タチオンとは?効果・副作用・使い方を徹底解説 | 医療用?美容?知っておきたいこと

タチオンは、主に肝臓や腎臓などで合成されるアミノ酸が3つつながったトリペプチド「グルタチオン」を主成分とする医療用医薬品です。
グルタチオンは私たちの体内に広く存在し、生体機能を維持するために重要な役割を担っています。強力な抗酸化作用を持ち、体内で発生する活性酸素を除去したり、薬物や毒物を無毒化して体外へ排出する「解毒作用」を担ったりしています。

しかし、病気や加齢、ストレス、生活習慣の乱れなどによって体内のグルタチオンは減少し、様々な不調の原因となることがあります。
タチオンは、このグルタチオンを医薬品として補充することで、特定の疾患の治療に用いられるほか、その働きから美容や健康維持の分野でも注目されています。
この記事では、医療用医薬品であるタチオンについて、その効果や副作用、正しい使い方、そして市販品との違いなどを詳しく解説していきます。

目次

タチオンとは

タチオンは、有効成分として「グルタチオン」を含有する医療用医薬品です。
錠剤(経口剤)と注射剤があり、それぞれ適応症や使用方法が異なります。
医薬品であるため、医師の診断に基づいて処方されるものであり、薬局やドラッグストアで自由に購入することはできません。
タチオンに関する詳細な情報は、日本医薬品情報センター(JAPIC)が提供する添付文書で確認できます。

主成分「グルタチオン」について

グルタチオン(Glutathione, GSH)は、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸から構成されるトリペプチドです。
私たちの体内では、肝臓をはじめとする様々な臓器や細胞で合成されており、特に肝臓に多く存在しています。

グルタチオンの最大の特徴は、その強い還元作用です。
この働きにより、体内のサビつきの原因となる活性酸素やフリーラジカルを消去する抗酸化作用を発揮します。
また、薬物や有害物質を捕まえて無毒化し、体外への排出を助ける解毒作用も重要な役割の一つです。
その他、免疫機能の維持や、タンパク質の合成・分解、DNA修復など、生命活動に不可欠な多くのプロセスに関与しています。

薬効・作用機序

タチオンの薬効は、その主成分であるグルタチオンの生化学的な働きに基づいています。
主な作用機序としては以下の点が挙げられます。

  • 抗酸化作用: 体内で過剰に発生した活性酸素は、細胞や組織を傷つけ、様々な病気や老化の原因となります。グルタチオンは自らが酸化されることで活性酸素を消去し、細胞を酸化ストレスから守ります。これにより、組織の損傷を防ぎ、体の機能を正常な状態へ「治る前」の状態に近づける手助けをします。
  • 解毒作用: 薬物や食品添加物、重金属などの有害物質は、体内で代謝される過程で毒性の強い中間代謝物を生成することがあります。グルタチオンはこれらの物質と結合し、水溶性の無毒な物質に変換することで、尿や胆汁とともに体外への排泄を促進します。特に肝臓での解毒プロセスにおいて中心的な役割を果たします。
  • 代謝改善作用: 一部の代謝異常症や、特定の病態(例えば妊娠悪阻による代謝異常)において、グルタチオンの不足が病態の悪化に関与している場合があります。タチオンを補充することで、これらの代謝経路を正常化し、症状を改善に導くことが期待されます。

これらの作用により、タチオンは医療現場において、体内のグルタチオンが不足したり、その働きが低下したりすることで起こる様々な疾患の治療に用いられています。

タチオンの主な効果・効能

タチオンは、その強力な抗酸化作用と解毒作用を活かして、特定の疾患に対する治療薬として承認されています。
また、医薬品の適応症とは別に、美容や健康維持の目的で自由診療として用いられることもあります。
タチオンの承認されている適応症については、添付文書で確認できます。

薬としての効果(適応症)

医療用医薬品としてのタチオン錠、タチオン注射用は、以下の適応症に対して効果・効能が認められています。
これらの病態では、体内のグルタチオンが減少し、正常な代謝や解毒機能が損なわれている場合が多く、「治る前」の状態からの回復を助ける目的で使用されます。

