫ります。
五苓散を正しく理解し、適切に活用するための一助となれば幸いです。
五苓散の効果と効能
五苓散は、体内の水分バランスの調整を主目的とした漢方薬です。
漢方医学では、体内の水分は「水(すい)」と呼ばれ、この「水」の代謝が滞ると、様々な不調が生じると考えられています。
五苓散は、この「水湿(すいしつ)」と呼ばれる余分な水分やその偏りを改善することで、幅広い症状に効果を発揮します。
五苓散が効く主な症状(適応症)
五苓散は、添付文書に記載されている通り、以下の症状に対して効果が認められています。
これらの症状は、体内の水分代謝の異常と深く関連していることが多いのが特徴です。
- むくみ(浮腫): 特に顔や手足など、体内に余分な水分が溜まって腫れぼったくなる症状に有効です。
水分代謝が悪く、体外にうまく排出されない場合に用いられます。 - 水様性下痢: ストレスや暴飲暴食、冷えなどにより、腸管での水分吸収がうまくいかず、水分量の多い便が出る場合に効果が期待できます。
- 嘔吐・悪心: 胃のあたりに水分が溜まり、チャポチャポとした音(振水音)がする場合や、水分を摂ってもすぐに吐いてしまうような場合に用いられます。
乗り物酔いや二日酔いに伴う吐き気にも有効なことがあります。 - 頭痛: 特に、水分を過剰に摂取した後や、雨の日、低気圧の接近時などに悪化しやすい種類の頭痛に効果的な場合があります。
これは、頭部に水分が溜まって血管や神経を圧迫することが原因の一つと考えられているためです。 - めまい: 立ちくらみのようにふわっとするめまいや、ぐるぐる回る回転性のめまいの両方に用いられることがあります。
内耳のリンパ液のバランス異常など、水分代謝の乱れが関与する場合に有効です。 - 暑気あたり(夏バテ): 暑さによる体液バランスの乱れや胃腸機能の低下に伴う、だるさ、食欲不振、下痢、吐き気といった症状に用いられます。
- 二日酔い: アルコールの代謝過程で生じる物質や、水分バランスの乱れによる頭痛、吐き気、むくみといった症状を和らげるのに役立ちます。
- 小児の急性胃腸炎: 嘔吐や下痢を伴う胃腸炎にも用いられることがあります。
これらの症状は、必ずしも「水」の異常だけが原因とは限りません。
しかし、水分代謝の滞りが関連している場合には、五苓散が有効な選択肢となります。
体内の水分代謝を整えるメカニズム(組成・配方に関連)
五苓散は、以下の5種類の生薬で構成されています。
これらの生薬が協力し合うことで、体内の水分代謝を調整する効果を発揮します。
- 茯苓(ブクリョウ): マツホドというキノコの菌核。
体内の余分な水分を排出し、むくみや下痢を改善する作用(利水作用)があります。
また、精神を安定させる働きもあるとされます。 - 猪苓(チョレイ): チョレイマイタケというキノコの菌核。
茯苓と同様に、体内の水分を排出し、排尿を促進する作用(利水作用)に優れています。 - 白朮(ビャクジュツ): オオアザミ属植物の根茎。
胃腸の働きを整え、水分の吸収・運搬を助ける作用(健脾作用)があります。
体から余分な水分を取り除くのを助ける一方で、必要な水分を保持するバランス調整も担います。 - 沢瀉(タクシャ): サジオモダカという植物の塊茎。
水分を排出し、むくみや尿量減少、下痢などを改善する作用(利水作用)があります。 - 桂皮(ケイヒ): シナモンでおなじみのクスノキ科植物の樹皮。
体を温め、血行を良くすることで、水分が滞っている場所の流れを改善する作用(温通作用)があります。
また、他の生薬の働きを助ける役割も担います。
これらの生薬の組み合わせにより、五苓散は主に以下の3つの作用で水分代謝を整えます。
- 利水作用: 茯苓、猪苓、沢瀉が中心となり、体内の余分な水分を尿として排泄するのを促進します。
これにより、むくみや水様性下痢、体内の水分貯留による頭痛やめまいなどを改善します。 - 健脾作用: 白朮が中心となり、胃腸の働きを助けます。
