てんかんは、脳の神経細胞の活動が一時的に乱れることで、発作を繰り返す病気です。てんかん治療において重要な役割を担う薬の一つに、「レベチラセタム」があります。この薬は、多くの方の発作をコントロールするために使用されており、その効果や安全性について関心を持つ方が増えています。
この記事では、てんかん治療薬である「レベチラセタム」に焦点を当て、その効果や作用の仕組み、現れる可能性のある副作用、正しい服用方法について詳しく解説します。先発医薬品である「イーケプラ」とジェネリック医薬品の違いについても触れ、レベチラセタムについて知りたい、理解を深めたいと考えている方が、安心して治療に取り組めるよう、正確な情報を提供します。
レベチラセタムの効果・効能
レベチラセタムは、てんかんの発作を抑えるために広く用いられている抗てんかん薬です。脳の神経細胞の過剰な興奮を抑えることで、てんかん発作が起こりにくい状態を維持します。
てんかん発作への作用機序
てんかん発作は、脳内の神経細胞が異常かつ過剰に興奮することによって引き起こされます。この異常な電気活動が、体の動きや感覚、意識などに様々な影響を及ぼすのです。
レベチラセタムの詳しい作用の仕組みはまだ全てが解明されているわけではありませんが、主に以下の作用によっててんかん発作を抑制すると考えられています。
- シナプス小胞タンパク2A(SV2A)への結合: レベチラセタムは、神経終末に存在するシナプス小胞タンパク2A(SV2A)に結合することが分かっています。SV2Aは、神経伝達物質を放出する小胞の働きに関与していると考えられており、レベチラセタムがこれに結合することで、神経伝達物質の過剰な放出を抑制し、神経の過剰な興奮を抑えると考えられています。
- カルシウムチャネルへの作用: 一部の研究では、レベチラセタムが特定のカルシウムチャネルの働きに影響を与え、神経細胞へのカルシウムイオンの流入を調整することで、神経伝達物質の放出を抑制する可能性も示唆されています。
- GABA作動系およびグルタミン酸作動系への影響: てんかん発作は、脳内の抑制性の神経伝達物質(GABAなど)と興奮性の神経伝達物質(グルタミン酸など)のバランスが崩れることでも起こりやすくなります。レベチラセタムは、これらの神経伝達系のバランスを調整する可能性も研究されています。
これらの作用が複合的に働くことで、レベチラセタムは脳の神経活動の過剰な興奮を鎮め、てんかん発作の発生を抑制すると考えられています。
具体的な効能・効果の対象
レベチラセタムは、様々なタイプのてんかん発作に対して効果が認められています。日本の添付文書によると、以下のてんかん発作に対する効果・効能が記載されています。
- てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む): 脳の一部の領域で始まる発作で、意識が保たれる場合(単純部分発作)と、意識が曇ったり失われたりする場合(複雑部分発作)があります。部分発作が脳全体に広がる二次性全般化発作にも効果があります。
- 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作: 突然意識を失い、体が硬直(強直)した後に全身をガクガクと震わせる(間代)発作です。部分発作から移行する二次性全般化強直間代発作だけでなく、最初から脳全体で起こる全般強直間代発作の一部にも、他の薬と併用することで効果が期待できます。
- てんかん患者のミオクロニー発作: 突然、体の一部や全身の筋肉がピクッと瞬間的に収縮する発作です。主に若年性ミオクロニーてんかんで見られます。
レベチラセタムは、これらの発作タイプに対して、単独または他の抗てんかん薬と併用して使用されます。患者さんのてんかんのタイプや重症度に応じて、医師が他の薬との組み合わせや用量を決定します。
レベチラセタムの副作用と注意点
どのような薬にも副作用のリスクは伴います。レベチラセタムも例外ではなく、服用中に様々な副作用が現れる可能性があります。特に、一部の副作用については、患者さんやご家族が「やばいのでは?」と不安を感じやすいものもあります。副作用について正しく理解し、早期に発見して対処することが重要です。
知っておきたい重大な副作用
レベチラセタムの服用中に、頻度は低いものの、注意が必要な重大な副作用が報告されています。これらの副作用の初期症状や兆候を知っておくことは、早期の医療機関への相談につながり、重症化を防ぐために非常に大切です。
