七物降下湯の効果・出るまで・副作用|高血圧や頭痛・肩こりに悩む方へ

七物降下湯(しちもつこうかとう)は、高血圧に伴うさまざまな不快な症状、例えば頭重感、肩こり、めまい、動悸、耳鳴りといった悩みに用いられる漢方薬です。これらの症状は、単なる年齢のせいだと思われがちですが、日々の生活の質を大きく低下させる可能性があります。七物降下湯は、東洋医学の考え方に基づいて、体の内側からバランスを整えることで、これらの症状の改善を目指します。

この漢方薬は、比較的体力がない方や、顔色が悪く貧血気味の方に適しているとされています。現代医学的な高血圧治療薬とは異なり、漢方薬は個々の体質や症状の現れ方(これを「証(しょう)」と呼びます)に合わせて処方されるのが特徴です。七物降下湯も例外ではなく、その人に合った場合に効果を発揮しやすいと考えられています。

この記事では、七物降下湯がどのような効果・効能を持ち、どのような成分で構成されているのか、そして服用にあたって知っておくべき副作用や注意点、効果が出るまでの期間について詳しく解説します。ご自身の症状に七物降下湯が合うのか、服用する上での疑問点などを解消するための参考にしてください。

目次

七物降下湯の効果・効能とは

七物降下湯は、主に高血圧に関連して現れる不快な症状の改善に用いられる漢方薬です。漢方医学では、これらの症状は単に血圧が高いことだけでなく、体全体のバランスの乱れ、特に「気(生命エネルギー)」、「血(血液とその働き)」、「水(体液)」の流れの滞りや不足が関係していると考えます。

七物降下湯は、配合されている生薬の働きにより、これらの滞りや不足を補い、体全体の巡りを良くすることで、高血圧に伴うさまざまな症状を和らげることを目指します。

高血圧に伴う随伴症状への効果

七物降下湯は、主に高血圧の治療薬としてではなく、高血圧に「伴って現れる随伴症状」に対して効果を発揮するとされています。血圧を下げる作用自体は、他の漢方薬や西洋薬に比べて穏やか、あるいは限定的であることが多いです。

しかし、血圧が高い状態が続くことで起こりやすい、頭の重さ、首や肩の凝り、体がふらつくようなめまい、ドキドキするといった動悸、耳鳴りといった症状に対しては、体の巡りを改善し、これらの症状の原因となる血や気の滞りを取り除くことで効果が期待されます。

これらの症状は、ストレスや疲労によって悪化しやすい傾向があります。七物降下湯は、体質を整えることで、これらの症状が起こりにくい状態へと導くサポートをします。

頭重、肩こり、めまい、動悸、耳鳴りに

七物降下湯がこれらの症状に効果を示す背景には、漢方的な考え方があります。

  • 頭重・肩こり: これらは「気」や「血」の巡りが悪くなることで起こりやすい症状です。特に首や肩周りは、血行不良や気の滞りが生じやすく、それが頭部への影響(頭重感)として現れることがあります。七物降下湯に含まれる生薬は、血行を促進したり、気の流れを整えたりする働きを持つものが含まれています。
  • めまい: めまいは「水」のバランスの乱れや、「気」や「血」の不足または滞りによって起こることがあります。体がふらつく、立ちくらみがするといった症状に対して、体液の巡りを整えたり、不足しているエネルギーや血液を補ったりすることで、めまいを軽減する効果が期待されます。
  • 動悸: 動悸は、心臓の過剰な働きや、「気」の乱れ、「血」の不足などが原因となることがあります。七物降下湯は、自律神経のバランスを整えるような働きや、体の内側から落ち着かせる作用により、不安や緊張に伴う動悸を和らげる可能性があります。
  • 耳鳴り: 耳鳴りも、「気」や「血」の巡りの悪さ、特に上半身、頭部への気の滞りや、腎の働きの低下(漢方的な考え方)と関連がある場合があります。血行を促進し、気の巡りを改善することで、耳鳴りの症状緩和につながることが期待されます。

