五苓散を飲む前に知りたい！効果が出るまでの期間と気になる副作用

五苓散は、古くから日本の医療で用いられてきた漢方薬の一つです。
特に「水の巡り」に不調がある状態、漢方でいう「水滞（すいたい）」を改善する薬として知られています。
むくみ、めまい、頭痛、二日酔いによる吐き気や下痢など、体内の水分バランスの乱れによって起こる様々な不調に対して用いられます。
この記事では、五苓散がどのような漢方薬なのか、その効果や飲む際の注意点、購入方法などを詳しく解説します。
五苓散について正しく理解し、ご自身の症状に合っているかを知るための一助となれば幸いです。

五苓散とは？漢方でいう「水滞」を改善する薬

五苓散（ごれいさん）は、体の余分な水分を排出し、水分バランスを整えることに主眼を置いた漢方薬です。
この「水の偏り」は、漢方医学では「水滞（すいたい）」または「水毒（すいどく）」と呼ばれ、体に必要な水分がうまく巡らず、特定の場所に溜まったり、逆に必要な場所に不足したりすることで、様々な不調を引き起こすと考えられています。

五苓散は、この水滞の状態を改善することで効果を発揮します。
例えば、体内に余分な水分が溜まればむくみとして現れますし、脳の水分バランスが崩れればめまいや頭痛につながることがあります。
また、胃腸に水分が溜まれば下痢や吐き気、嘔吐を引き起こすこともあります。
五苓散はこれらの症状に対して、体内の水分代謝を正常化する手助けをします。

このように、五苓散は特定の病名に対して処方されるというよりは、「水滞」という漢方的な病態、つまり体の水分バランスの乱れによる不調に対して広く用いられる薬です。
そのため、同じ「頭痛」でも、水滞が原因と考えられる頭痛には五苓散が効果を発揮しやすい一方で、他の原因による頭痛には向かない場合もあります。
ご自身の症状が水滞によるものかどうか、判断が難しい場合は専門家にご相談いただくのが良いでしょう。

漢方的な考え方「水滞」とは

漢方医学における「水（すい）」とは、体内の水分全般を指し、血液以外のリンパ液、組織液、消化液、尿、汗など、あらゆる体液を含みます。
健康な状態では、これらの「水」は体内をスムーズに巡り、臓腑や組織を潤し、老廃物を運び出すなどの重要な役割を果たしています。

しかし、体質や生活習慣（例えば冷たいものの摂りすぎ、湿度の高い環境、運動不足など）によって、この水の巡りが滞ることがあります。
これが「水滞」です。
水滞になると、体の一部に余分な水分が溜まり、他の場所では水分が不足するという偏りが生じます。

水滞の具体的な症状としては、

• むくみ: 特に朝の顔や、夕方の足のむくみ。
• めまい、立ちくらみ: 脳の水分バランスの異常に関連することがある。
• 頭痛: 雨の日や湿度が高い日、水分を多く摂った後に悪化しやすいタイプ。
• 下痢、嘔吐: 胃腸に余分な水分が溜まることによる。特に水様性のもの。
• 胃もたれ、食欲不振: 胃に水が溜まって消化が悪くなる。
• 体が重だるい、体が冷える: 水が滞ると熱の運搬も悪くなるため。
• 関節痛: 関節に水が溜まることによる痛み。
• 鼻水、痰: 水っぽい鼻水や痰が出やすい。

などが挙げられます。
これらの症状のうち複数が当てはまる場合、水滞の可能性が考えられます。
五苓散は、これらの水滞による不調に対して、利水（りすい：水の排出を促す）作用によってアプローチします。

五苓散の特徴と選ばれやすいタイプ

五苓散の特徴は、その優れた利水作用にあります。
体内の余分な水分を尿として排泄することを助けるだけでなく、水分吸収のバランスを整える作用も持つとされています。
これにより、むくみや下痢、めまいといった水滞に関連する症状を改善します。

