03-6709-6137
(10時~19時受付)
WEB予約(24時間受付)
Line予約(24時間受付)
パニック障害

パニック障害とはどんな病気?回復のためには早期治療が大切

精神科医 藤田朋大先生

当記事の監修医師
精神科医:藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医。新宿駅の心療内科・精神科「あしたのクリニック新宿院」で診療を担当

診断書即日発行対応
初診受付中・ご来院予約はお気軽に


受診を悩まれている方へ当院では当日予約、受診も受け付けております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
本日の受診も受付中です。詳しくは当院ホームページをご確認ください。
新宿駅前の心療内科・精神科 あしたのクリニック

「電車に乗っていて、急に息苦しくなった」
「外出中、胸の痛みが強くなり動けなくなった」
「死にたくなるほどの強い恐怖に襲われた」

このような症状があるのに、内科で異常なしと言われた方もいるのではないでしょうか?その症状は、パニック障害が原因かもしれません。

パニック障害とは、発作的に起こる動悸や発汗、震え、息苦しさなどの体の症状とおもに、このまま死んでしまうというような強い不安に襲われる精神疾患のこと。

発作性の強い症状があるものの、命に関わることはなく、多くの方は、早期に治療を受けることで回復が見込めます。しかし、症状が出ても放置していたり、症状が治まったからといって自己判断で治療をやめたりすることはよくありません。人によっては、症状が慢性化したりうつ病などの合併症を発症したりする可能性があるためです。

この記事では、パニック障害の概要や症状、原因、治療法などを中心に解説します。パニック障害について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

パニック障害とは

パニック障害とは、発作的に起こる動悸や発汗、震え、息苦しさなどの体の症状とおもに、このまま死んでしまうというような強い不安に襲われる精神疾患のことです。

一生のうちにパニック障害を発症する人の割合は、100人中1人~3人程度と言われています。また、発症平均年齢は15〜40歳、女性の方が男性の2~3倍かかりやすいとされています。症状は強いものですが、パニック障害そのものが命に関わるものといったことはありません。

しかし、発作的な症状がいつ起こるか分からないため、不安で外出できなくなるなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。また、症状が長く続くと、うつ病など合併症を発症する可能性があるので注意が必要です。

身体症状が強いので、内科を中心に様々な医療機関を受診する方もいます。内科で異常なしと言われたのにもかかわらず症状が続く場合には、心療内科もしくは精神科を受診を検討してみるとよいでしょう。

パニック障害の誘因・原因

パニック症障害の誘因・原因ははっきりとは分かっていません。しかし、これまでの研究結果より以下の3つが関与しているのではと言われています。

  • 遺伝的要因
  • 脳内伝達物質の関与
  • 高濃度の二酸化炭素の吸入

それぞれ詳しく解説します。

原因1.遺伝的要因

両親や兄弟といった、「第一度親族」にパニック障害患者がいる方は、それ以外の方と比べてリスクが5〜7倍ほど高いと言われています。また、双生児研究の結果からは、遺伝率が約40%であると報告されています。

このことより、家族にパニック障害の既往歴がある方は、他の方と比べて発症のリスクが高いと言えるでしょう。

原因2.脳内伝達物質の関与

人間の脳には、脳内で情報交換したり、脳からの命令を体に伝えたりするための「神経伝達物質」があります。これまでの研究結果により、この脳内伝達物質がパニック障害の発症に関与していることが分かっています。

パニック障害に関与している可能性のある脳内神経伝達物質は以下の通りです。

  • セロトニン
  • ノルアドレナリン
  • γ-アミノ酪酸(GABA)
  • コレシストキニン など

このようにパニック発作の原因が脳内にあるため、内科などで心臓や呼吸器の検査をおこなっても異常なしと診断されてしまうのです。

原因3.高濃度の二酸化炭素の吸入

二酸化炭素を吸引することも、パニック障害の原因とされています。

そのため、換気の悪い場所を避けたり、炭酸飲料を飲みすぎたりするとパニック障害を引き起こしやすいので要注意です。この点は日常生活を送るにあたって注意しておくとよいでしょう。

パニック障害の主な3つの症状

パニック障害の主な症状としては、以下の3つが挙げられます。

  1. パニック発作
  2. 予期不安
  3. 広場恐怖

パニック発作は、強い身体症状や精神症状が突然出現して、数分続きます。しかし、発作そのものは、命に関わるものではありません。自分自身を安心させるためにも、このことをしっかり覚えておくとよいでしょう。

