皮膚の炎症やかゆみに悩んでいるとき、医療機関で「ロコイド」という薬を処方された経験があるかもしれません。ロコイド軟膏やクリームは、湿疹や皮膚炎、かぶれなど、さまざまな皮膚トラブルの治療に使われるステロイド外用薬です。正しく理解し、適切に使用することで、つらい症状を効果的に抑えることができます。この記事では、ロコイドの効果や正しい使い方、気になる副作用、そして市販薬との違いについて詳しく解説します[2]。
ロコイドとは?(軟膏・クリームの種類と成分)
ロコイドは、オランダで開発されたステロイド外用薬です。有効成分として「酪酸ヒドロコルチゾン(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)」を含んでいます。この成分は、体内で炎症を引き起こす物質の生成を抑える働きを持ち、皮膚の赤み、腫れ、かゆみといった炎症症状を鎮めるのに効果を発揮します[7]。
ロコイドには、主に「ロコイド軟膏」と「ロコイドクリーム」の2種類があります。
- ロコイド軟膏: 油脂性の基剤で作られており、保湿力が高く、皮膚を保護する作用に優れています。ジュクジュクした患部にも乾燥した患部にも比較的使いやすく、刺激が少ないのが特徴です。
- ロコイドクリーム: 水分を含んだ基剤で作られており、伸びが良く、塗った後のベタつきが少ないのが特徴です。比較的乾燥した患部や、広範囲に塗る場合に適しています。塗布後の清涼感を感じることもあります。
どちらを使用するかは、患部の状態や部位、季節などによって医師が判断します。
ロコイドの効果・効能
ロコイドの有効成分である酪酸ヒドロコルチゾンは、炎症の原因となるプロスタグランジンやロイコトリエンなどの物質が体内で作られるのを抑制することで、強力な抗炎症作用を発揮します[3]。これにより、皮膚の炎症に伴う以下の症状を和らげることができます。
- 赤み: 炎症によって血管が拡張し血流が増えることで起こる赤みを抑えます。
- 腫れ: 炎症によって組織に水分が溜まることで起こる腫れを軽減します。
- かゆみ: 炎症に伴って放出されるヒスタミンなどの物質によって引き起こされるかゆみを鎮めます。
炎症が鎮まることで、かきむしりによる皮膚の悪化を防ぎ、皮膚の回復を助ける効果も期待できます。
ロコイドが処方される主な皮膚疾患
ロコイド軟膏・クリームは、その強力な抗炎症作用から、さまざまな皮膚疾患の治療に広く用いられています。主な処方疾患は以下の通りです。
- 湿疹・皮膚炎群:
- アトピー性皮膚炎(急性増悪期など)
- 接触性皮膚炎(かぶれ)
- 脂漏性皮膚炎
- 貨幣状湿疹
- 主婦湿疹(手湿疹)
- じんましん(慢性期の補助など)
- 虫刺され
- 乾癬: 慢性的な皮膚の炎症性疾患
- 痒疹: 強いかゆみを伴う皮膚の硬結
- 尋常性白斑: 皮膚の色素が抜ける病気(ステロイドの免疫抑制作用を利用)
- 円形脱毛症: 自己免疫疾患による脱毛(ステロイドの免疫抑制作用を利用)
これらの疾患において、ロコイドは炎症を鎮め、症状を緩和することを目的として使用されます。ただし、原因療法ではなく対症療法であるため、根本的な治療には他の治療法と併用されることもあります[4]。
ロコイドの強さ(ステロイドランク分類)
ステロイド外用薬は、その強さによって5つのランクに分類されています。これは、薬が皮膚から体内に吸収される量や、炎症を抑える作用の強さを示すもので、治療する疾患や部位、患者さんの年齢などによって適切なランクの薬が選択されます。
日本のステロイド外用薬の強さランクは以下の通りです。
ランク | 強さの分類 | 例となる薬剤 |
---|---|---|
Strongest | 最も強力 | デルモベート、ダイアコート |
Very Strong | かなり強力 | リンデロン-DP、フルメタ、アンテベート |
Strong | 強力 | ロコイド、リンデロン-V、ベトネベート |
Medium (Intermediate) | 中程度 | キンダベート、アルメタ、リドメックス、セレスタミン |
Weak | 弱い | プレドニゾロン、ロコイド(ヒドロコルチゾン) |
ロコイド(酪酸ヒドロコルチゾン)は、この分類において上から3番目にあたる「Strong(強力)」に位置づけられるステロイド外用薬です[16]。これは、StrongestやVery Strongといった非常に強力なステロイドよりは弱いものの、中程度(Medium)や弱い(Weak)ステロイドよりは強い、比較的しっかりとした抗炎症作用を持つことを意味します。