これらの症状は複合的に現れることも多く、七物降下湯は複数の生薬の組み合わせにより、様々な角度からこれらの不調にアプローチします。

体力中等度以下で顔色が悪く、貧血気味の方に

七物降下湯が最も適しているとされるのは、「虚証(きょしょう)」と呼ばれる体質の人です。虚証とは、体力があまりなく、比較的弱々しい体質を指します。具体的には、以下のような特徴を持つ人に適しています。

  • 体力中等度以下: あまり体が丈夫ではなく、疲れやすい傾向がある。
  • 顔色が悪く、貧血気味: 顔色が青白かったり、血色が悪い。西洋医学的な貧血の診断を受けていなくても、漢方的に「血虚(けっきょ)」と呼ばれる、血液の量や働きが不足している状態にある。
  • 胃腸があまり強くない: 消化器系の機能がやや弱く、もたれたり下したりしやすい。

これらの特徴を持つ人は、体のエネルギーや栄養が不足しがちで、それが高血圧に伴うさまざまな症状として現れやすいと考えられます。七物降下湯は、このような「虚」の状態を補い、体力をつけ、血行を良くすることで、不調を改善に導きます。逆に、体力が充実しており、赤ら顔でがっしりした体格の「実証(じっしょう)」の人には、通常はあまり用いられません。

七物降下湯の成分とその働き

七物降下湯は、その名の通り七種類の生薬を組み合わせて作られています。これらの生薬が互いに協力し合うことで、前述したような高血圧に伴う随伴症状に対する効果を発揮します。漢方薬における生薬の組み合わせは、単に個々の生薬の効能を足し合わせたものではなく、全体のバランスが重要です。

配合されている七つの生薬一覧

七物降下湯に配合されている七つの生薬は以下の通りです。

  • 地黄(ジオウ)
  • 当帰(トウキ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 川芎(センキュウ)
  • 黄柏(オウバク)
  • 黄芩(オウゴン)
  • 釣藤鈎(チョウトウコウ)

これらの生薬は、それぞれ異なる薬効を持ちながら、全体として体のバランスを整えるように働きます。

各生薬がもたらす作用

七物降下湯に含まれる各生薬は、以下のような作用を持つと考えられています。

生薬名 作用 漢方的な考え方
地黄 滋養強壮、補血、潤燥(体を潤す) 腎(生命エネルギーや成長・生殖に関わる機能)を補い、血を養う。陰液(体の潤い成分)を補うことで、乾燥や熱による症状を鎮める。
当帰 補血、活血(血行促進)、調経(月経を整える)、潤燥 血を補い、血の滞りを改善する。特に女性の健康に広く用いられるが、男性の血虚や血行不良にも有効。
芍薬 養血(血を養う)、斂陰(陰液を収斂し汗などを止める)、柔肝止痛(肝の働きを整え痛みを和らげる) 血を補い、筋肉の緊張を和らげる作用がある。肝(自律神経や血流量の調整に関わる機能)の働きを助け、イライラや引きつり、痛みを改善する。
川芎 活血行気(血行と気の巡りを促進)、駆風止痛(体内の「風邪」を取り除き痛みを止める) 血の滞りを強力に改善し、気の巡りを良くする。頭痛や肩こりなど、巡りの悪さからくる痛みに有効。
黄柏 清熱燥湿(体の熱や湿気を取り除く)、瀉火解毒(体内の過剰な熱や毒素を除く) 下半身の熱や湿気を取り除く作用が強い。炎症を鎮めたり、体の余分な熱を冷ます。
黄芩 清熱燥湿(体の熱や湿気を取り除く)、瀉火解毒(体内の過剰な熱や毒素を除く)、安胎(妊娠を安定させる) 上半身の熱や湿気を取り除く作用が強い。炎症を鎮め、精神的な興奮を抑える作用もある。
釣藤鈎 清熱平肝(肝の熱を冷まし働きを整える)、熄風定驚(体内の「風邪」を鎮めけいれんなどを抑える) 肝の過剰な働き(肝陽上亢など)を鎮め、頭痛、めまい、手足のしびれや震えなど、「風」の症状を抑える。高血圧に伴う脳卒中の予防にも関連して使われる。

これらの生薬の組み合わせを見ると、地黄、当帰、芍薬、川芎は主に「血」の巡りを良くし、補う働き(四物湯の構成生薬の一部)を持ち、黄柏、黄芩は体内の余分な熱や湿気を取り除く働き、そして釣藤鈎は高血圧に伴う頭部や上半身の不調を鎮める働きを持っていることが分かります。体力のない方の血虚や血行不良、そして体内の熱や気の滞りが複合的に組み合わさって生じる高血圧に伴う症状に対して、バランス良く作用するように処方されています。

七物降下湯は効果が出るまでどのくらい?