胃腸は飲食物から水分や栄養を吸収し、全身に運搬する重要な役割を担っています。
胃腸機能が整うことで、水分の吸収・運搬・排泄といった一連の代謝プロセスがスムーズになります。 - 温通作用: 桂皮が、冷えや気の滞りによって滞っている水分の流れを良くします。
体を温めることで、水分が滞りにくく、全身を巡りやすい状態へと導きます。
これらの作用が複合的に働くことで、五苓散は体内の水分バランスを正常な状態に近づけ、水分代謝の異常に起因する様々な不調を改善するのです。
西洋医学的な「利尿剤」とは異なり、単に水分を排出するだけでなく、胃腸機能の改善や血行促進といった多角的なアプローチで水分代謝を整えるのが漢方薬である五苓散の特徴と言えます。
五苓散の副作用と安全性
どのような医薬品にも副作用のリスクはゼロではありません。
漢方薬である五苓散も例外ではありませんが、一般的にその副作用は比較的少なく、安全性は高いとされています。
しかし、「やばい」といった噂を聞いたことがある方もいるかもしれません。
ここでは、五苓散の副作用や安全性について詳しく解説します。
どんな副作用がある?「やばい」と言われる可能性
五苓散の添付文書に記載されている主な副作用は以下の通りです。
これらは頻度が低いものを含みます。
- 皮膚: 発疹、かゆみ
- 消化器: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢
これらの副作用は、体質に合わない場合や、服用量が多い場合などに起こることがあります。
多くの場合、軽度であり、服用を中止すれば改善します。
もし症状が続く場合や、気になる症状が現れた場合は、医師や薬剤師に相談してください。
五苓散を服用して「やばい」と感じる可能性があるとすれば、以下のようなケースが考えられます。
- 体質に合わない: 漢方薬は個人の体質(証)に合わせて選ばれます。
五苓散の適応とされる「水湿」の状態ではない方が服用したり、体質に合わない場合、期待する効果が得られないだけでなく、副作用が出やすくなる可能性があります。
例えば、体が乾燥しやすいタイプの方が服用すると、余計に乾燥を感じたり、胃腸の不調が悪化したりするかもしれません。 - 稀な重篤な副作用: 添付文書には、ごく稀に起こりうる重篤な副作用として、間質性肺炎や肝機能障害、黄疸が記載されている場合があります。
これらの副作用は非常に稀ですが、息切れ、発熱、から咳、全身のだるさ、皮膚や白目が黄色くなるといった症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
ただし、これらの症状が五苓散によって引き起こされる確率は極めて低く、過度に恐れる必要はありません。 - 症状が悪化する: 五苓散が適応ではない症状に対して服用した場合や、症状の原因が五苓散で対処できる「水」の異常以外にある場合、症状が改善しないどころか悪化するように感じることがあります。
例えば、脱水を伴う下痢なのに五苓散を服用すると、かえって脱水が進んでしまうリスクが考えられます。 - 水分代謝異常以外の原因: むくみや頭痛、めまいなどは、心臓病、腎臓病、肝臓病、脳の病気など、重篤な病気が原因で起こることもあります。
これらの病気が原因なのに、自己判断で五苓散を服用して様子を見てしまうと、病気の発見や治療が遅れてしまう危険性があります。
この点が、「やばい」と感じる可能性の一つとして挙げられます。
自己判断で服用するのではなく、まずは医師に相談して原因を特定してもらうことが重要です。
このように、「やばい」といった噂は、体質に合わないことによる軽度の不調、ごく稀な重篤な副作用への過度な懸念、あるいはそもそも五苓散が適応ではない症状への誤った使用といった背景から生じている可能性があります。
適切に使用すれば、安全性は高い漢方薬と言えます。
長期服用は可能?注意点は?