他のステロイド外用薬との比較
ロコイドを含む「強力(Strong)」クラスのステロイドは、顔や首など皮膚が薄い部位への長期・広範囲の使用には注意が必要ですが、体幹や四肢などの皮膚が厚い部位の比較的強い炎症に対して効果を発揮します[14]。
他のランクのステロイドと比較すると、以下のようになります。
- Strongest / Very Strong: 重度の炎症や難治性の疾患に使用されます。効果は非常に強力ですが、副作用のリスクも高まるため、使用期間や範囲が厳密に制限されることが多いです。
- Strong (ロコイド含む): ある程度の炎症には十分な効果を発揮しつつ、Strongest / Very Strongほど強くないため、比較的多くの皮膚疾患に用いられます。ただし、使用方法には注意が必要です。
- Medium: 軽い炎症や、顔・首などの皮膚が薄い部位、またはステロイドを徐々に弱くしていく(ステップダウン)際に使用されることがあります。
- Weak: 最も作用が穏やかで、軽度の炎症や赤ちゃん(乳幼児)のデリケートな皮膚、広い範囲への使用などに用いられることがあります。
ロコイドが処方された場合は、「強力なステロイド」であることを認識し、医師から指示された使い方を必ず守ることが重要です。自己判断で他の部位に塗ったり、使用期間を延長したりすることは避けてください。
ロコイドの正しい使い方・塗り方
ステロイド外用薬は、適切な量と方法で塗ることが、効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑える上で非常に重要です。ロコイド軟膏・クリームの基本的な使い方を解説します[10]。
まず、薬を塗る前には、手をきれいに洗いましょう。清潔な状態で行うことで、患部への感染を防ぎます。
塗る量については、「フィンガーチップユニット(FTU)」という考え方があります。これは、チューブから大人の人差し指の先端から第一関節まで薬を絞り出した量が、おおよそ0.5gであり、大人の手のひら2枚分の面積に塗るのに適量とされる目安です。
- 軟膏の場合: 患部に乗せるように置き、テカる程度にごく薄く伸ばすのが基本です。擦り込む必要はありません。皮膚の表面に薄い膜を作るイメージです。
- クリームの場合: 患部に優しく伸ばします。塗った後、白っぽさがなくなる程度に伸ばすのが目安です。
患部全体に、指示された量を均一に塗布します。症状が強い部位には少し厚めに塗るように指示されることもありますが、これは医師の指示に従ってください。
塗る頻度と期間の目安
一般的に、ロコイドは1日に1回から数回(通常は1日1~2回)塗布することが多いです。症状の強さや部位によって医師が指示します。自己判断で頻度を増やしたり減らしたりしないでください[15]。
使用期間についても、医師の指示された期間を守ることが重要です。通常、症状が改善したら徐々に使用頻度を減らしたり、より弱いステロイドに切り替えたり、非ステロイド性の外用薬に変更したりします。
- 急にやめない: 症状が良くなったからといって、自己判断で急に塗るのをやめると、リバウンドで症状が悪化することがあります。必ず医師の指示に従って、徐々に減らしていくか、他の薬に切り替えていくようにしましょう。
- 漫然と続けない: 症状が改善しない、または悪化する場合は、漫然と塗り続けずに必ず医師に相談してください。診断が間違っているか、薬が合っていない可能性も考えられます。
ロコイドを塗る際の注意点
ロコイドは強力なステロイドに分類されるため、塗る部位や患者さんの状態によって特に注意が必要です。
顔への使用について
顔の皮膚は体に比べて非常に薄く、ステロイドの吸収率が高い部位です。そのため、顔に強力なステロイドを長期間または広範囲に塗布すると、以下のような副作用のリスクが高まります[8]。
- 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
- 毛細血管が拡張して赤ら顔になる(毛細血管拡張)
- ニキビが悪化・誘発される(ステロイドざ瘡)
- 口の周りに皮膚炎が起きる(口囲皮膚炎)
顔にロコイドが処方された場合は、必ず医師の指示された期間と量だけを使用し、必要以上に広げたり、長期間漫然と使用したりすることは絶対に避けてください。特に眉間、目の周り、口の周りは皮膚が薄くデリケートなので注意が必要です。
陰部への使用について
陰部の皮膚も顔と同様に薄く、湿潤しているため、ステロイドの吸収率が高い部位です。陰部のかゆみや炎症にロコイドが処方されることがありますが、顔と同様に長期連用や広範囲への使用は避けるべきです。