漢方薬の効果が現れるまでの期間は、西洋薬と比較すると一般的に穏やかで、即効性よりも体質の改善を目指すものが多いです。七物降下湯も例外ではなく、服用してすぐに劇的な効果を実感できるわけではありません。効果が現れるまでの期間は、個人の体質や症状の程度、漢方薬との相性などによって大きく異なります。

効果を実感するまでの一般的な目安

七物降下湯の効果を実感するまでの一般的な目安は、通常、数週間から数ヶ月と言われています。

  • 比較的早く効果を感じるケース: 人によっては、服用を開始して数週間で、頭重感や肩こりが少し楽になった、めまいの頻度が減った、といった変化を感じ始めることがあります。
  • 効果を実感するのに時間がかかるケース: 多くの場合、体質を根本から改善していくには時間がかかります。特に、症状が慢性化している場合や、体力がかなり低下している場合は、効果を実感するまでに1ヶ月、2ヶ月、あるいはそれ以上の期間が必要となることもあります。

重要なのは、根気強く服用を続けることです。効果を感じ始めるまでには時間がかかる可能性があることを理解し、すぐに効果が出なくても諦めずに、医師や薬剤師の指示通りに服用を続けることが大切です。

長期間服用する場合の注意点

七物降下湯は、体質改善を目的として比較的長期間にわたって服用されることがあります。長期間服用すること自体が問題になることは少ないですが、いくつかの注意点があります。

  • 定期的な医師・薬剤師の診察: 長期間服用する場合は、定期的に医師や薬剤師の診察・指導を受けることが重要です。症状の変化や体調、他の服用薬との相互作用などを確認してもらい、漢方薬が今の自分に合っているか、用量や期間は適切かなどを判断してもらう必要があります。
  • 効果の確認: 長期間服用しても症状が改善しない場合や、むしろ悪化する場合は、その漢方薬が体質や症状に合っていない可能性があります。漫然と服用を続けるのではなく、専門家に相談し、他の治療法や漢方薬への変更を検討してもらいましょう。
  • 副作用への注意: 長期間服用する中で、思わぬ副作用が現れる可能性もゼロではありません。体調に変化を感じた場合は、すぐに服用を中止し、専門家に相談してください。
  • 自己判断での増量・中止は避ける: 効果がないと感じても、自己判断で用量を増やしたり、急に服用を中止したりすることは避けてください。必ず専門家の指示に従いましょう。

漢方薬は、西洋薬のように症状を「抑え込む」のではなく、体本来のバランスを取り戻すことで症状を和らげることを目指します。そのため、即効性よりも継続性が重要となる場合が多いです。効果発現までの期間や長期間服用については、個人差が大きいことを念頭に置き、専門家と連携しながら服用を続けることが、安全かつ効果的に七物降下湯を活用するための鍵となります。

七物降下湯の副作用と注意すべき点

七物降下湯は、比較的副作用が少ない漢方薬とされていますが、全くないわけではありません。体質や体調によっては、副作用が現れる可能性があります。また、服用すべきでない人や、慎重な服用が必要な人もいます。安全に服用するためには、これらの点をしっかりと理解しておくことが重要です。

考えられる主な副作用

七物降下湯で報告されている主な副作用は、主に消化器系の症状です。これは、漢方薬に含まれる生薬が胃腸に負担をかけることがあるためです。

  • 胃部不快感: 胃がもたれる、ムカムカするといった不快感。
  • 食欲不振: 食欲がなくなる。
  • 吐き気: 気持ちが悪くなる。
  • 下痢: 便がゆるくなる。

これらの症状は、漢方薬が体質に合わない場合や、胃腸が弱い方が服用した場合に起こりやすいとされています。もしこれらの症状が現れた場合は、一度服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。用量の調整や、胃腸への負担が少ない他の漢方薬への変更が検討されることがあります。

