ジアゼパムの効果と副作用|「やばい」と言われる注意点とは?

ジアゼパムは、不安や緊張をやわらげる効果を持つお薬です。
様々な症状に対して処方されるため、名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。
しかし、その効果だけでなく、副作用や使用上の注意点についても正しく理解しておくことが非常に重要です。
この記事では、ジアゼパムの専門的な情報に基づき、その効果、副作用、そしてインターネットなどで「やばい」と言われることがある危険性について、分かりやすく解説します。
安全かつ効果的に使用するために、ぜひ最後までお読みください。

目次

ジアゼパムとは?ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴

ジアゼパムは、ベンゾジアゼピン(Benzodiazepine: BZD)系と呼ばれる薬物グループに属する薬剤です。
ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳内の神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)の働きを強めることで作用を発揮します。
GABAは神経の興奮を抑える役割を持っており、GABAの作用が増強されることで、不安や緊張の緩和、鎮静、催眠、抗けいれん、筋弛緩といった様々な効果が得られます。

ジアゼパムは、ベンゾジアゼピン系薬剤の中でも比較的古くから使用されている薬剤の一つです。
その薬効プロファイルから、不安障害、パニック障害、不眠症、てんかん、痙攣、手術前の鎮静など、幅広い疾患や症状に対して用いられます。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、その作用時間の長さによって「超短時間型」「短時間型」「中間時間型」「長時間型」に分類されます。
ジアゼパムは、体内での代謝が比較的遅く、薬の血中濃度が半分になるまでの時間(半減期)が長いことから、長時間作用型に分類されます。
この長時間作用型であるという特徴が、ジアゼパムの効果の持続性や、後述する注意点に関わってきます。

ジアゼパムは、中枢神経系に作用するため、医師の処方箋がなければ入手できません。
これは、その効果の高さと共に、適切に使用しないと副作用や依存のリスクがあるためです。
必ず医師の指示に従って服用する必要があります。

ジアゼパムの効果・効能:不安、緊張、睡眠への作用

ジアゼパムは、その多面的な薬理作用により、様々な精神神経系の症状や身体的な不調に対して効果を発揮します。
主な効果・効能は以下の通りです。

  • 抗不安作用: 脳内のGABA受容体に作用し、神経活動の過剰な興奮を抑えることで、不安感やイライラ感、焦燥感といった精神的な症状を和らげます。
    神経症における不安・緊張、うつ病に伴う不安・緊張などに用いられます。
  • 鎮静・催眠作用: 精神的な興奮を鎮め、落ち着かせる効果があります。
    不眠症、特に寝つきが悪い場合や夜中に目が覚めてしまう場合に、睡眠を促す目的で使用されることがあります。
    ただし、ジアゼパムは長時間作用型のため、睡眠目的で毎日使用すると翌日に眠気やだるさが残る可能性があります。
  • 筋弛緩作用: 筋肉の緊張を和らげる効果があります。
    腰痛や肩こりなど、筋肉の緊張が原因で生じる痛みを緩和する目的で用いられることがあります。
    また、脳性麻痺や脊髄損傷などによる痙縮(筋肉のつっぱり)の治療にも使用されます。
  • 抗けいれん作用: 神経細胞の異常な興奮を抑えることで、けいれん発作を予防・抑制する効果があります。
    てんかんの部分発作や強直間代発作、熱性けいれん、さらには手術中や麻酔からの覚醒時のけいれん抑制など、幅広いけいれんに対して使用されます。
  • 麻酔前投薬: 手術や検査の前に患者さんの不安や緊張を和らげ、リラックスさせる目的で使用されます。
    また、麻酔の効果を補強する作用もあります。
  • アルコール離脱症状の緩和: アルコール依存症患者さんが断酒する際に現れる、手の震え、発汗、不安、けいれんなどの離脱症状を和らげるために使用されることがあります。