解毒作用(薬物中毒、金属中毒など)

タチオンの最も重要な薬効の一つは、体内の有害物質を無毒化し排泄を促す解毒作用です。

  • 薬物中毒: 医療用医薬品やその他の薬物などを過量に摂取した場合、特に肝臓に負担がかかり、重篤な肝障害を引き起こすことがあります。タチオンは、これらの薬物やその代謝物が肝細胞に与えるダメージを軽減し、肝機能の回復を助ける目的で使用されることがあります。
  • 金属中毒: ヒ素や水銀などの重金属は、体内に蓄積すると様々な臓器に悪影響を及ぼします。グルタチオンはこれらの金属と結合してキレート錯体を形成し、体外への排泄を促進することで、中毒症状の緩和に寄与します。

代謝改善作用(アセトン血性嘔吐症、妊娠悪阻など)

タチオンは、特定の代謝異常に伴う症状を改善する目的でも使用されます。

  • アセトン血性嘔吐症(自家中毒症): 小児に多く見られる病態で、絶食やストレスなどが誘因となり、糖代謝異常によってアセトン体が増加し、激しい嘔吐や腹痛を引き起こします。タチオンは、アセトン体の代謝に関与し、症状の改善を促す可能性があります。体のエネルギー代謝を正常な状態へ「治る前」に導くことを助けます。
  • 妊娠悪阻: 妊娠初期に起こる重度のつわりで、脱水や栄養失調を引き起こすことがあります。妊娠悪阻に伴う代謝異常に対し、タチオンが症状の緩和に用いられることがあります。
  • その他、肝疾患に伴う代謝異常や、放射線療法による白血球減少症などにも使用されることがあります。

美容効果・アンチエイジング

医療用医薬品としてのタチオンの正式な適応症ではありませんが、グルタチオンの持つ抗酸化作用やメラニン生成抑制作用から、美容目的で自由診療として使用されることがあります。
これは、グルタチオンが本来持つ生化学的な働きに基づいた期待される効果であり、病気の治療とは異なります。

美白効果(メラニン生成抑制)

グルタチオンには、メラニン色素の生成に関わるチロシナーゼという酵素の働きを抑える作用があると考えられています。
また、黒色メラニン(ユーメラニン)よりも淡色メラニン(フェオメラニン)の生成を優位にする可能性も示唆されています。
これらの作用により、シミやくすみの原因となる過剰なメラニン生成を抑制し、肌のトーンアップや美白効果が期待されることがあります。
美容クリニックなどで行われる「白玉点滴」や「シンデレラ点滴」の主成分としてグルタチオンが用いられるのは、この美白効果を期待してのことです。

抗酸化作用

グルタチオンの強力な抗酸化作用は、肌の老化予防にも寄与すると考えられています。
紫外線やストレス、生活習慣などによって発生する活性酸素は、肌の細胞やコラーゲン、エラスチンなどを酸化させ、シワ、たるみ、くすみなどの肌老化を進行させます。
グルタチオンがこれらの活性酸素を無毒化することで、肌細胞を保護し、ハリや弾力のある若々しい肌を保つ手助けをします。
体内の酸化ストレスを軽減し、肌細胞が「治る前」の状態、つまり本来の健康的な状態を維持することをサポートします。

二日酔いへの効果

タチオンは、二日酔いの症状緩和にも有効であるという声を聞くことがあります。
アルコールが体内で分解される際に生成されるアセトアルデヒドは、吐き気や頭痛などの二日酔いの原因物質です。
グルタチオンは、このアセトアルデヒドをさらに無毒な酢酸に分解する酵素(アルデヒド脱水素酵素、ALDH)の働きを助ける可能性があると考えられています。

また、アルコール摂取によって発生する活性酸素も、二日酔いの症状を悪化させる要因の一つです。
グルタチオンの抗酸化作用により、これらの活性酸素を除去することで、二日酔いの不快な症状を軽減する効果が期待されることがあります。
医療用医薬品としての適応症ではありませんが、自由診療で二日酔い改善目的の点滴などにグルタチオンが配合されることがあります。