特に、性器カンジダ症などの感染症が原因でかゆみが出ている場合、ステロイドを使用するとかえって症状が悪化することがあります。自己判断せず、必ず医師の診察を受けてから使用してください。
赤ちゃん(小児)への使用について
赤ちゃんの皮膚はバリア機能が未熟で薄いため、ステロイドを吸収しやすく、体内に薬剤が移行するリスクが大人よりも高くなります。また、おむつをしている部位(おむつ部)は薬が密閉され、吸収が促進されるため、特に注意が必要です。
ロコイドは「強力(Strong)」クラスであり、赤ちゃんのデリケートな皮膚にはやや強い場合もあります。医師は、症状や部位、赤ちゃんの年齢などを考慮して、ロコイドを使用するか、より弱いステロイドを選択するかを慎重に判断します。
赤ちゃんにロコイドが処方された場合は、医師の指示された量と期間を厳守し、自己判断での増量や長期使用は絶対に避けてください。ガーゼや包帯などで覆う(密封法:ODT)と吸収率が著しく高まるため、医師から指示がない限りは行わないでください。
傷口への使用について
深い傷やひどい潰瘍など、傷口が開いている部分には、原則としてステロイド外用薬は使用しません。傷の治りを遅らせたり、感染を招いたりする可能性があるためです。
ただし、傷口に炎症が強い場合など、医師の判断で一時的に使用されることもゼロではありません。ご自身の判断で傷口に塗布せず、必ず医師の指示を仰いでください。
塗ってはいけない場所
以下のような場所には、原則としてロコイドを塗ってはいけません。
- 細菌、真菌(カビ)、ウイルスなどによる感染症の部位: ステロイドは免疫を抑制するため、これらの感染症を悪化させる可能性があります。(例: とびひ、水虫、ヘルペスなど)
- 化膿している部位: 感染を悪化させる可能性があります。
- 潰瘍、やけど: 治りを遅らせる可能性があります。
- ニキビ: ステロイドざ瘡を誘発・悪化させる可能性があります。
- 酒さ(しゅさ): 症状を悪化させる可能性があります。
- ロコイドの成分に対して過敏症(アレルギー)を起こしたことがある部位: 再びアレルギー症状が出る可能性があります。
これらの部位に症状がある場合は、ロコイドを使用する前に必ず医師に相談し、適切な診断と治療を受けてください。
ロコイドの副作用
ステロイド外用薬は効果が高い一方で、適切に使用しないと副作用が生じる可能性があります。ロコイドは「強力(Strong)」クラスであり、比較的安全性の高い成分とされていますが、長期使用や広範囲への使用、皮膚の薄い部位への使用など、使い方によっては副作用のリスクが高まります[13]。
主な副作用の種類
ロコイドの副作用は、主に局所的なものと、全身的なものに分けられます。正しく使用している限り、全身的な副作用が起こることは稀です。
局所的な副作用(塗った部位に起こる可能性のある副作用):
- 皮膚萎縮: 皮膚が薄くなり、血管が透けて見えるようになる。長期使用や皮膚の薄い部位(顔、首、陰部など)でのリスクが高い。
- 毛細血管拡張: 皮膚の表面の細い血管が拡張して、赤みが増す。特に顔での長期使用で見られることがある。
- ステロイドざ瘡(ニキビ): 毛穴が詰まりやすくなり、ニキビができたり悪化したりする。
- 口囲皮膚炎: 口の周りに赤みやブツブツができる。顔への長期使用で見られることがある。
- 多毛: 塗った部位の毛が濃くなる。
- 皮膚の色素沈着または色素脱失: 皮膚の色が変わる。
- 皮膚感染症の誘発・悪化: 免疫抑制作用により、細菌や真菌、ウイルスなどの感染症にかかりやすくなったり、既存の感染症が悪化したりする。(例: カンジダ症、白癬(水虫)、とびひ、ヘルペスなど)
- かゆみ、発赤、刺激感、乾燥: 薬そのものや基剤に対する刺激、または軽いアレルギー反応として起こることがある。
全身的な副作用(体全体に影響する可能性のある副作用):
これは、ステロイドが皮膚から吸収されて体内に移行することで起こる副作用です。通常の使用方法では起こることは非常に稀ですが、広範囲に長期連用したり、皮膚の状態(バリア機能の低下)や年齢(赤ちゃんなど)によってはリスクが高まることがあります。
- クッシング症候群: 体重増加、顔が丸くなる(満月様顔貌)、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症など、全身のステロイドホルモン過剰状態による症状。
- 成長抑制: 小児で長期・広範囲に使用した場合に、成長が遅れる可能性。
