イソトレチノインの副作用・禁忌事項

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まず初めに、当院では次の方はイソトレチノインの処方をお断りしておりますので、ご了承ください。

イソトレチノインの処方ができない方 18歳未満の方(親の同意があれば16歳から処方可)
妊娠中・授乳中の方
 当院医師の診断によって処方不可と判断された方

オンライン診療・イソトレチノイン処方の前に、「イソトレチノインの副作用・イソトレチノインに関してよくある質問(FAQ)」を次の通りまとめましたので、まずはこちらをお読みいただき、十分にご理解の上で診察・処方へお進みください。

イソトレチノインの副作用について

イソトレチノインは重度のニキビや、繰り返しできるニキビに有効的な治療薬ですが、次の通りの副作用が生じる可能性があります。

以下は、副作用の発現頻度に基づいて、「よくある副作用>一般的な発現率>稀(まれ)な発現率>非常に稀」の順に副作用の症状を記載しています。

副作用頻度
皮膚の乾燥
唇のひび割れ
よくある副作用
目の乾燥
鼻の乾燥
一般的な発現率
頭痛一般的な発現率
関節や筋肉の痛み一般的な発現率
脂質異常
高コレステロール
高中性脂肪
一般的な発現率
光過敏症
紫外線に敏感になる
一般的な発現率
吐き気稀な発現率
脱毛稀な発現率
精神的な影響
抑うつ・気分の変動
稀な発現率
肝機能障害稀な発現率
膵炎
急性膵炎
非常に稀
血小板や白血球の減少非常に稀
視覚や聴覚の異常非常に稀
胎児への影響
催奇形性
非常に稀
但し【重篤】

【解説】イソトレチノインの副作用の発現・症状について

イソトレチノインを服用する際、副作用の発現率は比較的高く、特に「乾燥関連の症状」は多くの患者さまに見られる症状です。

中でも、皮膚や唇、目、鼻などの粘膜の乾燥が多く見られ、口角炎、ドライアイ、鼻の乾燥による鼻出血(鼻血)などの症状も報告されています​。

また、乾燥以外にも「頭痛・めまい」も比較的高い頻度で発生しており、稀に急性膵炎や肝機能障害、コレステロールの増加なども他院では確認されております。

身体の副作用以外では、精神的な影響として「うつ症状」が稀に発現することがあり、特に服用前から精神的な疾患がある場合は慎重に服用する必要があります。

副作用が疑われる場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず当院医師にご相談ください。

イソトレチノインの副作用のそれぞれの対策・対処法

次に、イソトレチノインの代表的な副作用が生じた際の、それぞれの対策・対処法について解説いたしますので、参考にしてください。

  1. 皮膚の乾燥
    イソトレチノインの使用中は皮膚が非常に乾燥しやすいため、保湿クリームの使用が必須で、保湿成分の多い非刺激性のローションやクリームを、顔や体に定期的に塗ることで乾燥を和らげることができます。また、入浴後や洗顔後は、肌がまだ湿っているうちに保湿するのが効果的です。
  2. 唇のひび割れ
    唇は非常に乾燥しやすいため、リップバームやワセリンを塗布して保護しましょう。特に、保湿効果の高いリップクリームや、ワセリンをこまめに何度も塗ることで、ひび割れを防ぐことができます。
  3. 目の乾燥
    イソトレチノインの使用中は目も乾燥しやすくなるため、ドライアイ用の目薬の使用が推奨されます。パソコンやスマホの長時間の使用を避け、目を頻繁に休ませることも効果的です。
  4. 鼻の乾燥・出血
    鼻の内側が乾燥することで鼻血が出やすくなる場合があります。これを防ぐために、鼻の中に保湿ジェルやワセリンを塗布することも有効です。特に寒い季節など乾燥がひどい場合は、加湿器の使用もおすすめです。
  5. 頭痛
    副作用によって頭痛が生じた際は、まず十分な水分補給を心掛け、適切な休息を取ることが大切です。痛みが続く場合には、医師に相談して鎮痛剤を処方してもらうか、イソトレチノインの投与量を調整してもらうことも検討されます。
  6. 吐き気
    イソトレチノインは「ビタミンA誘導体」で、高用量のビタミンAは胃腸に負担をかける場合があるため、服用後に吐き気や消化不良を引き起こす可能性があります。
    できるだけ食後に服用することで胃への負担を軽減し、また、脂肪分を含む食事と一緒に服用することで、薬の吸収効率が高まり、消化器系への刺激が減る可能性があります。
    また、服用後にも十分な水分を摂取することで、胃腸の不快感を軽減し、薬の副作用を和らげる効果が期待できます。
  7. 関節や筋肉の痛み
    副作用による筋肉痛や関節痛は、軽い運動やストレッチを行い、関節や筋肉を柔軟に保つことが効果的です。痛みが強い場合は、医師に相談して痛みを抑える薬を処方してもらうか、運動量を調整するようにしましょう。
  8. うつ症状や気分の変動
    イソトレチノインは一部の患者で気分の落ち込みや不安感を引き起こすことがあります。こうした症状が見られた場合は、早めに医師に相談し、必要に応じて治療を中断するか、他院やカウンセラーによる精神的なサポートを受けることが推奨されます。
  9. 光過敏症
    イソトレチノインを服用することで、紫外線に対して肌が敏感になるため、外出時には日焼け止め(SPF30以上)をしっかり塗布することが重要で、季節に関係なく、帽子や長袖の着用で肌を紫外線から守ることが大切です。
  10. 薬剤性脱毛症
    イソトレチノインの服用によって、薬剤性脱毛症が発生することがあります。脱毛症には重度と軽度があり、それぞれに対する対処法が異なります。以下に、それぞれの対策について解説します。