稀な副作用としては、以下のような症状が報告されることもあります。

  • 発疹、かゆみ: アレルギー反応として皮膚の症状が現れる可能性。
  • 肝機能障害: 体のだるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)などの症状が現れる可能性。

これらの重篤な副作用は非常に稀ですが、体調の変化には注意が必要です。

服用してはいけない人・慎重な服用が必要な人

七物降下湯は、誰にでも合うわけではありません。以下に該当する人は、服用を避けるべき、または慎重な服用が必要となる場合があります。

  • 服用してはいけない人(禁忌):
    • 七物降下湯に含まれる成分に対して、過去にアレルギー反応(発疹、かゆみなど)を起こしたことがある人。
    • 重度の肝機能障害がある人: 七物降下湯に含まれる一部の生薬(特に黄柏、黄芩)は肝臓に影響を与える可能性があり、肝機能障害を悪化させる恐れがあります。
  • 慎重な服用が必要な人:
    • 医師の治療を受けている人: 特に、高血圧や心臓病、腎臓病、肝臓病などで治療を受けている人は、必ず医師に相談してから服用してください。
    • 他の薬剤を服用している人: 他の漢方薬や西洋薬との相互作用により、効果が強まりすぎたり、弱まったり、あるいは予期せぬ副作用が現れたりする可能性があります(後述)。
    • 胃腸が弱い人: 前述のように、胃腸系の副作用が出やすい可能性があるため、慎重に服用し、症状が現れた場合はすぐに中止してください。
    • 高齢者: 一般的に、高齢者は生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要です。
    • 妊娠または授乳中の人: 妊娠中や授乳中の服用については、必ず医師や薬剤師に相談し、安全性を確認してください(後述)。

他の薬剤との相互作用

七物降下湯を他の薬剤と併用する場合、相互作用に注意が必要です。特に注意すべきなのは以下の点です。

  • 他の漢方薬: 複数の漢方薬を同時に服用すると、含まれている生薬が重複したり、生薬の組み合わせによっては予期せぬ相互作用が生じたりする可能性があります。必ず医師や薬剤師に相談し、併用しても問題ないか確認してください。
  • 西洋薬: 特に、血圧を下げる薬、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)、精神安定剤など、七物降下湯が作用する可能性のある症状や臓器に関連する薬を服用している場合は注意が必要です。例えば、血圧を下げる作用が重なりすぎて低血圧になったり、血液を固まりにくくする作用が増強されたりする可能性があります。

薬剤の相互作用は個人の体質や服用量によっても異なります。現在服用している全ての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメントなどを含む)を医師や薬剤師に正確に伝え、必ず専門家の指示に従って服用してください。

七物降下湯が向いている人の特徴(証について)

漢方薬を選ぶ上で最も重要な考え方の一つに「証(しょう)」があります。証とは、患者さんの体質や病気の状態、症状の現れ方などを総合的に把握したもので、漢方的な病態を指します。七物降下湯は、特定の「証」を持つ人に合った漢方薬であり、その証に合わない人が服用しても効果が出にくい、あるいは副作用が出やすい場合があります。

七物降下湯が向いているのは、主に以下のような「証」を持つ人です。

  • 気血両虚(きけつりょうきょ)あるいは血虚(けっきょ)を伴う肝陽上亢(かんようじょうこう)

少し専門的な言葉ですが、これを分かりやすく解説します。

  • 気血両虚/血虚: 「気」と「血」の両方、あるいは「血」が不足している状態を指します。これは、体のエネルギーや栄養、血液の量や働きが足りないことを意味します。この状態の人は、体力がなく、疲れやすく、顔色が青白く、めまいや立ちくらみを起こしやすいといった特徴があります。七物降下湯に含まれる地黄、当帰、芍薬、川芎といった生薬は、これらの不足を補い、血行を良くする働きがあります。
  • 肝陽上亢: 漢方でいう「肝」は、現代医学の肝臓だけでなく、自律神経の働きや精神状態、血流量の調整などに関わる機能全体を指します。「肝陽上亢」とは、肝の働きが亢進しすぎて、熱や気が上半身や頭部に突き上げるような状態です。これにより、頭痛、めまい、耳鳴り、目の充血、イライラといった症状が現れやすくなります。高血圧に伴うこれらの症状は、この「肝陽上亢」と関連が深いと考えられています。七物降下湯に含まれる黄柏、黄芩、釣藤鈎は、この肝の亢進した状態や熱を鎮める働きがあります。