精神神経系の副作用(「やばい」と言われる症状を含む)
レベチラセタムの副作用として、精神状態や行動の変化が比較的多く報告されており、これが一部で「やばい」といった表現につながることがあります。これらの症状は、薬の作用が脳に影響することで起こると考えられます。
- 易刺激性・攻撃性・怒り: 普段よりも些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったり、攻撃的な言動が見られることがあります。
- 興奮・不穏・不安: 落ち着きがなくなったり、ソワソワしたり、漠然とした不安を感じたりすることがあります。
- 精神病性障害(幻覚、妄想など): 現実にはないものが見えたり聞こえたりする(幻覚)、根拠のない確信を持つ(妄想)などの症状が現れることがあります。
- 自殺企図・自殺関連行為: 気分が落ち込み、死にたいと考えたり、自殺を試みる行動が現れることがあります。抗てんかん薬全般で、このようなリスクが報告されています。
- 抑うつ: 気分が沈み込み、興味や喜びを感じられなくなる、食欲不振、睡眠障害などが現れることがあります。
- 錯乱状態: 意識がはっきりせず、場所や時間、人物の認識が曖昧になったり、話の辻褄が合わなくなったりすることがあります。
- 幻覚・妄想: 上記の精神病性障害に含まれますが、特に目立つ症状として現れることがあります。
これらの精神神経系の症状は、服用開始初期や用量変更時に現れやすい傾向がありますが、いつ起こるかわかりません。患者さんご自身だけでなく、ご家族など周囲の方も患者さんの様子を注意深く観察することが重要です。もし、これらの症状が現れた場合は、自己判断で服用を中止せず、速やかに医師や薬剤師に相談してください。 用量の調整や他の薬への変更など、適切な対応が必要となります。
血液関連の副作用
血液中の細胞成分に異常が現れることがあります。
- 無顆粒球症、白血球減少、好中球減少: 感染と戦う白血球や好中球が減少することで、感染症にかかりやすくなります。発熱、のどの痛み、だるさなどの症状に注意が必要です。
- 汎血球減少症: 赤血球、白血球、血小板の全てが減少する状態です。貧血によるめまいや息切れ、感染症にかかりやすくなる、出血しやすくなるなどの症状が現れることがあります。
- 血小板減少症: 血液を固める働きを持つ血小板が減少することで、鼻血や歯茎からの出血が止まりにくい、皮下出血(青あざ)ができやすいなどの症状が現れることがあります。
定期的な血液検査で早期に発見されることが多いですが、もし上記のような症状に気づいた場合は、すぐに医師に連絡してください。
肝機能障害・膵炎
まれに、肝臓や膵臓に影響が出ることがあります。
- 肝機能障害: AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの肝臓に関する酵素の数値が上昇したり、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れたりすることがあります。
- 膵炎: 膵臓に炎症が起こり、上腹部の激しい痛み、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れることがあります。
これらの症状に気づいた場合も、速やかに医師に相談が必要です。
皮膚障害(薬疹など)
重篤な皮膚の副作用が報告されています。
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群): 発熱、目の充血、唇や口の中のただれ、全身の赤い発疹などが現れ、進行すると皮膚が剥がれ落ちてしまう重篤なアレルギー反応です。
- 多形紅斑: 円形の赤い発疹が特徴で、中心部が水疱になったり黒くなったりすることもあります。
これらの初期症状に気づいたら、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
その他の一般的な副作用
重大な副作用ほどではないものの、比較的多く見られる一般的な副作用もあります。これらの多くは軽度で、服用を続けるうちに軽減したり消失したりすることがあります。
- 傾眠(眠気): 特に服用開始初期に多く見られます。
- 浮動性めまい: 体がフワフワするような、不安定な感じがすることがあります。
- 頭痛
- 倦怠感: だるさや疲れやすさを感じることがあります。
- 食欲不振
- 吐き気
- 下痢