薬剤性脱毛症「軽度」の脱毛症

イソトレチノインによる脱毛がまだ軽度の場合、髪がこれまでよりパサついたり、抜け毛が一時的に見られることがあります。

イソトレチノインの服用をやめれば副作用の症状も治まることが多いですが、次の日常ケアでも改善できることが多いです。

薬剤性脱毛症「軽度」の対処法:

  1. 保湿ケア
    髪と頭皮の乾燥を防ぐために、保湿成分が含まれたシャンプーやコンディショナーを使用します。アルコールや刺激の強い成分を避け、頭皮に優しい製品を選ぶことが大切です。
  2. 栄養補給
    髪に必要な栄養を補うために、ビタミンB群や亜鉛、L-システインなど、髪の健康に寄与する栄養素を食事やサプリメントで積極的に摂取しましょう。
  3. 薬の調整
    医師と相談の上、イソトレチノインの使用量を減らすか、一時的に中断することで、脱毛症状が改善することがあります。軽めの脱毛、抜け毛の副作用が見られた場合は早めに当院医師へご相談ください。

薬剤性脱毛症「重度」の脱毛症

イソトレチノインによる脱毛症状が重度の場合、髪の毛が広範囲で抜けることがあり、回復に時間がかかることがあります。

この場合も服用をやめればすぐに治まる場合が多いですが、もしもの場合を考えて、次のことも参考にしてください。

薬剤性脱毛症「重度」の対処法:

  1. 治療薬の変更または中断
    重度の脱毛が見られた場合、最優先の対策は医師と相談してイソトレチノインの使用を一時中止することです。治療を続けることで症状が進行する可能性があるため、早期に医師に判断してもらうことが大切です。
  2. ミノキシジルの使用
    ミノキシジルは血行を促進し、毛包の成長を刺激するため、発毛を促進します。医師の指示のもと、外用ミノキシジルを使用することで、髪の再生をサポートすることができます。
  3. PRP治療・メソセラピー
    重度の脱毛には、PRP(血小板血漿)療法やメソセラピーが役立つことがあります。これらの治療法は、髪の再生を促進し、頭皮の回復を助けるため、脱毛症にも効果が期待できます。

イソトレチノインの服用によって重度な脱毛症が見られた場合は、すぐに当院医師にご相談の上、しばらく服用をやめて、副作用の状況を見ると良いでしょう。

イソトレチノインの処方・服用に関してよくある質問(FAQ)

イソトレチノインの処方・服用に関して、当院に寄せられる「よくある質問・ご相談内容」をまとめましたので、診察前・服用前に一通りお読みの上、診察にお進みください。

【Q】イソトレチノイン服用期間中の避妊は必須ですか?

イソトレチノインの服用中は、必ず避妊をしてください。

これは、イソトレチノインが胎児に対して重篤な催奇形性(胎児の奇形を引き起こすリスク)があるためで、服用中および服用後もしばらくの間は、確実な避妊を行うことが強く推奨されます。

イソトレチノインが体内から完全に排出されるまでには時間がかかり、期間中に妊娠すると胎児に対してリスクが生じる可能性があるため、服用期間中はもちろんのこと、服用終了後でも少なくとも「6ヶ月間」は避妊を続ける必要があります。

また、この問題は女性だけの事象ではなく、男性にも当てはまるため、イソトレチノインの服用に関してはパートナーへの理解も促しておきましょう。

【Q】イソトレチノイン服用期間中は低用量ピルとの併用は可能ですか?