つまり、七物降下湯は、「体力があまりなく(虚)、血やエネルギーが不足している上に、自律神経の乱れや体内の熱によって上半身に不調が現れている」という状態の人に最も適していると考えられます。

七物降下湯が向いている人の具体的な特徴をまとめると、以下のようになります。

  • 体型・顔色: 細身で、顔色が悪く、青白いか、血色が悪い。クマができやすい。
  • 体力: あまりなく、疲れやすく、元気がない。
  • 症状:
    • 高血圧に伴う頭重感、肩や首の凝り、めまい(特に立ちくらみやフワフワした感じ)、動悸、耳鳴りがある。
    • 手足が冷えやすいが、上半身や頭部がほてることもある。
    • 比較的、精神的な緊張やストレスで症状が悪化しやすい。
  • 舌: 舌の色が淡く、舌苔が少ない傾向がある。
  • 脈: 脈が弱々しい、あるいは細く速いといった特徴が見られることがある。

これらの特徴はあくまで目安であり、最終的に漢方薬がその人に合っているかどうかは、問診や舌診、脈診、腹診など、漢方医や漢方の専門知識を持つ薬剤師による診断(弁証論治)によって判断されます。自己判断だけでなく、専門家に相談することをおすすめします。

七物降下湯の服用方法・用量

七物降下湯の服用方法や用量は、製品によって異なる場合があります。市販されているエキス剤(顆粒や錠剤)の場合、メーカーによって成分量や推奨される服用方法が異なることがあるため、必ず製品に記載されている用法・用量を確認し、それに従ってください。医療用漢方製剤として医師から処方された場合は、医師の指示通りに服用することが最も重要です。

一般的な服用方法・用量は以下の通りです。

  • 服用タイミング: 通常、1日2回または3回食前または食間に服用することが推奨されています。
    • 食前: 食事をとる約30分前。
    • 食間: 食事と食事の間、具体的には食後約2時間後。

    これは、漢方薬の成分が胃に食べ物がない状態でより吸収されやすいと考えられているためです。ただし、胃腸が弱い方で、食前・食間に服用すると胃部不快感などの症状が出る場合は、食後に服用することも可能です。その場合は、医師や薬剤師に相談してください。

  • 服用方法: 湯で溶かすか、水またはぬるま湯で服用します。エキス顆粒の場合は、口に含んでから湯や水を少量ずつ加えて溶かしながら飲むと、生薬の風味を感じやすく、また成分が溶けやすくなります。錠剤の場合は、水かぬるま湯でそのまま飲み込みます。
  • 用量: 製品によって1回量が異なります。一般的に、成人の場合、1回あたりの量は製品の指示に従ってください。例えば、1日2回服用タイプであれば1回1包(または〇錠)、1日3回服用タイプであれば1回1包(または〇錠)といった具体的な量が定められています。子供に服用させる場合は、年齢に応じて用量が調整されますので、必ず製品の添付文書や医師・薬剤師の指示を確認してください。

服用上の注意点:

  • 定められた用法・用量を守る: 早く効かせたいからといって、自己判断で用量を増やしたり、服用回数を増やしたりすることは絶対に避けてください。副作用のリスクを高めるだけであり、効果が増強される保証はありません。
  • 飲み忘れに注意: 漢方薬は継続して服用することで効果が期待できます。飲み忘れた場合は、気づいたときに1回分を服用しても構いませんが、次の服用時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次の決められた時間に1回分を服用してください。一度に2回分をまとめて服用することは避けてください。
  • 水以外での服用: 基本的には水またはぬるま湯で服用しますが、お茶や清涼飲料水、アルコールなどで服用することは避けてください。これらに含まれる成分が漢方薬の吸収や働きに影響を与える可能性が考えられます。
  • 空腹時が基本: 食前・食間といった空腹時が基本ですが、胃腸の弱い方など、食後の方が飲みやすい場合は、医師や薬剤師に相談の上、食後に服用することも検討できます。