このように、ジアゼパムは一つの薬で様々な効果を持つため、多岐にわたる病態に対して処方されることがあります。
しかし、これらの効果は対症療法であり、病気の根本原因を治療するものではありません。
また、個々の患者さんの症状や体質、他の病気の有無などによって、効果の現れ方や最適な用量は異なります。
必ず医師の診断に基づき、適切な用量・期間で使用することが重要です。

ジアゼパムの副作用:眠気、ふらつき、依存性など

ジアゼパムは効果が高い一方で、いくつかの副作用が知られています。
副作用の出現頻度や程度には個人差があり、すべての人に起こるわけではありませんが、主な副作用について理解しておくことは安全な使用のために不可欠です。

ジアゼパムの主な副作用として、以下のようなものが挙げられます。

  • 眠気、傾眠: 最も頻繁に見られる副作用です。
    日中の眠気や、ぼんやりする感じ(傾眠)が現れることがあります。
    ジアゼパムは長時間作用型のため、効果が翌日まで持ち越されやすい傾向があります。
  • ふらつき、めまい: 特に高齢者や体の弱っている方で起こりやすい副作用です。
    平衡感覚に影響を与え、転倒のリスクを高める可能性があります。
  • 運動失調: 協調運動がうまくできなくなる状態です。
    ろれつが回らない、歩き方が不安定になるなどの症状が現れることがあります。
  • 倦怠感、脱力感: 体がだるく感じたり、力が入りにくくなったりすることがあります。
  • 頭痛: 頻度はそれほど高くないものの、頭痛が生じることがあります。
  • 口渇: 口の中が乾く感じがすることがあります。
  • 消化器症状: 吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘などの症状が現れることがあります。

これらの副作用の多くは、薬の量が多すぎたり、体質に合わなかったりする場合に起こりやすく、用量を調整することで軽減されることがあります。
しかし、最も注意が必要な副作用として、依存性とそれに伴う離脱症状が挙げられます。

依存性:

ベンゾジアゼピン系薬剤は、長期にわたって連用することで、身体的依存や精神的依存を引き起こす可能性があります。

  • 身体的依存: 薬がないと心身の不調が現れる状態です。
    脳が薬の存在を前提とした状態に慣れてしまい、薬が急になくなると体が対応できなくなります。
  • 精神的依存: 薬を服用することで得られる効果(不安が和らぐ、眠れるなど)に精神的に頼ってしまう状態です。
    「薬がないと不安でいられない」「薬を飲まないと眠れない気がする」といった気持ちが強くなります。

ジアゼパムは比較的依存形成のリスクが低いとされていますが、長期間(通常、数ヶ月以上)にわたって高用量で使用した場合、依存性が生じるリスクが高まります。
特に、自身の判断で漫然と使い続けたり、不安や不眠があるたびに安易に服用したりする習慣がついてしまうと、精神的な依存に陥りやすくなります。

離脱症状:

依存が形成された状態で薬を急に中止したり、大幅に減量したりすると、反跳性(リバウンド)の症状や離脱症状が現れることがあります。
離脱症状は、薬の効果によって抑えられていた元の症状(不安、不眠)が強く現れることに加え、以下のような新たな症状が出現することもあります。

  • 精神症状: 強い不安、焦燥感、イライラ感、不眠の悪化、集中力低下、幻覚、妄想
  • 身体症状: 頭痛、吐き気、発汗、手の震え、筋肉のぴくつき、動悸、胃腸の不調、けいれん

これらの離脱症状を避けるためには、自己判断での急な中止や減量を行わないことが非常に重要です。
薬を中止したり減量したりする際は、必ず医師と相談し、症状を見ながら少しずつ(数週間〜数ヶ月かけて)減らしていく漸減法(ぜんげんほう)で進める必要があります。

ジアゼパムの副作用、特に依存性や離脱症状のリスクについては、適切に使用すれば過度に恐れる必要はありません。
重要なのは、医師や薬剤師の指示を厳守し、漫然とした使用を避け、中止や減量が必要な場合は必ず専門家と相談することです。