イソトレチノインの服用中に「低用量ピルとの併用は可能」であり、むしろ推奨されることが多いです。

低用量ピルは、効果的な避妊方法の一つとして推奨されることが多く、イソトレチノイン服用中の避妊対策として使用することが一般的です。

イソトレチノインと低用量ピルの併用には重大な相互作用は報告されていませんが、低用量ピルを服用している(または、しようと思っている)際には、診察時に当院医師と相談しておきましょう​。

また、イソトレチノイン服用中は、避妊を二重に行う(例えば、低用量ピルに加えコンドームを使用するなど)ことも推奨されています。

【Q】イソトレチノイン服用期間中に併用が禁止されている薬・サプリはありますか?

イソトレチノインを服用している間、併用が禁止されている薬やサプリには、いくつか注意が必要なものがあります。

  1. テトラサイクリン系抗生物質(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)
    イソトレチノインとテトラサイクリン系抗生物質を併用すると、頭蓋内圧亢進(脳内圧の増加)を引き起こすリスクがあるため、併用は避けるべきです​。
  2. ビタミンAを含むサプリメント
    イソトレチノインはビタミンA誘導体であり、ビタミンAを過剰に摂取すると、毒性が強まり副作用(皮膚の乾燥、肝機能障害など)が悪化する可能性があるため、ビタミンAサプリメントは併用を避けるべきです​。
  3. ステロイド薬
    ステロイドは骨の健康に影響を与える可能性があり、イソトレチノインとの併用で骨の脆弱性が高まる恐れがあります。併用せざるをえない場合は、当院医師にご相談ください。
  4. セントジョーンズワート(ハーブサプリ)
    セントジョーンズワートは、ホルモン避妊法の効果を低下させる可能性があり、イソトレチノイン服用中は確実な避妊が必要なため、併用は避けるべきです​。
  5. 抗てんかん薬
    一部の抗てんかん薬(例:カルバマゼピンなど)との併用も推奨されていません。これらの薬剤は代謝を促進し、イソトレチノインの効果を低下させる可能性があります。

これらの薬やサプリを使用する場合は、必ず事前に当院医師にご相談ください。

【Q】イソトレチノインをアレルギーで服用できない人はどうしたら良いですか?

イソトレチノインをアレルギーで服用できない場合、他のニキビ治療法を検討することが重要です。

イソトレチノインは強力な治療薬ですが、代替手段も存在するため、以下の方法を検討しましょう。

1. 外用レチノイド

イソトレチノインは内服薬ですが、外用レチノイド(アダパレンやトレチノインなど)は局所的に作用するため、副作用も少なく、アレルギー体質の方にも効果的です。皮膚に塗る形のレチノイドを使用することで、肌のターンオーバーを促進し、ニキビの改善を図る効果が期待できます。

2. 抗生物質

テトラサイクリン系やマクロライド系の抗生物質を使った治療も、特に炎症性のニキビに有効です。有効成分によって感染を抑制し、赤みや炎症を軽減するため、炎症系ニキビにも効果が期待できます。

3. ホルモン療法

女性の場合、ホルモンバランスがニキビに影響することがあるため、ホルモンバランスを整える「低用量ピル」や「スピロノラクトン」といった薬剤を使用して、アンドロゲンの働きを抑制することで、ニキビの改善が期待されます。

4. 光治療・レーザー治療

イソトレチノインを使用できない場合、美容皮膚科などの施術治療「光治療(LED療法)・レーザー治療」が有効な代替手段となる場合があります。これらの治療は皮脂の分泌を抑えて、ニキビの炎症を軽減し、副作用も少なく治療できるのがメリットです。

5. ケミカルピーリング

グリコール酸やサリチル酸を使用したケミカルピーリングも、皮膚のターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを改善する効果があります、皮膚の角質除去を目的とした治療で、光治療・レーザー治療と同じく、美容皮膚科や美容外科で施術を受けることができます。

【Q】イソトレチノイン服用中はワクチンとの併用は可能ですか?

