カンゾウの効果・副作用を徹底解説!安全に使うための注意点とは?

咳を鎮めたり、のどの痛みを和らげたりする漢方薬、あるいは醤油や漬物などの食品に甘みを加える天然甘味料として、私たちの身近に存在するカンゾウ(甘草)
その優れた効果から「生薬の王」とも呼ばれますが、一方で「やばい」「副作用が心配」といった声も聞かれます。

カンゾウは確かに多くの有用な作用を持つ一方で、使い方を誤ると体に不調をきたす可能性がある成分でもあります。
この記事では、カンゾウの基本的な知識から、具体的な効能、そして特に注意すべき副作用やリスクについて、専門的な情報をもとに徹底的に解説します。
カンゾウを正しく理解し、安全に活用するための知識を身につけましょう。

薬用として使われる「甘草(カンゾウ)」の正体

一般的に生薬として知られる「甘草」は、マメ科カンゾウ属の植物の根や地下茎(匍匐茎:ほふくけい)を乾燥させたものです。
その名の通り、「甘い草」であることが最大の特徴で、その歴史は非常に古く、数千年前から東西を問わず薬として利用されてきました。

漢方の世界では、非常に多くの処方に配合される重要な生薬の一つであり、「国老(こくろう)」という敬称で呼ばれることもあります。
これは、様々な生薬の作用を調和させ、まとめ役を果たす長老のような存在であることを示しています。

天然甘味料としてのカンゾウと成分「グリチルリチン」

カンゾウの甘みの主成分は「グリチルリチン(グリチルリチン酸)」です。
この成分は砂糖の約150〜250倍もの甘さを持つとされ、低カロリーな天然甘味料として広く利用されています。

【グリチルリチンが使われる食品の例】

  • 醤油、味噌
  • 漬物、佃煮
  • 菓子類(飴、ガム、グミなど)
  • 清涼飲料水

これらの食品の原材料表示に「甘味料(甘草、カンゾウ抽出物、グリチルリチン)」といった記載があれば、それはカンゾウ由来の成分が使われている証拠です。
実は、このグリチルリチンこそが、カンゾウの薬理作用と副作用の両方に関わる中心的な成分なのです。

山菜「カンゾウ」との違い(ノカンゾウ、ヤブカンゾウなど)

ここで注意が必要なのが、春先に山菜として食べられる「カンゾウ」との違いです。
ノカンゾウやヤブカンゾウといった山菜は、ススキノキ科(旧ユリ科)ワスレグサ属の植物で、生薬の「甘草」とは全くの別物です。

種類 利用部位 主な用途
甘草(カンゾウ) マメ科 根、地下茎 生薬、漢方薬、甘味料
野萱草(ノカンゾウ)など ススキノキ科 若葉、つぼみ、花 山菜(食用)

両者は名前が似ているため混同されがちですが、植物学的に全く異なるものであることを覚えておきましょう。

目次

カンゾウの「効果」・多様な効能について

カンゾウは、その主成分であるグリチルリチンやフラボノイド類によって、実に多彩な薬理作用を発揮します。

伝統的な薬効:鎮咳、去痰、健胃、鎮痛作用など

古くからカンゾウは、以下のような目的で利用されてきました。

  • 鎮咳・去痰作用: 咳を鎮め、痰の切れを良くする効果。のどの炎症を和らげます。
  • 健胃・抗潰瘍作用: 胃粘膜を保護し、胃酸の分泌を抑えることで、胃の不快感や胃炎、胃潰瘍を緩和します。
  • 鎮痛・鎮痙作用: 筋肉の急激なけいれんや痛みを和らげる効果。特に「こむら返り」などによく用いられます。
  • 解毒作用: 体内の毒素を中和し、排出を助ける作用があると考えられてきました。

抗炎症作用とそのメカニズム

カンゾウの最も注目される薬理作用の一つが、強力な抗炎症作用です。
主成分のグリチルリチンは、体内で炎症を引き起こす物質(プロスタグランジンなど)の生成を抑制する働きがあります。