タチオンの副作用と安全性

タチオンは、比較的安全性の高い医薬品とされていますが、全く副作用がないわけではありません。
医薬品である以上、使用にあたっては医師の指示に従い、副作用のリスクについても理解しておくことが重要です。
タチオンの副作用に関する情報は、添付文書PMDAの副作用データベースでも確認できます。

発生しうる主な副作用

タチオンの使用によって報告されている主な副作用は以下の通りです。
多くは軽度で一時的なものです。

  • 錠剤(経口剤):

    • 消化器症状: 食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛など
    • 過敏症: 発疹、かゆみなど
  • 注射剤(点滴):

    • 過敏症: 発疹、蕁麻疹、かゆみなど
    • その他: 頭痛、胸部不快感など

これらの副作用が現れた場合は、医師や薬剤師に相談してください。

タチオンは危ない薬なのか?(安全性について)

タチオンは、国内外で長年使用されており、確立された医療用医薬品です。
重大な副作用の発生頻度は非常に低いとされています。
通常の用法・用量で使用する限りは、安全性の高い薬であると言えます。

ただし、どのような医薬品でも個人差による予期せぬ反応が起こる可能性はゼロではありません。
特に既往症があったり、他の薬を服用していたりする場合は、必ず事前に医師に伝えてください。
医師は患者さんの状態を総合的に判断し、タチオンの使用が適切かどうかを判断します。
自己判断で入手・使用することは、思わぬ健康被害につながるリスクがあるため避けるべきです。

アナフィラキシーについて

非常に稀ですが、注射剤(点滴)において重篤な過敏症であるアナフィラキシーショックが報告されています。
アナフィラキシーは、薬物の投与後数分から数十分以内に起こることが多く、全身の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害などの激しいアレルギー反応です。
PMDAの副作用データベースにもタチオン注射に関する症例報告が見られます。
万が一、注射中にこれらの症状が現れた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を受ける必要があります。
これはタチオンに限らず、注射剤全般に起こりうるリスクです。
点滴を受ける際は、医療機関で医師や看護師の管理下で行うことが必須です。

タチオンの使い方・用法用量

タチオンは、錠剤と注射剤があり、それぞれ用法用量が定められています。
医師の指示通りに使用することが最も重要です。
タチオンの正式な用法用量は、添付文書に記載されています。

タチオン錠の服用方法

タチオン錠の一般的な用法用量は、適応症や年齢、症状によって異なります。
例えば、アセトン血性嘔吐症や妊娠悪阻の場合、通常成人には1日1回50〜100mgを服用することが多いですが、症状に応じて増減されることがあります。

  • 服用タイミング: 食前、食後、食間など、特に定められていない場合が多いですが、医師の指示に従ってください。
  • 服用方法: 水またはぬるま湯で服用します。噛み砕かずにそのまま飲み込んでください。
  • 服用回数: 通常1日1回ですが、適応症によっては1日複数回服用する場合もあります。医師の指示された回数と量を厳守してください。

錠剤の吸収には個人差や体調、一緒に摂取するもの(特に食事の内容)が影響する可能性もゼロではありませんが、基本的には指示通りの服用が効果的です。

タチオン注射(点滴)について

タチオン注射用は、主に点滴や静脈注射、筋肉注射として使用されます。
錠剤よりも速やかに体内に成分を供給したい場合や、錠剤の服用が難しい場合(例:激しい嘔吐がある場合)などに用いられます。

  • 用法用量: 適応症によって異なります。例えば、薬物中毒や金属中毒の治療、肝機能改善を目的とする場合、通常成人には1回50〜200mgを静脈内または筋肉内に注射します。添付文書によると、アセトン血性嘔吐症ではより高用量が使用されることもあります。
  • 投与頻度: 症状に応じて、毎日または週数回など、医師が適切と判断した頻度で投与されます。
  • 投与場所: 医療機関でのみ投与可能です。医師や看護師が、患者さんの状態を確認しながら投与します。