- 副腎皮質機能抑制: 体内でステロイドホルモンを作る副腎の機能が低下する。
これらの全身的な副作用は、医師の指示通りの使用であればほとんど心配いりません[5]。過度に恐れる必要はありませんが、正しい使用方法を守ることが何よりも重要です。
副作用が現れた場合の対応
ロコイドの使用中に以下のような症状が現れた場合は、自己判断で使い続けたり、使用を中止したりせず、速やかに処方した医師や薬剤師に相談してください。
- 塗っている部位の赤み、かゆみ、刺激感がひどくなった
- 皮膚が薄くなってきた、血管が目立つようになった
- ニキビが増えたり、悪化したりした
- 口の周りにブツブツができてきた
- 塗っている部位が化膿してきた、水ぶくれができた(感染症の疑い)
- 発熱、全身倦怠感など、全身的な症状が出た
特に感染症が疑われる症状(赤く腫れて熱を持つ、膿が出るなど)が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。
副作用を過度に心配するあまり、必要な治療を中断してしまうことも問題にいます。医師は、症状の重さや部位、患者さんの状態などを総合的に判断し、副作用のリスクと薬の効果を天秤にかけて処方しています。不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に質問し、納得した上で治療を進めることが大切です。
ロコイドは市販されている?(医療用医薬品との違い)
結論から言うと、ロコイド(有効成分:酪酸ヒドロコルチゾン)は、日本では市販されていません[11]。ロコイドは「医療用医薬品」に分類されており、医師の診察と処方箋がなければ薬局で購入することはできません。
これは、ロコイドが「強力(Strong)」クラスのステロイドであり、使用方法を誤ると副作用のリスクがあるため、医師や薬剤師の専門的な管理のもとで使用されるべき薬と判断されているからです。
一方、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬の中にも、ステロイドを有効成分として含む塗り薬は多数あります。しかし、市販されているステロイド外用薬は、医療用医薬品のステロイドランクでいうと、「弱い(Weak)」または「中程度(Medium)」のものがほとんどです。「強力(Strong)」以上のステロイドは市販されていません。
医療用医薬品と市販薬の主な違いは以下の通りです。
項目 | 医療用医薬品(ロコイドなど) | 市販薬のステロイド外用薬 |
---|---|---|
入手方法 | 医師の診察・処方箋が必要 | 薬局・ドラッグストアで購入可能 |
ステロイドの強さ | StrongestからWeakまで様々(ロコイドはStrong) | 主にWeakまたはMedium |
成分・配合 | 単一成分や特定の組み合わせが多い | ステロイド以外にかゆみ止め、殺菌成分などが複合的に配合されているものが多い |
使用期間 | 医師の指示に従う | 自己判断で短期使用(通常1~2週間程度)が基本 |
適応疾患 | 多岐にわたる(医師が診断) | 比較的軽度の湿疹、かぶれ、虫刺されなど |
専門家の関与 | 医師が診断し、薬剤師が説明・管理する | 薬剤師や登録販売者に相談は可能だが、診断は受けられない |
インターネットの個人輸入代行サイトなどで、海外製のロコイドや成分が不明なステロイド薬が販売されていることがありますが、これらを購入して使用することは非常に危険です[12]。
- 偽造薬の可能性: 有効成分が入っていなかったり、不純物が混ざっていたりする偽造薬が多く流通しています。
- 成分・濃度が不明確: 表示されている成分や濃度が実際と異なる場合があります。
- 副作用のリスク: 自分の症状に適しているか、他の薬との飲み合わせは問題ないかなど、専門家の判断がないため、重篤な副作用や健康被害を引き起こすリスクがあります。
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外: 個人輸入した医薬品で健康被害を受けても、公的な救済制度の対象外となります。
つらい皮膚症状がある場合は、自己判断で市販薬を使ったり、危険な個人輸入に手を出したりせず、必ず医療機関を受診し、医師の診断のもと適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
ロコイド使用に関するQ&A
ロコイドを使用する上で、よくある疑問点をQ&A形式でまとめました。
ロコイドはニキビに効果がある?