五苓散が選ばれやすいタイプとしては、比較的体力が中等度で、「水の巡りが悪いな」と感じる方が多いです。
具体的には、

• 顔や手足がむくみやすい。
• 雨の日や湿度の高い日に体調を崩しやすい。
• 乗り物酔いをしやすい。
• お酒を飲むと二日酔いになりやすい、または二日酔いの際に頭痛や吐き気がひどい。
• 夏バテや暑気あたりでだるい、食欲がない。
• 子供が夜におねしょをしてしまうことがある（体内の水分調節がうまくいかない場合）。

などが挙げられます。
これらの特徴に加えて、舌に苔が多く付いている（舌苔が多い）、脈がふっくらしているが力がない（滑脈など）といった漢方的な所見も、五苓散を選ぶ上での参考となります。

ただし、五苓散は体内の余分な水を排出する薬ですので、脱水を起こしている方や、体に必要な水分まで不足している「陰虚（いんきょ）」という状態の方には向かない場合があります。
ご自身の体質や症状を正しく把握し、五苓散が適しているかどうかは、漢方の専門家にご相談ください。

五苓散の主な効果・効能：幅広い「水のトラブル」に対応

五苓散は、その強力な利水作用によって、体の様々な「水のトラブル」に効果を発揮するとされています。
日本の医療現場では、比較的幅広い症状に対して用いられています。

どのような症状に効果があるか？（適応症）

五苓散の添付文書に記載されている効能・効果は、以下の通りです。

のどが渇いて、尿量が少なく、はき気、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症：
急性胃腸炎、水様性下痢、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔

これ以外にも、臨床の場で五苓散が効果を示すケースは多岐にわたります。
主な症状とその作用メカニズム（漢方的な考え方を含む）を詳しく見ていきましょう。

1. むくみ（特に顔や手足）
体内に余分な水分が溜まることで起こるむくみに対して、五苓散は利水作用により尿量を増やし、体外への水分排泄を促します。
特に、水分の摂りすぎや運動不足、冷えなどによって生じる全身性または局所性のむくみに効果が期待できます。

2. めまい、立ちくらみ
めまいや立ちくらみは、内耳のリンパ液のバランス異常や脳の血流・水分バランスの異常など、様々な原因で起こります。
五苓散は、内耳や脳血管周辺の余分な水分を調節することで、めまいや立ちくらみの改善に寄与すると考えられています。
特に、回転性のめまいや、ふわふわするような浮動性のめまいに用いられることがあります。

3. 頭痛（特に水分摂取後や気圧変化時）
湿度の高い日や雨の日、あるいは水分を多く摂取した後に悪化しやすいタイプの頭痛は、漢方では水滞が原因の一つと考えられます。
五苓散は、脳血管周辺の水分バランスを整えたり、血管の拡張・透過性を調整したりすることで、このようなタイプの頭痛を緩和する効果が期待されます。

4. 二日酔い
二日酔いの原因の一つに、アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドの作用や、体内の水分バランスの乱れがあります。
五苓散は、胃腸の余分な水分を取り除き、水分代謝を促進することで、二日酔いによる吐き気、嘔吐、頭痛、喉の渇きといった症状を和らげるとされています。
お酒を飲む前に予防的に服用することもあります。

5. 急性胃腸炎、下痢、嘔吐（特に水様性）
ウイルスや細菌による急性胃腸炎では、水様性の下痢や嘔吐、腹痛、吐き気などが起こります。
五苓散は、胃腸内の余分な水分を吸収・排泄を促し、下痢や嘔吐を抑える効果が期待できます。
特に、冷たいものを摂りすぎたり、体が冷えたりすることで起こる水様性下痢にも用いられます。

6. 乗り物酔い
乗り物酔いは、視覚、平衡感覚、固有受容感覚の間に生じるズレによって引き起こされると考えられています。
五苓散は、内耳の水分バランスを整える作用や、胃腸の不調を改善する作用により、乗り物酔いによる吐き気や嘔吐を軽減する効果が期待できます。
乗り物に乗る前に服用することで予防効果も期待できます。