また、アレルギー反応に関わる化学伝達物質の放出を抑える作用(抗アレルギー作用)も持っており、湿疹や皮膚炎などの治療薬にも応用されています。

どのような症状や目的で利用されるか

これらの多様な効果から、カンゾウは以下のような様々な症状や目的で利用されています。

  • のどの痛み、腫れ、咳、声がれ
  • 口内炎
  • 胃痛、胃炎、胃・十二指腸潰瘍
  • 筋肉のけいれん、こむら返り
  • アレルギー性疾患、湿疹、皮膚炎
  • 薬物中毒や食中毒の緩和

漢方薬におけるカンゾウの重要な役割

漢方薬において、カンゾウは無くてはならない存在です。
全漢方処方のうち、約7割にカンゾウが配合されていると言われるほど、その役割は多岐にわたります。

カンゾウを含む代表的な漢方薬

カンゾウを含む漢方薬は非常に多いですが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)の2つの生薬だけで構成されるシンプルな処方です。
こむら返りや生理痛、腰痛など、急性の筋肉のけいれんや痛みを速やかに緩和する目的で広く用いられます。

甘草湯(かんぞうとう)
その名の通り、カンゾウが主役の漢方薬です。
激しい咳やのどの痛みを和らげる効果に優れており、特に扁桃炎などで強くのどが痛む場合に効果を発揮します。

その他の漢方薬(葛根湯、小青竜湯など)
風邪のひきはじめに有名な葛根湯(かっこんとう)や、鼻水・くしゃみに使われる小青竜湯(しょうせいりゅうとう)など、多くの有名な漢方薬にもカンゾウは配合されています。

漢方処方でカンゾウが配合される理由

なぜこれほど多くの漢方薬にカンゾウが使われるのでしょうか。
その理由は主に3つあります。

  1. 薬効の中心として: 甘草湯のように、カンゾウの抗炎症作用や鎮咳作用そのものを主目的として配合される場合。
  2. 諸薬の調和(緩和作用): 複数の生薬を組み合わせる漢方薬において、それぞれの生薬が持つ強い作用を緩和し、副作用を抑え、全体としてマイルドに効くように調整する「まとめ役」としての役割。
  3. 矯味(きょうみ): 他の生薬が持つ苦味や不快な味を、カンゾウの強い甘みでマスキングし、飲みやすくする目的。

このように、カンゾウは主役にも脇役にもなれる、漢方薬のオールラウンダーなのです。

「やばい」と言われる?カンゾウの注意点と「副作用」

優れた効能を持つカンゾウですが、「やばい」「危険」といった言葉と共に検索されることがあるのは、その副作用のリスクが知られているためです。
特に過剰摂取には注意が必要です。

カンゾウ成分「グリチルリチン酸」の過剰摂取リスク

副作用の主な原因となるのは、甘み成分であり薬効成分でもある「グリチルリチン酸」です。
これを長期間、または大量に摂取することで、体に様々な不調を引き起こす可能性があります。

重大な「副作用」:偽アルドステロン症について

カンゾウの副作用として最も代表的で、注意すべきものが「偽アルドステロン症(ぎアルドステロンしょう)」です。

これは、副腎から分泌される「アルドステロン」というホルモンが増えていないにもかかわらず、まるで増えているかのような症状が現れる状態です。
グリチルリチン酸が体内の特定の酵素の働きを阻害することで、体内にナトリウムと水分が溜まり、カリウムが排出されやすくなるために起こります。

偽アルドステロン症の症状(血圧上昇、低カリウム血症など)

偽アルドステロン症になると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 血圧の上昇: 体にナトリウムと水分が溜まることで、血圧が高くなります。
  • むくみ(浮腫): 顔や手足がむくみます。
  • 低カリウム血症: 血液中のカリウム濃度が低下します。
    これにより、以下の症状が起こることがあります。

    • 脱力感、筋力低下
    • 手足のしびれ、けいれん

    重症化すると、四肢麻痺不整脈を引き起こす危険性もあります。

特に腎臓への影響

低カリウム血症が慢性的に続くと、腎臓の機能に悪影響を及ぼす(低カリウム血症性腎症)可能性があります。
もともと腎臓に疾患がある方は、副作用のリスクがより高まるため、特に注意が必要です。

長期または「大量に摂取するとどうなる」?