パニック発作が続くと、予期不安や広場恐怖が表れるようになります。

パニック障害の症状について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

1.パニック発作

パニック発作には、身体症状と精神症状があります。発作は急に始まり、数分でピークを迎え、その後急速に治まるのが特徴です。

以下は具体的な症状の一例です。

身体症状精神症状
・動悸
・呼吸困難
・体の震え
・冷や汗
・めまいなど
・現実感がない(もしくは自分が自分ではない)感覚
・このまま死んでしまうのではという強い恐怖
・自分で自分をコントロールできなくなる感覚など

なお、パニック発作と定義されるのは、以下に示すような身体症状や精神症状が出ても、内科的検査の上で体に異常がないと確認されてからになります。

低血糖や狭心症、不整脈、更年期障害など、何らかの疾患がある場合も同じような症状が現れるので、注意が必要です。

原因を特定するためにも、まずは内科受診をおすすめします。

2.予期不安

予期不安とは、一度パニック発作を起こしたことで、「また発作が起こるのではないか」という不安にかられる現象です。

発作が再び起こることへの不安に加えて、以下のようなことに対する不安が現れます。

  • 別の病気にもかかっているのではないか
  • 誰も助けてくれないのでは
  • 人前で発作を起こして迷惑をかけてしまうのでは
  • 運転中に発作が出て、交通事故を起こしてしまうのでは

上記は予期不安の一例です。また、パニック発作が改善しても、予期不安は残ることがあります。

3.広場恐怖

広場恐怖とは、予期不安の強さが原因で起こる症状です。パニック発作が起きたときに助けを求められないと想定される場所や状況を、強く恐れるようになることを指します。

広場恐怖が起こりやすい場所や状況は、主に以下の通りです。

  • バスや電車、飛行機などの公共交通機関
  • 駐車場や公園、フリーマーケットなどの広い場所
  • 映画館内などの閉ざされた場所
  • 混雑したレジなどに並んでいるとき

広場恐怖があると、不安から1人で外出できなくなるなど、日常生活にも大きく支障をきたすようになります。

パニック障害の治療法は2つ

パニック障害の治療法は主に以下の2つです。

  • 薬物療法
  • 精神療法

パニック障害は早期に治療を受けることで回復が見込まれます。そのため、パニック障害かも?と思われる方は早めに医療機関を受診することをおすすめします。以下ではそれぞれの治療法について詳しく解説します。

1.薬物療法

パニック障害の薬物療法は、以下の薬の服用がメインとなります。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬など

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、パニック発作や予期不安を軽減する作用がありますが、眠気やふらつきといった副作用があるため注意が必要です。加えて、依存性があるとも言われています。そのため、徐々にSSRIをメインに切り替えていくというのが、治療の現状です。

薬を内服しているときに、「副作用が出てきた」「飲むのを辞めたい」などの不安なことがありましたら、必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。自己判断で薬を中止したり量を減らしたりすると、体調不良を引き起こす可能性があるので大変危険です。

2.精神療法

最初に、「なぜパニック障害が起こるか」を知ることが大切です。

そのためにはまずは医師の説明をしっかり聞く必要があります。可能であれば、ご本人だけではなく、ご家族も一緒に説明を受けることをおすすめします。ご家族がパニック障害のことを正しく理解することで、発作時などにサポートを受けられる可能性があるからです。

パニック障害の方は、下記の図のように認知のゆがみが見られる傾向にあります。

胸の痛みや息苦しさといったパニック発作は命に関わりません。しかし本人は、「命に関わる」「どんどん悪くなる」と思ってしまいます。これが認知のゆがみです。そのため、認知のゆがみを少しずつ修正していくことが、大切になってきます。これは認知行動療法と呼ばれる心理療法の一環です。

自分の体調を記録し、どのような場面でパニック発作が起こるかなどを把握する、医師の診察のもと、自分が恐怖を感じる場所や状況に少しずつ身を置くなども認知行動療法に含まれます。

パニック障害の経過

パニック障害の発症し始めには、パニック発作が頻発する傾向にあります。その後、予期不安と広場恐怖症が症状の中心となります。

適切な治療を受けることで、約70%の方が中等度の改善を示すとされていますが、10%程度は症状が変わらないまたは悪化するケースも。また、症状が長期化すると抑うつ症状が併存しやすいとも言われています。

そのため症状が安定しても薬を完全に止められないといったケースも少なくありません。

パニック障害発作時の対処法

先ほども述べたとおり、パニック障害はきちんと治療を受けることで回復が見込める病気です。しかし、実際に発作が起きると、強い不安に見舞われることもあるでしょう。そんなときは、以下の対処法をおこなってみてください。