7. 暑気あたり
夏の暑さで体力が消耗し、だるさ、食欲不振、下痢、軽い吐き気などの症状が出ることを「暑気あたり」といいます。
これは、体内の水分や熱の調節機能が乱れることで起こると考えられます。
五苓散は、体内の余分な熱と水分を排出することで、暑気あたりの症状を緩和するのに役立つとされています。

8. その他
上記の主要な適応症以外にも、臨床経験に基づいて様々な症状に用いられることがあります。
例えば、小児の夜尿症（おねしょ）のうち、体内の水分調節機能の未熟さや水滞が関係していると考えられるケースや、ドライマウスの一部、緑内障（眼圧のコントロール補助として）などに応用されることもありますが、これらの症状に対しては専門家の慎重な判断が必要です。

このように、五苓散は「水滞」という病態を改善することで、非常に幅広い症状に対応できる漢方薬と言えます。
ただし、すべての「水のトラブル」に効くわけではなく、症状の原因が水滞ではない場合は効果が見られないこともあります。
自己判断でなく、医師や薬剤師に相談して、症状や体質に合った漢方薬を選ぶことが重要です。

五苓散の成分とそれぞれの働き：5つの生薬が織りなす効果

五苓散は、その名前の通り5種類の生薬から構成されています。
「苓」の字が付く生薬が3種類入っていることから「五苓散」と呼ばれます。
これらの生薬が組み合わさることで、相乗的に効果を発揮し、体内の水分バランスを整えます。

構成する生薬（茯苓、沢瀉、猪苓、白朮/蒼朮、桂皮）と漢方的な役割

五苓散を構成する5つの生薬は以下の通りです。

1. 茯苓（ブクリョウ）
   • 基原: サルノコシカケ科のマツホドの菌核。
   • 漢方的な働き: 健脾利水（けんぴりすい）。消化吸収を助ける「脾（ひ）」の働きを整え、余分な水分を排泄する作用があります。精神安定作用も期待されることがあります。五苓散の主薬の一つとして、体内の水をさばく中心的な役割を担います。
2. 沢瀉（タクシャ）
   • 基原: オモダカ科のサジオモダカの塊茎。
   • 漢方的な働き: 利水滲湿（りすいしんしつ）。体内の余分な水分や湿気を取り除く作用が非常に強い生薬です。茯苓と協力して、水の排泄を強力に促します。
3. 猪苓（チョレイ）
   • 基原: チョレイマイタケ科のチョレイマイタケの菌核。
   • 漢方的な働き: 利水滲湿。沢瀉と同様に、体内の余分な水分を排泄する作用があります。茯苓、沢瀉、猪苓の3つの「苓」系の生薬が協力し、強力な利水作用を発揮します。
4. 白朮（ビャクジュツ） または 蒼朮（ソウジュツ）
   • 基原: キク科のオオバオケラまたはホソバオケラの根茎。日本の薬局方では白朮と蒼朮は区別されますが、漢方処方ではどちらか一方または両方が使われます。五苓散では一般的に白朮が多く用いられます。
   • 漢方的な働き: 健脾燥湿（けんぴそうしつ）。消化吸収を司る「脾」の働きを助け、体内の湿気（余分な水分）を取り除く作用があります。消化器系の働きを整え、水分代謝の根本的な改善をサポートします。
5. 桂皮（ケイヒ）
   • 基原: クスノキ科のケイまたはカシアの樹皮。
   • 漢方的な働き: 温陽化気（おんようかき）、解表散寒（げひょうさんかん）。体を温め、気の巡りを良くすることで、水の巡りを助ける作用があります。また、発汗を促し、体の表面の邪気（風邪など）を発散させる働きもあります。五苓散においては、他の利水薬の働きを助け、体全体の巡りを良くすることで、水の偏りを解消する効果を高めると考えられています。

これら5種類の生薬が互いに補完し合い、余分な水分を排出するだけでなく、水分代謝そのものを整えることで、様々な「水のトラブル」に対応できるのです。
生薬の組み合わせによって、単独では得られない幅広い効果が生まれるのが漢方薬の醍醐味と言えるでしょう。