カンゾウを含む医薬品や食品を、気づかないうちに長期にわたって大量に摂取し続けると、偽アルドステロン症を発症するリスクが高まります。
特に、複数の漢方薬を自己判断で併用した場合、意図せずカンゾウの摂取量が過剰になる「重複摂取」が問題となることがあります。

「取りすぎ」による危険性に関する情報(厚生労働省eJIMより)

日本の厚生労働省が提供する「『統合医療』に係る情報発信等推進事業」(eJIM)のウェブサイトでも、カンゾウの安全性について言及されています。
そこでは、1日に40mg以上のグリチルリチンを長期間にわたって摂取すると、高血圧や低カリウム血症などの副作用のリスクが報告されていることが示されています。

ただし、これはあくまで一つの目安であり、副作用の現れ方には大きな個人差があることを理解しておく必要があります。

摂取量目安と注意すべき対象者(持病、併用薬との関係)

医薬品としてのグリチルリチン酸の1日の摂取上限量は、原則として200mgとされています。
しかし、これは最大量であり、安全量ではありません。

特に以下に該当する方は、カンゾウの摂取に慎重になるべきです。

  • 高齢者
  • 高血圧、腎臓病、心臓病などの持病がある方
  • 利尿薬(特にカリウム排泄を促すタイプ)を服用している方

これらの持病や併用薬がある場合、副作用のリスクが格段に高まるため、自己判断でのカンゾウ摂取は絶対に避け、必ず医師や薬剤師に相談してください。

カンゾウの安全な利用方法

カンゾウは正しく使えば非常に有用です。
副作用のリスクを避け、安全に利用するためのポイントを確認しましょう。

医薬品や漢方薬として使用する場合

  • 用法・用量を厳守する: 医師や薬剤師から指示された量と期間を必ず守りましょう。
  • 重複摂取に注意: 複数の漢方薬や、風邪薬、胃腸薬などを併用する際は、それぞれにカンゾウが含まれていないか確認が必要です。
    お薬手帳を活用し、医師や薬剤師に見せることで重複を防げます。
  • 初期症状を見逃さない: 「むくみ」「血圧の上昇」「手足の脱力感」など、偽アルドステロン症が疑われる初期症状が現れたら、すぐに服用を中止し、専門家に相談してください。

食品(甘味料)として使用する場合

医薬品に比べて食品に含まれるカンゾウの量は少ないですが、日常的に多くの加工食品を摂取する方は注意が必要です。

  • 食品表示を確認する習慣をつける: 普段から口にする醤油や漬物、お菓子などの原材料表示を確認し、「甘味料(甘草)」などの記載がないかチェックしてみましょう。
  • 特定の食品の食べ過ぎに注意: カンゾウを甘味料として多用している特定の食品を、毎日大量に食べ続けることは避けるのが賢明です。

不安がある場合の相談先(医師、薬剤師など専門家)

カンゾウの服用に関して少しでも不安や疑問があれば、自己判断せずに専門家に相談することが最も重要です。

  • かかりつけの医師
  • 薬局の薬剤師
  • ドラッグストアの登録販売者

持病や現在服用中の薬について正確に伝えることで、適切なアドバイスを受けることができます。

まとめ:カンゾウの正しい理解と安全な活用のために

カンゾウは、咳やのどの痛み、胃の不調などを和らげる優れた効果を持つ一方で、その主成分グリチルリチンの副作用として、偽アルドステロン症という重大なリスクも併せ持つ生薬です。

やばい」と言われる側面は、主にこの副作用を指しており、特に長期・大量摂取や、特定の持病がある場合の危険性が指摘されています。

しかし、カンゾウは決して危険なだけの成分ではありません。
多くの漢方薬に配合され、私たちの健康を支えてきた実績があります。
重要なのは、その効果とリスクの両面を正しく理解し、専門家の指導のもとで用法・用量を守って適切に利用することです。

医薬品として使用する場合も、食品として摂取する場合も、自分の体調に気を配り、不安な点は専門家に相談する習慣をつけ、カンゾウと安全に付き合っていきましょう。


免責事項:本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。病状や体質には個人差がありますので、医薬品の使用にあたっては、必ず医師、薬剤師、または登録販売者にご相談ください。

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