五苓散は、体質改善を目的として比較的長期間にわたって服用されることもあります。
例えば、慢性的なむくみや、季節の変わり目に繰り返し起こる頭痛やめまいなどに対して、体質を整える目的で服用が続けられることがあります。
しかし、自己判断で漫然と長期服用することは推奨されません。
以下の点に注意が必要です。
- 医師や薬剤師の指導: 長期服用を検討する場合は、必ず医師や薬剤師に相談し、自身の体質や症状、現在の健康状態に合わせて服用を続けることが適切か判断してもらうようにしましょう。
定期的に診察を受け、効果や副作用の有無を確認することが大切です。 - 症状の変化: 服用を続けているうちに症状が改善したり、あるいは新たな症状が現れたりすることがあります。
効果を感じなくなった場合や、体調に変化があった場合は、再度医師や薬剤師に相談してください。 - 特定の疾患がある場合: 心臓病、腎臓病、高血圧などの持病がある方や、他の薬を服用している方は、五苓散の服用が病状に影響を与えたり、薬の相互作用を起こしたりする可能性があります。
必ず医師や薬剤師に申告し、指示を仰いでください。 - 高齢者や小児: 高齢者や小児が服用する場合も、体の状態を十分に考慮する必要があります。
医師や薬剤師の指導のもと、用法・用量を守って服用させてください。
適切に医師や薬剤師の管理のもとで服用する限り、五苓散の長期服用は安全に行われることが多いですが、どのような薬でも過信は禁物です。
五苓散の正しい飲み方・用法
五苓散の効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい飲み方や用法を守ることが重要です。
推奨される用法・用量
五苓散の用法・用量は、製品(医療用かOTCか、エキス顆粒か錠剤かなど)によって異なる場合があります。
一般的に、医療用エキス顆粒の場合、成人に対する標準的な用法・用量は以下の通りです。
- 用法: 1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します。
- 用量: 1回あたりの量は、通常2.5g~3.75g程度です。
小児の場合は、年齢や体重に応じて用量が調整されます。
添付文書や医師・薬剤師の指示に必ず従ってください。
OTC医薬品として販売されている五苓散も、製品によって細かな用法・用量が異なりますので、必ず製品添付の説明書をよく読んでから服用するようにしましょう。
ポイント:
- 定められた用法・用量を守ることが重要です。
効果が感じられないからといって、自己判断で量を増やさないでください。 - 飲み忘れた場合は、気づいた時に服用してください。
ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばし、次に服用する時間に1回分を服用してください。
2回分をまとめて服用することは避けてください。
食前?食間?効果的な服用タイミング
漢方薬は、一般的に胃の中に食べ物がない「空腹時」に服用するのが良いとされています。
これは、薬の成分が胃の内容物の影響を受けにくく、スムーズに吸収されやすいと考えられているためです。
五苓散の場合も、食前(食事の約30分前)または食間(食事と食事の間で、食後約2時間くらい)に服用することが推奨されています。
- 食前: 食事の前に服用することで、胃が空の状態のため吸収が良くなると考えられます。
- 食間: 食後すぐに服用するのではなく、胃の中の食べ物がある程度消化されてから服用することで、吸収を妨げられにくいと考えられます。
ただし、これはあくまで一般的な推奨であり、胃腸が弱い方や、食前・食間に服用すると気分が悪くなるような方は、医師や薬剤師に相談の上、食後に服用することも可能です。
継続して服用することが最も重要ですので、無理なく続けられるタイミングを選びましょう。
また、五苓散は顆粒タイプが多いですが、顆粒が苦手な場合は、少量の水に溶かして飲むことも可能です。
ただし、溶かしたまま放置すると成分が変化する可能性があるので、溶かしたらすぐに飲むようにしてください。
水またはぬるま湯で服用するのが基本ですが、水分代謝を整える薬であるため、大量の水分で服用するのは避けた方が良いとする考え方もあります。
コップ1杯程度の水で十分です。