ジアゼパムの危険性について:「やばい」と言われる理由と安全性

インターネット上などで「ジアゼパムはやばい」「危険な薬だ」といった情報を見かけることがあるかもしれません。
このような言われ方をする背景には、主に以下の要因が考えられます。

  • 依存性のリスク: 前述の通り、長期連用や自己判断による不適切な使用により、依存性が形成されるリスクがあることが「やばい」と言われる大きな理由の一つです。
    特に、薬がないと日常生活に支障をきたすほどの依存状態になってしまうと、薬をやめるのに苦労する可能性があるため、危険視されることがあります。
  • 離脱症状のつらさ: 依存が形成された後の急な中止による離脱症状は、非常に不快でつらいものです。
    強い不安、けいれん、幻覚など、重い症状が現れる可能性もゼロではありません。
    この離脱症状の知識がないまま服用を始め、急に中止してひどい目に遭ったという経験談が、危険なイメージにつながることがあります。
  • 他の薬やアルコールとの相互作用: ジアゼパムは中枢神経抑制作用を持つため、アルコールや他の鎮静作用のある薬剤(睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、一部の鎮痛薬など)と一緒に服用すると、互いの作用が増強され、過度に鎮静されたり、呼吸抑制などの重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
    この相互作用による事故のリスクも「やばい」と言われる要因となり得ます。
  • 注意力・集中力の低下: ジアゼパムの副作用である眠気やふらつき、運動失調は、車の運転や危険を伴う機械の操作中に事故につながる可能性があります。
    この点も、使用上の危険性として認識されています。
  • 乱用のリスク: ベンゾジアゼピン系薬剤は、その精神作用から不法に入手・使用される薬物乱用の対象となることがあります。
    これは正規の医療用途とは全く異なりますが、薬物乱用のニュースなどで取り上げられる際に「危険な薬」というイメージが付いてしまうことがあります。

しかし、これらの「危険性」は、医師の診断のもと、用法・用量を守って適切に使用されている限り、過度に恐れる必要はありません
ジアゼパムは、てんかん発作の重積状態など、生命に関わる状態に使用されることもあるほど、適切に使用すれば非常に有用で安全性の確立された薬です。

ジアゼパムの安全性について正しく理解するために重要な点:

  • 医療専門家の指導: ジアゼパムは必ず医師の処方を受け、薬剤師の説明を聞いてから服用してください。
    自己判断で量を変えたり、勝手に中止したりすることは絶対に避けてください。
  • 短期間の使用: 可能であれば、ジアゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤は、症状が強い時期に限って短期間の使用にとどめることが推奨されています。
    長期的な使用が必要な場合でも、定期的に効果と副作用を評価し、可能な限り減量や中止を検討することが重要です。
  • 離脱症状の回避: 長期間使用している場合は、中止する際に必ず医師の指導のもと、時間をかけてゆっくりと減量してください。
  • 併用薬・アルコールの申告: 他に服用している薬(市販薬やサプリメントを含む)や、アレルギー、持病、飲酒習慣などは、必ず医師や薬剤師に正確に伝えてください。
  • 危険な作業の回避: 服用中は、眠気やふらつきによって注意力や判断力が低下する可能性があるため、車の運転や高所での作業など、危険を伴う作業は避けるようにしてください。

ジアゼパムが「やばい」と言われるのは、不適切な使用によるリスクに焦点が当てられているためです。
正しく理解し、医療専門家の指示に従って使用すれば、多くの患者さんの苦痛を和らげる有効かつ安全な治療選択肢となります。
不安がある場合は、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。

ジアゼパムの用法・用量と効果時間、半減期

ジアゼパムの用法・用量は、治療する症状、患者さんの年齢、体重、体質、症状の重さなどによって医師が個別に決定します。
一般的な成人における経口剤の用法・用量は以下の通りです。