- 鼻咽頭炎(鼻水、鼻づまり、のどの痛みなど)
- 疲労
- 攻撃性
- 神経過敏
- イライラ感
- 不眠症
これらの一般的な副作用が現れた場合でも、症状が辛い場合や、日常生活に支障をきたす場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談してください。用量の調整などで対応できることがあります。
服用にあたっての重要な注意点
レベチラセタムを安全かつ効果的に服用するためには、いくつか知っておくべき重要な注意点があります。
- 自己判断での中断・減量は絶対にしないこと: てんかん治療は、発作を抑制することで脳へのダメージを防ぎ、日常生活の質を維持することが目的です。自己判断で薬を急に中止したり減量したりすると、てんかん発作が再び起こりやすくなったり、重積発作(発作が短時間に繰り返し起こったり、長時間続いたりする危険な状態)を誘発したりするリスクがあります。薬の量や飲み方を変更したい場合は、必ず医師の指示に従ってください。
- 眠気やめまいに注意: レベチラセタムは眠気やめまいを引き起こすことがあります。服用中は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作など、集中力が必要な作業を行う際には十分注意が必要です。これらの症状が強く現れる場合は、医師に相談してください。
- アルコールとの併用: アルコールはてんかん発作を誘発する可能性があり、またレベチラセタムの眠気やめまいといった副作用を増強させる可能性があります。服用中は、アルコールの摂取を控えるか、医師に相談するようにしてください。
- 他の薬との飲み合わせ: 他の抗てんかん薬や、風邪薬、サプリメントなど、現在服用している全ての薬について、医師や薬剤師に必ず伝えてください。薬の相互作用によって、レベチラセタムの効果が弱まったり、副作用が出やすくなったりすることがあります。特に、中枢神経系に作用する薬(睡眠薬、精神安定剤など)との併用には注意が必要です。
- 妊娠・授乳について: 妊娠中や授乳中のレベチラセタムの服用については、必ず医師に相談してください。てんかん発作をコントロールすることは重要ですが、薬が胎児や乳児に影響を与える可能性も考慮し、医師がリスクとベネフィットを判断します。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりしないでください。
- 腎機能障害のある方: レベチラセタムは主に腎臓から排泄されます。腎臓の働きが低下している方(腎機能障害患者)は、薬が体に溜まりやすくなるため、用量の調節が必要です。必ず医師に腎機能の状態を伝えてください。
- 精神的な変化に注意: 前述の通り、精神神経系の副作用は注意が必要です。患者さんご自身だけでなく、ご家族や周囲の方も患者さんの気分の落ち込み、イライラ、攻撃性、いつもと違う言動などに気づいたら、すぐに医師に連絡してください。
これらの注意点を守り、医師や薬剤師の指導のもとで正しく服用することが、てんかん治療を安全に進める上で非常に重要です。
レベチラセタムの用法・用量
レベチラセタムの用法・用量は、患者さんの年齢、体重、てんかんの種類、腎臓の機能などによって細かく調整されます。医師の指示に従い、定められた用法・用量を守ることが非常に重要です。
成人の標準的な投与方法
成人では、通常、レベチラセタムの服用は少量から開始し、患者さんの状態や効果、副作用の発現を見ながら、徐々に用量を増やしていきます(漸増)。これは、副作用を最小限に抑えつつ、最適な効果が得られる量を見つけるためです。
- 開始用量: 通常、1日500mgから開始します。これを1日2回(朝と夕)に分けて服用します。例えば、朝に250mg錠を1錠、夕に250mg錠を1錠といった形です。
- 維持用量: 効果や忍容性(副作用が出ないか)を確認しながら、通常2週間以上の間隔をあけて1日量として500mgずつ増量されます。最終的な維持用量は、患者さんによって異なりますが、一般的には1日1000mg~3000mgの範囲で、1日2回に分けて服用することが多いです。
- 最大用量: 患者さんの状態や、他の抗てんかん薬との併用状況によっては、1日4000mgまで増量されることもあります。ただし、これはあくまで最大の目安であり、多くの場合はそれ以下の用量で十分な効果が得られます。
用量の調整は、必ず医師の指示のもとで行われます。自己判断での増量や減量は避けてください。