美容目的の自由診療で行われる「白玉点滴」なども、このタチオン注射用を主成分として使用しています。
この場合、疾患の治療ではないため保険適用外となります。

タチオン錠の吸収について

タチオン(グルタチオン)は、経口摂取した場合、消化管内でアミノ酸に分解されてから吸収されるという研究結果があります。
そのため、サプリメントとしてグルタチオンを摂取しても、そのままの形で体内に吸収されるわけではない、という議論が存在します。

医療用医薬品であるタチオン錠は、長年の使用実績があり、添付文書に記載された適応症に対して効果が認められています。
これは、製剤として体内での利用効率が考慮されているためと考えられます。
しかし、消化吸収の過程を経て効果を発揮するため、注射剤と比較すると体内への取り込み速度や血中濃度の上昇は緩やかになります。

美容目的などでより速やかに、かつ効率よくグルタチオンを体内に取り込みたいというニーズから、注射剤(点滴)が選ばれることが多いのは、経口摂取よりも直接血液中に成分を届けることができるためです。

タチオンとグルタチオンの違い

「タチオン」と「グルタチオン」という言葉は混同されがちですが、厳密には意味合いが異なります。

医療用医薬品としてのタチオン

「タチオン」は、日本のジェネリック医薬品メーカーであるニプロ株式会社が製造販売する医療用医薬品の商品名です。
有効成分として「グルタチオン」を含有しています。
つまり、タチオンは数あるグルタチオン製剤の一つであり、医師の処方が必要な医薬品です。
厚生労働省から承認された効能・効果、用法・用量が定められています。

グルタチオン含有サプリメント等との違い

一方、「グルタチオン」という言葉は、広く生体内の物質としてのグルタチオン、あるいはそれを成分として含む製品全般を指す場合があります。
市販されているサプリメントや健康食品の中にも、グルタチオンを配合しているものが存在します。

医療用医薬品のタチオンと、市販のグルタチオン含有サプリメント等には、以下のような違いがあります。

項目 医療用医薬品 タチオン 市販のグルタチオン含有サプリメント等
位置づけ 医薬品 食品(健康食品、サプリメント)
目的 疾患の治療 健康維持、栄養補給、美容サポートなど
有効成分の量・質 厳密な品質管理のもと、有効成分量が表示されている(添付文書参照) 製品によりばらつきがある可能性。品質管理基準も異なる。
吸収率・有効性 医薬品として臨床効果が確認されている(適応症に対して) 経口摂取での吸収率については議論あり。効果は限定的または不明。
安全性 医師・薬剤師の管理下で使用。副作用情報が管理されている。(PMDA副作用データベース参照) 副作用のリスクは低いとされるが、情報の管理は医薬品ほど厳格ではない。
入手方法 医師の処方箋が必要 薬局、ドラッグストア、通販などで自由に購入可能
保険適用 適応症に対しては基本的に保険適用(自由診療を除く) 保険適用外

市販のサプリメント等はあくまで健康食品であり、病気の治療効果を謳うことはできません。
医療用医薬品であるタチオンは、特定の疾患に対して有効性が認められており、品質や安全性も医薬品として厳しく管理されています。
美容目的でグルタチオンを使用したい場合でも、医師の診断のもと、適切な製剤を選択することが推奨されます。

タチオンの市販状況

タチオンは、医療用医薬品であるため、一般の薬局やドラッグストアでは市販されていません。
購入するには医師の処方箋が必要です。

医療用医薬品は市販されていない

日本の医薬品は、リスクの高さや専門的な知識の必要性から、「医療用医薬品」「要指導医薬品」「一般用医薬品」などに分類されています。
タチオンは、医師による診断と処方が必須な「医療用医薬品」に分類されます。
そのため、インターネット上の個人輸入代行サイトなどを利用して入手することも、品質や安全性が保証されない偽造品のリスクが非常に高いため推奨されません。
必ず医療機関を受診して処方を受けてください。

クリフォア等、美容クリニックでの取り扱い

医療用医薬品であるタチオン(有効成分グルタチオン)は、承認された適応症に対する保険診療だけでなく、美容クリニックなどでは自由診療として「美白点滴」「白玉点滴」といった名称で提供されることがあります。
これは、前述したグルタチオンの美白効果や抗酸化作用を期待して行われるもので、病気の治療ではないため保険適用外となります。