  • 通常成人: 1日2〜10mgを1〜4回に分けて服用します。
  • 重症の場合: 1日最大30mgまで増量されることがあります。
  • 高齢者: 高齢者は薬の代謝・排泄機能が低下していることが多く、少量から開始し、副作用に注意しながら慎重に増量されます。
    通常、1日1回または2回、低用量(例えば2.5mgなど)から開始されることが多いです。
  • 小児: 小児に対しても、適応がある場合には体重や年齢に応じた量が処方されます。
    てんかんなどに対して用いられることがあります。

服用方法は、症状に応じて就寝前や食後に服用する場合があります。
医師の指示された服用方法を厳守してください。

効果時間と半減期:

ジアゼパムは経口服用後、比較的速やかに吸収され、通常30分〜1時間程度で効果が現れ始めます。
血中濃度がピークに達するのは服用後約1〜2時間とされています。
不安や緊張の緩和、鎮静などの効果は、服用後数時間にわたって持続します。

ジアゼパムの最も特徴的な薬物動態の一つが、その長い半減期です。
ジアゼパム自体の半減期は約20〜50時間と非常に長いですが、体内で代謝されてできる活性代謝物(ノルジアゼパムなど)の半減期はさらに長く、約30〜100時間にも及びます。
これは個人差が非常に大きく、特に高齢者や肝機能が低下している人では半減期が著しく延長することがあります。

この長い半減期のため、ジアゼパムは一度服用すると効果が長時間持続し、毎日服用を続けると体内に蓄積されやすいという性質があります。
効果の持続時間は症状や個人によって異なりますが、理論上は血中濃度がある程度保たれるため、1日数回の服用や、症状によっては1日1回の服用でも効果が持続しやすいと考えられます。

半減期が長いことは、薬を中止する際に離脱症状が現れにくいというメリットがある一方で、体内に長く留まるため、副作用(特に眠気やふらつき)が遷延しやすい、毎日服用すると体内に蓄積されて過鎮静などのリスクが高まる、といった注意点もあります。

ジアゼパムの適切な用法・用量や服用タイミングは、医師が患者さんの状態を総合的に判断して決定します。
不明な点や不安な点があれば、必ず処方された医師または薬剤師に確認しましょう。

ジアゼパムの主な商品名とデパスとの比較

ジアゼパムは一般名(成分名)であり、様々な製薬会社から異なる商品名で販売されています。
代表的な商品名としては、古くから使用されているセルシン錠(武田薬品工業)やホリゾン錠(以前は第一三共、現在は製造販売元変更)などがあります。
他にも、成分名そのままのジアゼパム錠として、後発医薬品(ジェネリック医薬品)が多数販売されています。

ジェネリック医薬品は、先発医薬品(セルシン、ホリゾンなど)と有効成分、効果、安全性などが同等であると国によって認められた医薬品であり、一般的に先発医薬品よりも安価です。
医師や薬剤師に相談することで、ジェネリック医薬品を選択することも可能です。

さて、不安や緊張を和らげる薬として、ジアゼパムと同様によく知られている薬にデパス(成分名:エチゾラム)があります。
デパスもベンゾジアゼピン系薬剤ですが、ジアゼパムとはいくつか違いがあります。
ユーザーがデパスと比較して知りたいと思う可能性が高いため、ここで比較してみましょう。

比較項目 ジアゼパム(例:セルシン、ホリゾン) デパス(成分名:エチゾラム)
成分名 ジアゼパム エチゾラム
薬効分類 ベンゾジアゼピン系抗不安薬、筋弛緩薬、抗てんかん薬、鎮静薬 ベンゾジアゼピン系抗不安薬、筋弛緩薬、睡眠導入薬
主な効果 抗不安、鎮静、催眠、筋弛緩、抗けいれん、麻酔前投薬、アルコール離脱 抗不安、鎮静、催眠、筋弛緩
作用時間 長時間作用型(効果の立ち上がりは比較的速い) 短時間〜中間時間作用型(効果の立ち上がりは速い)
半減期 ジアゼパム:約20〜50時間、活性代謝物(ノルジアゼパム):約30〜100時間 エチゾラム:約6時間(個人差が大きい)
依存性リスク 長期・高用量でリスクあり 比較的短期間・低用量でも依存性、特に精神的依存のリスクが指摘されることがある
筋弛緩作用 比較的強い 比較的強い
抗けいれん作用 非常に強い(てんかん発作などに使用される) 弱い(けいれんには通常使用されない)
規制 向精神薬、麻薬及び向精神薬取締法の第二種向精神薬に指定 向精神薬、麻薬及び向精神薬取締法の第三種向精神薬に指定(一部)
剤形 錠剤、細粒、注射剤、坐剤 錠剤、細粒