五苓散の正しい飲み方・用量・効果が出るまでの目安

五苓散の効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい用法・用量を守ることが大切です。
また、「いつ効くのか？」「効果が出るまでどれくらいかかるのか？」という疑問にもお答えします。

一般的な服用方法とタイミング

漢方薬は一般的に、食事の影響を避けるために、食前（食事の約30分前）または食間（食事と食事の間、つまり食後約2時間後）に服用することが推奨されています。
これは、胃が空の状態の方が生薬の成分が吸収されやすいためと考えられています。

五苓散も同様に、食前または食間に、水またはぬるま湯と一緒に服用します。
ぬるま湯で服用すると、生薬の成分が溶け出しやすく、体への吸収も良くなると言われています。
ただし、服用しやすい方法で継続することが最も重要ですので、難しい場合は水でも構いません。

服用回数は、製薬会社や製品によって異なりますが、一般的には1日2～3回であることが多いです。
製品の添付文書に記載されている用法・用量を必ず確認し、指示通りに服用してください。

用量は年齢や製剤によって異なる

五苓散には、医療機関で医師から処方される「医療用医薬品」と、薬局・ドラッグストアなどで購入できる「一般用医薬品（市販薬）」があります。

医療用医薬品の場合、医師が患者さんの症状や体質に合わせて用量を決めます。
通常は成人で1日7.5g程度を分服することが多いですが、症状によって増減されることもあります。

一般用医薬品（市販薬）の場合、製品の添付文書に年齢別の標準的な用量が記載されています。
成人用量だけでなく、子供向けの用量も示されていることが多いです。
同じ五苓散という名前でも、製品によってエキス顆粒、錠剤、カプセルなど様々な剤形があり、含まれるエキス量や添加物も異なります。
必ず製品ごとの添付文書を確認し、用法・用量を守って服用してください。
子供に服用させる場合は、年齢に応じた用量を確認し、保護者の指導監督のもとで行ってください。

効果が出るまでどれくらい？（効き始め）

五苓散の効果が出るまでの時間は、服用する方の体質や症状、そして症状の種類によって大きく異なります。
「効果出るまで」の期間は、数時間後であることもあれば、数日から数週間かかることもあります。

• 即効性が期待できる場合:
  • 二日酔い: 服用後、比較的速やかに（数時間以内）吐き気や頭痛が和らぐのを実感できることがあります。
  • 急性胃腸炎による水様性下痢・嘔吐: 服用後、数時間で症状が落ち着き始めることがあります。
  • 乗り物酔い: 乗り物に乗る30分〜1時間前に服用することで、予防効果が期待できます。
• ある程度の継続服用が必要な場合:
  • むくみ: 毎日服用することで、数日後からむくみが軽減され始め、効果を実感するまでに1週間～数週間かかることがあります。
  • めまい、頭痛: 体質改善を伴う場合や、慢性的な症状の場合、効果を実感するまでに数週間から1ヶ月以上かかることもあります。
  • 小児の夜尿症: 根気強く服用を続ける必要があり、効果が出るまでに数週間から数ヶ月かかることもあります。

このように、五苓散は症状によって「即効性がある場合」と「体質改善を目指して継続が必要な場合」があります。
「効果出るまで」の期間は個人差が大きいため、すぐに効果が見られなくても、しばらく続けて様子を見ることが大切です。
ただし、添付文書に記載されている服用期間を超えても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合は、漫然と服用を続けずに医師や薬剤師に相談してください。

長期服用は可能か？

五苓散は、慢性的な水滞による症状（例えば、慢性的なむくみやめまい、気圧の変化による頭痛など）に対して、長期的に服用されることもあります。
漢方薬は西洋薬に比べて一般的に副作用が少ないとされていますが、長期にわたって服用する場合は注意が必要です。

特に、一般用医薬品（市販薬）として五苓散を服用する場合、添付文書に「1ヶ月位（急性胃腸炎、二日酔いに服用する場合には5～6回）服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること」のような記載があることが多いです。
これは、自己判断での漫然とした長期服用を避け、専門家の判断を仰ぐことを促すためです。