オンライン診療サービスを提供しているクリニックなどでも、美容目的の点滴としてグルタチオン製剤(タチオンを含む場合がある)を取り扱っているところがあります。
このようなサービスを利用する場合も、医師の診察が必要となり、医師が患者さんの状態や希望を踏まえて、使用の可否や適切な用法用量を判断します。
例えば「クリフォア(クリニックフォア)」のようなオンライン診療に対応しているクリニックの中にも、グルタチオン点滴を提供しているところが見られます。

グルタチオン錠 販売中止について

過去に、特定のグルタチオン錠剤が販売中止となったという情報に触れることがあるかもしれません。
これにはいくつかの背景があります。

販売中止の背景・理由

日本の医薬品は、販売開始後も定期的にその有効性や安全性が再評価されます。
過去に一部の製薬会社が製造販売していたグルタチオン錠剤に関して、厚生労働省の指示により実施された「医療用医薬品に関する再評価」において、特定の適応症(例えば、慢性肝疾患における肝機能改善など)に対する有効性が確立されていないと判断されたことがありました。
この再評価の結果、一部のグルタチオン錠剤は、該当する適応症での使用が認められなくなり、結果として販売が中止されたケースがあります。

これは、薬が「効かない」と断定されたわけではなく、承認当時の有効性評価の基準が現在よりも緩やかであったことや、その後の大規模臨床試験などで明確な有効性を示すエビデンスが不十分であったことなどが背景にあります。
タチオン錠(ニプロ株式会社)は、現在も薬物中毒、金属中毒、妊娠悪阻、アセトン血性嘔吐症、炎症、放射線療法による白血球減少症に対して承認されており、これらの適応症に対して医師が必要と判断した場合に処方されています(出典:タチオン添付文書)。

現在入手する方法

現在、医療用医薬品として日本国内で入手できるグルタチオン製剤は、ニプロ株式会社のタチオン錠およびタチオン注射用など、承認を受けている製品に限られます。
これらの製剤を入手する方法は、前述の通り医師の処方箋が必要です。

  • 保険診療: アセトン血性嘔吐症や妊娠悪阻など、タチオンの承認されている適応症に該当する疾患で治療が必要な場合、医療機関を受診し、医師の診断に基づいて保険診療で処方を受けることができます。この場合、保険が適用されるため自己負担額は原則3割となります。
  • 自由診療: 医療用医薬品であるタチオン注射用などを、美容目的(美白、抗酸化など)や二日酔い改善などの目的で使用する場合、これは保険適用外の自由診療となります。美容クリニックや一部の一般診療クリニックで提供されており、全額自己負担となります。

どちらの場合も、医師による診察が必須です。
インターネットなどで個人輸入された製剤は、成分量が表示と異なる、不純物が混入している、適切な品質管理がされていないなど、健康被害のリスクが非常に高いため絶対に避けるべきです。

タチオンに関するよくある質問

タチオンについて、多くの人が抱く疑問とその回答をまとめました。

タチオンは何に効く薬ですか?

タチオンは、医療用医薬品として以下の疾患に対して承認されています(出典:タチオン添付文書)。

  • 薬物中毒、金属中毒
  • アセトン血性嘔吐症(自家中毒症)
  • 妊娠悪阻
  • 炎症、放射線療法による白血球減少症

これらの病態において、体内のグルタチオンを補充し、解毒作用や代謝改善作用、抗酸化作用などによって症状を改善する目的で使用されます。
これは、病気によって損なわれた体の機能を、本来の「治る前」の状態に近づけることを助ける働きと言えます。

また、医薬品としての適応症ではありませんが、グルタチオンの働きから美白や抗酸化、二日酔い改善などの美容・健康目的で自由診療で使用されることもあります。

タチオンは危ない薬ですか?