正しい服用方法と用量を守り、根気強く続けることが、七物降下湯の効果を最大限に引き出すためのポイントです。

七物降下湯の購入方法・市販されているメーカー

七物降下湯は、医療用漢方製剤としても、一般用医薬品(市販薬)としても入手可能です。ご自身の症状や体質、希望する治療法によって、購入方法や選ぶべき製品が異なります。

医療用漢方製剤としての処方

病院やクリニックを受診し、医師の診察を受けた上で処方される七物降下湯は、医療用漢方製剤です。

  • 購入場所: 病院・クリニックを受診し、処方箋を持って薬局で購入します。
  • メリット:
    • 医師が診断に基づき、個々の体質や症状に最適な漢方薬(七物降下湯が適しているか、他の漢方薬が良いかなど)を選んでくれます。
    • 他の疾患や服用中の薬剤との相互作用なども専門的な視点から判断してもらえます。
    • 保険が適用されるため、費用負担が軽減されます。
  • デメリット: 受診の手間と時間がかかります。

高血圧やその随伴症状で継続的に悩んでいる場合や、他の持病がある場合、複数の薬剤を服用している場合は、まずは医療機関を受診し、医師の診断のもと医療用漢方製剤を処方してもらうのが最も安全で確実な方法と言えます。

市販薬としての購入

七物降下湯は、薬局やドラッグストア、オンラインストアなどで一般用医薬品(市販薬)としても販売されています。

  • 購入場所: 薬局、ドラッグストア、薬剤師がいる店舗、一部のスーパー、インターネット通販サイトなど。
  • メリット:
    • 医療機関を受診する手間なく、自分の都合の良い時に購入できます。
    • 比較的気軽に試すことができます。
  • デメリット:
    • 自己判断で購入する必要があるため、本当に自分の体質や症状に合っているかどうかの判断が難しい場合があります。
    • 医療用漢方製剤と比べて、含まれている生薬の量や配合比率が異なる場合があり、効果の出方が違うことがあります。
    • 保険適用外となるため、全額自己負担となります。
    • 薬剤師または登録販売者からの情報提供や相談が必要な場合があります(リスク区分による)。

市販薬を選ぶ際は、ご自身の症状が七物降下湯の適応症状(体力中等度以下で顔色が悪く、貧血気味で、高血圧に伴う頭重、肩こり、めまい、動悸、耳鳴りがあるもの)に当てはまるか、添付文書をよく読み、不明な点は薬剤師や登録販売者に相談することが重要です。

市販されている主なメーカー

七物降下湯の市販薬は、複数のメーカーから様々な商品名で販売されています。代表的なメーカーとしては以下のようなものがあります。

  • クラシエ薬品
  • ツムラ(医療用漢方製剤が中心ですが、一部一般用医薬品も扱っています)
  • コタロー
  • ジェーピーエス製薬
  • 小太郎漢方製薬

これらのメーカー以外にも、多くのメーカーから七物降下湯(またはそれに準ずる処方)が販売されています。製品によって、エキス顆粒、錠剤、カプセルなど剤形が異なったり、含まれている生薬の量や添加物が異なったりすることがあります。製品を選ぶ際は、価格だけでなく、添付文書を確認し、ご自身の飲みやすさや体質に合ったものを選ぶと良いでしょう。

注意点: インターネット通販などで個人輸入された漢方薬には、品質や安全性が保証されないもの、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)に基づかないもの、偽造品などが紛れているリスクがあります。健康被害を防ぐためにも、国内で正規に販売されている製品を購入するようにしてください。

七物降下湯に関するよくある質問

七物降下湯の服用を検討している方が疑問に思うであろう点について、Q&A形式でまとめました。

Q: 七物降下湯と他の漢方薬(例:〇〇湯)との違いは?