医療機関で医師の処方を受けている場合は、医師が患者さんの状態を見ながら、必要に応じて長期服用を指示することがあります。
その場合も、定期的に診察を受け、症状の変化や体調を医師に伝えることが重要です。

長期服用が可能かどうか、またどのくらいの期間服用すべきかは、個々の症状や体質によって異なります。
自己判断で長期間服用を続けるのではなく、医師、薬剤師、または登録販売者にご相談の上、適切に服用してください。

五苓散の副作用と服用時の注意点

五苓散は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、薬である以上、副作用が全くないわけではありません。
また、特定の体質や状況では服用に注意が必要です。

知っておきたい主な副作用（まれなケース含む）

五苓散の副作用の発現頻度は低いとされていますが、以下のような症状が報告されています。

• 胃部不快感、食欲不振: まれに、胃がもたれるような不快感や食欲がなくなる症状が出ることがあります。
• 発疹、蕁麻疹: 体質によって、皮膚にかゆみや発疹が出ることがあります。
• その他: ごくまれに、体質や服用量、体調によっては、吐き気や軽い腹痛などが起こる可能性もゼロではありません。

これらの症状が出た場合は、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

また、非常にまれではありますが、漢方薬全体で見られる重篤な副作用として、以下のものも理論的には起こり得るとされています。
ただし、五苓散でこれらの副作用が頻繁に報告されているわけではありません。

• 肝機能障害、黄疸: 全身のだるさ、皮膚や白目が黄色くなる、褐色尿など。
• 間質性肺炎: 空咳、息切れ、発熱など。

これらの症状が出た場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
重篤な副作用は極めてまれですが、体の異常を感じたら放置しないことが重要です。

特に注意が必要な人・ケース（持病、併用薬、体質など）

五苓散を服用する際には、以下のような人は注意が必要です。

• 高齢者: 一般的に生理機能が低下しているため、慎重に投与する必要があります。
• 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳婦: 妊娠中や授乳中の服用については、安全性に関する十分なデータがないため、服用前に必ず医師に相談してください。
  特に妊娠初期は影響が出やすい可能性も考慮し、慎重な判断が必要です。
• 体の虚弱な人、胃腸の弱い人: 五苓散は余分な水分を排出する薬ですが、もともと体力がなく胃腸が弱い人が服用すると、さらに食欲不振などが悪化する可能性があります。
• 他の薬を服用している人: 五苓散に含まれる生薬が、他の薬（特に他の漢方薬や利尿作用のある薬など）と相互作用を起こす可能性もゼロではありません。
  現在服用中の薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。

また、五苓散は体内の余分な水分を排出しますが、もともと水分が不足している体質（陰虚）の人や、脱水症状がある人が服用すると、かえって症状が悪化する可能性があります。
ご自身の体質を理解し、五苓散が合っているかどうかの判断は専門家にご相談ください。

服用を避けるべき「禁忌」

添付文書上、五苓散には明確な「禁忌」（服用してはいけない人）の記載がないことが多いです。
しかし、上記の「特に注意が必要な人」に該当する場合や、以下のような場合は服用を避けるか、医師に相談の上慎重に服用する必要があります。

• 五苓散に含まれる成分に対して、過去にアレルギー反応（発疹、かゆみなど）を起こしたことがある人: 再びアレルギー症状が出る可能性があります。
• 明らかに脱水症状がある人: 五苓散は利水作用があるため、脱水状態を悪化させる可能性があります。
• 重篤な心臓病、腎臓病などがある人: 水分代謝に影響を与える薬であるため、これらの持病がある場合は病状に影響を与える可能性があります。

これらの注意点や禁忌事項は、製品や個々の体質、症状によって判断が異なります。
五苓散を服用する前には、必ず医師、薬剤師、または登録販売者に相談し、ご自身の状態に適しているかを確認するようにしましょう。
特に、市販薬として購入する場合も、添付文書をよく読み、不安な点は専門家に質問することが大切です。