比較のポイント:

  • 作用時間と半減期: 最大の違いは、ジアゼパムが長時間作用型であるのに対し、デパスは短時間〜中間時間作用型である点です。
    ジアゼパムは効果が長く持続するため、1日の服用回数が少なくて済む場合や、日中の不安を一日中抑えたい場合に適しています。
    一方、デパスは効果の切れ目が比較的はっきりしているため、頓服(症状が出た時に一時的に飲む)や、寝つきを良くするための睡眠導入剤として使用されることが多いです。
  • 効果プロファイル: ジアゼパムは抗けいれん作用が非常に強い点が特徴であり、てんかんなどのけいれん性疾患に広く用いられます。
    デパスは主に抗不安作用と筋弛緩作用、催眠作用に特化しています。
  • 依存性: どちらも依存性のリスクがありますが、デパスは作用の立ち上がりが速く、効果が切れるのも比較的早いため、反跳性不眠や反跳性不安が出やすく、依存を感じやすいという指摘がされることがあります。
    ジアゼパムは半減期が長いため、急な薬切れによる離脱症状はデパスより起こりにくいとされますが、体内に蓄積しやすく、長期連用による依存リスクは十分にあります。
  • 規制: どちらも国の規制を受ける向精神薬です。
    医師の処方箋なしに入手することは法律で禁止されています。

どちらの薬が適しているかは、患者さんの症状の種類、重さ、ライフスタイル、他の病気の有無などを考慮して、医師が総合的に判断します。
自己判断で薬を変更したり、他の人に譲ったりすることは絶対にしないでください。

ジアゼパムの禁忌・併用注意

ジアゼパムは多くの場合安全に使用できますが、特定の状態にある方や、特定の薬剤を服用している方は、ジアゼパムを服用してはいけない(禁忌)場合や、注意が必要(併用注意)な場合があります。
安全な使用のために、必ず医師や薬剤師に自身の健康状態や服用中の薬を正確に伝えてください。

禁忌(以下に該当する方はジアゼパムを服用してはいけません):

  • ジアゼパムまたはベンゾジアゼピン系薬剤に対して過敏症の既往がある方: 過去にジアゼパムや他のベンゾジアゼピン系薬剤でアレルギー反応(発疹、かゆみなど)を起こしたことがある方です。
  • 急性閉塞隅角緑内障の患者さん: 眼圧を上昇させる可能性があり、症状を悪化させる恐れがあります。
  • 重症筋無力症の患者さん: 筋弛緩作用により、筋無力症の症状を悪化させる恐れがあります。
  • 呼吸機能が高度に低下している患者さん(肺性心、肺気腫、気管支喘息の急性期等): 呼吸抑制作用により、呼吸状態をさらに悪化させる恐れがあります。
  • 重症肝障害のある患者さん: ジアゼパムは主に肝臓で代謝されるため、肝機能が著しく低下していると薬が体内に蓄積しやすく、過剰な作用や副作用が現れるリスクが高まります。
  • 急性アルコール中毒の患者さん: 中枢神経抑制作用が増強され、生命に関わる危険な状態になる可能性があります。
  • ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール(抗真菌薬)を投与中の患者さん: これらの薬剤はジアゼパパムの代謝を阻害し、血中濃度を上昇させることで過剰な作用や副作用を引き起こすリスクを高めます。

併用注意(以下に該当する方や、以下の薬剤を服用している方は、医師・薬剤師に相談し、注意して服用する必要があります):