五苓散の禁忌と注意すべき人
五苓散は比較的安全な漢方薬ですが、全ての人に安心して使えるわけではありません。
特定の状況や体質によっては、服用を避けるべきケースや、注意が必要な場合があります。
服用を避けるべきケース
五苓散の添付文書において、明確な禁忌(服用してはいけない場合)は通常記載されていません。
これは、五苓散の構成生薬が比較的穏やかな作用であることによります。
しかし、以下の場合は服用に注意が必要であり、必ず医師や薬剤師に相談すべきです。
- 五苓散に含まれる成分に対して、過去にアレルギー症状(発疹、かゆみなど)を起こしたことがある人:
再度アレルギー反応が起こる可能性があります。 - 他の病気で治療を受けている人:
現在治療中の病気や服用中の他の医薬品との相互作用がないか、医師が判断する必要があります。
特に、心臓病、腎臓病、肝臓病、高血圧などの持病がある方は慎重な対応が求められます。
これらの場合は、自己判断で服用せず、必ず医療機関で相談してください。
併用に注意が必要な薬(抗生物質など)
五苓散は、他の医薬品との相互作用が比較的少ない漢方薬の一つとされています。
しかし、全くないわけではありません。
添付文書には、併用注意の記載がないことがほとんどですが、一般的に漢方薬と西洋薬を併用する際には注意が必要です。
特に、複数の薬を服用している場合は、予期せぬ相互作用が起こる可能性も否定できません。
抗生物質との併用:
抗生物質自体が五苓散の成分と直接的な相互作用を起こすことは一般的には少ないと考えられています。
しかし、抗生物質の種類によっては消化器系の副作用(下痢など)を引き起こすことがあります。
五苓散は下痢にも用いられることがありますが、抗生物質による下痢の場合に五苓散が適切かどうかは、症状の原因や個人の状態によります。
抗生物質を服用中に五苓散の服用を検討する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
その他注意が必要な薬:
- 他の利尿作用のある薬: 五苓散には利水作用があるため、他の利尿剤と併用すると、利尿作用が強くなりすぎる可能性があります。
また、体内の電解質バランスが崩れるリスクも考えられます。 - 特定の漢方薬: 複数の漢方薬を併用する場合、生薬の重複や相互作用によって、効果が強すぎたり、副作用が出やすくなったりすることがあります。
必ず医師や薬剤師に相談し、飲み合わせを確認してください。
重要な注意点:
現在、他の医療機関で処方された薬や、市販の薬、サプリメントなどを服用している場合は、必ず五苓散の服用を検討している医師や薬剤師に全て伝えるようにしてください。
飲み合わせを確認してもらうことで、安全に服用することができます。
五苓散はどこで買える?(購入場所)
五苓散は、医療用医薬品と一般用医薬品(OTC医薬品)の両方として存在します。
購入したい目的や方法によって、購入できる場所が異なります。
購入場所 | 種類 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|---|
医療機関(病院・クリニック) | 医療用医薬品 | 医師の診察を受けて処方箋が必要。 体質や症状に合わせて、医師が五苓散が適切か判断してくれる。 他の病気の可能性も確認できる。 保険適用される場合がある。 |
診察の予約や待ち時間が必要な場合がある。 診察料がかかる。 |
薬局・ドラッグストア | OTC医薬品 | 薬剤師や登録販売者に相談して購入できる。 処方箋は不要。 様々な製薬メーカーから販売されている。 |
医療用よりも含まれる生薬量が少ない場合がある。 保険適用外。 自己判断で購入する必要があるため、症状の原因を見誤る可能性。 |
インターネット通販 | OTC医薬品(一部) | 自宅から手軽に購入できる。 様々な製品を比較検討できる。 |
製品の品質や安全性に注意が必要。 特に海外からの個人輸入代行業者などを利用する場合、偽造品や基準を満たさない製品のリスクが高い。 |
各購入場所の詳細:
- 医療機関(病院・クリニック):
最も推奨される購入方法です。
医師が症状を詳しく診察し、それが五苓散の適応であるか、他の病気の可能性はないかなどを判断してくれます。