五苓散に関するよくある質問（Q&A）

五苓散について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

五苓散は風邪（感冒）に効く？どんな風邪症状に？

五苓散は、風邪そのものを治す薬ではありませんが、風邪に伴う特定の症状に対して効果が期待できる場合があります。

風邪の初期症状で、ゾクゾクする寒気、発熱、頭痛、そして水っぽい鼻水や薄い色の痰が出る場合、また吐き気や下痢を伴うような風邪の場合、漢方では「水滞」が関わっていると考えることがあります。
このような症状に対して、五苓散の利水作用や胃腸の働きを整える作用が効果を発揮し、症状を和らげることが期待できます。

特に、

• 体が冷えて、透明でサラサラした鼻水が止まらない
• 風邪のひきはじめに吐き気や下痢を伴う
• 風邪による頭痛が、水分を摂ると悪化するような気がする

といった症状に五苓散が使われることがあります。
ただし、熱が高く体の水分が消耗している場合や、粘りのある黄色い痰が出るような場合など、風邪の症状や体質によっては五苓散が適さないこともあります。

風邪の症状で五苓散を試したい場合は、ご自身の症状が五苓散の適応に合うか、医師や薬剤師、登録販売者に相談することをお勧めします。

五苓散で痩せる？ダイエット効果はある？（減肥）

結論から言うと、五苓散は直接的に脂肪を分解したり、体重を減らしたりする「痩せ薬」や「ダイエット薬」ではありません。

しかし、五苓散は体内の余分な水分を排出し、むくみを改善する効果があります。
体重が増えている原因が「むくみ」である場合、五苓散の服用によってむくみが解消されることで、一時的に体重が減少したり、体がスッキリしたと感じたりすることはあります。

特に、

• 朝と夕方で体重や足の太さが大きく変わる
• 指輪がきつくなったり、靴がきつくなったりする
• 体が重だるく、むくみを感じやすい

といった「むくみ太り」の傾向がある方には、むくみ解消による体形の変化が期待できる可能性があります。

ですが、五苓散は脂肪自体には作用しません。
脂肪を減らしたい場合は、バランスの取れた食事や適度な運動が必要です。
五苓散を「痩せる薬」として安易に服用することは避けましょう。
むくみによる不調を改善したい場合に、補助的に用いることを検討するのが適切な考え方です。

五苓散はどこで買える？医療用と市販薬の違いは？

五苓散は、医療機関で医師から処方される「医療用医薬品」と、薬局やドラッグストア、インターネット通販などで購入できる「一般用医薬品（市販薬）」があります。

医療用医薬品:

• 医師の診察を受けて処方箋をもらい、薬局で受け取ります。
• 患者さんの症状や体質に合わせて、医師が最適な用量や他の薬との組み合わせを判断します。
• 健康保険が適用される場合が多いです（保険診療の場合）。
• 品質や安全性がより厳密に管理されています。

一般用医薬品（市販薬）:

• 医師の処方箋なしに、薬局やドラッグストア、インターネット通販などで購入できます。
• 様々な製薬会社から、エキス顆粒、錠剤、カプセルなど多様な剤形、パッケージで販売されています。
• 製品によって、含まれる五苓散エキスの量や添加物などが異なります。
• 製品の添付文書に記載された効能・効果、用法・用量を守って、自己判断または薬剤師・登録販売者のアドバイスを受けて購入・服用します。
• 価格は製品や販売店によって異なります。

項目	医療用医薬品	一般用医薬品（市販薬）
購入方法	医師の処方箋が必要	薬局、ドラッグストア、ネット通販などで購入可能
専門家関与	医師が診断・処方。薬剤師が調剤・説明。	薬剤師、登録販売者が情報提供・相談対応（販売場所による）
保険適用	保険適用される場合が多い	保険適用外（自己負担）
品質管理	医療用としての厳しい基準を満たす	一般用医薬品としての基準を満たす
剤形・容量	医師の指示による。特定のメーカー品。	多様なメーカー、剤形、容量から選択可能。
自己判断	不可	可能（添付文書確認必須、専門家相談推奨）