タチオンは、長年の使用実績があり、適切に使用すれば比較的安全性の高い医薬品とされています。
重篤な副作用の発生頻度は非常に低いですが、過敏症や消化器症状などの副作用が起こる可能性はあります。
PMDAの副作用データベースにも副作用に関する情報が蓄積されています。
注射剤ではごく稀にアナフィラキシーの報告もあります。

重要なのは、医師の診断と管理のもとで使用することです。
自己判断での使用や、品質の保証されない個人輸入による入手は、安全性を損なう行為であり「危ない」と言わざるを得ません。
医師の指示に従い、正しく使用すれば、安全性が高いと言える薬です。

トラネキサム酸とタチオンの違いは何ですか?

トラネキサム酸も美白効果が期待される成分として知られていますが、タチオン(グルタチオン)とは作用機序や医薬品としての適応症が異なります。

項目 タチオン(グルタチオン) トラネキサム酸
主な薬効・作用 抗酸化作用、解毒作用、代謝改善作用 抗プラスミン作用(抗炎症、止血)
医薬品の適応症 薬物中毒、金属中毒、アセトン血性嘔吐症、妊娠悪阻など(添付文書参照) 出血傾向、湿疹・蕁麻疹、扁桃炎・咽喉頭炎による痛みなど
美白効果への期待 メラニン生成酵素(チロシナーゼ)阻害、淡色メラニン優位化 メラニン生成指令物質(プラスミンなど)抑制
入手方法 医療用医薬品:医師の処方
サプリメント:市販
医療用医薬品:医師の処方
一般用医薬品:市販

トラネキサム酸は、肌の炎症を抑えることで、シミの一種である肝斑の改善に有効とされることがあります。
一方、タチオンはメラニン自体の生成過程に直接働きかける可能性があると考えられています。
どちらも美白に関与する可能性がありますが、アプローチが異なります。
医師の診断のもと、ご自身の肌の状態や目的に合った治療法を選択することが重要です。

タチオンの美容効果は?

医療用医薬品としてのタチオンに「美白」や「アンチエイジング」といった美容に関する適応症はありません。
しかし、主成分であるグルタチオンが持つ抗酸化作用やメラニン生成抑制作用から、美容目的で自由診療の点滴などで用いられることがあります。

期待される美容効果としては、シミやくすみの改善による美白効果、肌の酸化ストレス軽減によるハリや弾力の維持、肌荒れの予防などが挙げられます。
これらの効果は、グルタチオンの体内での働きに基づいたものであり、効果の現れ方には個人差があります。

まとめ

タチオンは、必須の抗酸化物質であるグルタチオンを有効成分とする医療用医薬品です。
薬物中毒や金属中毒の解毒、アセトン血性嘔吐症や妊娠悪阻といった代謝異常の改善など、特定の疾患に対する治療薬として国に承認されています(出典:タチオン添付文書)。
これらの適応症においては、失われた体の機能を「治る前」の状態に戻す重要な役割を果たします。

また、グルタチオンの強力な抗酸化作用や美白作用から、医薬品の適応症とは異なりますが、美容やアンチエイジングの分野でも注目され、自由診療の点滴などで用いられることがあります。

タチオンは医療用医薬品であるため、医師の処方箋なしに薬局などで購入することはできません。
インターネット上の個人輸入代行サイトでの購入は、偽造品や品質管理の問題から健康被害のリスクが非常に高いため絶対に避けるべきです。

過去に一部のグルタチオン錠剤が販売中止となった事例がありますが、これは特定の適応症における有効性の再評価によるものであり、タチオン錠(ニプロ)は現在も承認された適応症に対して処方されています。

タチオンの使用を検討する場合は、病気の治療目的であれ、美容目的であれ、必ず医師の診断を受け、適切な用法・用量や副作用について十分な説明を聞いてから使用することが最も安全で確実な方法です(出典:PMDA副作用データベースも参照)。
ご自身の健康状態や目的に応じて、医師とよく相談しましょう。

専門家監修

本記事は、医療情報に関する専門的な知見を持つ監修者の協力のもと作成されています。
記載内容は、現時点で信頼できる情報源に基づいておりますが、医学的な診断や治療を保証するものではありません。
個々の症状については、必ず医師の診察を受けてください。

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