自身の体質や持病、服用中の薬なども考慮して処方してもらえるため、最も安全で効果的な服用が期待できます。
保険が適用されるため、費用負担が軽減される場合もあります。 - 薬局・ドラッグストア:
薬剤師または登録販売者がいる薬局やドラッグストアで、OTC医薬品の五苓散を購入できます。
症状を相談し、薬剤師や登録販売者からアドバイスを受けることができます。
ただし、診断行為ではないため、症状の原因が五苓散の適応外の病気である可能性はご自身で判断する必要があります。
様々なメーカーから販売されており、価格や成分量(医療用とは異なることが多い)などが異なります。 - インターネット通販:
一部のOTC医薬品の五苓散は、インターネット通販サイトでも購入可能です。
手軽に購入できるメリットがありますが、注意が必要です。
特に、海外のサイトからの個人輸入代行などで販売されている医薬品は、日本の品質・安全基準を満たしていないものや、偽造品であるリスクが非常に高いです。
効果がないだけでなく、健康被害を引き起こす可能性もあります。
必ず、日本の正規の販売業者や信頼できるサイトから購入するようにしましょう。
また、インターネット通販で購入する場合も、製品の説明書をよく読み、用法・用量を守り、不安な点があれば薬剤師や登録販売者に相談することが大切です。
まとめ:
安全性や効果の確実性を考慮すると、まずは医療機関を受診し、医師に相談して処方してもらうのが最も安心です。
軽度な症状で、以前に五苓散を服用して効果があったなど、自身の判断である程度確信が持てる場合は、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談の上、OTC医薬品を購入するという選択肢もあります。
インターネット通販を利用する場合は、その安全性に十分注意し、安易な購入は避けましょう。
五苓散に関するQ&A(よくある質問)
五苓散に関して、よく聞かれる質問とその回答をまとめました。
五苓散は感冒(風邪)に効果がある?
はい、風邪の症状に五苓散が用いられることがあります。
特に、風邪の初期で、以下のような「水」の症状が目立つ場合に有効とされています。
- 水っぽい鼻水や痰が出る
- 頭痛(特に後頭部やこめかみが重く感じるタイプ)
- 軽い悪寒や発熱
- 口の渇きは感じるが、たくさん飲むと胃がチャポチャポしたり吐き気がしたりする
これは、漢方医学的に風邪の原因の一つとされる「寒湿(かんしつ)」によって体内の水分代謝が滞っている状態と考えられます。
五苓散の利水作用や温通作用が、この滞りを改善し、症状を和らげるのに役立つと考えられています。
ただし、五苓散は全ての風邪に効くわけではありません。
熱が高く汗がたくさん出る場合、喉の痛みが強い場合など、他の症状が主体の風邪には、五苓散以外の漢方薬や西洋薬が適しています。
ご自身の風邪の症状に合わせて、適切な薬を選ぶことが重要です。
判断に迷う場合は、医師や薬剤師に相談してください。
五苓散に減肥(ダイエット)効果はある?
直接的な「減肥」、つまり脂肪を燃焼させて体重を減らすようなダイエット効果は、五苓散には期待できません。
しかし、五苓散が体内の余分な水分を排出することで、むくみが解消され、一時的に体重が減少したり、体が引き締まったように感じたりすることはあります。
特に、日頃からむくみやすい体質の方にとっては、五苓散によって水分バランスが整うことで、体調が改善し、結果的に痩せやすい体質へと近づくサポートになる可能性はあります。
また、漢方医学では、肥満の原因の一つに「水湿」の滞りがあると考えられています。
五苓散は「水湿」を改善するため、このようなタイプの肥満に対して、体質改善の一助として用いられることがあります。
しかし、五苓散を飲んだだけで痩せるというわけではありません。
あくまで水分代謝を整える薬であり、健康的なダイエットには、バランスの取れた食事と適度な運動が不可欠です。
五苓散をダイエット目的で使用する場合は、むくみ体質の改善といった目的であることを理解し、過度な期待はしないようにしましょう。
また、自己判断でダイエット薬のように服用するのではなく、むくみなどの症状がある場合に、医師や薬剤師に相談して服用を検討してください。
五苓散と豬苓湯の違いは何?