  • 高齢者: 薬の代謝・排泄が遅く、副作用(特に眠気、ふらつき、運動失調)が現れやすいです。
    少量から開始するなど慎重な投与が必要です。
  • 衰弱患者: 体の弱っている方では、少量でも強く作用が出たり、副作用が現れやすいため注意が必要です。
  • 心臓病、腎臓病、肝臓病のある患者さん: 病状によっては薬の代謝や排泄に影響し、血中濃度が変動する可能性があります。
  • 脳に器質的な障害のある患者さん: 脳の機能が低下している場合、少量でも強く作用が出たり、副作用が現れやすいため注意が必要です。
  • 中等度又は重度呼吸不全のある患者さん: 呼吸抑制作用により、呼吸状態を悪化させる可能性があります。
  • うつ病の患者さん: 抗うつ薬と併用されることもありますが、ベンゾジアゼピン系薬剤単独ではうつ病の根本治療にはならず、かえって気分障害を悪化させる可能性が指摘されることもあります。
    また、希死念慮(死にたいと思う気持ち)のある患者さんへの投与は慎重に行う必要があります。

重要な併用注意薬:

  • 中枢神経抑制薬(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠導入薬、鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、アルコールなど): これらの薬剤と併用すると、ジアゼパムの中枢神経抑制作用(眠気、鎮静、呼吸抑制など)が強く現れる可能性があります。
    特にアルコールとの併用は非常に危険です。
  • 筋弛緩薬(スキサメトニウム塩化物水和物、ツボクラリン塩化物塩水和物など): これらの筋弛緩作用を増強する可能性があります。
  • CYP3A4阻害作用を有する薬剤(リトナビル、ダルナビル、エンシトレルビル、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ジルチアゼム、ベラパミル、フルボキサミンなど): これらの薬剤はジアゼパムを分解する酵素(CYP3A4)の働きを妨げるため、ジアゼパムの血中濃度が上昇し、作用が強く現れたり副作用が出やすくなったりします。
  • CYP3A4誘導作用を有する薬剤(カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシンなど): これらの薬剤はジアゼパムを分解する酵素(CYP3A4)の働きを促進するため、ジアゼパムの血中濃度が低下し、効果が弱まる可能性があります。
  • グレープフルーツジュース: CYP3A4阻害作用があるため、ジアゼパムの効果が強く現れる可能性があります。

ここに挙げたものは主なものであり、これ以外の薬剤や食品、サプリメントなどとの相互作用の可能性もあります。
現在服用している全ての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント)について、医師や薬剤師に必ず伝えることが重要です。

ジアゼパムに関するよくある質問

ジアゼパムは何に効く薬ですか?

ジアゼパムは、脳の興奮を抑えることで、主に不安緊張をやわらげる効果があります。
その他にも、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩作用、けいれんを抑える抗けいれん作用、心を落ち着かせる鎮静作用、眠りを促す催眠作用など、複数の作用を持っています。

そのため、不安障害、神経症、うつ病に伴う不安・緊張、不眠症、腰痛や肩こりなどの筋緊張による症状、てんかんなどのけいれん性疾患、手術前の不安緩和など、様々な症状や病気に対して処方されます。

ジアゼパムは麻薬ですか?

いいえ、ジアゼパムは麻薬ではありません。
ジアゼパムは「向精神薬」に分類される薬です。

向精神薬は、脳の中枢神経に作用し、精神機能に影響を与える薬物の総称です。
法律(麻薬及び向精神薬取締法)によって厳しく管理されており、医師の処方箋がなければ入手できません。
これは、依存性や乱用のおそれがあるため、その製造、輸入、輸出、譲渡し、譲り受け、施用などが厳しく規制されているためです。

麻薬も向精神薬と同様に中枢神経に作用し依存性などがありますが、法的な分類が異なります。
ジアゼパムは医療現場で広く使われている薬であり、麻薬とは区別されます。
ただし、適切な管理が必要な薬であることには変わりありません。

ジアゼパムの危険性は?