小児への投与方法
小児においても、レベチラセタムは体重や年齢に応じて用量が調整されます。
- 4歳以上の小児: 通常、体重を目安に用量が決定されます。開始用量は1日20mg/kg(体重1kgあたり20mg)で、これを1日2回に分けて服用します。例えば、体重20kgの小児であれば、1日400mg(1回200mgを1日2回)から開始します。
増量は、効果や副作用を確認しながら、2週間以上の間隔をあけて1日量として20mg/kgずつ行われます。維持用量は通常1日20mg/kg~60mg/kgの範囲で、1日2回に分けて服用します。 - 生後1ヶ月以上4歳未満の乳幼児・小児: こちらも体重を目安に用量が決定されます。開始用量は1日14mg/kgで、これを1日2回に分けて服用します。増量は、効果や副作用を確認しながら、2週間以上の間隔をあけて1日量として14mg/kgずつ行われます。維持用量は通常1日14mg/kg~42mg/kgの範囲で、1日2回に分けて服用します。
小児の場合、成長に伴って体重が変化するため、定期的に用量の見直しが必要になることがあります。また、錠剤を服用するのが難しい場合は、後述する内服液やドライシロップといった剤形が用いられます。
腎機能障害患者への投与量調節
レベチラセタムは主に腎臓から体外に排泄されるため、腎臓の機能が低下している患者さん(腎機能障害患者)では、薬が体内に蓄積しやすくなり、副作用が現れやすくなる可能性があります。そのため、腎機能の状態に応じて用量を調節する必要があります。
腎機能の程度は、クレアチニンクリアランス(腎臓が血液中の老廃物であるクレアチニンをどれだけ efficientlyに除去できるかを示す指標)を目安に評価されます。医師は、このクレアチニンクリアランス値に基づいて、レベチラセタムの開始用量や維持用量を減量するなど、適切な用量調節を行います。
透析を受けている患者さんでは、透析によってレベチラセタムが体内から除去されてしまうため、透析後に薬を追加で服用する必要がある場合もあります。
腎機能障害がある場合は、必ず医師にその旨を伝え、指示された用量を厳守することが重要です。
剤形ごとの投与方法(錠剤、内服液など)
レベチラセタムには、患者さんの年齢や服用しやすさに応じて、いくつかの剤形があります。それぞれの剤形によって、服用方法に若干の違いがあります。
剤形 | 特徴 | 主な対象 | 服用方法例 |
---|---|---|---|
錠剤 | 標準的な剤形。様々な規格(250mg, 500mgなど)がある。 | 成人、錠剤を服用できる小児 | 割線があるものは割って用量調節が可能。水またはぬるま湯で服用。 |
内服液 | 水に溶かさずにそのまま服用できる液剤。用量調節がしやすい。 | 小児、錠剤の服用が困難な成人 | 専用のシリンジや計量カップで正確な量を計り取る。水で薄めずにそのまま服用。 |
ドライシロップ | 細粒で、水に溶かしてシロップ状にして服用する。味がついている場合が多い。 | 乳幼児、小児 | 添付の溶解用スプーンなどで正確な量を計り、少量の水で溶かしてから服用。 |
点滴静注液 | 点滴で投与する製剤。経口での服用が一時的に困難な場合などに使用される。 | 経口での服用が困難な患者、緊急時 | 医療機関において、点滴によって静脈内に投与される。 |
どの剤形を使用する場合でも、医師から指示された用量を正確に計り取って服用することが非常に重要です。特に内服液やドライシロップは、計量ミスがないように注意が必要です。飲み忘れを防ぐために、服用時間を決めたり、服薬カレンダーを利用したりする工夫も有効です。
レベチラセタムの製品情報:先発医薬品と後発医薬品
レベチラセタムという有効成分を含む薬には、最初に開発・販売された「先発医薬品」と、その後に開発された「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」があります。
先発医薬品「イーケプラ」について
レベチラセタムを有効成分とする先発医薬品は、「イーケプラ」という名称で販売されています。イーケプラは、ユーシービー(UCB)というベルギーの製薬会社によって開発されました。日本国内では、イーケプラ錠、イーケプラ内服液、イーケプラ点滴静注液が販売されています。
イーケプラは、てんかん治療薬として長年にわたり使用されており、豊富な臨床データがあります。医師や患者さんの間での認知度も高い薬です。
後発医薬品(ジェネリック)について