A: 高血圧やそれに伴う症状に用いられる漢方薬は七物降下湯以外にも複数あり、それぞれ適応する「証」や得意な症状が異なります。

例えば、高血圧に伴う症状に用いられることのある他の漢方薬との違いを簡単にまとめます。

漢方薬 主な適応症状 向いている「証」(体質・状態) 七物降下湯との違い
七物降下湯 高血圧に伴う頭重、肩こり、めまい、動悸、耳鳴り 体力中等度以下で顔色が悪く、貧血気味(血虚・気血両虚)で、肝の亢進(肝陽上亢)があるタイプ。 体力のない血虚傾向の人に特化しており、血を補いながら肝の熱や亢進を鎮める。
釣藤散 慢性的な頭痛、頭重、めまい、肩こり、イライラ、不眠など(特に朝方に悪化しやすい) 体力中等度で、比較的ストレスが多く、気滞や熱が原因で肝の働きが乱れているタイプ。 体力中等度で、精神的な緊張やストレスによる頭痛・めまいに使われることが多い。七物降下湯よりは体力があり、血虚の傾向は目立たないことが多い。
加味逍遙散 月経不順、更年期障害、イライラ、不安、肩こり、頭重、めまい、疲労感など(特に女性に多い) 体力中等度以下で、精神的なストレスを感じやすく、気の巡りが滞っているタイプ。手足が冷えたり、のぼせたりする。 女性に多く用いられ、精神的なストレスやホルモンバランスの乱れに伴う不定愁訴全般に広く使われる。七物降下湯のように血虚を強く補う作用はやや弱い場合がある。
柴胡加竜骨牡蛎湯 高血圧、神経症、不眠、動悸、いらいら、便秘など(特に体力があり、精神的に不安定な傾向) 体力中等度以上で、比較的がっしりした体格。肋骨の下あたりに抵抗や圧痛がある。精神的に不安定で、不安や動悸、不眠があるタイプ。 体力があり、比較的精神症状が強い人に用いられる。七物降下湯のような血虚の傾向はほとんどない。

このように、同じ高血圧に伴う症状でも、体質や他の症状の有無によって適した漢方薬は異なります。どの漢方薬が自分に合っているかは、自己判断せず、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

Q: 妊娠中や授乳中に服用できますか?

A: 妊娠中や授乳中に七物降下湯を服用する場合は、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。

漢方薬は生薬からできていますが、妊娠中の体や胎児、授乳中の乳児に影響を与える可能性が全くないとは言い切れません。七物降下湯に含まれる生薬の中には、妊娠への影響が指摘されるもの(例:血行を促進する作用の強い生薬の一部など)も理論的には考えられます。

ただし、医師が必要と判断し、リスクとベネフィットを考慮した上で処方される場合はあります。自己判断での服用は避け、必ず専門家の指導のもと、安全性を確認してから服用してください。

Q: 服用を忘れた場合の対処法は?

A: 七物降下湯の服用を忘れた場合は、気づいたときに1回分を服用しても構いません。ただし、次に服用する時間が近い場合は、飲み忘れた分は飛ばして、次の決められた時間に1回分を服用してください。一度に2回分をまとめて服用することは絶対に避けてください。

漢方薬は継続して服用することで効果が期待できるため、できるだけ決められた時間に服用することが望ましいですが、飲み忘れた場合でも慌てず、上記の対処法に従ってください。心配な場合は、薬剤師に相談すると良いでしょう。

監修者情報・情報源について

本記事は、七物降下湯に関する一般的な情報提供を目的としています。記事中の情報は、漢方医学に関する古来の知識や現代の研究、各種専門文献、医療用・一般用医薬品の添付文書などを参考に作成しておりますが、特定の個人に対する医学的なアドバイスや治療法の推奨を行うものではありません。

情報源(例として):

  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品添付文書情報
  • 日本東洋医学会ガイドライン
  • 各種漢方専門書籍、学術文献

監修者情報(例として):

  • 氏名:[監修者氏名 – 例:〇〇 〇〇(医師/薬剤師、漢方専門医など)]
  • 所属:[所属機関名 – 例:〇〇大学医学部附属病院、〇〇薬局など]
  • 資格:[医師、薬剤師、日本東洋医学会漢方専門医など]

免責事項:

本記事の情報は、執筆時点での一般的な知識に基づくものであり、内容の正確性、完全性、有用性について保証するものではありません。医療に関する判断は、必ず医師、薬剤師、または登録販売者にご相談の上、ご自身の責任において行ってください。本記事の情報に基づくいかなる行為によって生じた結果についても、当方は一切の責任を負いかねます。

七物降下湯は医薬品です。その効果・効能、副作用、相互作用については、必ず製品の添付文書をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

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