ご自身の症状が五苓散の適応に合うか自信がない場合や、持病がある、他の薬を服用している、妊娠・授乳中であるといった場合は、まずは医療機関を受診し、医師に相談するのが最も安心です。
比較的軽度な症状や、過去に五苓散を服用して効果があったなどの経験がある場合は、薬局などで専門家（薬剤師や登録販売者）に相談の上、市販薬を選択することも可能です。
購入する際は、信頼できる販売店を選び、添付文書をよく確認することが大切です。

五苓散と猪苓湯はどう違う？選び方のポイント

五苓散と猪苓湯（チョレイトウ）は、どちらも漢方医学において「利水剤」と呼ばれる、体内の余分な水分を排出する目的で用いられる漢方薬です。
しかし、その構成生薬や得意とする症状には違いがあります。

五苓散:

• 構成生薬: 茯苓、沢瀉、猪苓、白朮/蒼朮、桂皮
• 得意な症状: 全身の「水滞」による幅広い症状。むくみ、めまい、頭痛、二日酔い、急性胃腸炎（水様性下痢・嘔吐）、乗り物酔い、暑気あたりなど。桂皮が含まれることで、体の冷えに伴う水滞にも用いられやすい傾向があります。

猪苓湯:

• 構成生薬: 猪苓、茯苓、沢瀉、阿膠（アキョウ）、滑石（カッセキ）
• 得意な症状: 下部尿路系の炎症に伴う症状。排尿痛、残尿感、頻尿、血尿など。膀胱炎や尿道炎などに伴う症状によく用いられます。阿膠（ゼラチン質）が含まれることで、体の潤いを補いながら余分な熱や水分を排出する働きがあり、比較的熱感や炎症を伴う症状に適しています。

項目	五苓散	猪苓湯
構成生薬	茯苓、沢瀉、猪苓、白朮/蒼朮、桂皮	猪苓、茯苓、沢瀉、阿膠、滑石
主な作用	全身の利水、水分バランス調節、胃腸機能調節	下部尿路系の利水、清熱（熱を取り除く）、滋潤（潤いを補う）
得意な症状	むくみ、めまい、頭痛、二日酔い、水様性下痢、嘔吐、乗り物酔い、暑気あたり	排尿痛、残尿感、頻尿、血尿（膀胱炎など下部尿路系炎症症状）
適した体質傾向	比較的体力が中等度、冷えを伴う水滞にも対応	比較的熱感や炎症を伴う、体に必要な潤いを保ちたい場合

選び方のポイント:

• 全身的な水の偏り（むくみ、めまい、頭痛、胃腸の不調など）が気になる場合は、五苓散が適している可能性が高いです。
• 膀胱炎など、尿道や膀胱の炎症に伴う排尿時の痛みや不快感、血尿といった症状が主である場合は、猪苓湯がより適していると考えられます。

ただし、これらの判断は難しいため、ご自身の症状や体質に合わせてどちらの漢方薬を選ぶべきか迷う場合は、必ず医師、薬剤師、または登録販売者にご相談ください。

妊娠中や授乳中に飲める？

妊娠中または妊娠している可能性のある女性、および授乳中の女性が五苓散を服用する場合は、必ず事前に医師に相談してください。

漢方薬は自然由来の生薬からできていますが、妊娠中や授乳中の服用に関する安全性データが十分ではない場合があります。
五苓散に含まれる生薬が、妊娠経過や胎児、あるいは母乳に影響を与える可能性もゼロではありません。

医師は、妊婦さんや授乳婦さんの体の状態、症状の程度、五苓散を服用することのメリットとリスクを総合的に判断し、服用が可能かどうか、適切な用量などを指示します。
自己判断での服用は避け、必ず専門家の指導のもとで行うようにしてください。