ロコイドは抗炎症作用を持つステロイドですが、ニキビの治療薬としては推奨されません。むしろ、ステロイド外用薬を顔のニキビに塗布すると、「ステロイドざ瘡」と呼ばれる副作用として、ニキビが悪化したり、新しくできたりする可能性があります。
ニキビは毛穴の炎症やアクネ菌の増殖などが原因で起こります。ニキビの治療には、アダパレン(ディフェリンなど)、過酸化ベンゾイル(ベピオなど)、抗菌薬などのニキビ専用の治療薬を使用するのが一般的です。
もし、ニキビと湿疹が合併しているなど、複雑な状況の場合は、医師が総合的に判断して治療法を選択します。自己判断でロコイドをニキビに塗ることは避けてください。
塗ってから効果が出るまでどのくらい?
ロコイドの効果の現れ方には個人差や症状の程度、部位によって差がありますが、一般的には数日(早ければ2~3日)で赤みやかゆみなどの炎症症状が和らぎ始めることが多いです。
ただし、これはあくまで炎症が鎮まるまでの目安であり、皮膚の状態が完全に元に戻るまでには時間がかかる場合があります。症状が劇的に改善しなくても、医師から指示された期間は用法・用量を守って使い続けることが重要です。
もし1週間程度使用しても全く効果が見られない、あるいは症状が悪化する場合は、診断が間違っている、薬が合わない、または他の原因(感染症など)が考えられます。漫然と塗り続けずに、必ず医師に相談してください。
いつまでロコイドを塗るべき?(やめ時)
ロコイドの使用期間は、治療する疾患や症状の重さによって医師が決定します。一般的な皮膚炎であれば、数日から1~2週間程度で症状が改善することが多いです。
「いつまで塗るべきか」については、自己判断せず、必ず医師の指示に従ってください。
症状が改善してきたら、医師は以下のいずれかの指示を出すことが多いです。
- 中止: 症状が完全に治まった場合。
- 使用頻度を減らす: 毎日塗るのを数日おきにするなど。
- より弱いステロイドに切り替える: ロコイド(Strong)からMediumやWeakクラスのステロイドに変更する。
- 非ステロイド性の外用薬に切り替える: タクロリムス軟膏(プロトピック)、ピメクロリムスリーム(エリデル)など、ステロイド以外の抗炎症薬に変更する。
皮膚の炎症は、見た目の赤みやかゆみがなくなっても、皮膚の深い部分にまだ炎症が残っている場合があります。医師の指示より早く使用を中止すると、症状がぶり返す(リバウンド)ことがあります。
逆に、必要以上に漫然と長期間使用し続けると、前述したような皮膚萎縮や毛細血管拡張などの局所的な副作用のリスクが高まります。
したがって、ロコイドの「やめ時」は、患者さん自身が判断するのではなく、定期的に医師の診察を受け、皮膚の状態を評価してもらい、医師の指示を仰ぐことが最も重要です。
症状が治る前でも使用を続けて良い?