ジアゼパムの「危険性」として指摘されるのは、主に以下の点です。

  • 依存性: 長期にわたって使用した場合、薬がないといられなくなる依存性が生じるリスクがあります。
  • 離脱症状: 依存ができた状態で急に中止すると、元の症状が悪化したり、体の震え、けいれん、不眠、強い不安などの離脱症状が出現したりすることがあります。
  • 相互作用: アルコールや他の中枢神経抑制薬と一緒に服用すると、作用が強く出すぎて危険な状態になる可能性があります。
  • 注意力・集中力低下: 副作用の眠気やふらつきにより、運転や機械操作中に事故を起こすリスクがあります。

これらの危険性は、自己判断での使用や、医師の指示を守らない場合に高まります。
医師の指導のもと、用法・用量を守って正しく使用すれば、危険性を最小限に抑え、安全に治療効果を得ることができます。
不安な点は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

ジアゼパムは一日何回まで飲めますか?

通常成人におけるジアゼパムの経口剤の用法は、1日2〜10mgを1〜4回に分けて服用とされています。
症状が重い場合は、1日最大30mgまで増量されることもあります。

重要なのは、「1日何回まで」という回数よりも、医師が指示した用法・用量を守ることです。
患者さんの症状や体質によって、1日1回、1日2回、1日3回、あるいは1日4回と、医師が最適な回数を指示します。
例えば、寝る前の不安や不眠に対しては1日1回就寝前に、日中の不安が続く場合は1日複数回に分けて、といった具合に調整されます。

自己判断で指示された回数や量を超えて服用することは、効果の増強にはつながらず、むしろ副作用のリスクを高めるため、絶対に避けてください。
また、飲み忘れた場合も、次の服用時間が近い場合は飲み忘れた分は飛ばし、2回分を一度に服用しないようにしてください。

ジアゼパムを飲んでいても運転できますか?

いいえ、ジアゼパムを服用中は、原則として自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けるべきです。

ジアゼパムは眠気、ふらつき、注意力や集中力の低下、反射運動能力の低下などを引き起こす可能性があります。
これらの副作用が現れると、安全な運転や作業が困難になり、事故につながる危険性があります。

副作用の出方には個人差がありますが、ごく少量でも影響が出る方もいらっしゃいます。
服用している間は、たとえ自分では大丈夫だと思っていても、無意識のうちに判断力や反応速度が鈍っている可能性があります。
法律でも、眠気やめまいなどの副作用がある薬を服用して運転することは禁止されています。

医師からジアゼパムを処方された際には、運転や作業について必ず確認し、医師や薬剤師の指示に従ってください。

ジアゼパムはどれくらいの期間服用できますか?

ジアゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤の服用期間については、症状や目的によって異なります。

  • 短期間使用: 不安や不眠の症状が一時的な場合や、手術前など特定の状況で使用する場合は、数日から数週間といった短期間の服用が推奨されます。
  • 中期間使用: 慢性的な不安障害などで使用する場合でも、可能な限り数ヶ月以内(例えば4ヶ月以内など)に服用を終了するか、最小限の量に減らすことが推奨されています。
  • 長期使用: てんかんなど、特定の疾患に対しては長期にわたって服用が必要な場合もありますが、その場合でも定期的に効果と副作用を評価し、漫然とした使用にならないように配慮されます。

ベンゾジアゼピン系薬剤は、長期連用によって依存性が生じるリスクが高まるため、必要最小限の期間と量で使用することが基本原則です。
服用期間についても、必ず医師の指示に従い、自己判断で長期連用したり、急に中止したりしないようにしてください。
中止や減量が必要な場合は、医師と相談しながら慎々に進めることが非常に重要です。

ジアゼパムを急にやめるとどうなりますか?