子供に飲ませても大丈夫？

五苓散は、子供にも用いられることがある漢方薬です。
特に、小児の夜尿症（おねしょ）や、子供の急性胃腸炎、乗り物酔いなどに用いられることがあります。

一般用医薬品（市販薬）の五苓散の中には、子供向けの用量が添付文書に記載されている製品も多くあります。
子供に服用させる場合は、製品の添付文書に記載されている年齢に応じた用法・用量を守り、保護者の指導監督のもとで行ってください。

ただし、子供は大人に比べて体の機能が未熟なため、予期せぬ反応が出ないとも限りません。
初めて子供に五苓散を服用させる場合や、気になる症状がある場合は、小児科医や漢方に詳しい医師、薬剤師に相談してから服用させるのがより安心です。

他の漢方薬やサプリメントとの飲み合わせは？

漢方薬同士や、漢方薬と西洋薬、サプリメントなどを一緒に服用する場合は、相互作用に注意が必要です。

• 他の漢方薬: 複数の漢方薬を併用すると、同じ生薬が重複して含まれることで、生薬の過剰摂取になる可能性があります。
  例えば、五苓散に含まれる桂皮は他の漢方薬にもよく含まれています。
  また、漢方的な働きが相反する漢方薬を一緒に服用すると、効果が打ち消し合ったり、予期せぬ不調が現れたりすることもあります。
• 西洋薬: 五苓散に含まれる生薬が、特定の西洋薬の働きに影響を与えたり、あるいは西洋薬が五苓散の効果に影響を与えたりする可能性も考えられます。
  特に、利尿剤など水分代謝に影響を与える西洋薬を服用している場合は注意が必要です。
• サプリメント: サプリメントに含まれる成分（例えば、利尿作用を謳うハーブ成分など）と五苓散の作用が重複し、影響が出る可能性もゼロではありません。

現在、他の漢方薬、西洋薬、またはサプリメントなどを服用している場合は、五苓散を服用する前に必ず医師、薬剤師、または登録販売者に相談し、飲み合わせについて確認してください。
安全に服用するために非常に重要なステップです。

まとめ：五苓散を理解し、上手に活用するために

五苓散は、漢方医学でいう「水滞（すいたい）」、すなわち体内の水分バランスの乱れによって生じる様々な不調を改善する漢方薬です。
むくみ、めまい、頭痛、二日酔い、急性胃腸炎による下痢や嘔吐、乗り物酔いなど、幅広い症状に用いられます。

五苓散は、茯苓、沢瀉、猪苓、白朮/蒼朮、桂皮という5種類の生薬の組み合わせによって、体内の余分な水分を排泄する利水作用や、水分代謝を整える働きを発揮します。
即効性が期待できる症状もあれば、継続的な服用によって体質改善を目指す必要がある症状もあります。
「効果が出るまで」の期間は症状や個人差が大きいため、根気強く服用することも時には必要です。

比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、まれに胃部不快感や発疹などの副作用が起こる可能性があります。
また、高齢者、妊婦、授乳婦、持病がある方、他の薬を服用している方は、服用前に必ず専門家（医師、薬剤師、登録販売者）に相談が必要です。
自己判断で漫然と服用することは避け、症状が改善しない場合や悪化する場合は専門家の判断を仰ぎましょう。

五苓散は医療機関での処方のほか、薬局やドラッグストアで市販薬としても購入可能です。
購入場所や製品によって、種類や価格、含まれるエキス量などが異なりますので、ご自身の状況に合わせて適切なものを選び、添付文書をよく読んで正しく服用してください。

五苓散は、現代人が抱えやすい「水のトラブル」に対して有効な選択肢となり得る漢方薬です。
しかし、漢方薬の選択は個々の体質や症状を総合的に判断して行うことが重要です。
五苓散について疑問や不安がある場合は、専門家に相談し、ご自身の体に合った方法で上手に活用していくことをお勧めします。

免責事項: 本記事は五苓散に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の製品や治療法を推奨するものではありません。
また、医学的なアドバイスを提供するものではありません。
ご自身の症状や体調に関しては、必ず医師、薬剤師、または登録販売者にご相談ください。
この記事の情報によって生じたいかなる不利益についても、当サイトは責任を負いかねます。