五苓散と豬苓湯は、どちらも「豬苓」を含む利水作用のある漢方薬ですが、配合されている生薬や得意とする症状が異なります。
以下の表で比較してみましょう。
漢方薬 | 構成生薬 | 主な効能・適応症 |
---|---|---|
五苓散 | 茯苓、猪苓、白朮、沢瀉、桂皮 | 体内の「水湿」全般の改善。 むくみ、頭痛、めまい、下痢、嘔吐、悪心、暑気あたり、二日酔い、小児の急性胃腸炎など。 広範囲の水分代謝異常に対応。 |
豬苓湯 | 猪苓、茯苓、沢瀉、阿膠(アキョウ)、滑石(カッセキ) | 排尿に関するトラブルに特化。 排尿痛、頻尿、残尿感、血尿、排尿困難など。 泌尿器系の炎症や症状によく用いられる。 |
主な違い:
- 構成生薬:
五苓散には白朮(胃腸機能改善、水分のバランス調整)と桂皮(体を温め、水の流れを良くする)が含まれています。
豬苓湯には阿膠(滋潤作用、出血を止める作用など)と滑石(清熱利水作用、膀胱の熱を取り尿の出を良くする作用など)が含まれています。 - 適応症:
五苓散は、体内の余分な水分による様々な症状(むくみ、頭痛、めまい、消化器症状など)に幅広く用いられます。
豬苓湯は、特に泌尿器系の症状、すなわち排尿時の痛みや不快感、頻尿など、「出口」に近い場所の水のトラブルに特化して用いられることが多いです。
膀胱炎や尿道炎など、泌尿器系の炎症に伴う症状にも適しています。
簡単に言うと、五苓散は体全体の水分代謝の滞りに広く対応するのに対し、豬苓湯は主に泌尿器系の炎症や不快な排尿症状に対して用いられる漢方薬です。
ご自身の症状に合わせて、適切な漢方薬を選ぶ必要があります。
自己判断が難しい場合は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
まとめ|五苓散の理解と適切な服用
五苓散は、体内の水分バランスを整えることで、むくみ、頭痛、めまい、吐き気、下痢、二日酔い、暑気あたりなど、様々な症状に効果を発揮する漢方薬です。
茯苓、猪苓、白朮、沢瀉、桂皮の5つの生薬の働きにより、余分な水分を排出し、胃腸機能を整え、体内の水の流れを良くすることで不調を改善へと導きます。
「やばい」といった噂を聞くこともありますが、これは体質に合わない場合や、ごく稀な重篤な副作用、あるいは症状の原因を見誤った誤った使用による可能性が高く、適切に使用する限り、五苓散は比較的安全性の高い漢方薬です。
五苓散の効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、以下の点を守ることが重要です。
- 正しい用法・用量:
添付文書や医師・薬剤師の指示に従い、定められた量を、推奨されるタイミング(食前または食間)で服用しましょう。 - 自身の体質や症状に合っているか:
五苓散は「水湿」が原因の症状に有効です。
ご自身の症状が本当に五苓散の適応であるか、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。 - 禁忌・注意すべき人でないか:
特定の持病がある方や、他の薬を服用している方は、必ず医師や薬剤師に相談してから服用してください。 - 異常を感じたらすぐに相談:
服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せず、速やかに医師や薬剤師に相談しましょう。
五苓散は、医療機関での処方、薬局・ドラッグストアでのOTC購入、一部インターネット通販でも購入可能ですが、最も安全で確実なのは、医師の診察を受けて処方してもらう方法です。
特に初めて服用する場合や、症状の原因がはっきりしない場合は、医療機関を受診することを強くお勧めします。
五苓散は、私たちの生活の中で起こりがちな様々な「水」に関わる不調に対して、自然な形でアプローチしてくれる心強い味方となり得ます。
しかし、どんな優れた薬でも、正しい知識と適切な使用があってこそ、その効果を安全に享受できます。
この記事で得た知識を参考に、五苓散と上手に付き合っていきましょう。
免責事項:
本記事は、五苓散に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状や体質、治療に関する判断は、必ず専門の医師や薬剤師にご相談の上で行ってください。
本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いかねます。