ジアゼパムを長期間(通常、数ヶ月以上)服用していた方が、自己判断で急に服用をやめたり、大幅に減量したりすると、離脱症状が出現するリスクがあります。

離脱症状は、薬の効果によって抑えられていた元の症状(不安、不眠など)が強く現れる(反跳性)ことに加え、以下のような症状が出ることがあります。

  • 精神症状: 強い不安、焦燥感、イライラ感、不眠の悪化、悪夢、集中力低下、知覚過敏(光や音に敏感になる)、脱力感、まれに幻覚や妄想
  • 身体症状: 頭痛、吐き気、発汗、手の震え、筋肉のぴくつき、体の痛みやこわばり、動悸、めまい、胃腸の不調、食欲不振、まれにけいれん発作

これらの症状は非常に不快でつらいものであり、重症の場合は日常生活に支障をきたすだけでなく、生命に関わる重篤なけいれん発作を起こす可能性もゼロではありません。

そのため、ジアゼパムを中止または減量する際は、必ず医師の指導のもと、症状を見ながら数週間〜数ヶ月かけてゆっくりと(段階的に)減らしていく「漸減法」を行う必要があります。
自己判断での急な中止は非常に危険ですので絶対に避けてください。

ジアゼパムを飲み忘れた場合はどうすれば良いですか?

ジアゼパムを飲み忘れたことに気づいたタイミングによって対応が異なります。

  • 次の服用時間まで十分に時間がある場合: 気づいた時点で、飲み忘れた分を服用してください。
  • 次の服用時間が近い場合: 飲み忘れた分は服用せず、次の決められた時間に1回分だけ服用してください。

絶対に、飲み忘れた分をまとめて2回分以上一度に服用しないでください。
量を増やしても効果が強くなるわけではなく、眠気やふらつきなどの副作用のリスクが高まります。

飲み忘れが続く場合は、医師や薬剤師に相談してください。
薬を飲むタイミングや回数を見直したり、飲み忘れを防ぐための工夫(服薬カレンダーを使う、服用した記録をつけるなど)についてアドバイスをもらえます。

まとめ:ジアゼパムを理解し、医師・薬剤師に相談を

ジアゼパムは、不安、緊張、不眠、けいれん、筋緊張など、様々な症状や疾患に対して有効なベンゾジアゼピン系薬剤です。
セルシンやホリゾンといった商品名でも知られ、デパス(エチゾラム)と比較されることも多い薬ですが、ジアゼパムは比較的半減期が長く、抗けいれん作用が強いといった特徴があります。

一方で、眠気やふらつきといった副作用や、長期・高用量での使用における依存性、急な中止による離脱症状のリスクも無視できません。
これらのリスクが、「ジアゼパムはやばい」といった懸念につながることがありますが、これは不適切な使用によるものがほとんどです。

ジアゼパムを安全かつ効果的に使用するためには、以下の点が最も重要です。

  • 医師の処方箋に基づき、用法・用量を厳守する。
  • 自己判断で服用量を変えたり、勝手に中止したりしない。
  • 他の服用薬(市販薬、サプリメント含む)、アレルギー、持病、飲酒習慣などを医師・薬剤師に正確に伝える。
  • 服用中は、車の運転や危険な作業を避ける。
  • 長期服用が必要な場合でも、定期的に医師の診察を受け、減量や中止について相談する。
  • 中止・減量が必要な場合は、医師の指導のもと、時間をかけてゆっくりと行う(漸減法)。

ジアゼパムは、適切に使用すれば多くの患者さんのQOL(生活の質)を改善できる有用な薬です。
インターネット上の情報だけでなく、必ず医療専門家である医師や薬剤師から正確な情報を得て、不安な点や疑問点は遠慮なく質問し、ご自身の治療について十分に理解した上で服用しましょう。

【免責事項】

この記事は、ジアゼパムに関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医学的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。
個々の症状や治療に関する判断は、必ず医師にご相談ください。
この記事の情報に基づいて行われたいかなる行動についても、筆者および公開元は一切の責任を負いません。
薬の使用にあたっては、必ず医師または薬剤師の指示に従ってください。

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