  1. ゆっくりと深呼吸をする
  2. 違うことを考える
  3. 親しい人の声を聞く

具体的な方法については、「パニック障害 症状」の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

パニック障害治療中の5つの注意点

パニック障害は、治療を受ける以外にも日常生活で注意すべき点がいくつかあります。

ここでは、パニック障害治療中における注意点を5つご紹介します。日常生活を送る上で、ぜひ心がけてください。

1.指示通りに薬を飲む

パニック発作などの自覚症状が現れなくなると、「もう大丈夫」と思い、薬を止めてしまう方もいます。しかし、症状がないからと言って、抗うつ剤などの薬を自己判断で止めると、発作が再発する可能性があるため注意が必要です。

それだけではありません。抗うつ剤を急に止めてしまうと、薬が体から急になくなってしまうことで生じる離脱症状が起きてしまうことがあります。

主な離脱症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 食欲不振や吐き気
  • めまいやふらつき
  • 気持ちの焦りや強い不安
  • 体の疲れやだるさ

自己判断で薬を止めると、このような離脱症状が出現したり、パニック発作が再発したりするので大変危険です。

症状がない場合でも、指示通りに薬を飲みましょう。薬を減らしたい、止めたいときには、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。

2.心身のストレスを減らす

身体的な疲れが重なると、疲労物質である乳酸が体にたまります。乳酸はパニック障害を引き起こす原因物質でもあるのです。

パニック障害の方は乳酸がたまりやすいと言われるので、発作予防のためにも、疲れをためないことが大切になってきます。

精神的なストレスもパニック発作を引き起こす要因とされます。心身のストレスを減らすために大切なのは睡眠です。睡眠不足の状態は、パニック発作を誘発する以外にもさまざまな体調不良を引き起こします。不整脈を引き起こす原因の1つが睡眠不足です。

充分な睡眠をとって、心身の疲れやストレスを減らし、パニック発作の予防に努めましょう。

睡眠時間には個人差がありますが、「朝すっきり目覚め、日中眠くならずに動けること」が充分な睡眠の目安とされています。

3.規則正しい生活を心がける

不規則な生活は自律神経に悪影響を与え、パニック障害の症状が悪化しやすいので注意が必要です。

特に睡眠不足は、パニック障害だけではなく、他の体調不良の原因にもなります。睡眠不足にならないためにも、規則正しい生活は大切です。

起床や就寝、食事の時間はなるべく変えずに、規則正しい生活を送りましょう。

4.カフェインやアルコール、たばこを控える

カフェインやアルコール、たばこはパニック障害に悪影響を及ぼす物質です。1つ1つ説明していきます。

カフェインには、脳を刺激して覚醒する作用があります。眠気を覚ましたり、集中力を高めたりという効果がありますが、頭痛や吐き気、不安感や抑うつ状態といった副作用もあります。

アルコールは少量であれば不安をやわらげ、気持ちを落ち着かせるとされています。しかし、アルコールの血中濃度が低下すると、リバウンド的に不安が強くなってしまうのです。その結果、パニック障害が悪化する可能性があります。

たばこに含まれるニコチンは、交感神経を刺激してパニック発作を誘発する危険性があります。加えて心拍数や血圧を上げる働きもあるので、好ましくありません。

5.周囲からのサポートを受ける

パニック障害の発作は苦しいものですが、発作時にやさしく声をかけてもらったり、背中をさすってもらったりというようにサポートしてもらうと、不安が治まります。

逆に、パニック発作の苦しさが周囲に理解されない場合は、大きなストレスになります。そのストレスが、新たなパニック発作を引き起こす可能性も否定できません。

体調維持のためにも、家族や友人など、周囲の方にパニック障害を正しく知ってもらう機会をつくりましょう。具体的な方法は、病院受診時に同行をお願いする、パニック障害に関する本やパンフレットを見せて説明するなどです。

周囲の人が正しい知識を持つことで、日常生活において及び発作時にサポートを受けやすくなります。

パニック障害かも?と思ったら早めに医療機関を受診しよう

この記事では、パニック障害の原因や症状、治療法などを解説しました。

突然の息苦しさや動悸、手足の震えなどの症状があれば、早めに医療機関を受診してください。もし内科で異常なしという結果であれば、パニック障害が疑われます。その場合は心療内科や精神科の受診を検討しましょう。

パニック障害は早期治療により回復が見込まれる病気です。強いパニック発作が繰り返されると不安になることも多くなりますが、命に関わるものではないということを忘れないでおきましょう。

参考サイト・文献
一般社団法人日本うつ病センター
パニック障害-身体的要因|貝谷久宣,熊野宏昭,石田展弥,宮前義和|臨床精神医学講座 5:161-170, 1997
パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)
日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
パニック障害における発症年齢と人格特性の関連性についての検討|JSTAGE

藤田 朋大先生

当記事の監修医師
藤田 朋大先生

三重大学医学部医学科卒業後に南勢病院精神科に在職。緩和ケア研修会修了。認知症サポート医

関連記事