はい、症状が完全に治まる前でも、医師から指示された使用頻度と期間内であれば、使用を続けるのが一般的です。
多くの皮膚疾患では、症状が落ち着いてきた段階でも、炎症の再燃を防ぐために一定期間塗り続けることが推奨されます。これは、皮膚の表面的な症状が改善しても、皮膚の内部ではまだ炎症がくすぶっていることがあるためです。医師は、皮膚の状態を診察して、炎症が完全に鎮まるまでの期間や、その後再発予防のためにどの薬をどのように使うかを判断します。
「治る前だから不安」と感じるかもしれませんが、自己判断で中止したり、量を減らしたりせず、医師の指示通りの治療を継続してください。不安な点があれば、次回の診察時や薬剤師に相談してみましょう。
ロコイドが効かない場合はどうすればいい?
ロコイドを医師から指示された通りに適切に使用しているにも関わらず、以下のような場合は、漫然と塗り続けずに速やかに医師に相談してください。
- 全く効果が見られない: 数日〜1週間程度使用しても、赤みやかゆみなどの症状が全く改善しない。
- 症状が悪化した: 使用開始後、かえって症状が悪化したり、新たな症状(化膿、水ぶくれなど)が出てきた。
- かゆみや刺激感が強くなった: 塗るたびに、あるいは使用中に強いかゆみや刺激感を感じるようになった。
ロコイドが効かない、あるいは悪化する原因としては、以下のような可能性が考えられます。
- 診断が誤っている: 湿疹や皮膚炎ではなく、別の原因(感染症や内臓の病気など)で症状が出ている。
- 薬が合っていない: ロコイドの成分が症状に合わない、または他のランクのステロイドが必要。
- 適切な量が塗れていない: 量が少なすぎる、または塗り方が不十分。
- アレルギーや接触性皮膚炎: 薬そのものや基剤にかぶれている。
- 感染症の合併: 湿疹や皮膚炎に加えて、細菌や真菌などの感染症を合併している。
- 他の原因: ストレス、生活習慣、他の病気などが症状に影響している。
医師は、これらの可能性を考慮して再診断を行い、必要であれば他の薬への変更、内服薬の併用、検査(アレルギー検査、細菌・真菌検査など)の実施などを検討します。自己判断で市販薬を試したり、インターネットで得た情報だけで別の薬に手を出したりせず、必ず専門家の助けを求めてください。
ロコイドについて不安な場合は医師や薬剤師に相談
ロコイドは、湿疹や皮膚炎などの炎症を鎮めるのに非常に有効な医療用医薬品ですが、ステロイド外用薬であるため、その効果や副作用、正しい使い方について不安を感じる方もいるかもしれません。
この記事で解説したように、ロコイドは適切な疾患に、適切な量と期間で、適切な部位に使用することが重要です。間違った使い方をすると、期待した効果が得られないだけでなく、皮膚の萎縮、感染症の誘発、ニキビの悪化など、さまざまな副作用のリスクが高まります。
もし、ロコイドについて少しでも不安な点があれば、自己判断せず、必ず処方した医師や薬局の薬剤師に相談してください。
- 医師: 症状の経過、薬の効果や副作用について直接診察を受けて相談できます。他の疾患との合併や、より専門的な判断が必要な場合に頼りになります。
- 薬剤師: 薬の使い方、塗る量、塗るタイミング、保管方法、他の薬との飲み合わせ、考えられる副作用など、薬に関する具体的な疑問に答えてくれます。
専門家は、あなたの個々の症状や既往歴、服用中の他の薬などを考慮して、適切なアドバイスを提供してくれます。正しく理解し、納得した上で治療に取り組むことが、皮膚の改善への近道です。
ロコイドは怖い薬ではありません。正しく使うことで、つらい皮膚の炎症やかゆみを効果的に和らげ、健康な皮膚を取り戻す手助けをしてくれる薬です。不安を解消し、安心して治療を進めるためにも、医師や薬剤師とのコミュニケーションを大切にしましょう。
免責事項: 本記事は、ロコイド軟膏・クリームに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や薬剤の使用を推奨するものではありません。個々の症状や状態に対する診断、治療、薬剤の選択については、必ず医療機関を受診し、医師または薬剤師の専門的な判断を仰いでください。本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害については、一切の責任を負いかねます。