イソトレチノインとワクチンの併用については、通常は特定のワクチンとの併用は問題ないとされていますが、いくつかの点に注意が必要です。

イソトレチノインは、免疫系に直接的な影響を与える薬ではありませんが、皮膚に強い影響を及ぼすため、接種部位の皮膚反応や回復期間に関連する問題が起こる可能性があります。

  1. 生ワクチン
    生ワクチン(例:風疹、麻疹、水痘など)は、免疫力が低下している患者には避けるべきですが、イソトレチノイン自体は免疫抑制剤ではないため、生ワクチン接種に大きな問題はないとされています。但し、これらのワクチンを接種する際は、事前に当院医師にご相談ください。
  2. 不活化ワクチン
    インフルエンザやCOVID-19(新型コロナウィルス)ワクチンなどの「不活化ワクチン」については、イソトレチノイン服用中に特別な注意は必要ないと考えられています。

上記の通り、一般的にイソトレチノインとワクチンの併用は問題ないことが多いですが、念のためワクチン接種の前に当院医師に相談することをおすすめいたします。

【Q】イソトレチノイン服用中に健康診断がありますが数値に異常が出たりしますか?

イソトレチノインの服用中の健康診断の結果には、以下の項目で異常が見られることがあります。

1. 肝機能:ALT・AST・ALPなど

イソトレチノインは、肝臓に負担をかけることがあり、肝機能を示す血液検査(ALT、AST、ALPなど)の値が上昇する可能性があるため、健康診断の肝機能項目で異常が検出されることがあります。

2. 脂質異常:中性脂肪・コレステロール

イソトレチノインは、血中の脂質(特に中性脂肪やコレステロール)のレベルを上昇させることがあるため、健康診断で高脂血症と診断される可能性があります。

3. 血糖値

一部の患者では、血糖値の変動が報告されています。糖尿病などの既往歴がある場合は特に注意が必要です。

4. 腎機能:血清クレアチニン(Cr)・eGFR

腎機能への影響は少ないですが、まれに腎機能に異常が出ることもあります。

5. 全血球計算(血算)

稀に血小板や白血球数の変動が報告されることがあるため、健康診断で血液検査の結果に異常が出る可能性があります。

イソトレチノインによって健康被害を受けている訳ではありませんが、服用することで一時的に血中の数値が上がってしまうこともあります。

正確な健康診断での結果を望んでいる場合は、イソトレチノイン服用中ではなく、服用を終了してから健康診断を受けるのが望ましいです。

また、数値の異常が気になる場合は、健康診断の際に担当医にイソトレチノインを服用している旨を伝えることも重要です。

状況に応じて「ヒルドイド」の処方も可能!

当院では、副作用の状況に応じて「ヒルドイド」を追加で処方する場合もあります。

ヒルドイドとは?

ヒルドイドは、主に保湿効果と血行促進効果を持つ医薬品(外用薬・塗り薬)で、皮膚の乾燥や、血行不良による皮膚症状の改善を目的に処方され、一般的には、「皮膚の炎症・乾燥・瘢痕(傷跡)の治療」に用いられる薬です。

主成分

ヒルドイドの主成分はヘパリン類似物質で、以下のような効果があります。

  1. 保湿効果:乾燥肌の改善や湿疹、アトピー性皮膚炎の保湿に効果があります。
  2. 血行促進効果:血流を改善することで、打撲や炎症による痛みや腫れの軽減にも役立ちます。

使用方法

ヒルドイドは外用薬となるので、炎症または乾燥している患部に直接塗布します。顔にも使用することができ、その他の体、手荒れなど、皮膚の乾燥を緩和したい箇所にも使用が可能です。

副作用

副作用はあまり多くありませんが、一部で「かゆみや発赤(赤み)」が発生することがあります。ごく稀にアレルギー反応が現れる場合もありますが、その場合はすぐに使用を中止し、当院医師にご相談ください。

イソトレチノインの副作用・禁忌事項|まとめ

最後に、当院ではイソトレチノインの処方は18歳以上となっており、親の同意が得られた場合は16歳から処方が可能となっております。

思春期ニキビなどで16歳未満の方も、イソトレチノインについてのご相談をいただく場合もありますが、イソトレチノインは効果が期待できる分、これまでの通りの副作用があるため、16歳未満の方への処方はお断りさせていただいております。

また、妊娠中の方や授乳中の方のイソトレチノイン処方に関してもお断りしておりますので、ご了承ください。

オンラインによる診察のもとで、できる限り多くの患者さまにイソトレチノインを処方し、効果を実感していただきたいですが、効果には個人差があり、副作用の重軽度も人によって様々です。

副作用が酷い場合は、LINEで処方後もご相談を受け付けておりますので、お気軽にいつでもご相談ください。

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