先発医薬品であるイーケプラの物質特許が切れた後に、他の製薬会社から製造・販売されるようになったのが、レベチラセタムを有効成分とする後発医薬品、いわゆる「ジェネリック医薬品」です。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同じ有効成分を、同じ量だけ含んでおり、品質、効果、安全性が先発医薬品と同等であることが国の厳しい基準で認められています。有効成分が同じであるため、てんかん発作を抑える効果も、先発医薬品であるイーケプラと同等であると考えられています。
ジェネリック医薬品の最大のメリットは、価格が先発医薬品よりも安価である点です。開発にかかる費用が先発医薬品ほどではないため、薬価を抑えることができます。てんかん治療は長く続くことが多いため、薬代の負担を軽減できるジェネリック医薬品を選択する患者さんも増えています。
ただし、ジェネリック医薬品は、有効成分以外の添加物(薬の形を整えたり、味をつけたりするものなど)や製造方法が先発医薬品と異なる場合があります。これにより、薬の溶け方や体内への吸収速度にわずかな違いが生じる可能性はゼロではありません。また、添加物の違いによって、まれにアレルギー症状が出たり、味が苦手だったりといった個人差が生じることもあります。
ジェネリック医薬品への切り替えを検討する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。患者さんの状態や、これまでの治療経過などを踏まえて、適切かどうかを判断してもらえます。
レベチラセタムの様々な剤形
イーケプラおよびレベチラセタムのジェネリック医薬品には、患者さんの年齢や病状、服用しやすさに応じて、いくつかの剤形が用意されています。
剤形 | イーケプラ製品 | ジェネリック製品の有無 | 主な特徴・使用場面 |
---|---|---|---|
錠剤 | イーケプラ錠(250mg, 500mg) | 有 | 最も一般的な剤形。用量調節のために割線があるものも。 |
内服液 | イーケプラ内服液(100mg/mL) | 有 | 液体のため用量調節が容易。錠剤が飲めない小児や成人、チューブからの投与などに適している。 |
ドライシロップ | イーケプラドライシロップ(50%) | 有 | 水に溶かしてシロップ状にして服用。特に乳幼児や小児で服用しやすいように味がついていることが多い。溶解後に味の調整が可能な製品も。 |
点滴静注液 | イーケプラ点滴静注液(500mg/5mL) | 有 | 経口での服用が一時的に困難な場合(手術前後、意識障害など)、またはてんかん重積状態の初期治療などに医療機関で使用される。 |
これらの剤形の中から、患者さんの状態やライフスタイルに合わせて、医師が最適なものを選択します。例えば、小さな子供にはドライシロップや内服液、嚥下(飲み込み)が難しい高齢者には内服液などが選ばれることが多いです。
レベチラセタムに関するよくある質問(Q&A)
レベチラセタムについて、患者さんやご家族が抱きやすい疑問とその回答をまとめました。
レベチラセタムは何に効く薬ですか?
レベチラセタムは、てんかんによって引き起こされる様々なタイプの発作を抑えるための抗てんかん薬です。具体的には、脳の一部の領域で始まる「部分発作(二次性全般化発作を含む)」、全身が硬直して震える「強直間代発作」、体の筋肉がピクッと瞬間的に収縮する「ミオクロニー発作」などに効果があります。単独で使用される場合と、他の抗てんかん薬と併用される場合があります。発作を完全に無くすことを目指すのではなく、発作の回数や程度を減らし、日常生活への影響を最小限に抑えることを目的とします。
レベチラセタムの重大な副作用には何がありますか?
頻度は低いものの、注意が必要な重大な副作用がいくつか報告されています。特に重要なのは、精神神経系の副作用です。イライラ、怒りっぽくなる、攻撃的な言動、落ち着きのなさ、不安、抑うつ、幻覚、妄想、さらには自殺企図や自殺関連行為などが含まれます。「やばい」と感じやすいこれらの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。
その他にも、血液の異常(白血球や血小板の減少など)、肝機能障害、膵炎、重篤な皮膚障害(薬疹など)などが報告されています。これらの初期症状にも注意し、異常を感じたら速やかに医療機関を受診することが大切です。
レベチラセタムとイーケプラの違いは何ですか?
レベチラセタムは薬の「有効成分」の名前です。イーケプラは、このレベチラセタムを有効成分として、最初に開発・販売された「先発医薬品」の製品名です。
イーケプラの特許期間が終了した後に、他の製薬会社から同じ有効成分(レベチラセタム)で製造・販売されるようになったのが、「レベチラセタム」という名称の「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」です。
有効成分も量も同じであるため、効果や安全性は同等とされています。主な違いは、価格です。ジェネリック医薬品の方が、一般的に薬価が安く設定されています。また、有効成分以外の添加物や剤形(錠剤の色や形、シロップの味など)が異なる場合があります。どちらの薬を服用するかは、医師や薬剤師と相談して決めることができます。
飲み忘れてしまったらどうすれば良いですか?
レベチラセタムは、体内の薬の濃度を一定に保つことがてんかん発作の抑制に重要です。飲み忘れに気づいた場合は、できるだけ早く飲み忘れた分を服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次から通常通り服用してください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。 過量になり、副作用のリスクが高まります。飲み忘れを繰り返す場合は、医師や薬剤師に相談し、飲み忘れを防ぐための工夫(アラーム設定、服薬カレンダーの利用など)についてアドバイスをもらいましょう。
レベチラセタムを服用すると眠くなりますか?
レベチラセタムの副作用として、眠気(傾眠)やめまいが比較的多く報告されています。特に服用を開始したばかりの頃や、用量を増やした直後に感じやすい傾向があります。これらの症状が現れた場合は、自動車の運転や高所での作業など、危険を伴う活動は避けるようにしてください。症状が強い場合は、医師に相談することで、用量の調整などで対応できる場合があります。
妊娠を希望している、または妊娠してしまったらどうすれば良いですか?
妊娠中や授乳中の抗てんかん薬の服用については、専門的な判断が必要です。てんかん発作が妊娠中や出産時に母子に危険を及ぼす可能性がある一方で、薬が胎児に影響を与える可能性もゼロではありません。
レベチラセタムを服用中に妊娠を希望する場合、あるいは妊娠が分かった場合は、すぐに担当の医師に相談してください。 医師は、患者さんのてんかんの種類、発作の頻度、使用している薬の種類や量などを総合的に判断し、妊娠中のリスクと薬を続けるベネフィットを比較検討します。自己判断で薬を中止したり、量を減らしたりすることは、てんかん発作を悪化させるリスクがあるため、絶対に行わないでください。医師の指導のもと、最も安全な治療法を選択することが重要です。
子供が錠剤をうまく飲めないのですが、どうしたら良いですか?
レベチラセタムには、錠剤以外に内服液やドライシロップといった剤形があります。これらの液剤や細粒の製剤は、錠剤を服用することが難しい乳幼児や小児、嚥下機能が低下した成人の方でも服用しやすくなっています。子供が錠剤を飲むのが難しい場合は、医師や薬剤師に相談し、内服液やドライシロップへの変更が可能かどうか確認してみてください。それぞれの剤形には、正確な量を計り取るための専用の器具(シリンジや計量カップなど)が添付されていることが多いので、使用方法をよく確認してください。
参考文献・情報源
- イーケプラ錠 添付文書
- イーケプラ内服液 添付文書
- イーケプラドライシロップ 添付文書
- イーケプラ点滴静注液 添付文書
- くすりのしおり(イーケプラ錠など)
- 各社ジェネリック医薬品(レベチラセタム)の添付文書情報
(これらの情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトなどで閲覧可能です。)
免責事項:
この記事は、てんかん治療薬レベチラセタムに関する一般的な情報を提供することを目的としています。個別の病状や治療に関する具体的なアドバイスは、必ず医師や薬剤師にご相談ください。ここに記載された情報のみに基づいて、ご自身の判断で薬の服用を中止したり、用量を変更したりすることは危険です。また、記事の内容は可能な限り正確を期していますが、医学知識は日々進歩しており、全ての最新情報を網羅しているものではありません。